- 任意整理をすると月々の返済額が減る理由が知りたい
- 任意整理をすると月々の返済額がどれくらい減るのか知りたい
- 任意整理で月々の返済額を減らす時の流れが知りたい
債務整理の1つである「任意整理」には、借金に対する月々の返済額を減らせるメリットがある。
しかし、任意整理を利用する際は、メリット・デメリットなど特徴を理解しておくことが大切だ。
この記事では、任意整理を利用した際の具体的な借金の減額や軽減できる月々の返済額について、詳しく解説する。
借金の返済でお困りの方は、任意整理と他の債務整理の違いを理解し、将来に向けた生活再建について考えてみよう。
任意整理したら借金や月々の返済額はどれくらい減る?
任意整理を利用する際は、仕組みや返済額が減る理由をしっかり理解することが大切だ。
理解しないまま利用すると、思ったより借金が減らないことにより、驚く人がいることも事実だからだ。
任意整理について理解したら、借金や月々の返済額は、どれくらい減るのかを考えてみよう
任意整理で月々の返済額が減る理由とは
任意整理には、3つの理由から借金や月々の返済負担を減らせる可能性がある。
- 利息や遅延損害金が免除になる
- 3~5年の返済期間となる
- 元本が減る可能性がある
任意整理には、月々の返済額を減らすことで、借金総額の返済額を軽減できるメリットがある。これから任意整理を検討している方は、仕組みを理解しておくことも大切だ。
利息や遅延損害金が免除になる
任意整理では、返済額や返済期間が決まり和解に至ると、本来完済日まで発生するはずの利息が免除となる。
借入当初よりも返済期間が伸びた場合、発生するはずの延滞損害金も免除の対象だ。
一般的に、返済期間中は元本に対する利息が返済額に加算され、返済が滞ると遅延金が発生してしまう。
借入した元本以外の借金が加算されることが、借金の完済に時間がかかる理由の1つといわれている。
任意整理をすると、手続き時点の利息や延滞損害金を含めて元本を見直し、和解日以降は利息が発生しない。
決まった元本を返済していくため、月々の返済額を軽減したり、計画的な返済にしたりすることができる。
3~5年の返済期間となる
任意整理で返済計画を見直すとき、利息と延滞損害金を除いた借入元本は、原則3年で返済することとなる。返済額によっては、最長5年の返済期間となるケースもある。
月々の返済額を一定額にするため、日々の生活とともに無理な返済に悩まされにくくなるだろう。
たとえば、クレジットカードの一括返済や返済期間が短く月々の返済額が多いケースでは、返済の目途が立ちやすくなるメリットがある。
元本が減る可能性がある
任意整理によって、借入金に対する年利率が高く、多く支払いすぎた利息によって元本が減る可能性がある。
多重債務問題を背景に、2006年に貸金業法が改正された。しかし、改正前は利息制限法と出資法でそれぞれ上限金利が異なっていたため、「グレーゾーン金利」が存在していたのだ。
各法における上限金利は、以下のとおり。
- 利息制限法
- 20%
- 出資法
- 29.2%
各法の間の金利となる9.2%の差が、グレーゾーンと呼ばれる金利だ。
しかし、貸金業法の改正以降は、元金に対する上限利率を上回る年利率で利息を支払ったときは過払い金が発生する。
元金 | 年利率の上限 |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
過払い金は、年5%の利息をつけて返還されることもあり、任意整理によって返還金を元本に充当し軽減できるケースもある。
任意整理の例を紹介
ここで、任意整理をした場合について、具体例を紹介する。
- 50万円を年利15%借りている場合
- 100万円を年利15%借りている場合
- 300万円を年利15%借りている場合
任意整理では、借入額だけでなく、和解後の返済期間によっても月々の返済額は異なる。それぞれのケースでは、返済期間による違いも解説しているので、ぜひ参考にしてみて欲しい。
50万円を年利15%で借りている場合
年利15%で50万円を返済するケースで任意整理すると、和解前後の返済額は以下のように異なる。
和解前 | 任意整理後 | |
---|---|---|
返済期間 | 2年 | 3年 |
月々の返済額 | 24,243円 | 約13,889円 |
利息額 | 81,832円 | 0円 |
返済総額 | 581,832円 | 500,000円 |
任意整理をした場合、和解前と比較すると81,832円の減額となります。
100万円を年利15%で借りている場合
年利15%で100万円を返済するケースで、同じ返済期間で任意整理した場合、返済額の違いを比較してみよう。
和解前 | 任意整理後 | |
---|---|---|
返済期間 | 3年 | 3年 |
月々の返済額 | 34,665円 | 約27,778円 |
利息額 | 247,951円 | 0円 |
返済総額 | 1,247,951円 | 1,000,000円 |
同じ3年で返済しても、利息247,951円を軽減できるようになる。
300万円を年利率15%で借りている場合
年利15%で300万円を返済するケースで、任意整理後の返済額を、3年と4年それぞれの返済額の違いを比較してみよう。
和解前 | 任意整理後 | |||
---|---|---|---|---|
返済期間 | 4年 | 3年 | 4年 | 5年 |
月々の返済額 | 83,492円 | 約83,333円 | 62,500円 | 50,000円 |
利息額 | 1,007,627円 | 0 | ||
返済総額 | 4,007,627円 | 3,000,000円 |
任意整理後の返済期間によって、月々の返済額は異なる。いずれのケースでも、任意整理後は利息がなくなるため、和解前の返済計画より1,007,627円の軽減に繋がるのだ。
自己破産や個人再生などの債務整理なら、借金はどれくらい減る?
債務整理には、任意整理以外に個人再生や自己破産といった方法がある。
ただし、債務整理をする際にはメリットやデメリットなど、それぞれの特徴を理解しておくことが大切だ。
債務整理の違い | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
---|---|---|---|
借金の減り方 | 利息や遅延金のみ減額の対象 | 1/5~1/10程度まで減額 | 全額返済免除 |
元本 | 原則変わらない | 減る | なくなる |
対象とする借金 | 選択できる | すべての借金が対象 | すべての借金が対象 |
ブラックリスト | 約5年 | 約7年 | 約7年 |
メリット | 財産を残しやすい手続きが比較的簡単 | 借金が大幅に減るマイホームは残せる | 借金がなくなる |
デメリット | 大幅な減額は困難 | 手続き難しい借金の対象を選べない | 手続きが困難で時間がかかる 財産を失う 資格や職種に影響 |
任意整理の特徴
任意整理は、大幅な借金の減額には繋がらないものの、ローン支払い中の車は整理の対象から省くなど、自分自身で選択が可能だ。
任意整理を依頼するなら、弁護士に依頼すると良いだろう。また、法テラスや市町村で実施する無料法律相談を利用して相談することもおすすめ。
手続きも比較的簡単で、裁判所を通さずに借金を減らすことができるため、自分で手続きできるケースもある。
個人再生の特徴
個人再生は、すべての借金が対象となり、自分で選ぶことはできない。一方で、1/5~1/10まで借金を軽減できるメリットがある。
なお、個人再生なら住宅ローンを借金整理の対象外にすることが可能で、マイホームを財産として残すことができる。
ギャンブルによる借金も、整理の対象にできる特徴がある。手続きには専門知識を必要とするため、弁護士への依頼がおすすめだ。
自己破産の特徴
自己破産は、すべての借金を対象に手続きするため、マイホームといえども手元に財産を残すことはできない。
また、ギャンブルによる借金では、自己破産手続きが認められないケースもあることも事実だ。
任意整理や個人再生とは違い、ブラックリストに掲載される期間が7年程度と長い特徴もある。
裁判所への手続きが必要なため、借金問題を得意とする弁護士や司法書士へ依頼することをおすすめする。
どの債務整理も、ブラックリストに載るからといって、なんとか完済を目指そうとする人は多い。
しかし、返済が遅れるだけでもブラックリスト掲載の対象となり、そもそも借金が多ければ新たな借金は審査が通らず困難となる。
借金返済の延滞は、利息が高いこともあり、返済が滞る可能性があるなら早めに借金を軽減する方法を検討することが望ましいといえる。
任意整理で借金を減額した方が良いケースとは
任意整理がおすすめなのは、以下のケースに該当する人だ。
- 借金総額を3年で返済できる人
- 借金のほとんどが利息の人
- 滞納により一括返済を請求された人
- 安定した収入があり返済が可能な人
- 財産を残して借金を整理したい人
- 仕事に影響を与えず借金を減らしたい人
- 自転車操業になってしまっている人
以下では、よくあるケースとして3つを紹介する。
借金総額を3年で返済できる人
借金を返済できる人で借金総額を3年で返済できる人なら、任意整理を検討してみると良いだろう。
任意整理の大きな特徴は、「利息や延滞遅延金をなくして借金を返済すること」だ。任意整理によって金融機関と和解しても、借金の返済は続くことを忘れてはいけない。
返済期間を3年と考えるのは、任意整理では原則3年で返済となるからだ。
5年まで返済期間を延ばせるケースもあるが、任意整理をするか否かを決めるときは、まず3年を目安に考えておこう。
最初から返済期間を5年として月々の返済額を計算すると、3年で完済が必要になったとき、支払えなくなる可能性があり危険だ。
債務整理の結果、4年や5年の返済期間が可能となれば、月々の返済額はさらに軽減できると考えておくと良いだろう。
滞納により一括返済を請求された人
滞納により一括返済を請求された人も、任意整理によって分割払いが可能となる。
延滞によってブラックリストに掲載されてしまっているため、任意整理によるデメリットは少ないと考えて良いだろう。
一括返済には期限を設けられていることが一般的だ。「どのように支払うか」「どうやってお金を工面するか」などを考えているうちに、返済期限が訪れてしまう。
当たり前だが、返済を滞納すると勤務先や自宅にも連絡が来るようになり、周囲にバレてしまう可能性が高くなる。
お金の信用は社会的信用といっても過言ではない。周りにバレずに返済するなら、早く一括請求を完済させなければならない。
とはいえ、そもそも一括返済できるくらいなら、滞納には至っていないケースが大半だと考えられる。
返済の目途が立たないなら、一括返済を請求された時点で債務整理の検討がおすすめ。
なかでも、任意整理なら周囲にバレずに借金を減らして完済を目指せるため、検討してみる価値はあるだろう。
財産を残して借金を整理したい人
債務整理のなかには、個人再生や自己破産など大幅に借金を軽減できる方法もあるが、財産を残すなら任意整理がおすすめ。
個人再生や自己破産では、認められた財産以外は残せないことが一般的。
しかし、任意整理なら、マイホームや車のローン返済は任意整理の対象から外し、財産を残して借金返済を軽減できる。
ただし、任意整理の事実は、ブラックリストとして履歴が残ることも事実だ。任意整理をしたあと5年程度は新たにローンを組めなくなる。
ローンを組む予定があるなら、任意整理は計画的におこなう必要がある。なお、借入できる金額というのは、年収の1/3までと貸金業法で決まっている。
多重債務を避けるため、「総量規制」と呼ばれる規制で厳しく取り締まられており、上限なくローンを利用できるわけでない。
すでに借入額が年収の1/3を超えている場合や、新たな借入で1/3を超える場合は、審査が通らない仕組みとなっている。
たとえば、年収450万円の人が150万円以上を超えて、お金を借りることはできない。
逆にいえば、裁量規制の限度まで借入があるなら、完済を目指すか債務整理で借金を減らすかを考えることになる。
近い将来、ローンを組む予定がなく借金を減らしたいなら、任意整理を検討してみることも、完済を目指す1つの方法だといえるだろう。
仕事に影響を与えず借金を減らしたい人
債務整理で、自己破産を選ぶと勤務先によっては、退職を余儀なくされるケースがある。仕事に影響を与えず借金を減らすなら、任意整理を検討してみよう。
金銭面の信用を重視する銀行や保険会社など金融機関では、債務整理に敏感だ。自分自身のお金を管理できない人に、人の財産を管理させるのは危険と考えるためだ。
任意整理なら、対象とする借金を自分で選べるため、周囲や勤務先にバレにくい特徴がある。個人再生や自己破産をすると、国が発行する「官報」に住所や氏名が記載される。
しかし、任意整理は官報に記載されることなく、和解後も完済を目指すことができる。
借金が雪だるま式に増えてしまい、自転車操業となってしまう前に任意整理で借金を整理することをおすすめする。
任意整理は利息や遅延による延滞金を減額できるメリットがある
任意整理では、利息や遅延による延滞金を減額できるメリットがある。
年利率の上限により過払い金が発生していると、利息をつけて元本に充当し、借金を減らせるケースも実際に存在する。
借金を減額する債務整理の1つである任意整理では、月々の返済額を減らす仕組みであるため、借金をゼロにすることはできない。
しかし、任意整理で月々の返済額を減らせば、日々の生活水準は向上する期待が持てることだろう。
債務整理で、財産を残し月々の返済額を減らしたいなら、任意整理がおすすめ。ただし、任意整理によって、借金がどのくらい減るかは、元金や返済期間によって異なる。
借金の返済で悩んでいる方は、任意整理を上手に活用し、生活の基盤を整えることも視野に入れて考えてみよう。