- 債務整理のデメリットが知りたい
- 債務整理した方が良いのかどうか知りたい
- 債務整理をするときの注意点が知りたい
債務整理をする際に理解しておきたいことは、債務整理をしたことによるデメリットだ。
デメリットを知らずに手続きを進めた場合、後悔する可能性がある。本記事では、各債務整理を選んだ場合のデメリット、それでも債務整理をすべき人、手続きを進める際の注意点を紹介する。
どの債務整理にするか迷っている人は、ぜひ参考にして欲しい。
債務整理して後悔?債務整理のデメリットとは
借金の問題を解決するために、債務整理をしても後悔することがある。その原因として、債務整理のデメリットを良く理解していなかったことが考えられる。
この章では、債務整理に共通するデメリットや各手続き方法のデメリットについて見ていこう。
債務整理に共通するデメリット
最初に債務整理に共通するデメリットを解説する。債務整理には任意整理、個人再生、自己破産といった方法があるが、どの方法を選んでも免れることができないので注意が必要だ。
1.ブラックリストに登録される
債務整理をするとブラックリストに登録される。ブラックリストとは、個人信用情報機関に事故情報が登録されることだ。
金融機関は、CIC、JICC、KSCといった個人信用情報機関に加盟しており、債務整理をすると以下の期間は登録され、ブラックリストの状態になる。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|---|
CIC | 5年間 | 5年間 | 5年間 |
JICC | 5年間 | 5年間 | 5年間 |
KSC | 5年間 | 7年間 | 7年間 |
ブラックリストの状態になると、新たにクレジットカードを契約したりローンを組んだりしたりできなくなるので注意が必要だ。
また、現在利用しているクレジットカードについても使えなくなるだろう。
なお、ブラックリストの登録期間を過ぎれば情報が抹消されるので、クレジットカードの契約やローン契約ができるようになる可能性がある。
債務整理をした結果、住宅ローンや車のローンを組めなくなり、後悔することもあるので注意が必要だ。
2.保証人に迷惑がかかることがある
債務整理をすると保証人に迷惑がかかることがあるので注意が必要だ。
保証人とは、あなたが借金の返済ができなくなったときに代わりに支払ってもらう人のことである。
よって、あなたが債務整理をすると、代わりに保証人に請求がいくことになるだろう。
ただし、保証人に迷惑がかかるかは各債務整理によっても異なるので注意が必要である。
任意整理は手続きをする借入先を自由に選べるため、保証人がついている借金を対象から除外すれば、保証人に請求が行くことはない。
次に個人再生は、債務者が減額した借金について保証人は一括返済を求められる。
例えば400万円の借金を個人再生により100万円に減額した場合、残りの300万円は保証人が支払わなければならない。
最後に自己破産をした場合、保証人が全額を返済する必要がある。
債務整理をすると、保証人になってくれた仲の良い友人や親族などに多大な迷惑をかけた結果、関係が悪化することもあるだろう。
借金の悩みから解放されても後悔することになる可能性があるので注意が必要だ。
3.銀行口座が凍結されることがある
債務整理をした場合、銀行口座が凍結される可能性がある。その理由は、手続きが始まると、借金をしている銀行がその口座を凍結して、預金から借金を回収しようとするためだ。
銀行口座が凍結されると解除されるまでに通常1か月〜3か月はかかる。預金の引き出しや入金ができなくなるので、生活費や公共料金の支払い先を変更しなければならない。
何も考えずに債務整理をした結果、銀行口座の凍結により預金を回収されて生活が苦しくなることがあるので注意が必要だ。
4.専門家に依頼する場合に費用がかかる
債務整理の手続きを専門家に依頼する人は多いが、費用が高額になり生活が苦しくなることもある。
特に個人再生や自己破産の場合は、裁判所を介して手続きを行う関係で、数十万円から100万円程度の費用がかかるだろう。
弁護士にいわれるがまま手続きを進めてしまい、多額の費用が掛かった場合、債務整理後の生活が苦しくなる可能性がある。
任意整理をした場合のデメリット
ここからは、任意整理をした場合のデメリットについて紹介する。任意整理を検討している人は、手続きを始める前にデメリットを必ず理解しておきたい。
1.元金が減額されることはほとんどない
任意整理を選んだ場合、元金の減額はほとんど期待できない。なぜなら、任意整理では、主に将来利息や遅延損害金をカットすることが多いからである。
元金の減額を求めた場合、弁護士に依頼した場合でも、多くの債権者は交渉に応じてくれないだろう。
借金の総額が大きい場合に任意整理を選んでしまうと、ほとんど負担が減らずに後悔することになるので注意が必要だ。
2.債権者との交渉が上手くいくとは限らない
任意整理は、債権者との合意に基づいて行われる手続きのため、債権者が和解に応じなければ任意整理は成立しない。
特に、過去に任意整理を行ったことがある場合や、借入先の金融機関が和解に応じない方針を持っている場合には、交渉が成立しない可能性が高いだろう。
任意整理が失敗すると、時間と費用が無駄になるので注意が必要だ。
3.収入がなければ利用できない
任意整理は、収入がなければ利用できない。なぜなら、将来利息をカットし、元金を3〜5年で返済することを前提としているためである。
無職や収入が不安定な職業に就いている場合には、債権者側から任意整理の申し出を受け入れてもらえない可能性があるだろう。
個人再生をした場合のデメリット
この章では、個人再生をした場合のデメリットについて紹介する。個人再生を検討している人は、デメリットを必ず理解しておきたい。
1.手続きに時間がかかる
個人再生の手続きは書類の準備や裁判所への提出、債権者との調整など多くの手続きが必要なため、申立てから再生計画の認可まで通常は1年から1年半程度の時間を要する。
特に、申立人が計画通りに返済できるかどうかを確認するための履行テストが行われる場合は、長い時間がかかるだろう。
早く借金の悩みを解消したいのに個人再生を選ぶと、手続きの時間が長すぎて疲れてしまうかもしれない。
2.特定の債権者のみを選ぶことができない
個人再生では、特定の債権者のみを選ぶことができない。その理由は、個人再生には「債権者平等の原則」と呼ばれる原則があり、一部の債権者のみを優遇することが禁止されているからである。
お世話になっている人から借金がある状態で債務整理をすると、迷惑が掛かる点に注意が必要だ。
3.手続き後も返済をしなければならない
個人再生では、手続き後も返済をしなければならない。自己破産のように借金が全額免責されるわけではなく、以下のように最低弁済額の支払いが必要だ。
借金を含めた総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 全額 |
100万円〜500万円未満 | 100万円 |
500万円〜1,500万円 | 借金額の5分の1 |
1,500万円超〜3,000万円 | 300万円 |
3,000万円超〜5,000万円 | 借金額の10分の1 |
そして、残った借金は裁判所に提出した再生計画に基づいて、原則3年間(特別な事情がある場合は最長5年間)で返済する必要がある。
借金の返済が難しい場合は、個人再生後を選ぶと、返済に苦しむ可能性があるので注意が必要だ。
個人再生ができないことがある
個人再生は誰でもできる手続きではない点に注意が必要だ。なぜなら、個人再生は借金を大幅に減額した上で返済を続ける必要があり、安定した収入を求められるからである。
加えて、法律上、自己破産や個人再生の手続きは一定の期間内に繰り返し利用することが制限されている。
個人再生の手続きを依頼しても申請が通らなければ、それまでの手続きにかかった時間や費用が無駄になる恐れがある。
自己破産をした場合のデメリット
次に自己破産をした場合のデメリットについて紹介する。いくつかデメリットがあるので注意したい。
1.自動車やマイホームを処分しなければならない
自己破産を申請すると、20万円を超える価値がある自動車やマイホームといった資産は借金の返済に充てられるため、手放さざるを得ない。
自己破産をしたばかりに泣く泣く住み慣れたマイホームを手放さなくなったケースは珍しくない。
2.一部の職業に就くことができなくなる
自己破産手続き中は、弁護士、公認会計士、警備員など、一部の職業に就くことが制限される。
このことを知らずに自己破産をした場合、一定期間仕事を続けられなくなるため、注意が必要だ。
ただし、自己破産手続きが終了し免責許可が下りた後は、職業制限が解除される。
3.免責不許可事由に該当すると自己破産ができないことがある
自己破産の手続きをしても「免責不許可事由」に該当した場合、自己破産が認められなくなることがあるので注意が必要だ。
免責不許可事由とは、裁判所が免責を認めない事情のことであり、以下のような原因がある。
- ギャンブルや浪費が原因の借金
- 財産を隠す行為
- 特定の債務者にのみ返済をする行為
- 裁判所に対して虚偽の申告を行う
これらの行為があった場合、裁判所は免責を認めない。
免責不許可事由に該当する行為を行うと、自己破産が認められなくなることもあるので注意が必要である。
債務整理のメリットとは
債務整理のデメリットを気にする人もいるかもしれないが、もちろんメリットもある。任意整理、個人再生、自己破産のメリットについて順番に紹介する。
任意整理のメリット
任意整理を行うメリットは以下の3つがある。
- 将来利息屋遅延損害金のカット
- 返済期間の延長
- 手続きする債権者を選べる
任意整理では、将来発生する利息や遅延損害金をカットできる。元金のみの返済となるため、利息による負担に苦しまなくて済むようになる。
また、返済期間を3年〜5年に延長することで、毎月の返済額を抑えることも可能だ。
さらに任意整理だけのメリットとして手続きする債権者を選ぶこともできる。住宅ローンや車のローンを任意整理の対象から外すことで、それらの資産を手放す心配がない。
個人再生のメリット
個人再生のメリットは、3つある。
- 借金を大幅に減らせる
- 住宅や車を手放さなくて良い
- 職業や資格の制限がない
個人再生では、借金の元本を5分の1や10分の1にまで減額することが可能である。返済額が大幅に減額されることで、生活の立て直しがしやすくなるだろう。
加えて、自己破産のように住宅や車を没収されたり職業や資格が停止される心配もない。
借金が多い人で住宅や車を手放したくない人が選ぶことが多い方法である。
自己破産のメリット
自己破産のメリットは、すべての借金の支払い義務が免除されることだ。個人再生とは異なりどんなに多額の借金でも申請できるので、新たな生活を踏み出すことができるだろう。
また、自己破産をしても、最低限の生活に必要な財産は保有し続けることができる。
クレジットカードやローンの契約ができないというデメリットはあるものの、何から何まで制限されるわけではない。
デメリットがあっても債務整理すべきなのはどんな人?
債務整理にはデメリットがあるが、借金に苦しんでいる人は利用することをおすすめする。ここからは、デメリットがあっても債務整理すべき人を紹介する。
借金が多額で多重債務に苦しんでいる人
複数の金融機関からお金を借りていて返済ができない多重債務に苦しんでいる人は、一刻も早く債務整理すべきである。
なぜなら、借金の問題を解決しない限り、精神的なストレスに苦しむことになるからだ。さらに、債務整理をして借金の負担を軽減すれば、新たなスタートを切ることができるようになる。
借金の利息が高くて元金が減らない人
借金の利息が高くて元金が減らない人は債務整理をすべきである。この状態ではずっと返済を続けても完済できる見込みがない可能性がある。
無理に返済を続けるよりも、任意整理で将来利息をカットしたほうがいいだろう。任意整理を行えば、元金のみ返済を続けていけば良いので、完済できる可能性が高くなるからだ。
取り立てによる精神的なストレスに悩んでいる人
取り立てによる精神的なストレスに悩んでいる人は、債務整理をおすすめする。
弁護士や司法書士に依頼した場合、最短即日で取り立てがストップするので、もう取り立てに悩む必要はない。
さらに、利息のカットや借金自体の減額を行うことで、返済の負担も抑えられるだろう。
債務整理をするときの注意点
債務整理するときには、注意したいことが3つある。
債務整理によって後悔しないために、事前に理解しておきたい。
着手金詐欺に注意する
近年、着手金詐欺の被害に遭う人が増えている。着手金詐欺とは、依頼者から着手金だけを受け取り、実際には何も手続きを進めない悪徳業者のことである。
着手金詐欺に引っかからないためには、必ず事務所を訪問して弁護士や司法書士と直接面談を行うべきだ。
「絶対にお金が返ってくる」「全額回収可能」といった宣伝をしている事務所を避けることも重要である。
万が一、詐欺に遭った場合は、弁護士会・司法書士会への相談を推奨する。
必ず専門家に相談する
債務整理の手続きをする際は、必ず専門家に相談するべきだ。
手続きをご自身で行うことも可能だが、弁護士や司法書士に相談した結果、適切な手続き方法を案内されたというケースも珍しくない。
また、日常生活への負担を考えると、専門家に依頼したほうが安心して手続きを進めることができるだろう。
専門家に依頼する費用を用意できない場合でも手段はある
弁護士や司法書士など専門家に依頼する費用を用意できなくて困っている人もいるかもしれない。
専門家に依頼する費用をすぐに用意できない場合でも、以下のような手段がある。
- 分割払いに応じてくれる事務所を選ぶ
- 法テラスを利用する
多くの法律事務所では、費用の分割払いに対応してくれる。依頼する前に確認しておくと良いだろう。
法テラスでは経済的に困窮している方を対象に、弁護士・司法書士費用の立替制度を提供している。
収入や資産が一定基準以下であることなどの条件を満たす必要があるが、立替えた費用は利息なしで分割払いができる。
借金に苦しんでいるならデメリットがあっても債務整理を検討すべき
債務整理を行えば、借金を減額したり返済の負担を減らすことが可能である。
だが、どの債務整理を選んだ場合でもデメリットがあるので、後悔しないためにも事前に理解しておきたい。
デメリットがあるといっても、借金が多額で返済が苦しい場合や債権者からの取り立てに悩んでいる場合は、債務整理を利用すべきだ。
特に弁護士や司法書士に依頼すれば、手間がかからないので、安心して手続きができるだろう。