債務整理を考え始めたものの、事務所に行く時間がない、あるいは家族に知られるのが不安で、できればネットだけで手続きを完結させたい。そのようにお考えではありませんか?
結論から申し上げますと、債務整理の手続きを完全にインターネット上だけで完結させることは、原則としてできません。弁護士や司法書士が契約(受任)を結ぶ際には、法律や業界の規程(ルール)により、依頼者本人と直接会って面談する義務が課されているためです。
しかし、落ち込む必要はありません。初回相談や資料のやり取りなど、手続きの多くの部分はオンラインを活用して進められます。
なぜ面談が必要なのか、どこまでオンラインで対応できるのか、そしてオンライン相談を活用する際の注意点まで、あなたの状況に当てはめて分かりやすく解説します。
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債務整理は原則ネット完結できない理由

この章では、なぜ債務整理が原則としてネット完結できないのか、その背景にある法的なルールと、手続きの安全性を守るための理由について解説します。
弁護士・司法書士との直接面談が義務付けられているため
債務整理をネット完結できない最大の理由は、手続きを依頼する弁護士や司法書士に「直接面談」が義務付けられている点にあります。
なぜ面談が必要なのでしょうか。それは、借金という個人の重大な問題を扱うにあたり、専門家が以下の点を直接確認する必要があるからです。
- 本人確認
-
本当にその人本人からの依頼か
- 意思確認
-
本人の意思で手続きを望んでいるか
- 状況把握
-
借金の総額、収入、資産、生活状況などを正確に把握する
- 方針決定
-
任意整理、個人再生、自己破産など、どの手続きが最適か判断する
- 不利益の説明
-
手続きに伴うデメリット(信用情報への登録など)を直接説明する
弁護士は「受任(じゅにん=契約を引き受けること)」の前に、弁護士本人が直接会って、これらの状況を聞き取る義務があります(日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」第3条)。
司法書士も、原則として直接面談が求められます。ただし、2025年4月からは日本司法書士会連合会の新しい「債務整理事件の処理に関する指針」が適用されています。この指針において「面談」は原則として対面を指しますが、依頼者の希望があり、かつ合理的な理由がある場合に限り、テレビ電話などによる面談も、規程上の面談として取り扱うことが認められています。
いずれにせよ、「契約」という重要な段階で、専門家が本人の状況を正確に把握するための面談が必須とされています。
例外的にオンライン面談が認められるケース(災害・疾病時など)
原則は直接面談が必要ですが、やむを得ない事情がある場合には、例外的な対応(オンライン面談など)が認められることもあります。
- 弁護士の場合
-
災害や感染症のまん延、遠方で事務所への移動が著しく困難である場合などの「特段の事情」があるときは、契約後に面談を行うこと(事後面談)が例外的に認められています。
- 司法書士の場合
-
先述の通り、遠隔地に居住している、障害や疾病があるなどの合理的な理由があり、かつ依頼者本人がオンライン面談を希望する場合に限り、テレビ電話などでのオンライン面談が可能です。ただし、事務所側からオンライン面談を一方的に誘導したり、強制したりすることは固く禁じられています。
【注意】例外は無制限ではありません これらの例外的な対応が認められる場合でも、本人確認の徹底(身分証の確認など)や、手続き内容・リスクを正確に説明する義務は変わりません。安全な手続きのために必要なルールです。
完済後の過払金請求は手続きが異なる場合がある
なお、すでに完済した借金に対する「過払金請求」だけを依頼する場合は、他の債務整理(任意整理や自己破産など)とは運用が異なる場合があります。
過払金請求は、新たな借金整理とは性質が異なるため、面談の方法や費用体系について、事務所ごとに説明内容が異なるケースも見られます。ただし、他に債務(借金)がないかどうかの確認を十分に行わないまま、過払金請求だけを切り出して安易に受任することは、司法書士の指針上、問題となり得る行為とされています。
もし完済後の過払金請求を検討している場合は、依頼前に以下の点を確認しておくと安心です。
- 面談は必要か(対面かオンラインか)
- 費用(着手金、報酬金)はいくらか
- 手続きの進捗はどのように報告されるか
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直接面談が義務である根拠(日弁連・日司連の規程)

専門家との面談がなぜこれほど重視されるのか、その根拠となる弁護士会・司法書士会の具体的な規程(ルール)を見てみましょう。
ここでは、条文の要点に絞って紹介します。これらのルールは、何よりも依頼者本人を守り、不適切な手続きやトラブルを防ぐために定められているものです。
日本弁護士連合会(日弁連)の規程(第3条)
弁護士が債務整理を引き受ける際のルールは、日本弁護士連合会(日弁連=にちべんれん)の「債務整理事件処理の規律を定める規程」で定められています。
- 原則
-
弁護士は、契約(受任)の前に、依頼者本人と直接面談する。
- 誰が
-
契約を引き受ける予定の弁護士本人が面談する(事務員まかせは不可)。
- 何を
-
借金の内容、資産、収入、生活状況、依頼者の意向などを聴取する。
- 例外
-
特段の事情がある場合は、契約後のなるべく早い時期に面談する(事後面談)。
重要なのは、「初回相談」がオンラインでも、「契約(受任)」の段階では原則として弁護士本人との面談が必要、という点です。
日本司法書士会連合会(日司連)の指針(本人確認・契約書交付)
司法書士については、日本司法書士会連合会(日司連=にっしれん)の「債務整理事件の処理に関する指針」(2025年4月施行)によって、より具体的なルールが示されています。
- 原則
-
依頼者本人と直接面談する。
- 例外(オンライン面談)
-
「合理的な理由」があり、「依頼者本人の希望」がある場合に限り、テレビ電話等でのオンライン面談が可能。
- 禁止事項
-
事務所側がオンライン面談を誘導したり、強制したりすることは禁止。
- 契約書の交付
-
手続きの範囲や費用を明記した契約書を必ず交付する。
司法書士の場合、オンライン面談の道が開かれましたが、あくまで「依頼者の希望」が前提です。もしオンラインで面談を行う場合は、以下の点を確認しておきましょう。
- 本人確認(身分証の提示)はどのように行うか
- 面談の様子は録画・記録されるか
- 契約書はどのように交付されるか(郵送かデータか)
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債務整理でオンライン対応できる手続きの範囲

「契約時は原則面談」と聞くと面倒に感じるかもしれませんが、実際には手続きの多くの部分でオンラインを活用できます。ここでは、どの段階で何ができるのかを整理します。
例えば、国が設立した法的トラブルの相談窓口である「法テラス」でも、条件を満たせば電話やオンラインでの相談を受け付けている場合があります(2025年11月時点の情報です)。
(※本来はここに、手続きの段階(相談・資料収集・契約・契約後)ごとに「オンライン可否」を示すフローチャート図が入る想定です)
初回相談や事前ヒアリング(メール・LINE・ビデオ通話)
弁護士や司法書士への「初回相談」や、状況を伝える「事前ヒアリング」は、債務整理の手続きにおいてオンライン対応を行っている事務所が非常に多くなっています。
メールやLINE、Zoomなどのビデオ通話を使えば、事務所に行かなくても専門家と話ができます。面談義務はあくまで「契約(受任)段階」の話なので、最初の相談は非対面でも問題ありません。
「家族に知られずに相談したい」という場合、オンライン相談は大きなメリットがあります。連絡手段(電話は避けてメールやLINEにするなど)や、事務所からの連絡時間帯について、事前に希望を伝えておくとよいでしょう。
資料の提出やスケジュール調整
債務整理の手続きには、多くの資料提出やスケジュール調整が伴いますが、これらもオンライン化が進んでいます。
例えば、以下のような資料のやり取りが想定されます。
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 借入先との契約書や督促状
- 給与明細や通帳のコピー
これらの資料は、郵送や来所して持参するほか、セキュリティが確保されたオンラインストレージ(データ共有サービス)を通じて提出できる場合があります。スケジュール調整もメールやチャットで完結することがほとんどです。
契約時の面談(原則は対面)
そして、債務整理の手続きを正式に依頼する「契約(受任)」の段階で、原則として専門家との面談が必要になります。
この面談は、単なる本人確認のためだけではありません。あなたの状況に最適な手続き(任意整理、個人再生、自己破産など)を比較検討し、それぞれのメリット・デメリット、費用の内訳、今後の流れについて、専門家から直接説明を受け、納得した上で契約するために行われます。
この重要なステップがあるからこそ、安心して手続きを任せられるともいえます。
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債務整理をオンラインで相談するメリット

契約時には面談が必要とはいえ、それまでの過程をオンラインで進められることには、大きなメリットがあります。
特に、時間や場所の制約がある方、心理的なハードルを感じている方にとって、オンライン相談は債務整理への第一歩を踏み出しやすくしてくれます。実際に、法テラス(日本司法支援センター)でもオンライン相談(※2025年11月時点)を受け付けている場合があります。
事務所に行かずに済み、時間や場所を選ばない
オンライン相談の最大のメリットは、移動の手間と時間がかからない点です。
予約から初回相談、資料集めまでを自宅や職場近くで完結できれば、忙しい方でも手続きを進めやすくなります。
(ミニケース)平日の日中働くAさんの場合 昼休みや仕事終わりの時間を使って、ビデオ通話で初回相談。資料は週末にまとめてスキャンし、オンラインで提出。契約時の面談だけ、半日休暇を取って事務所を訪問した。
ただし、先述の通り「受任(契約)」のためには原則として面談が必要になる、という点は忘れないようにしましょう。
メールやチャットでやり取りの記録が残る
電話や口頭でのやり取りと違い、メールやチャットは債務整理の話し合いで「言った・言わない」の誤解を防げるメリットがあります。
手続きに関する重要な確認事項や、専門家からのアドバイスがテキストとして残るため、後で何度も見返すことができます。これは大きな安心材料となるでしょう。
ただし、個人情報を送る際は、送信先が正しいか、セキュリティ対策(パスワード付きファイルなど)が取られているかなど、情報漏洩には十分注意が必要です。
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債務整理のオンライン相談におけるデメリットと注意点

オンライン相談は便利ですが、非対面ならではのデメリットやリスクも存在します。ここでは、注意すべき点と、その回避策をセットで解説します。
特に「ネット完結」を過度に強調する広告には注意が必要です。
状況が伝わりにくく誤解が生じる可能性
テキストや音声だけのオンライン相談では、あなたの生活状況や精神的な負担といった、細かなニュアンスが専門家に伝わりにくい場合があります。情報が不足すると、最適な手続きの判断を誤るリスクもゼロではありません。
【回避策】
これを防ぐため、相談時はできるだけカメラをONにし、静かな場所で話すことをおすすめします。また、事前に家計の状況(毎月の収支)や借入先の一覧をメモにまとめておくと、スムーズに情報共有できます。
結局は契約時に事務所へ行く手間がかかる
オンラインで債務整理の相談を始めても、原則として契約(受任)前には一度、事務所へ行って面談する必要があります。
「ネット完結」だと思って相談を始めたのに、最終的に「遠方の事務所まで来てください」と言われると、時間も交通費も無駄になってしまいます。
【回避策】
初回相談の段階で、「契約時の面談は必須か」「もしオンライン面談が可能な場合、その条件は何か」「事務所の場所はどこか」を必ず確認しましょう。
悪質な事務所や不透明な費用請求への注意
残念ながら、債務整理の面談義務を守らない非弁護士(弁護士資格のない業者)や、不透明な費用を請求する悪質な事務所も存在します。
日本弁護士連合会(日弁連)も、こうした不適切な処理を行う事務所への注意を呼びかけています。「完全ネット完結」「面談不要」といった広告は、規程に違反している可能性があり、注意が必要です。
【回避策】
必ず「弁護士」または「司法書士」の資格を持つ専門家本人と話し、契約前に以下の点を書面(見積書)で確認してください。
- 着手金はいくらか
- 報酬金(減額報酬、過払金報酬)の計算基準は明確か
- 実費や手数料が別途かかるか
- 費用の総額はいくらになる見込みか
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オンライン相談を活用したい場合の事務所選びの基準

では、オンライン相談を上手に活用し、安心して債務整理を進めるためには、どのような基準で事務所を選べばよいのでしょうか。
ここでは、オンライン対応を前提とした場合のチェックポイントを紹介します。
どこまでオンライン対応可能か明記されているか
まず、事務所のウェブサイトなどで、債務整理のオンライン対応の範囲が具体的に書かれているかを確認します。
信頼できる事務所であれば、「初回相談はオンライン可」「ご契約時は原則として事務所での面談が必要です」といった形で、できることとできないことが明確に記載されているはずです。
特に司法書士事務所でオンライン面談を希望する場合は、「合理的理由があり、依頼者の希望がある場合のみ可」といった、指針に沿った条件が明記されているかを見るとよいでしょう。
費用や見積りが明確に提示されているか
オンライン・対面にかかわらず、債務整理の費用の透明性は事務所選びの最も重要な基準の一つです。
日本弁護士連合会(日弁連)も、債務整理の弁護士報酬にはルールを定めています。相談時には、「着手金」「報酬金」「実費」など、何にいくらかかるのか、総額の見積りを必ず書面で提示してもらいましょう。説明が曖曖な事務所は避けるのが賢明です。
デメリットも説明し、方針が自分と合っているか
良い面だけでなく、債務整理の手続きのデメリットや、オンライン対応の限界についてもきちんと説明してくれる事務所を選びましょう。
例えば、「この手続きを選ぶと信用情報機関に登録されます(いわゆるブラックリスト)」「オンラインでは状況が把握しきれない場合、ご来所をお願いすることがあります」といった不便な点も隠さずに伝えてくれるかは、信頼の証となります。
また、面談の方法(個室か、家族の同席は可能か)や、今後の連絡手段(メール中心か、電話か)が、ご自身の希望と合っているかも確認してください。
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オンラインを活用した債務整理の基本的な流れ

ここでは、オンライン相談を活用した場合の、債務整理の一般的な流れを4つのステップで解説します。
どの段階がオンラインで可能か、どこで面談が必要になるかをイメージしてみてください。法テラスのWeb予約(※2025年11月時点)なども活用し、まずは相談枠を確保することから始めましょう。
1. 問い合わせ・オンラインでの初回相談
最初のステップは、債務整理を依頼したい事務所への問い合わせとオンラインでの初回相談です。
多くの事務所では、Webフォームや電話で予約が可能です。オンライン相談(ビデオ通話など)を希望する場合は、その旨を伝えましょう。
相談当日は、静かな場所で、借入先、借入額、延滞の有無、現在の収入・支出などをまとめたメモを手元に準備しておくとスムーズです。カメラはONにすることを推奨します。この段階は非対面でも問題ありません。
2. 必要書類の準備と送付(郵送またはデータ)
初回相談で債務整理の方針がある程度固まったら、正式な契約に向けて必要書類を準備します。
具体的には、以下のような書類の提出を求められることが一般的です。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 督促状、請求書、契約書など借入状況がわかるもの
- 給与明細、源泉徴収票、通帳のコピーなど収支がわかるもの
これらの書類は、郵送(簡易書留など)で送るか、事務所が指定する安全な方法(暗号化ZIPファイル、専用ストレージなど)でデータを送付します。
3. 事務所での対面面談と委任契約
書類が揃い、債務整理の手続きの方針が最終決定したら、専門家との面談と委任契約に進みます。この段階が、原則として対面での面談が必要となるステップです。
面談では、改めて最適な手続き(任意整理・個人再生・自己破産)の比較説明、費用の最終見積り、手続きのデメリット、今後のスケジュールについて詳細な説明を受けます。
すべてに納得したら、契約書や委IM状に署名・捺印し、正式に依頼が完了します。
4. 契約後の連絡(電話・メール・郵送)
契約が完了し、専門家が債務整理の手続きに着手(受任通知を発送)した後は、進捗の報告が定期的に行われます。
この契約後のやり取りは、再び電話、メール、郵送などが中心となります。事務所にもよりますが、1〜2か月に1回程度の定期報告や、和解成立時、裁判所の手続きが進んだ時など、重要な局面で随時連絡が入ることが一般的です。
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債務整理のネット完結に関するよくある質問
最後に、債務整理のネット完結に関して、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
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まとめ
債務整理をネットだけで完結させるのは原則として難しいものの、オンラインを上手に活用すれば、相談へのハードルは大きく下がることがお分かりいただけたかと思います。
重要なのは、契約(受任)の段階では、あなたの状況を正確に把握し、最適な解決策を一緒に考えるための「面談」が原則として必要だという点です。
「完全ネット完結」といった耳障りの良い広告だけに惑わされず、面談の必要性や費用について誠実に説明してくれる専門家を選ぶことが、借金問題解決への確実な第一歩となります。
一人で悩まず、まずはオンライン相談などを利用して、信頼できる専門家にあなたの状況を話すことから始めてみてはいかがでしょうか。
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