「転職をするのであれば、しっかり給与交渉をしておきたい」「『年収アップをすること』が転職の目的だったので、転職にあたり給与交渉を行っておきたい」と考える人もいることだろう。
給与交渉をすること自体は、決して咎められるべきことではない。しかし転職時に給与交渉を行うことで発生するリスクもある。給与交渉を行うのであれば、事前にしっかりと「成功するための条件と、交渉のポイント」を押さえておかなければならない。
給与交渉は諸刃の刃
働くことの目的は収入にだけあるわけではないが、それでも収入が働く目的のうちのひとつであることは確かだ。特に、「給与アップを目的とした転職」をしたいと考えている人にとっては、これは大きな要因となりうる。そしてこの給与に大きな影響を与えるのが、「転職時の給与交渉」である。
給与交渉が上手くいけば満足のできる給与を獲得しやすくなるし、モチベーションアップにも繋がるだろう。
しかし転職時に給与交渉を行うことには、デメリットがある。
この「デメリット」はかなり大きく、場合によっては給与交渉によるメリットよりもこちらの方が大きくなることすらある。
次の項目では、この「給与交渉がもたらすデメリット」を取り上げていく。
給与交渉のもたらすデメリット
給与交渉のデメリットは、以下の通りだ。
- ネガティブな印象を与える
- 採用ラインにほかの人がいた場合、別の人がとられる可能性もある
- 転職活動が長引く可能性がある
ひとつずつ見ていこう。
ネガティブな印象を与える
給与交渉は雇用される側の正当な権利ではあるが、それでも雇用する側に良い印象を与えないことは自覚しておかなければならない。従業員の給与をアップするということは、企業側の負担を増やしてしまうことにほかならないからだ。
そのため、自分のことだけを考えて行う給与交渉は、ネガティブな印象を与えやすい。特に、面接時にいきなり給与交渉を切り出したり、選考書類に記載していた金額よりも高い金額を面接時になって希望したりした場合、相手に著しく悪い印象を与えてしまう。
当然のことながら企業側は、このようなネガティブな感情を抱かせた相手の採用は見送ろうとするだろう。
採用ラインにほかの人がいた場合、別の人がとられる可能性もある
「Aという人も良いけれど、Bも捨てがたい」「採用ラインに、AとBが並んでいる」という場合、企業側は給与交渉をしてきた人間よりも給与交渉をしなかった人間の方を採用したくなるだろう。
たとえばAが給与交渉をした人間であり、Bが給与交渉をしなかった人間であると仮定する。
この場合、AとBの能力が同等程度であれば、当然企業はBを採用する。またたとえAの方が優れていたとしても、その差がわずかであった場合は能力が少しAより劣っていたとしてもBを採用する……という企業もあるだろう。
企業が給与交渉自体を悪くとらえていなかったとしても、採用ラインにほかの人がいた場合は、給与交渉をすることがそのまま不利になることは覚悟しておかなければならない。
転職活動が長引く可能性がある
「面接のときなどに給与交渉をするのではなく、案件探しの段階で給与交渉をする」という人も多いだろう。
この場合は企業も打診があった時点で検討することができるし、応募する側も効率のよい求職活動が可能になる。「双方にとって無駄が出にくい」というのがこの方法のメリットだといえる。
ただこの場合は、転職活動が長引く可能性が高いといえる。初めの給与交渉の段階で「それならばウチは取れないので……」と切られることが多くなるため、なかなか面接にたどり着けないのである。
「今の職場にも不満はない。より良い条件の転職先が見つかったら、そのときに転職する」というスタイルの場合はこの方法でも問題はないが、「すぐにでも転職しなければならない」という状況のときは、この方法は選びにくいものになるだろう。
給与交渉をする前に考えておきたいこと3つ
このように数多くのリスクがある給与交渉だからこそ、成功確率を上げるためのポイントを押さえておかなければならない。
そのポイントとは、以下の3つである。
切り出すタイミング……
上でも少し触れたが、「切り出すタイミング」は非常に重要である。
給与交渉を切り出すベストタイミングは、
- 求人募集に応募する前
- 2次面接後
- 内定後の交渉段階
- 【番外編】担当者が切り出してきた時
に分けられる。
まず「年収アップを目的として転職活動をする」という場合は、①のタイミングが良いだろう。上でも述べた通りこのタイミングで給与交渉をしておけば、企業側も応募する側も「面接までいったのに交渉が決裂した」などのような状況を避けることができ、時間を節約することができる。
②は、給与交渉を行うもっともベストのタイミングだと考えられている。一次面接を突破しているため、企業側からの感触も良く、交渉しやすい状態にあるからだ。
②の段階で交渉ができなかったのであれば、③のタイミングで交渉しても構わない。ただし、②で交渉した場合に比べて成功確率はやや低くなる。また場合によっては、内定が取り消される可能性もある。
なおここまで「自分から給与交渉を切り出す場合のタイミング」について解説してきたが、④のように、担当者側から給与交渉を切り出された場合は、そのタイミングで交渉を始めてしまっても構わない。
転職したい業界の特色……
「今まで自分が長年勤めてきた同業界に転職する」という場合は、給与交渉を行いやすいだろう。特に前の職場で実績を積んでいるのであれば、給与交渉もスムーズに行きやすい。
逆に言えば、「まったく未経験の業界に飛び込む」という場合は給与交渉は難しいといえる。ただし、「正社員として働いていたのに、前職では年収が200万円程度だった」などのように、一般的な相場から見て著しく低い年収で働いていた場合は、この限りではない。
自分の年収相場とスキルを把握する……
当たり前のことではあるが、有能な人材であればあるほど(またその業界での活躍が見込める人材であればあるほど)給与交渉は通りやすい。特に、その業界で必須となる国家資格を持っていたり、類を見ないほどの輝かしい功績を持っていたりすれば、給与交渉も非常に行いやすくなるだろう。
そのため、給与交渉に先駆けて、「現在の自分の年収相場」と「自分の持っているスキル」を洗い出すことが重要だ。
給与交渉の前にまずは自分のスキルを客観視しよう
給与交渉においては、自分のスキルの客観視・棚卸・洗い出し作業が必須である。
しかしこれを自分だけで行うのはなかなか難しいものだ。そのため、必要に応じて他者の力を借りる必要が出てくる。
たとえば客観的な視点とプロの視点を持つキャリアコンサルタントなどは、非常に役に立ってくれる。