厚生労働省が統計を行なっている「賃金構造基本統計調査」の令和3年版からデータを見ると、賃金が高い地域の順位が最も高いのが東京都、続いて神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県の順になっている。
この結果を見ても高収入が得られる仕事場は大都市に集中していることがわかる。これは大企業の本社、本店とされるところが大都市に集中していること、求人や仕事の多さなども反映されている。
現在の自分が置かれている環境によっては自分の望む仕事、職業に就業するには、転職のタイミングで引っ越しが必要な場合もあるだろう。履歴書の作成やエントリー、面接の準備などをしながら引っ越しのことも並行して考えるのは大変なことだ。
そして、引っ越しには時間や手続き、引っ越し費用など負担となることも多い。今回は、転職に起因した引っ越しのタイミングや費用などについて考えたいと思う。
- 参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
転職に伴う引っ越しのタイミング
二つのパターンが考えられる。まず一つ目が「引っ越しをしてから転職活動をする」二つ目は「転職先が決まってから引っ越し先を探す」というパターンだ。それぞれにメリット、デメリットがあるので自分のライフスタイルに合わせて選択して欲しい。
引っ越しをしてから転職活動をする
自分が希望している職場が現在の自宅から遠い場合、転職先への訪問や面接、新たな転居先を探すために何度も移動を行なっている間に、交通費や宿泊費がかかってくる。また、働きながらの転職活動であれば時間的な制限、土日や祝日のみ、タイミングによっては休暇を取って向かわなくてはならないこともあるだろう。
このような金銭的、時間的な負担を減らすためにも引っ越してから転職活動を行うことで、制限なく活動ができる、腰を据えて活動に集中できることがメリットといえるだろう。
しかし、引っ越してから転職活動をするということは一度退職をして無職になっている状態だ。引っ越しの初期投資から、内定を受けるまでの間の生活費などを捻出する必要がある。ここが大きなデメリットの部分であろう。
転職より先に引っ越す場合はある程度貯蓄があることが前提になると言っても過言ではない。
転職先が決まってから引っ越し先を探す
転職先が決まってからの引っ越しは、費用を抑えることができる。引っ越し費用は別として、仕事が決まってから引っ越しをすれば、家賃や光熱費などを支払う財源は確保できているので安心が大きいところがメリットとなるだろう。貯蓄は引っ越し費用に使用するため、その他の貯蓄を抑えたい、貯蓄が少ない人にはおすすめだ。
転職活動で、遠方に移動したとしても収入はあるので、ある程度の交通費や宿泊費は確保できる。また、引っ越しをしてから転職活動をするよりも費用が抑えられるだろう。
しかし、時間的な部分で有給をとったり移動の時間を費やしたりが負担になるのがデメリットとなる。
引っ越し費用はどれくらい?
気になるのは具体的な費用の面だろう。実際の金額を見ながら考えていこう。
引っ越し費用の相場
一人暮らしの引っ越し費用の相場を見てみる。
約45,000円〜54,000円
約59,000円〜78,000円
上記でもわかるように、荷物の多さや距離によって価格が変動する。つまり「荷物が少ない、引っ越しの距離が近い」ことで費用は安くなる。
反対に荷物が多く遠方に引っ越したりすると費用は高額になる。
家賃と光熱費
家賃やその他の生活費に関しては、それぞれの所得によって変動してくる。今回は、平均値をみるために総務省統計局が統計を取っている「家計調査」2019年の数値で見てみる。
単身世帯と言われる「一人暮らし」における1ヵ月間の平均支出は163,781円。この数字からするとおおよそ家賃が60,000円程度、家賃の目安は給与の支給額の3分の1以下と言われている。食費は30,000円、水道光熱費、通信費、交際費、雑費で70,000円という計算になる。
このように、どの項目にいくらかかるか、いくら使うか目標や目安を設定しておくことで生活費は抑えることも可能だろう。
- 参考:総務省統計局「家計調査」
引っ越し費用の抑え方
引っ越し後の費用の抑え方はそれぞれのライフスタイルにより変わるが、引っ越し費用の抑え方を考えたい。
引っ越し費用を負担してくれる企業を狙う
近年優秀な人材を確保するために「引っ越し費用負担」という求人も多く出ている。採用が決まった際には、引っ越し代金を会社側が負担してくれる。
転職サイトなどでも「引越し費用実費全額負担の求人・転職情報」というカテゴリーがあり、費用負担をしてくれる企業だけを集めたページもあるくらいだ。
働きたい、チャレンジしてみたい職種や就職を希望している地域がフィットしていればぜひエントリーしてみてもいいだろう。転職前の自己負担を減らすことができる。
引っ越し時期を考える
引っ越し業者を使用する場合には、時期によって価格がかなり変動する。社会人だけではなく学生が移動をする時期を含めて1月から4月の間は価格が高額になる。
逆に移動が落ち着いたゴールデンウィークを除く5月から7月は需要が少ないため値段を抑えることができる。部屋を借りるときにも、良い条件の部屋は減っているが、引っ越し先の部屋もゆっくり選ぶことができる。
もしかすると割引も期待できるかもしれない。転職であれば、時期に関わらないことも多いので時期を選んで出費を抑えよう。
荷物を減らす
先にも述べたように、反対に荷物が多く遠方に引っ越したりすると費用は高額になる。就職先は遠方となっても妥協できないが荷物を減らすことは可能だろう。
荷物を極力減らし、実家であれば徐々に運ぶなど必要最小限にまとめてみることをおすすめする。
自力で引っ越す
引っ越し業者を使わずレンタカーを利用したりしながら自力で引っ越せば、レンタカーの費用だけとなるので、だいぶ出費を抑えることができる。
また、引っ越し業者よりも「便利屋」は価格が安い傾向にある。近年、便利屋で引っ越しの手伝いを行なっているところもあるので検討してみてもいいだろう。
転職に伴う引っ越しの準備はしっかり行おう
引っ越しに関しては、もしかしたら希望をしていなくても、引っ越しせざるを得ない人もいるかもしれない。しかし、転職に伴う引っ越しであれば、これからの未来や新生活に前向きかつ明るい希望を持って前進してほしい。
だが、現実問題としてお金や時間の負担がかかることになる。準備をしっかりと行い、転職と引っ越しのタイミングを自分のライフスタイルに合わせて調整をしてみよう。
また、費用を負担してくれる企業を選ぶことや、引っ越しの時期や方法を工夫することで費用を抑えることができることがわかった。ぜひ参考にしながら転職、引っ越しともに満足いったものとしてほしい。