いつの日からか分からないけど、ある日を境に心の中に生まれた「転職したい」という気持ち。そのきっかけは忘れてしまったけれど、日に日に想いは募り、確かなことは、今やその想いが消えることはないという確信。
よし、転職しよう―。これまで転職したことがある人、絶賛転職活動中の方であれば、「それ分かる!」と思う気持ちの変遷ではないだろうか。
しかし、転職を決意してハイ終わりではない。現職がある人の場合は、直属の上司・人事に退職の意を伝えなければならない。中には、「いやいやちょっと待ってよ」と、新たなキャリアステップを踏もうとする人の手を掴んで離さない人も存在するだろう。
いわば、退職に伴う『引き止め』だ。本記事では、ありがちな転職における引き止めパターン、引き止めに屈せず退職の意を伝えるためのコツについて解説しよう。
退職前に引き止められることは当たり前?
まず結論として述べると、退職前に引き止められることは「当たり前」ではない。しかし、決して珍しくないというのが正直なところだ。
現に、ランサーズ調べでは、20〜50代の退職を経験した男女(330名)のうち、約半数の54%が会社から引き止めにあったというアンケート結果も出ている。会社が引き止めをする理由は、シンプルにその社員に辞めてほしくないからだ。上司としては、頼りにしている部下から退職の意を示されると、人手が足りなくなったら困る、上司としての評価も下がる等、様々な葛藤が生まれるのだ。
中には、「給与をアップする」「違う部署へ異動するチャンスを渡す」等、ありとあらゆる言葉を駆使して部下を引き止めるために尽力する上司も存在する。しかし、退職は個人の自由であり、たとえ企業の社長・経営者であっても、退職を拒否する権利は持ち合わせていない。そのようなことも分かっているが、なんとか部下を引き止めようとするのが上司という生き物なのだ。
しかし、退職したい身としては、引き止められることは何のメリットもなく、むしろ煩わしいと思うのが本音だろう。そこで、次の項目ではよくありがちな引き止めパターンと必勝マインドを包み隠さず解説しよう。
よくある引き止め例&必勝マインド
続いて、退職の意を示した後にありがちな引き止めパターン持つべき必勝マインドについて解説しよう。
「人手が足りるまで我慢してほしい」
よく言われがちな引き止めワードがこれだ。組織体制が構築されている大手企業ではあまり見られない引き止め例かもしれないが、中小・ベンチャー企業であればあるほど、人手不足を理由とした引き止めワードは言われる可能性が高い。このような環境で働いている場合は、組織内の人手不足という課題を体感しているため、「確かに今抜けたら大変だよなぁ・・・」という申し訳ない気持ちに苛まれるかもしれない。
しかし、この引き止めワードはハッキリ言って常套句だ。たとえ現職が採用活動をしていたとしても、内定まで進んでいない限り、人手がいつ足りるかも定まっていないことが多い。
人手不足を理由にして、なんとかあなたに留まってもらいたいというのが本心だ。極端な話、会社という組織は社長が辞めても回るようになっている。個が集まった組織が会社であり、誰かの穴が空いた場合、全員でなんとかその穴を埋めるべく動くのが会社という本質なのだ。転職を決心する心はブレないはずだ。
「せっかく育てた恩を仇で返すのか」
次によくあるのが、温情に訴える引き止めパターンだ。これは、上司があなたのマネージメントに濃い密度でかかわっていた際に言われがちな引き止めワードである。上司との関係値が深い人ほど、この引き止めワードを喰らうと心が揺らぐかもしれない。
しかし、このワードも何の効力もなく、むしろ上司という権力を振りかざしたパワハラ的引き止めワードだ。部下は上司を選べないし、そもそも退職=恩を仇で返す、という考え自体が上司の自分本位な気持ちが見え隠れしているワードだ。このようなワードを言われた場合は、「育ててもらった御恩を次のステップで活かします」とニッコリ伝えることが上手い切り返し方法だ。
「君はどうしても会社に必要な人材だ」
次に紹介するのは、あなたという人間の必要性を訴える引き止めワードだ。これも、言葉尻は異なれど、前述した恩を仇で返す系の引き止めワードとさして変わらない。
仮にこのワードを言われて、上司からの期待に喜びを感じて考えを改め直して現職を続行したとしても、「一度は退職の意を示した人材」という事実は残ったままだ。そのような環境に働きやすい空気が流れる可能性は低いだろう。
かつ、遅かれ早かれ「やっぱり退職すれば良かった・・・」という後悔の念が生まれる可能性も高い。そのような点から、上司からの引き止めワードを真正面から受け止める必要はないと認識しておいてほしい。
「君はどこに行ったって通用しないぞ」
このワードも、前述したパワハラ引き止めワードに通ずるものがある。このようなワードを言われたら、「そんなこと、あなたには分からないじゃないですか」と”心の中”で一蹴しておくことを強くおすすめする。
これは転職という人生の転機を決意した人のモチベーションを大きく下げる言葉であり、あなたを引き止めたいがあまり、上司の口から出た自分本位なワードでしかない。
真に受けてしまっては何のメリットもないため、「そうなんですね。」とクールに受け流すことをおすすめする。
「条件を改善するから考え直してほしい」
最後に、このワードは甘い蜜を垂らすような引き止めワードだ。現職の条件に対して不満を持って転職を決心した場合は、この引き止めワードをもらったら、少し心が揺らぐかもしれない。
しかし、冷静に考えてほしいのが「条件が改善される確実性」である。上司に条件を改善する権利が必ずしもあるわけではないため、あなたが堅く決めた転職意欲がなくなるほど、満足のいく条件になるとは限らない。
また、あなた以外の従業員の中で退職の意を決した後、条件が良くなったケースは本当にあるのかをフラットに見てほしい。甘い言葉で気を引かせるわりに、実際にはなんら条件が変わらないというケースは往々にしてある。
退職意思を上手く伝えるためのポイント
これまでの中で、退職を決した後は会社から引き止められることは決して珍しくないということがお分かりいただけただろうか。その上で、現職へ退職意思を上手く伝えるためのポイントについて解説しよう。
退職願・退職届をしっかりと渡す
まず、シンプルにこの手段に尽きる。会社へ退職意思を伝える方法は、口頭でも問題ない。しかし、言った言わないを防ぐために、しっかりと書面として形に残しておいた方が後々の揉め事にはならないと言える。
ちなみに、「退職願」は退職意思を伝えるための意味合いを成し、「退職届」は確定事項として退職の旨を伝えるための書類である。既に次の転職先・転職時期が決まっている上で退職意思をハッキリと伝えるのであれば、退職届を正式に出すことをおすすめする。
繫忙期のタイミングは避けて伝える
繁忙期真っ只中での退職願いはあまりおすすめできない。タイミングを待ったらキリがないという考えもあるが、上司が話をまともに取り繕ってくれない可能性があるからだ。
繫忙期でも退職の意を伝えるのであれば、月初タイミング等の忙しくない時期を狙って早めにスケジュールを押さえてしまうことをおすすめする。
会社に対する不平不満は口にしない
退職意思を伝える際、会社への不平不満等は決して口にしてはならない。そこから望まぬ口論になってしまう可能性もあり、
また上司の心に「不平不満を解決すれば引き止められるんじゃないか?」という期待が生まれるからだ。退職意思を伝える際は、とにかくクールに淡々と、そして感謝の意も込めることを意識してほしい。変な方向へ話をこじらせないためにも、不平不満を始めとする感情論は絶対NGだ。
まとめ
転職を志す方が現職で引き止めを喰らった場合のありがちパターン、対策について詳しく解説した。引き止めをされて無事に退職が決まるまでの間は心身共にストレスを感じるかもしれないが、この山場さえ超えてしまえば、あなたの新たな道は確かに拓けるだろう。
ぜひ、本記事でまとめたマインドを取り入れて、あなたの次の道を切り拓けることを切に願う。