転職活動中の面接では、数多くの質問が投げかけられる。面接は履歴書とは異なり、「じっくり練ったうえで、きれいに言語化できる時間」がない。聞かれたらすぐに答えなければならないものだから、ある程度「このように答える」という方針を決めておくと、対応しやすくなるだろう。
もちろん、何を聞かれるかはその時々で変わってくる。しかし「よく聞かれる質問」があることは事実だ。
それが、
- 志望動機
- 長所と短所
- 趣味
である。
ここではこれを質問する意図と、その質問への具体的な回答を例文つきで紹介していく。
ほぼ必ず聞かれる「志望動機」の答え方のポイントと例文
面接でほぼ必ず聞かれる質問がある。それが「志望動機」だ。年齢・既卒新卒・業種によらず、どんな場合でも質問されるものなので、事前に回答をきちんと考えておこう。
この「志望動機」は、
- その業種に関する自分自身の過去のエピソード
- 転職(候補)先の独自のウリ
- 自分のスキル
を交えて回答すると、高いポイントを得られる。
たとえば、介護業界への転職の場合は以下のような回答が考えられる。
10歳から15歳までの間、要介護状態の祖母と同居していました。徐々に家族だけではフォローの人手が足りなくなり、プロの手を借りるようになりました。そのときに、しっかりと声掛けを行いながら祖母を見てくれる介護福祉士の方々の働きに感動を覚えたため、私自身も介護福祉士の道を選びました。
前職でも介護福祉士として働いていましたが、御社の掲げる『利用者様とのコミュニケーションを大切にし、人員配置基準の1.5倍の人員を配する』という姿勢に感銘を受けて、御社への転職を希望しました。利用者様お一人おひとりに寄り添い、労りを持って接していける介護をしていきたいと考えています。
前職では介護主任として働いており、現場経験はもちろん、マネジメントの経験や後輩の指導経験、環境設備のための提案などを行ってきた経験もあります。
介護業界への転職をイメージしたものであるが、
- まずは自分の経験に基づくエピソードを言ったうえで、介護福祉士になった理由を話し
- なぜ前職を辞めてまで新しい職場に着たかったのかを具体的な数字を述べながら
- 自分の実績や経験で締める
というやり方をとっている。
「長所と短所」を聞かれた場合は、短所を回答したうえでフォローするのが吉
「あなたの長所や短所は何ですか?」も非常によく聞かれる質問である。
この質問の意図は、「自分を客観的にとらえられる人間であるかどうか」を確かめるためにある。
主観的な見方だけで自分をとらえるのではなく、自分の長所・短所を把握できる冷静さと、自分自身で考える力を持っているかどうかを確認するために聞かれる質問なのだ。
また、特に短所は「自分の欠点をきちんと把握しているかどうか」「その欠点にどのように向き合っているか」「欠点を補うために努力をしているか、その努力はどのようなものか」を問うための質問といえる。
このような意図を持った質問であるため、極端に長所だけを目立たせる回答は望ましくない。また、短所を語る場合も、その短所をフォローできる言い回しを入れることが望まれる。
私の長所は、非常に真面目で誠実、物事を最後まで遂行できる力があるということです。前職では常に納期のある武門で仕事をしてきましたが、過去15年間に渡り、ただの一度も納期を落としたことはありません。部下やクライアントさまの都合で納期までの時間的な余裕がなくなった場合であっても、各部門と連携しながら、最初に設定された納期を守り抜きました。
短所は、万事において頑固であるという点です。「人に任せるよりも自分で行った方が早い」と判断して仕事を抱え込みすぎるところがありますし、納期を守らなければと考えて無理をしすぎてしまうところです。特に時間的な余裕がないとこの傾向が強く出てしまうので、意識的に周りに現在の状況を共有し、必要だと判断されれば周囲の人に適宜助力を頂くようにお願いするように心がけています。
長所・短所に限ったことではないが、具体的なエピソードを盛り込むと印象に残る回答になりやすい。また、特にその業界で求められる能力を「長所」の欄に持ってくると、採用されやすくなるだろう。
短所は「それをフォローするための具体的な方法と実践」とセットにするのが基本だ。
「趣味はなんですか?」の質問には、仕事に生かせる視点を混ぜ入れるとなお良し
面接の段階では、よく「趣味」も聞かれる。
趣味は一見すると仕事とはまったく関わりがないもののように思われるが、「その人の人間性を見る」「社風と合うタイプかどうかを確認する」などの目的がある(もちろん、「軽い質問をすることで回答者をリラックスさせよう」という意図もありはする)。そのため、自分の趣味をすなおに話しながらも、社風に合わせた回答をするのが望ましい。
私の趣味は、柔道です。小学校に上がる前から柔道場に通い、小学校・中学校・大学・大学院と、18年間に渡って道着を着続けました。高校時代には全国大会に出場した経験もあります。また社会人となった今でも町の道場に通い、子ども達に柔道を教えています。
柔道は『個』で行う競技ではありますが、団体戦や大会で多くの仲間と触れ合い、切磋琢磨しながら親睦を深めることができました。彼らとは今ももちろん交流があります。また、子ども達を指導していく経験のなかで、『どのように教えれば子どもは理解しやすいか』『その子一人ひとりにあった指導方法とは何か』を考えるようになりました。
上記では趣味として「柔道」を取り上げているが、
- 18年間(+社会人になってからの継続期間)もの間、1つの競技に打ち込める一途さ
- 全国大会に出られるほどにしっかり練習できる真面目さ
- 「個」の競技でありながら、ほかの人と親交を持てるコミュニケーション能力の高さ
- 指導者としての実績と、指導方法を見直せる柔軟さ
を組み入れた回答だ。どの社風の会社にも通用するが、特に「真面目さ」「コミュニケーション能力」「仕事の完遂力」を重んじる社風のある会社には評価が高い回答だといえるだろう。
事前の練習は絶対に必要!
ここまで「よくある質問の意図と、その回答例」について解説してきた。
しかしこれらの回答を、自分一人の力だけで導き出すのはなかなか難しいものだ。「どう答えていいか分からない」「答えたいことはあるが、文章としてまとまらない」という人は、キャリアコンサルタントに相談するとよいだろう。あなたのスキルを棚卸する手伝いをしてくれるし、良い取りまとめ方も教えてくれるはずだ。