転職する際に、健康診断の結果は必要なのだろうか。健康診断を受けるように言われたときには、どうすればいいのだろうか。基本的に健康診断は、会社の指示に従えば、問題ない。しかし、健康診断について知っておけば、指示内容も理解しやすい。
そこでこの記事では、転職で健康診断書は必要なのか、費用や病院の探し方などについて解説する。
雇い入れ時の健康診断とは?「法定健診」と「特定健診」
健康診断というと、年に1回行われる法定健診を指すことが多い。「法定診断」は労働安全衛生規制第43条で規定されており、企業は「雇入時」や「年に1回(定期健康診断)」実施することになっている。
深夜に運転するドライバーなど特定の業務に従事する社員(特定業務従事者)については、配置換えの際のほか、6ヶ月以内ごとに1回の健康診断を行うとされている。転職先によっては、じん肺健康診断や石綿健康診断、騒音作業健康診断などを受けることになる。
一方、「特定健診」は40歳~74歳を対象にした健康診断で、メタボ健診ともよばれている。個人事業主などの国民健康保険に加入している人が受診できる。
このことから、転職者が受ける健康診断は、「法定診断」となる。ここからは法定診断について解説する。
法令により健康診断は義務
企業には、社員や一定のアルバイトを雇う際に、健康診断を受けさせる義務がある。「労働安全衛生規則第43条(雇入時の健康診断)」には次のように規定されている。
労働安全衛生規則第43条の概要
- 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときには、次の項目について健康診断を受けさせなければならない。
- ただし、健康診断を受けたあと3ヶ月を経過しない場合は除く。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数の検査)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTPの検査)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライドの量)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
- 出典:労働安全衛生規則第43条(雇入時の健康診断)2022年11月17日
一般的に健康診断は、内定後に転職先のタイミングで指示される。そのため、健康診断の費用は企業が負担する。ただ、業種によっては、健康診断の結果が仕事に影響するため、選考段階で必要となる。
3か月以内に受けた人からは健康診断の結果を証明する書面を受け取る方法でも代用できることがあるため、採用担当者などに事前確認しておこう。
・基本的に健康診断は、内定後の転職先の指示に従えばよい。
・製造業や運送業など、健康診断書が選考基準の一部となるケースでは、自分で用意する必要がある。
自分で健康診断を受ける場合、実施している医療機関であれば、どこでも受けられる。自宅近くの病院や保健所に申し込めばよい。
また健康診断は保険適用外であるため、全額自己負担である。医療機関によって料金は異なるが、1万円前後見込んでおこう。健康診断を実施しているかどうかを事前に確認し、その際に料金も問い合わせておくと安心だ。
雇入時の健康診断を受ける場合の注意点
入社後であれば総務部などからの指示に従い、健康診断を受ければ済む。毎年のことなので、すぐに慣れるだろう。一方、雇入時の健康診断は、定期健康診断との違いがあり、迷うかもしれない。
ここでは、雇入時の健康診断を受ける場合の注意点をまとめる。
検査項目は、健康診断によって異なる
健康診断で受けるべき検査項目は法令で決められている。ただし、健康診断の種類によって異なるため、自分で医療機関を選択する際には、「雇入時の健康診断」であることを確認しよう。
健康診断の結果を受け取れるまで時間がかかる
健康診断自体は、混雑状況により変わるが、1.5時間~2時間程度かかる。混雑時に備え、あとに予定を入れないようにしておくとよい。また健康診断の結果は、医療機関によるが、3~4週間程度かかることがある。
なお健診が午前か午後かによって、朝食をとれるかどうか、何時までに食べなければならないか異なる。誤って朝食をとってしまうと、特定の検査項目は受けられず、後日受診することになる。この点も事前に確認しておこう。
健康診断書には有効期限がある
健康診断書の有効期限は、受診から3ヶ月以内である。前職で受診した健康診断から3ヶ月以内であれば、その健康診断書でも代用できる。ただし、前述したように健康診断の種類によって検査項目は異なるため、有効期限内であっても使えないこともあるので注意が必要だ。もちろん、1年前の健康診断書は使えない。
企業から指示があるはずなので、提出期限に合わせて健康診断を受診しよう。
領収書を受け取り、保管する
一部の業種を除いて、健康診断にかかる費用は会社が負担する。入社前に健康診断を受けるケースでは、受診費用を一時的に負担する必要がある。支払い時に領収書を受け取り、会社に渡すまでしっかり保管しておこう。
健康診断を受ける際のおもな注意点を紹介したが、社会経験が豊富な人なら健康診断の受け方や転職活動も慣れたものかもしれない。しかし、20代・30代の比較的若い転職組はどうだろうか。健康診断に限らず、どのように転職活動を進めていいかわからないかもしれない。失敗していることさえ気づかないケースもある。
転職活動をうまく進め、自分の強みを最大限に引き出すために、転職アドバイザーを活用する方法がある。転職アドバイザーは転職できるようサポートするプロのアドバイザーで、転職できるまでさまざまなアドバイスを受けられる。
特に金融機関への転職を考えている人は、転職アドバイザーに相談してみるとよい。
企業の指示に従い検査を受ければよい
健康診断は基本、企業の指示に従って受診すれば済む。しかし、この記事で解説したように、健康診断の種類の確認、費用の立て替え、提出期限から逆算したスケジューリングなど注意しなければならないことも多い。
企業からの指示をよく聞いて、手違いのないよう進めよう。