転職に伴ってさまざまな手続きが必要になるが、その中でも健康保険に関する手続きの詳細はご存じだろうか。健康保険証は、現在働いている会社から支給されるものである。転職したら、その保険証はどうすれば良いのか、保険証がないと病院に行けないのではなど、疑問に感じることがあるだろう。
本記事では、転職に伴う健康保険証の取り扱いについてまとめた。再就職までに間が空く場合もまとめているため、ぜひ参考にしてほしい。
転職前後の健康保険・保険証の取り扱いについて
会社に勤めていると、健康保険や厚生年金保険などは労使折半で保険料を負担し、加入の手続きは会社が行ってくれる。脱退手続きも社内の担当者が取りまとめてくれるのだが、以下の3点は自身が動かないといけない部分だから覚えておこう。
- 最終出勤日に保険証は返還する
- 被扶養者分も一緒に返還する
- 保険証の新規発行は1週間〜3週間ほどかかる
最終出勤日に保険証は返還する
現在発行されている保険証に関して、退職日の翌日付けで期限が切れることを覚えておこう。保険証は、退職日に手渡しで返還するのが最も確実な方法である。
期間を空けることなく次の会社が決まっている場合は、転職先の社会保険に加入するため、転職先で保険証の発行を待てば良い。日本は国民皆保険制度により、全員が社会保険への加入を義務付けられている。
空白期間が生じる場合においては、その期間や状況によって取り得る選択肢が異なるのだが、詳細は後述しよう。
最終出勤日に保険証を返還できない場合は、後日郵送するなどして確実に返還しよう。
被扶養者分も一緒に返還する
退職に伴い、本人の保険証以外に、被扶養者分も全て返却しなければならない。そのため、扶養家族がいる場合は全員分の保険証を事前に集めておこう。
家族が遠方に住んでいる場合などもあるため早めに取りまとめた方が良いのだが、定期的に病院に通っているなどの理由があれば、不足分のみを郵送で返却しても問題はない。
しかし、期限が切れた保険証を使って病院の診察を受けると、医療費の返還を求められたり、全額を請求されたりすることは覚えておこう。
保険証がない場合・期限切れの保険証を提出した場合の病院への受診に関する疑問も、後半で詳しく解説しているから確認してほしい。
保険証の新規発行は1週間〜3週間ほどかかる
退職すると、現職の担当者から「健康保険資格喪失証明書」を渡される。その証明書を転職先に提出することで、社会保険の手続きを行ってくれるのだ。転職の時期などによるが、保険証の新規発行までには、およそ1週間〜3週間かかると考えておこう。
扶養家族がいる場合、家族分の必要書類も用意しなければならない。これらは入社前に採用担当などから連絡があるはずだから、スムーズに手続きが進められるように準備しておこう。
再就職までの期間が長引いた場合の対応方法
再就職までの期間が長引いた場合、自身の状況次第で対応が異なる。空白期間ができた場合の対応方法は、大きく分けて以下の3つだ。
- 国民健康保険に加入
- 社会保険の任意継続を選択
- 家族から被扶養者認定を受ける
当たり前だが、保険に加入しないという手段は取れないから、いずれかの手続きをとらなければならない。各パターンの特徴を把握し、最適な対応をとろう。
国民健康保険に加入する
国民健康保険への加入は、「退職日の翌日から起算して14日以内」に行うよう規定されている。空白期間が10日などの場合であれば当該期間は敢えて手続きをとらないことも可能だが、無保険の間に事故や病気にかかる可能性はゼロではないからその点は自己判断だ。
国民健康保険に加入する際は、先ほどの健康保険資格喪失証明書と退職したことが分かる書類を用意する必要がある。
国民健康保険料は前年の所得によって変動し、労使折半ではないため高いと感じるかもしれない。後述する社会保険の任意継続と比較して、どちらが適切か検討しよう。
社会保険の任意継続を選択する
会社員や公務員の場合、勤務先の社会保険を最長で2年間継続できる、社会保険の任意継続という制度を選択できる。
- 空白期間がどれくらいの長さになるか
- 期間中の保険料総額はいくらなのか
任意継続に関して押さえておきたいポイントはほかにもいくつかある。
- 退職日よりも前に、継続して2か月以上の被保険者期間がある
- 手続きは退職の翌日から20日以内
- 任意継続を選択すると、国民健康保険への切り替えや家族の扶養に入れない
国民健康保険同様、保険料は全額自己負担になるため、退職時に納付していた額のおよそ2倍になると覚えておこう。
家族から被扶養者認定を受ける
あまりないケースではあるが、家族の不要に入るという選択肢もある。パワーカップルなどで互いが会社に勤めているなどであれば、自身が退職した際にパートナーの社会保険に加入することも視野に入るだろう。
この場合、会社を退職したことが分かる書類を準備し、パートナーが勤める会社の担当に扶養の手続きを進めてもらうことになる。しかし、被扶養者の条件に該当するかはケースバイケースであるため、詳細は日本年金機構のホームページで確認しよう。
切り替えはどのパターンがいいのか
再就職までの期間が長引く際の社会保険に関しては、下記に挙げた自身の状況次第で最適な答えが異なる。
- 独身なのか|家族がいるのか
- 扶養家族家族の有無
- 家族が働いているか
なお、国民健康保険は「扶養」の概念がないため、扶養家族がいる人の場合は、家族全員が国民健康保険に加入する必要があり、保険料はかなり高額になる可能性がある。任意継続は被扶養者の保険料を支払う必要がないため、家族全員の保険料を想定される空白期間で合計して比較検討しよう。
なお、健康保険だけでなく、厚生年金から国民年金に変更する場合も全く同様の考え方をするため、これらは一緒に覚えておこう。会社に勤務していると社会保険は労使折半になるため、社会保険が全額自己負担になると、その保険料の金額に驚くかもしれない。
再就職まで期間が空く場合は、保険料の支払いが滞らないよう、ある程度の備えを用意しておこう。
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転職前後の手続きに関するよくある質問
転職した際における健康保険の手続きに関して、よくある質問と回答をまとめた。
保険証がないと病院に行けないのか
保険証を返却して手元に保険証がない場合でも病院に通うことはできるが、窓口では全額自己負担となる。その後、償還手続きをおこなって会社負担分の返金を受けられるから覚えておこう。
もし急な入院などが決まって高額な医療費負担を迫られた際は、「健康保険被保険者資格証明書」を管轄の年金事務所に発行してもらうのも一つの方法である。ただ、保険適用されるかどうかは病院によって異なるため、事前に問い合わせておく方が間違いないだろう。
保険証を無くしていた場合
人によっては保険証を返却するタイミングになって、保険証を紛失していたことが判明する場合もあるだろう。その際は直ちに会社の担当者に連絡しよう。警察署に紛失届を提出する必要があるかもしれないし、トラブルを回避するために早めの行動が肝心である。
在職期間中の紛失に関してもすべきことは同じだが、保険証は再発行してくれるから慌てずに行動しよう。
健康保険以外の手続きは
転職の際に行う手続きは健康保険のほかに、年金や住民税にも注意しよう。年金は健康保険とほぼ同じと考えてもらって差し支えないが、住民税は退職の時期によって納税額や納税方法が異なる。
退職に伴う住民税の手続きに関して詳しく知りたい方は「転職時に覚えておくべき住民税の基礎基本【滞納に注意】」を確認しよう。
【備えあれば憂いなし】健康保険の手続きは余裕を持って
転職の際は、最終出勤日に扶養者がいる場合は扶養家族分を含めて、保険証を会社に返却しなければならないことは覚えておこう。退職してすぐに次の会社へ入社するなら、健康保険に関して極度に心配しなくて良い。
必要書類を準備して転職先に提出すれば、あとは担当からの連絡を待とう。
転職までに間が空く場合は、自身の状況を総合的に考慮して、最適な社会保険に加入しよう。
保険証が手元になくても病院にかかることはできるから、とくに焦ることはない。本記事の内容を参考に、転職時のシミュレーションをしておこう。
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