※本コラムは2023年7月24日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社unerryは「心地よい未来を、データとつくる。」をミッションに掲げるデータカンパニーです。
月間400億件超の人流(位置情報)ビッグデータをAIで解析することで、リアルな空間を見える化し、マーケティング支援やスマートシティの実現に向けた事業等を展開しています。
代表取締役社長CEOの内山英俊氏に、事業の優位性や中長期の成長戦略を教えていただきました。
株式会社unerryを一言で言うと
リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営するデータカンパニーです。
創業の経緯
私は、90年代にアメリカの大学院でデータ分析の研究を行っていました。研究を通じて、これからはデータの時代になると考え、起業を志しました。
Googleは、インターネット上のデータを集約・整理して価値をつけてサービスを提供し、インターネット上の新しいエコシステムを作ってきた存在であると思います。
一方、私が目指したビジネスは、消費の9割以上を占めるリアルの世界をデータ化し、そこに価値を付け加え、サービスとして提供するというものです。
人流データや位置情報を活用した技術ソリューションとしての先行企業はありましたが、現在のunerryほどの大規模プラットフォームとしてのビジネスモデルで事業を成り立たせている事業者はまだありませんでした。
規模化を実現できれば、間違いなく小売業はじめ、さまざまなビジネスの役に立つものになると考えunerry創業に至りました
ターニングポイント
ターニングポイントは大きく分けて3つあると考えています。
1つ目は2018年にプロダクトマーケットフィットができた瞬間です。
色々な取り組みを行っていくなかで、最終的に今の事業セグメントである分析、広告、One to Oneサービスの3つがプロジェクトとして成功できると確信し、事業展開を行いました。
成長曲線を見ていただいても2018年の6月期から一気に成長を遂げることができ、当社が大きく成長したきっかけの一つであると感じています。
2つ目は新型コロナウイルスへの対応です。
「人流」という言葉が一般的になり、日本中の人々が「今日は街の人通りが多い・少ない」「どこの商店街が混んでいる・混んでない」などの情報を毎日目にしたと思います。
これは、それまでデジタルマーケティング業界ですら限られた人しか知らなかった人流データの活用について、多くの人が認知するきっかけとなったのです。
現実世界をデータ化し、それを可視化する当社の事業展開において、「人流」というカテゴリーが確立されたことは大きなターニングポイントになったと感じています。
そして3つ目は上場のタイミングです。
unerryはおそらく、人流データを主な生業とする会社としては初の上場企業ではないかと思います。
人流や位置情報データを扱う企業が、上場企業として多様な事業を展開できると証明できたことで、当社はもちろん、このカテゴリー自体が多くの企業様から信頼を得ることができ、さらなるマーケット拡大に繋がっているのではないかと考えています。
事業概要と優位性
当社は、リアルな世界をデータ化することで、社会課題の解決に取り組んでいます。
我々は、約120の連携スマートフォンアプリから月間400億件、1.5億IDの屋内外人流ビックデータをリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」に蓄積しています。
そして、取得したデータをAI解析により、お店や街における来訪や回遊、混雑状況として可視化・分析。
さらに広告などのマーケティングサービスや顧客体験価値を高めるためのソリューションを提供しています。
一番の特徴はデータの規模と網羅性であり、これは他社が真似できないポイントです。
当社は人流(スマートフォンの位置情報)を捉える方法として、屋外はGPS衛星、屋内ではBluetoothビーコンと呼ばれるセンサーを用いています。
我々が自社でセンサーを設置するのではなく、プラットフォームとして「Beacon Bank」を作り、そこに既に設置済みのセンサーを登録していただく、という形をとりました。
これにより、プラットフォームの地位を先行して確立することができました。
当社は、この根幹技術の特許を日本、アメリカ、および中国で保有しています。
また、取得したデータをお客様にとって価値にあるものに変換する技術も必要です。
創業以来、これを実現するAI開発への投資を継続してきました。
さらに、非常にプライバシー性の高い人流データを扱うにあたり、上場企業で唯一、ロケーションプライバシー認定制度を取得していることも含め、これらの複合的な要素が我々の現在のポジションにつながっていると考えています。
北米での事業展開について
今後は、北米事業にも力を入れていく予定です。
当社は、人流ビッグデータを活用した分析やダッシュボードサービスの提供等を行うスタートアップ企業であるGroundLevel Insights Inc.(以下、GLI社)への投資を決定いたしました。
当社がプロダクトを提供し、GLI社が北米で販売を行います。
その収益をレベニューシェアしていくことで、莫大な投資を行うのではなく、我々の身の丈に合った形で北米事業を展開していきます。
すでに多数設置されているビーコンを、当社の「Beacon Bank」に登録していただくことで、効率的に活用いただけます。
先ほど申し上げた通り、当社はプラットフォームの根幹技術で特許を取得しておりますので、その観点からもこのビジネスモデルは、GLI社と我々の2社にしか展開できないと思っています。
注目ポイント
2023年2月にフルリニューアルした分析ツール「ショッパーみえーる」は、その直感的な操作性などを高く評価していただき、リリース直後から特に小売企業様を中心に想定以上のスピード感でサービス展開が進んでいます。
「ショッパーみえーる」は、特定の店舗を検索すると、1日の来店人数・性別・年代の割合や、顧客が普段よく行くお店のカテゴリー・居住エリアの分布などを通じて、どのような生活スタイルの顧客が来店しているのかを可視化するものです。
また、日本全国の店舗データがプリセットで導入されているため、検索対象以外(ユーザーの小売企業からすると競合他社)のデータとの比較も可能です。
自社の競合はどの店舗なのか、このエリアでシェアをとっているのはどの店舗なのか等、複数の観点からデータを分析することで、店舗戦略に活用することができます。
そして何より大事なのが、ツールの直感的な操作性です。
高い機能を提供しながらも、ユーザー体験を考慮し、使いやすさに徹底的に拘りました。
実際に、一度当社のツールを使っていただくと、その利便性を実感いただける方は多くいらっしゃいます。
また、そこから対競合施策のニーズにつながるケースもあり、分析ツールは広告配信サービスなどとのクロスセルを実現する基盤にもなっているのです。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社事業にとって、コア市場である日本の小売‧流通におけるリテールDX市場は、1兆円超の規模を誇る巨大なマーケットですが、既存の小売‧流通中心の取り組みから、さらに消費財メーカーに市場を拡大してまいります。
また、そのノウハウを日本およびグローバルのスマートシティ市場でも展開し、都市の可視化・行動変容への応用を目指してまいります。
具体的な戦略は主に3つです。
まずは、既存の小売・流通および外食業界において顧客数×単価×NRRの最大化を目指します。
我々はこれまで直販体制を中心に開拓を進め、2023年6月期通期では78社のリカーリング顧客に支えられています。
一方、今後も引き続き高い成長率を維持しながら顧客数を拡大しようと考えた際、我々が取り組むべきはパートナー企業との連携強化だと認識しています。
すでに三菱食品さんや凸版印刷さんなどとは連携させていただいておりますが、このように圧倒的な規模で当社の対象となる顧客企業にリーチしているパートナーとの関係を強固にすることで、成長を続けてまいります。
2つ目はリテールメディア戦略です。
前提として、当社が提供する分析、広告、One to Oneソリューション事業を強化するほど、小売企業の店頭のデジタル化が進んでいく、という事実があります。
各事業の成長を通じて「小売企業=リテールが、情報発信の媒体となる=メディア化する」、この仕組みを整えるのが当戦略の概要です。
ビジネスモデルとしては、小売企業と当社が一体となってメーカー商品の販売促進をサポートし、その収益をレベニューシェアしていく形をとります。
現状、各メーカーは莫大な広告宣伝費をテレビCMに投下していますが、実際に来店や購買に至ったのかの広告効果を正確に測るのが難しいという課題があります。
当社では小売企業とのパートナーシップにより人流データと購買データを重ね合わせることで、広告効果計測を実現しているため、メーカーのお客様には高いご評価をいただいています。
またすでに、我々が多くの小売企業にリーチできていることも優位性になると認識しています。
そして3つ目は、都市の可視化‧行動変容への応用を通じて日本・グローバルでスマートシティを推進していく戦略です。
現状のビジネスモデルは特定の自治体や官公庁に対する広告事業の受託です。
今年7月にリリースさせていただきました東京都とのスマートシティへの取り組みなど、実績としても積み上がってきている状況です。
ただ、今後、まちづくりの主体は自治体から民間企業に変化していくと認識しています。
三菱商事さんとの資本業務提携が一例なのですが、当社は事業会社との連携を通じたまちづくりへの積極的な投資を進めていく方針です。
新しい街を0から作り出す時、そこにunerryの人流データの基盤を活用することで、5年、10年、そしてそれ以上の長期にわたって我々の仕組みが使われ続けることを目指しています。
具体的な事業規模を現段階でお示しすることは難しいですが、中長期的には当社事業の主要の一角になるレベルに成長させたいと考えています。
投資家の皆様へメッセージ
2022年7月28日に上場し、約1年が経過しました。
当社は人流データを主な生業にする企業として上場した珍しい会社になりますが、この1年間は特に、当社が世の中に対して提供している価値を認めていただけるようになったと感じます。
しかし、我々が目指すのは、当社の仕組みがどの店に行っても、どの街に行っても当たり前に利用されていることです。
“unerry everywhere”というスローガンのもと、日本からアメリカ、東南アジアで推進できるように頑張りますので、応援いただけますと幸いです。
本社所在地:東京都港区虎ノ門1丁目17番1号 虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階
設立: 2015年8月20日
資本金:15,611千円(2023年3月31日現在)
上場市場:東証グロース市場(2022年7月28日上場)
証券コード:5034