※本コラムは2024年2月7日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ニイタカは業務用洗剤・固形燃料を中心に、社会の持続可能性に配慮した高品質の製品・サービスを提供しています。
代表取締役 社長執行役員の野尻大介氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ニイタカを一言で言うと
「世の中の”キレイ”を支える会社」をめざしている業務用洗剤・固形燃料メーカーです。
ニイタカの沿革
創業経緯
当社は1963年に、新高油脂(にいたかゆし)という会社から不採算部門が切り離され、その部門にいた数名で独立するという形で創業しました。
初期は界面活性剤関連の製品を生産・販売していましたが、元々不採算部門から出発した会社であったため信用がなく、原料を割高で調達せざるをえないなど、すぐに自転車操業状態に陥りました。
その結果、10年間で2度の倒産を経験しました。
しかし、当時の社長が「洗剤以外で儲かる製品が欲しい」と、世の中に出回り始めていた旅館向けの固形燃料に着目し、「何とかして同じものを作れ」と指示し、技術者が見事に応えて開発成功したことで、経営は好転していきます。
当時の固形燃料は一斗缶の中で固めただけのもので、使う度に1回分を取り分ける作業が発生し、旅館の現場は困っていました。
当社はこの問題にいち早く対応し、次から次へと使いやすく改良を重ね、数年でトップシェアを獲得し、固形燃料の新たな需要も創出しました。
この成功を受けて、祖業の業務用洗剤事業も軌道に乗るようになり、思い切って量産可能な大規模工場を新設したことでコスト競争力も付き、業績は安定していきました。
業務用洗剤の拡大とJWMの設立
製品開発の特徴は、創業当時から環境配慮を貫いてきたことです。
創業当時は河川の泡公害が社会問題となっており、その解決のため創業翌年の1964年に、生分解性の良い食器洗剤「マイソフト」を開発、販売しました。
1970年代には海外から業務用食器洗浄機(食洗機)が導入されたこともあり、専用洗浄剤の開発に迫られました。
当時、食洗機とともに海外から導入された専用洗浄剤は、日本の排水基準を守ることができない劇物品(アルカリ性が極めて強い)がほとんどでした。
そこで当社は1976年に劇物に該当しない非劇物洗浄剤を開発しました。
固形燃料ユーザーの観光旅館を訪問すると、旅館は近くの河川に食洗機の排水を流すことが多く、基準を守れずに困っていたのです。
「非劇物の洗浄剤がありますよ」と提案すると「それはありがたい」と、観光旅館から当社洗浄剤の採用が広がっていきました。
また、海外から導入された影響で、食洗機の点検・メンテナンスを洗剤メーカーが行うという商習慣が定着していました。
そこで、メンテナンスを行う業者を組織し、全国164カ所の拠点を一気に整備して、1993年には「日本自洗機メンテナンス協会(JWM)」を設立しました。
アフターサービスを充実させたことで、洗剤の売上もどんどん伸びていきました。
ニイタカの事業の概要と特徴
概要
主力はケミカル事業で、売上の約94%を占めており、主に外食産業、ホテル旅館、スーパーマーケット、食品工場などが主な顧客です。
残りの約6%はヘルスケア事業で、こちらは2023年3月にM&Aした株式会社バイオバンクの売上となっています。
事業における優位性
製造から販売まで一貫して提供可能な独立系企業
当社は製造から販売まで一貫して手掛ける独立系の会社ですので、市場ニーズに迅速に対応し、急激な社会の変化にも柔軟に対応できます。
例えば、コロナ禍ではアルコール除菌剤の需要が急増し、原料のアルコール不足でどこも十分に供給できなくなりました。
そこで当社はアルコールを使わないウイルス除去剤を短期間で開発し、すぐさま量産に踏み切り、飲食店の他、小売店・学校・行政・レジャー施設など多くの現場でお役に立つことができました。
このような意思決定の早さが、大きな強みとなっています。
また、生産拠点が東日本と西日本にあるため、大災害発生時に製品供給をストップさせないというのも強みです。
全国各地の販売網と営業力
当社は全国で地域密着の販売店とつながっていて、強力な販売網を確立しています。
そして、販売店任せではなく、一緒になって顧客ニーズを直接聞き出し、課題解決に向けた提案を行うことを徹底しています。
販売店も「ニイタカならお客さんの困りごとを解決してくれる」という安心感で新規顧客を紹介してくれるので、さらに売上増になるという好循環を生み出しています。
高い研究開発力やアフターサービス
技術面では、ウイルス除去剤の開発において、大学との共同研究による先端技術習得や、自前でウイルス試験をするための設備導入などを進め、差別化に成功しています。
研究開発の成果はきちんと特許にして、有効特許数124件(2024年2月現在)で他社参入を防いでいます。
また、JWMから出発したメンテナンスサービスを、現在は衛生検査サービス、清掃サービスまで拡張し、アフターサービスも充実しています。
新規子会社バイオバンク社の成長に期待
現在、業務用洗剤分野での当社シェアは約16%と見ていますが、この分野ではいずれ成長の限界が来ると予測しています。
そこで、新たな成長の柱となる新規事業が必要と判断し、バイオバンク社のM&Aに至りました。
同社製品の酵素サプリメントは、ライバル品と比べて品質がよく、マーケティング活動の強化で大きく売上を伸ばせると見ています。
そのために、現在、当社から執行役員を派遣し、成長戦略を構築しているところです。
また、現時点でケミカル事業とヘルスケア事業のシナジー効果は少ないのですが、今後販売網の拡張を期待しています。
実はバイオバンク社は、北米、欧州、東南アジアなど海外事業拠点での売上比率が高く、現地代理店を確立しています。
このルートを通じて、ケミカル事業の製品を販売する可能性を探っています。
ニイタカの中長期の成長イメージとそのための施策
既存事業の拡大
既存事業では、性能がトップクラスと評価される製品群を構築し、顧客に寄り添った提案で売上拡大に成功してきました。
これを持続させるため、新製品開発に力を入れており、高付加価値製品を市場に投入することで、売上と利益の両方を向上させる戦略を取っています。
近年はウイルス対策製品「ノロスター」シリーズの拡充に注力しています。
飲食店や給食業界では、ウイルスによる大規模な食中毒が発生しており、その対策に関係者はとても苦労しています。
ウイルス除去効果を高めたアルコール製剤「ノロスター」は、食の安全・安心の確保に役立つと好評で、採用が増えています。
さらに研究開発を進め、ウイルス対策のできる拭き掃除用洗剤、トイレ用洗浄剤、手洗い石けん液と品種を増やしています。
新領域への展開
新しい事業領域として、デンタル分野と農業分野への展開に注力しています。
これらの分野では、当社の技術開発力が真価を発揮すると見ています。
例えばデンタル分野では、歯科医院内で発生する菌やウイルスを含む汚れの除去が大きな課題となっています。
そこで除菌洗浄の技術を活かした新たな洗浄剤の開発を進めています。
また農業分野では、従来の洗剤では落としきれない特殊な汚れに対して、試作品を開発し、試験的に販売しています。
これらの新領域への展開は始まったばかりですが、国内で成功させた後は、海外展開も視野に入れています。
注目していただきたいポイント
くり返しになりますが、フードビジネス業界では、食中毒予防や衛生管理の重要性が年々高まっています。
特に飲食業界などでは、ひとたび食中毒を起こすと営業停止となり評判を落とすことになるので、対策強化のため信頼性の高い洗浄剤を求める傾向が強まっています。
こうした環境下で、当社は売上を確実に伸ばしています。
「世の中の”キレイ”を支える会社」をめざす当社の実力に注目していただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
当社グループは、今後10年で売上を倍増させて、国際的な成長もめざしています。
当社の固形燃料や業務用洗剤は、飲食店やホテル、旅館など、皆様の身近なところで使用されていますので、「こんなところにニイタカの製品があるな」と思っていただければありがたいです。
また、新型コロナウイルスのパンデミックでは、飲食店・旅館の全面休業で、洗剤・固形燃料の需要が激減するという危機を迎えましたが、取引先の協力も得て、アルコール消毒剤の増産という形で乗り越えることができました。
非常時でも取引先の多大な協力が得られたのは、当社が経営理念「四者共栄」に基づいた行動を積み重ねていたからだと考えます。
規模は大きくありませんが、一貫して誠実に対応してきた伝統と社風に関心を持っていただき、当社の成長に期待していただければと存じます。
本社所在地:〒532-8560 大阪市淀川区新高1-8-10
設立:1963年4月24日
資本金:585,190,000円(2024年2月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場 (2003年4月24日上場)
証券コード:4465