- 銀行業界の現状は良いのか・悪いのか
- 銀行業界は今後どうなっていくのか
銀行は以前まで安定している業界であったが、近年は長く続く低金利によって厳しい局面を迎えている。業界の現状を正しく把握した上で、今後の銀行業界がどのように成長していくのかを見極めていくことが重要だ。
この記事では、銀行業界の現状や大手銀行の売上高推移、業界の今後について解説していく。
大手銀行の売上高推移
銀行業界の現状を把握するためには、大手銀行の業績がどのように推移しているかを知ることも重要となる。
ここでは、3大メガバンクの「三井住友銀行」「三菱UFJ銀行」「みずほ銀行」に加え、地方銀行で大きな規模を誇る「横浜銀行」の直近5年間の売上高推移を解説していく。
三井住友銀行
三井住友銀行(三井住友フィナンシャルグループ)の直近5年間の売上高推移は、以下の表の通りである。
決算期 | 売上高(単位:百万円) |
---|---|
2018年3月期 | 5,764,172 |
2019年3月期 | 5,735,312 |
2020年3月期 | 4,591,873 |
2021年3月期 | 3,902,307 |
2022年3月期 | 4,111,127 |
直近5年間で見ると、売上高が下落傾向にあることが分かる。
しかし、2022年はホールセールと海外ビジネスの部門が好調で、前年よりも売上を伸ばした。
三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行(三菱UFJフィナンシャルグループ)の直近5年間の売上高推移は、以下の表の通りである。
決算期 | 売上高(単位:百万円) |
---|---|
2018年3月期 | 6,068,061 |
2019年3月期 | 6,697,402 |
2020年3月期 | 7,299,078 |
2021年3月期 | 6,025,336 |
2022年3月期 | 6,075,887 |
三菱UFJフィナンシャルグループは三井住友フィナンシャルグループのように右肩下がりではないものの、2020年3月期の売上高からは下落傾向にある。
そんな中でも2022年3月期はグローバル部門の成長などがあり、前年比で増収となった。
みずほ銀行
みずほ銀行(みずほフィナンシャルグループ)の直近5年間の売上高推移は、以下の表の通りである。
決算期 | 売上高(単位:百万円) |
---|---|
2018年3月期 | 3,561,125 |
2019年3月期 | 3,925,649 |
2020年3月期 | 3,986,701 |
2021年3月期 | 3,218,095 |
2022年3月期 | 3,963,091 |
みずほフィナンシャルグループは、3大メガバンクグループのなかで見ると売上高があまり低下していない。
直近の2022年3月期決算では当期純利益も前年から伸ばし、増収増益という結果であった。
横浜銀行
横浜銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ)の直近5年間の売上高推移は、以下の表の通りである。
決算期 | 売上高(単位:百万円) |
---|---|
2018年3月期 | 327,600 |
2019年3月期 | 306,494 |
2020年3月期 | 306,236 |
2021年3月期 | 291,729 |
2022年3月期 | 286,979 |
横浜銀行を傘下に置くコンコルディア・フィナンシャルグループは、売上高の推移を見ると下落傾向にあることが分かる。
しかし、2022年3月期の当期純利益は前期比で112.7%の増益となっており、メガバンクではない地方銀行でも収益を伸ばしているという結果だった。
銀行業界の現状
業界の現状としては、以下のような特徴が見られる。
- 低金利によって収益が減少
- ネット銀行が台頭
- メガバンクは海外事業に注力
それぞれの特徴について確認していこう。
低金利によって収益が減少
銀行の基本的なビジネスモデルは、「顧客から預かったお金に利ざやを上乗せして融資することで収益を上げる」という仕組みである。
しかし、低金利政策によって貸出金利が低下し、従来のビジネスモデルで収益を上げることが困難になっているのが現状だ。
特に近年は、経済を刺激するために「マイナス金利政策」が導入され、日銀に資金を預けておくことも厳しい状況になっている。積極的に融資に回していく必要があるものの、利ざやで稼ぐビジネスモデルも限界に近いという難しい状況に置かれている。
ネット銀行が台頭
銀行業界のなかで力を伸ばしているのがネット銀行である。
ネット銀行は店舗を持たない分、取引手数料が安く、コンビニなどから気軽に利用できる点が人気を集めている。
さらに近年はキャッシュレス化がどんどん進んでおり、ネット銀行はより拡大していくと考えられる。対面型のサービスを提供するメガバンクや地方銀行は、新たな付加価値を見出していくことが重要だ。
メガバンクは海外事業に注力
国内の低金利の影響で収益を上げることが難しくなっている今、メガバンクは海外事業に力を入れ始めている。
成長性が高い海外の市場に参入し、新たな収益源の獲得を目指しているのだ。
例えば三菱UFJフィナンシャルグループは、海外戦略としてタイやベトナム、インドネシアなどの銀行に出資をしている。
海外収益比率も全体の約半分を占めており、今後の成長ドライバーとして期待が持てる事業分野だ。海外での収益基盤を固めるべく動き出しているというのが、メガバンクの現状だ。
今後の銀行業界はどうなっていくか
銀行業界の現状の特徴を理解したところで、今後の業界についても考えていこう。
これからの銀行業界を見ていく上では、以下の3つのポイントが重要になる。
- デジタル化の推進
- 地方銀行の再編
- 新たなビジネスモデルを模索
今後の銀行業界を生き抜いていくためにも、これらのポイントをチェックしておこう。
デジタル化の推進
今後の銀行業界にとって大きな課題となるのが「デジタル化」である。お金自体のデジタル化が進むなかで、銀行の支店やATMの必要性がなくなってしまう可能性があるためだ。
実際、中国では「デジタル人民元」の開発が進められており、法定通貨がデジタル化されるのも遠い話ではない。
日本でも通貨のデジタル化が進み、支店やATMが縮小し始めたときに適応する必要がある。デジタル化の流れを掴み、対策法を練っていくことが銀行にとって今後の課題となる。
地方銀行の再編
今後の銀行業界の流れとして「地銀再編」もチェックしておくべきだろう。地銀再編とは、地方銀行の合併や経営統合のことである。
長引く低金利によって地方銀行の業績が悪化し、収益の確保が難しくなっている現状がある。より経営基盤を強固にして収益性を高め、ノウハウやスキルを共有することが地銀再編の目的だ。
実際、青森県に拠点を置く「青森銀行」と「みちのく銀行」は経営統合・合併を発表している。
今後も各地の地方銀行が合併・経営統合していく流れは続いていくだろう。
新たなビジネスモデルを模索
長く続く低金利やネット銀行の台頭、デジタル化の推進などを踏まえ、各銀行は新たなビジネスモデルの獲得が重要となる。従来の預金・融資中心のビジネスモデルでは、今後の銀行業界を生き残っていくことが難しいだろう。
例えば、銀行の子会社で人材紹介・派遣の業界に参入し、高度なスキルを持つ人材のマッチングサービスなどを展開している事例がある。
また、M&A仲介のビジネスに乗り出しているケースもあり、各銀行が生き残る道を模索している。今後は、新たに稼げるビジネスモデルを構築し、拡大していった銀行が残っていくだろう。時代の変化と顧客のニーズをしっかりと見極め、収益基盤を固めていくことが重要だ。
銀行業界は変化し続ける
銀行業界は、低金利による収益の低下やネット銀行の台頭によって変化している現状がある。今後もデジタル化の推進や地方銀行の再編など、業界を取り巻く環境は変化し続けていくだろう。
時代の流れをしっかりと見極め、自分のキャリアに関しても見つめ直していこう。