- 60代から入れる個人年金保険が知りたい
- 個人年金保険の選び方やメリットについて理解したい
- 個人年金保険を選ぶ際の注意点について知りたい
高齢化社会と生活の長期化に伴い、公的年金だけでは経済的に安定した老後生活を送ることが難しくなってきている。
そこで注目されているのが個人年金保険である。
人生100年時代、各種の社会保障制度に不安を感じる60代の方で個人年金保険への加入を考えている方はいないだろうか。
数多くある保険の中から、この保険が自分にとって最良だと決めて選択するのは難しいものである。
本記事では、個人年金保険制度の概要や60代の方が選ぶ際の注意点、60代の方におすすめの商品について解説する。
加入するべき個人年金保険がわからず、悩んでいる方には参考にしてほしい。
60代が知るべき個人年金保険の基本
まずは、個人年金保険の基本的な仕組みや特徴について確認していく。
個人年金保険と一口に言っても様々な種類があり、それぞれに特徴があるため、違いを理解しておくことが重要だ。
個人年金保険の基本的な仕組み
個人年金保険は、将来必要となる資金に対して、公的年金への補完を目的として加入する保険だ。
契約時に定めた年齢から、一定期間または生涯にわたって一定額の年金が受け取れるため、貯蓄型の保険に分類できる。
保険料は、月払いや年払いで支払うだけでなく、まとめて一括で支払うことも可能だ。
公的年金だけでは老後の生活が不安な自営業者の方や、退職から年金支給までの期間の生活費を確保したいという方に人気がある。
被保険者が年金給付前に亡くなった場合、すでに支払っている保険料相当額の死亡保険金が遺族に支払われる。
年金の受給期間中に亡くなった場合は、年金保険の種類によって年金が支払われるか受給がストップするか異なる。
一般的な生命保険と比べて死亡保険金の金額は大きくなりにくいが、その分を将来に向けて積み立てていくことで年金原資を確保するという仕組みだ。
将来に向けて資金を計画的に貯められるという魅力がある商品となっている。
また、一時払いを利用できる商品は、退職金や相続で受け取った遺産などまとまった資金の運用先としても選ばれる。
生命保険協会の調査によると、2021年度に個人年金保険を契約した年代別構成費は下記の通りだ。
年代 | 構成比 |
20歳未満 | 5.5% |
20歳代 | 21.5% |
30歳代 | 21.4% |
40歳代 | 20.9% |
50歳代 | 15.9% |
60歳以上 | 14.9% |
最も比率が高いのは30歳代および20歳代となっているが、60歳代の加入者も構成比率もそれなりに高く、20歳未満を除いてまんべんなく加入されている保険といえる。
個人年金保険の種類と特徴
年金保険は、年金の受取期間によって、以下の3種類に分類できる。
種類 | 概要 | 被保険者の死亡時 |
終身年金 | 生きている限り年金が給付される | 年金の給付は停止するため、加入後すぐに亡くなると元本割れしやすい |
有期年金 | 生きている限り契約時に設定した受取期間中は年金が給付される | 年金の給付は停止するため、加入後すぐに亡くなると元本割れしやすい |
確定年金 | 生死にかかわらず一定期間は年金が給付される | 遺族に残りの年金が支払われる |
終身年金や有期年金は、本来被保険者が死亡すると年金給付がストップするが、そのような場合にも年金が給付される保証期間がついた派生商品も存在する。
保証期間をつけておくことで、被保険者が死亡した際も、遺族がしっかりと最低限のお金を受け取れるようになっている。
さらに、保険料の積み立て方法の違いによっても分類可能だ。
契約時に設定した利率によって積み立て運用を行うものを「定額個人年金保険」と呼ぶ。
将来の年金原資が確保されやすいため、途中解約をしない限りは基本的に元本割れの可能性はほぼない。
一方、価格が変動する金融商品で保険料を運用するものを「変額個人年金保険」という。
運用の状況によって将来給付される年金の金額が変動するのが特徴だ。
運用実績が良ければ将来受け取れる年金額が大きくなる可能性があるが、運用実績が悪ければ将来の年金額がそれまでの払込保険料の総額を下回る場合もある。
個人年金保険のメリット・デメリット
続いて、そもそも個人年金保険にどのようなメリット・デメリットがあるか考えていこう。
主なメリットとしては、以下の3つが挙げられる。
- 老後に向けてコツコツ資産を形成しやすい
- 所得税や住民税を減税できる場合がある
- 貯金や投資が苦手でも取り組みやすい
特に、確定年金タイプでは、返戻率が100%を上回りやすいという魅力がある。
貯蓄性が高い保険なので、老後の資金のために少しでもお金を増やしたいという方に適しているだろう。
また、個人年金保険は、生命保険料控除制度を活用して所得税や住民税を減らせる場合がある。
「個人年金保険料税制適格」をつけた契約であれば、払込保険料の一定額を課税所得から控除できる。
個人年金保険料税制特約をつけるためには、いくつかの要件を満たす必要があるため、あらかじめ保険会社に確認しておこう。
さらに、年金保険は、毎月決まった金額の保険料を支払えば、あとは保険会社が勝手に運用してくれるという仕組みとなっている。
そのため、貯蓄が苦手でつい使っている人も、強制的にお金を貯めやすい。
また、株や投資信託などの投資が苦手という方も、気軽に取り組みやすいだろう。
一方、個人年金保険のデメリットや注意点としては下記のようなものがある。
- 定額年金はインフレに不利
- 途中解約すると元本割れしやすい
インフレとは、市場全体の物価が上がることで、相対的にお金の価値が下がってしまうことだ。
契約時に運用利率を固定してしまう定額タイプの場合は、インフレが起きると受け取る年金額が目減りしてしまうことになる。
さらに、年金保険は一般的に10年〜20年などの長期契約になりやすい。
思わぬ支出によって途中解約をせざるを得なくなった場合、払い込んだ保険料よりも戻ってくる解約返戻金の方が少なくなりやすい点に注意しよう。
個人年金保険に加入する際は、急な支出にも対応できるよう、余裕を持って保険料金額を設定しておくのが望ましい。
ただし、60代で加入する場合は、加入期間が短くなりやすい分、若い時期に加入するよりもインフレリスクや元本割れリスクは低くなる。
60代が個人年金保険を選ぶ際の注意点
60代の方が年金保険の契約を行う際は、注意したいポイントがいくつかある。
特に、以下の点には気をつけよう。
- 保険料の支払い方法や運用通貨
- 給付開始年齢や給付期間
- 受け取り方の種類
保険料の支払い方法や運用通貨
保険料の支払い方法は、月払いや年払いなど分割で支払う方法と、まとめて一括で支払う方法の2種類に分けられる。
一般的には、月払いよりも年払いや一括払いの方が、支払い保険料の総額が少ない傾向がある。
退職金や相続で受け取った遺産、住宅の売却資金など、まとまったお金を運用したいという場合は、一括払いで支払える商品の方が適している。
特に、60代以降で保険に加入する場合は、これから少しずつ貯蓄したいという方よりも、老後の生活のためにお金を確保しながら増やしたいというニーズの方が高いだろう。
また、商品によっては円建てだけでなく外貨建てで運用できるものもある。
外貨建ての場合は、円建てに比べて高い利回りでの運用が期待できるというメリットがある。積極的に資産を増やしたいという方にはおすすめだ。
ただし、外貨建て保険は為替のリスクが伴う点に注意しよう。
契約時から円安に進んだ場合は、為替差益を受け取れるが、逆に円高に進んだ場合は、為替差損が生じる場合がある。
また、日本円から保険料を支払う場合は、円から外貨に交換する際に為替手数料が必要となる。
為替リスクや為替手数料を加味した上で、運用通貨を決めるようにしよう。
給付開始年齢や給付期間
60代で年金保険に入る場合は、年金の給付開始年齢や給付期間もチェックしよう。
すぐに使う必要のないお金であれば、10年後などある程度長期間で運用する保険商品にも適しているが、生活費として使いながら運用を行いたいお金であれば、なるべく早く給付が始まる商品が良いだろう。
また、個人年金が給付される期間については、決まった期間年金が給付される「確定年金」、生存している限り一定期間給付される「有期年金」、生存している限りずっと給付される「終身年金」の3つに分類できる。
加入する目的によって、どのタイプの年金を選ぶべきかが異なる。
例えば、退職してから公的年金を受給するまでの一定期間の生活費に備える目的であれば、確定年金や有期年金が適している。
老後の比較的元気な時期に趣味にお金を費やすために加入する場合も、給付期間が決まった確定年金や有期年金が良いだろう。
一方、公的年金に足りない生活費を補いたいという目的であれば、一生涯年金が続く終身年金が向いている。
さらに、自分に万が一のことがあった場合に遺族にお金を残したい場合は、有期年金や終身年金タイプの保険に保証期間をつけることも可能だ。
また、夫婦の両方が死亡するまで年金を受け取れる「夫婦年金」というタイプの年金保険もある。残された者の生活をしっかりと守るためには、こうした保険も視野に入れるべきだろう。
ただし、保証期間をつけたり、なるべく長く年金を受け取れるような設計にしたりするとその分保険料は高くなり、最終的な利回りは低くなる点に注意したい。
受け取り方の種類
個人年金保険は、年金形式ではなく一括で受け取ることも可能だ。
年金形式で受け取るか一括形式で受け取るかによって、税金のかかり方も変わってくる。
契約者本人が年金形式で受け取る場合、「雑所得」が課税される。
雑所得は、「総収入金額―必要経費」で算出した金額となり、年金保険の必要経費は「年間の受取額×払込保険料総額割/年金の総支給見込額」で算出できる。
個人年金保険を一括で受け取る場合は「一時所得」に該当する。
総収入金額は、一括で受け取る総額のことで、必要経費は払い込んだ保険料の総額を指す。
一時所得の場合は、特別控除額50万円が設けられているため、受け取った金額とそれまでに払い込んだ保険料の差が50万円以上ない場合は課税されない。
年金保険の受け取り方を選ぶ際は、税金のかかり方についても考えてみると良いだろう。
60代におすすめの個人年金保険とは
60代の方におすすめの個人年金保険をいくつか紹介する。
どんな保険が適しているかは、その人の年齢や加入目的、家族構成などによっても異なる。
各年代ごとにおすすめの個人年金保険については以下の記事でまとめたので、比較してみるとより理解を深めることができるはずだ。
60代におすすめの個人年金保険①JA共済 ライフロード
販売会社 | JA共済 |
商品名 | 予定利率変動型年金共済(ライフロード) |
契約可能年齢 | 18歳〜85歳 |
保険料の支払い方法 | 月払い・年払い |
運用通貨 | 円建て |
給付可能年齢 | 50歳〜90歳(加入年齢および掛金払込終了年齢によって異なる) |
給付期間 | 5年・10年・15年の確定年金・保証期間付終身年金 |
受取方法 | 年金、一括、一部一括などから選択 |
特約 | 指定代理請求特約、税制適格特約 |
JA共済の「ライフロード」は、予定利率変動型年金共済という商品だ。
当初5年間は契約時の予定利率が適用され、6年目以降は1年ごとに予定利率が見直される。
最低保証利率との差の分だけ年金原資が上乗せされるため、インフレにも対応しやすいというメリットがある。
一度増加した年金額は減らないため、一般的な変額個人年金と比べても年金額の増減を心配する必要がない。
所定の条件を満たして、税制適格特約をつければ、個人年金保険料控除も受けられるため、税制上の優遇を受けたいという方にもおすすめだ。
加入年齢や払込終了年齢、年金支払い開始年齢などを柔軟に設定しやすいため、60代以降の方も加入しやすい。
60代におすすめの個人年金保険②日本生命 みらいのカタチ 年金保険
販売会社 | 日本生命 |
商品名 | みらいのカタチ 年金保険 |
契約可能年齢 | 7歳〜65歳 |
保険料の支払い方法 | 月払い・年払い |
運用通貨 | 円建て |
給付期間 | 5年・10年・15年確定年金 |
受取方法 | 年金、一括支払い |
特約 | 保険料払込免除特約、個人年金保険料税制適格特約 |
日本生命の「みらいのカタチ年金保険」は、契約後でも年金開始時期や受取期間を変更しやすい保険だ。
受取期間を長くしたい場合や、受け取り始める時期を先に伸ばしたい時にも柔軟に対応できるというメリットがある。
保険料払込免除特約を付加すると、所定の3大疾病等によって所定の事由に該当した場合は、それ以後の保険料の払込が免除される。
将来に向けて着実に資金を貯めながら、死亡や3大疾病にも備えたいという方に適した保険と言える。
個人年金保険料税制適格特約をつければ、一般生命保険料控除とは別に所得控除の適用が受けられる。
60代におすすめの個人年金保険③住友生命 たのしみワンダフル
販売会社 | 住友生命 |
商品名 | たのしみワンダフル |
契約可能年齢 | 0歳〜75歳 |
保険料の支払い方法 | 月払い・年払い(年1回・年2回) |
運用通貨 | 円建て |
給付期間 | 5年・10年・15年確定年金 |
受取方法 | 年金、一括 |
特約 | 保険契約者代理特約、被保険者代理特約 |
住友生命の個人年金保険「たのしみワンダフル」は、0歳〜75歳まで加入可能な商品だ。
保険料払込期間満了後は、払込保険料の総額を上回る年金を受け取れるため、将来に向けて着実に資金を増やしていける。
加えて、保険料払込期間が終わってから年金受け取り開始まで据え置き期間を設けることで、年金額を増やすことも可能だ。
保険料が一定額を超えると、「たのしみランク」と呼ばれる保険料割引制度が適用され、受け取り率がアップする。
告知や医師の審査不要で申し込めるため、60代以降でも申し込みやすい商品だ。
60代におすすめの個人年金保険を理解してライフスタイルにあったものを選ぼう
本記事では、個人年金保険制度の概要や60代の方が選ぶ際の注意点、60代の方におすすめの商品について解説した。
これらを理解し、自分のライフスタイルや目指す生活資金に見合った保険を選ぶようにしよう。
しかし、60代の方が適切な個人年金保険を選ぶには、商品ごとの収益性や高齢者向けの特約制度への理解が必要となるため、一人だけでは難しいこともあるだろう。
そんな時は保険のプロに相談することも検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、的確に必要な保険を選択することができる。
ただ、保険のプロは数多く存在し、自分にとって最適な担当なのかを見極めることもまた難しい。
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