- 最低限必要な範囲内でがん保険に加入したい
- 保険料を抑えながらがんのリスクに備えたい
- がん保険を選ぶ際に重視するべきポイントを理解したい
日本人の死因第一位はがんであり、誰もがリスクと向き合う必要があると言える。
しかし、一口にがん保険といっても様々なプランがあり、その中から加入する保険を選ぶことは簡単なことではない。
また、すでに医療保険などその他の保険を利用している人にとっては、がん保険で必要な保障内容について悩むこともあるだろう。
そこで本記事では、「がん保険で最低限備えるべき保障内容」について詳しく解説する。
また、保険料を抑える方法やがん保険選びのポイントについても述べる。
がん保険への加入を検討している方や、既に加入している保険を見直したいと考えている方には、ぜひ参考にしてほしい。
がん保険の必要性
がん保険は、がんに特化した保障を得られる商品である一方、がん以外の病気やケガは保障されない。
限られた保障内容しか得られない分、「がん保険は不要」と考える方もいるだろう。
ここでは、がんの罹患率データやがん治療にかかる費用の目安、がん保険の保障内容をもとに加入する必要性を解説していく。
ぜひ参考にして、自分自身ががん保険に加入するべきか判断してほしい。
がんの罹患率データ
以下の表は、国立がん研究センターがん情報サービスの「がん統計」で発表された、全部位のがんの年齢階級別罹患率(2019年)を一部抜粋してまとめたものだ。
年齢階級 | 罹患率(人口10万対) |
20〜24歳 | 25.4 |
25〜29歳 | 43.0 |
30〜34歳 | 78.3 |
35〜39歳 | 133.3 |
40〜44歳 | 223.8 |
45〜49歳 | 337.6 |
50〜54歳 | 467.8 |
55〜59歳 | 682.5 |
60〜64歳 | 1022.9 |
65〜69歳 | 1499.9 |
70〜74歳 | 1952.8 |
75〜79歳 | 2327.5 |
80〜84歳 | 2540.9 |
85〜89歳 | 2576.7 |
90〜94歳 | 2514.8 |
95〜99歳 | 2353.7 |
100歳以上 | 1985.5 |
上記の表を見て分かる通り、がんは加齢とともに罹患率が上昇していく傾向が見られる。
裏を返せば若い世代の罹患率は比較的低く、20代・30代は40代以降に比べると手厚い保障の必要性が低いと言えるだろう。
一方、40代を過ぎたあたりから罹患のリスクは高まっていくため、保障を備えておく必要性も高まる。
特に、40代・50代は子どもの教育資金を準備したり、住宅ローンの支払いが続いていたりする方も多く、万が一がんにかかったときの経済的なリスクが大きい。
がんに罹患するリスクという観点からは、40代以降はがん保険の必要性が高いと言えるだろう。
がん治療にかかる費用の目安
若い世代のがん罹患率が低いとは言え、まったくリスクがないわけではない。
そして20代・30代は収入面での余裕がないケースも多く、がんに罹患したときの費用を貯蓄で支払えない可能性がある。
貯蓄状況を踏まえた上でがんの治療にかかる費用を支払うことが厳しい場合は、若い世代でもがん保険に備えておく必要があるだろう。
以下の表は、厚生労働省による「令和3年度医療給付実態調査」の結果をもとに、がん種類別の1入院あたりの平均医療費を算出してまとめたものだ。
がんの種類 | 1入院あたりの平均医療費 |
胃がん | 66,762円 |
結腸がん | 67,379円 |
直腸がん | 78,429円 |
肝がん | 65,789円 |
肺がん | 73,062円 |
乳がん | 60,285円 |
子宮がん | 64,619円 |
悪性リンパ腫 | 107,234円 |
白血病 | 176,568円 |
その他の悪性新生物 | 67,646円 |
上記の費用は公的医療保険が適用された上で、自己負担した医療費の平均である。
さらに入院後の通院治療などでも医療費がかかるため、数万円の医療費がかかる覚悟をしておく必要があるだろう。
また、入院期間中の差額ベッド代や食事代、先進医療による治療を選択した場合の技術料などは公的医療保険の対象外であり、すべて自分で負担しなければならない。
特に先進医療の技術料は数十万円〜数百万円となるケースもあり、貯蓄だけで支払うことは容易ではない。
上記のように、がんの治療には高額な費用がかかる可能性が高い。
若い世代であってもがん保険の必要性は十分にあると言えるだろう。
がん保険の保障内容
がんの罹患率や治療にかかる費用の目安を確認してきたが、がん保険ではどういった保障が得られるのだろうか。
がん保険の保障内容を確認し、加入する必要性をより深く理解しよう。
保険会社・商品によって保障内容は異なるが、一般的にがん保険では以下のような給付金が支給される。
給付金の種類 | 保障内容 |
がん診断一時金 | がんと診断されたときにまとまった金額が支給される。 保険期間中1回のみ支給されるタイプと、支給の回数に制限がないタイプがある。 |
がん入院給付金 | がん治療のために入院した場合に入院日数に応じて支給される。 給付日数が無制限となっているケースが多く、入院が長期化するリスクもカバーできる。 |
がん手術給付金 | がんの治療のために手術を受けた場合に支給される。 手術回数に制限がないケースが多い。 |
がん通院給付金 | がんの治療のために通院した場合に通院日数に応じて支給される。 入院を伴う通院だけが保障されるタイプや通院のみの治療も保障に含まれるタイプがある。 |
先進医療給付金 | がんの治療のために先進医療に該当する治療を受けた場合に支給される。 技術料に相当する額を受け取れる。 |
がんと診断された時点でまとまった給付金を受け取れたり、入院や手術、通院などの治療内容に応じて給付金を受け取れたりと、幅広くリスクをカバーできることが特徴だ。
先ほど紹介したがん治療にかかる費用を貯蓄だけで支払うことが厳しい場合は、がんに対して総合的な保障を得られるがん保険の活用を検討してみよう。
がん保険で備えるべき最低限の保障とは
がん保険の必要性が高いと分かっていても、ほかに医療保険や死亡保険などに加入していると、保険料の支払いが厳しいというケースは多い。
「がん保険は最低限の保障だけ備えたい」と考えている方も多いのではないだろうか。
ここでは、がん保険で最低限備えておきたい保障内容や具体的な保険商品の事例、保険料を抑えるためのポイントについて解説していく。
最低限押さえておきたいがん保険の保障
がん保険で最低限押さえておきたい保障は「がん診断一時金」である。
がん診断一時金とは、がんと診断された時点でまとまった給付金が支払われる保障のことだ。
50万円・100万円など、契約時に定めた金額をまとめて受け取れる。
がん診断一時金の使い道は指定されないため、治療費や入院中の諸費用だけでなく、治療期間中に減少する収入の補填や家族の生活費などに充てられる。
まとまったお金で自由な使い道を検討できるため、最低限の保障を準備したい場合に向いているだろう。
一方、以前までがん保険の主流だった「がん入院給付金」は、最低限の保障だけを押さえたい場合はあまり必要と言えない。
近年は入院日数が減少傾向にあり、手厚い入院保障の必要性が低下してきているためだ。
入院日数や治療内容に左右されず、がんと診断された時点でまとまった給付金を受け取れるがん診断一時金を準備する方が良いだろう。
基本的にはがん診断一時金で最低限の保障は準備できるが、女性の場合は女性特有のがんにも備えておくと安心だ。
「女性向け特約」などを活用し、リスクに対する備えを準備しておこう。
女性は乳がんや子宮がん、卵巣がんなどの女性特有のがんに罹患する可能性がある。
男性に比べてリスクが高めであるため、最低限の保障にプラスして女性向けの保障を準備しておくと良いだろう。
【がん保険】保障内容・保険料の具体例
最低限の保障を備えた場合、保険料は具体的にどの程度になるのだろうか。
がん診断一時金を主な保障としているなないろ生命の「なないろがん一時金保険」を例に、具体的な保険料を確認してみよう。
なないろ生命の公式サイトで提供されている保険料シミュレーションを利用し、以下の条件における月額の保険料を試算した。
- 計算日:2023年11月17日
- 被保険者生年月日:1993年1月1日(30歳)
- 性別:男性
- がんと診断されたときの一時金:50万円
- がんと診断されたときの保険料払込免除特則:適用する
- 保険料払込期間:終身
- 保険期間:終身
- 保険料払込方法:月払
上記のほかにオプションなどは契約せず、最低限の保障内容だけを準備したプランで設定すると月額保険料は1,000円となった。
この商品は終身タイプのがん保険であるため、月々1,000円の保険料で一生涯にわたるがん保障を得られることになる。
最低限の保障に絞って契約すれば、そこまで保険料の負担が大きくなる心配はないと言えるだろう。
がん保険の保険料を抑えるためのポイント
がん保険の保険料を抑えるためのポイントとしては、主に以下の2点が挙げられる。
- 定期型のがん保険を選ぶ
- 保険料払込期間を長く設定する
がん保険には、一生涯にわたる保障を得られる「終身型」と、一定期間のみ保障される「定期型」の2種類がある。
目先の保険料をとにかく安く抑えたいのであれば、定期型のがん保険の方が割安となるためおすすめだ。
ただし定期型の商品は満期後に更新を行うと、契約時の年齢に合わせて保険料が計算されるため保険料が高くなってしまう。
長期的な目で見ると終身型のがん保険を選んだ方が保険料が安くなる場合もある点に注意が必要だ。
一定期間のみ保障を手厚くしたい場合などは、定期型の商品を選ぶと良いだろう。
また、終身型の商品を選ぶ際、保険料の払込期間は「短期払い」と「終身払い」から選ぶことになる。
短期払いは「60歳まで」などと期間を決めて保険料を支払う方法、終身払いは一生涯保険料を負担する方法だ。
月々の保険料は終身払いの方が安く済むため、毎月の負担を抑えたい場合は終身払いを選択しよう。
ただし一生涯保険料を負担する分、トータルの保険料は終身払いの方が多くなる可能性もあるため注意が必要だ。
保障期間・保険料払込期間の違いによって、月々の保険料やトータルでの負担に大きな違いが生まれる。
今後のライフプランも踏まえつつ、保障期間や保険料払込期間を検討していこう。
「最低限の保障でも備えておきたい」がん保険選びのポイント
具体的な保険商品を選ぶ際、以下の3つのポイントを押さえておくと自分に合う保険を見つけやすい。
- 診断一時金の支払い条件を確認する
- ほかの保険の保障内容を把握する
- 近年の医療事情に合った保障を備える
それぞれのポイントを確認し、自分に合う最適ながん保険を探し出そう。
がん保険の診断一時金の支払い条件を確認する
前述の通り、最低限のがん保障を備えたい場合はがん診断一時金を受け取れる商品がおすすめだ。
もしがん診断一時金による保障を備えるのであれば、支払い条件をあらかじめ確認しておこう。
特に、上皮内新生物の保障は保険会社によって異なるため注意が必要だ。
上皮内新生物とは、腫瘍が細胞の基底膜を超えずに上皮内にとどまっている状態のことを指す。
通常のがんが基底膜を超えて周囲の臓器などに転移する性質を持つのに対し、上皮内新生物は転移するリスクは低い。
再発のリスクも限りなく低いと言われており、手術で摘出すれば治療が長引く可能性はほとんどないと言えるだろう。
そのため、保険会社によっては上皮内新生物を保障の対象から外しているケースがある。
しかし手術を行う以上は費用がかかるため、保障対象になっている商品を選ぶ方が安心だ。
上皮内新生物を保障に含めている商品の中でも「通常のがんと同額を保障」「半額保障」など、各社で対応が異なっている。
希望の保障を準備するためにも、診断一時金の給付条件についてはよく確認しておこう。
ほかの保険の保障内容を把握する
がん保険の最低限の保障として「がん診断一時金」を紹介したが、人によって「最低限」の基準は異なる。
「本当にがん診断一時金だけで十分か」という点を検討した上で、がん保険を選ぶことが重要だ。
例えば、すでに民間の医療保険を契約している人とそうでない人では、カバーしているリスクに違いがある。
医療保険に加入済みの場合は入院・手術の際に給付金を受け取れるため、過剰ながん保障は不要だろう。
一方、医療保険に加入していない場合、がん診断一時金だけでは保障が不足するリスクがある。
「新規で医療保険を契約する」「がん保険で診断一時金以外の保障を追加する」など、保障を充実させておく必要性が高い。
また、すでに医療保険で「がん特約」をオプションとして契約している場合、新規でがん保険に加入しなくても最低限の保障を準備できている可能性がある。
むしろがん保険に加入すると過剰な保障となるリスクもあり、保険料が無駄になってしまうかもしれない。
このように、ほかの保険商品の加入状況によって備えるべきがん保障の内容も変わってくる。
契約中の商品の保険証券などを確認し、不足している保障内容を確認しておこう。
がん保険は近年の医療事情に合った保障を備えるべき
加入済みの医療保険の保障内容を見直し、「がん診断一時金だけでは不足する」と判断した場合、別の保障内容も検討する必要がある。
その際、近年の医療事情に合う保障内容を備えるように意識しよう。
例えば、近年はがんの治療のための入院日数は減少傾向にある。
厚生労働省の「患者調査」によると、平成8年時点でがんの平均入院日数が35.8日だったのに対し、令和2年には18.2日まで減少している。
つまり入院給付金のみが保障されるがん保険を契約しても、十分な保障を得られない可能性があるということだ。
「通院給付」や「治療給付」が充実しているタイプの方が、近年のがん治療の実態には合っている。
このようにがん治療を取り巻く環境に合わせた保障内容の選択が重要となる。
加入時点だけでなく、契約後も定期的に医療事情の変化に合った保障内容になっているかチェックしておくことが大切だ。
がん保険は最低限「がん診断一時金」の保障を準備しておこう
本記事では、「がん保険で最低限備えるべき保障内容」について詳しく解説した。
長期で加入することが多いがん保険は、診断給付金など最低限の保障を備えながら、定期的に保障内容を見直すことが有効な手段とも言える。
ただ、がん保険には様々なプランがあるため、一人ひとりのライフステージに合わせ、自分に必要な保障内容を備えた保険に入ることが大切である。
今回紹介した保険選びのポイントを参考に、あなたに合ったがん保険を見つけるようにしてほしい。
このように、何より重要なことは、各保険の特徴を理解し、また自分自身の生活環境や経済状況、健康状態を考慮して加入する保険を判断することだ。
そのため、どの保険に入るべきかの判断に少しでも疑問や不安があれば、保険のプロに相談することも積極的に検討してほしい。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、あなたに合った保険を見つけることができるはずだ。
また、保険のプロは数多く存在し、その中から自分にとって最適な担当を見つけるのは難しいだろう。
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