- どのくらいの貯金額があれば医療保険に入らなくても良いのか知りたい
- まとまった貯金があるので、医療保険に加入する必要性がわからない
- 自分に合った医療保険を選ぶ時の注意点が知りたい
少子高齢化が進む日本では、老後の生活に備え、医療保険への加入を検討する人が増えてきている。
しかしながら、まとまった貯金があるので自分には医療保険は必要ない、と考えている方も中にはいるだろう。
果たして本当にそうだろうか。本記事では、入院時にかかる費用などを踏まえ、「貯金額がいくらあれば医療保険が不要と言えるのか」について検証する。
結論から言えば、多くの場合、医療保険に加入する必要があると言える。
そこで、自分に合った医療保険の選び方についても解説を行う。
まとまった貯金があって、医療保険に加入すべきか悩んでいるという人は、ぜひ参考にしてほしい。
入院時にかかる費用とは
まずは入院時にかかる費用を把握しておこう。
日本は公的医療保険制度が充実しているため、実際の医療費よりも必要な金額は小さいケースもある。
がんで入院した場合の費用についても計算しているので、ぜひ参考にしてほしい。
高額療養費制度や傷病手当金の存在
入院にかかる費用を抑えられる制度として、高額療養費制度や傷病手当金が挙げられる。
月に5万円以上の医療費を自己負担する場合、高額療養費制度を利用できるケースがある。
高額療養費制度とは病院や薬局で支払った金額(入院時の食事代や差額ベッド代は含まない)が1ヵ月で上限を超えた場合に、上回った金額分を支給してもらえる制度だ。
1ヵ月あたりの医療費の上限額は、年齢や所得によって違う。
69歳以下の場合は、以下の表で上限額を確認できる。
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
70歳以上の場合は以下の計算方法だ。
適用区分 | 外来(個人ごと) | ひと月の上限額(世帯ごと) | |
現役並み | 年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% | |
年収約770万円~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% | ||
年収約370万円~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% | ||
一般 | 年収156万~約370万円 | 18,000円 | 57,600円 |
住民税非課税等 | Ⅱ 住民税非課税世帯 | 8,000円 | 24,600円 |
Ⅰ 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) | 15,000円 |
たとえば、50歳年収700万円のサラリーマンが、100万円の医療費が必要ながんになったケース。
80,100円+(医療費-267,000)×1%の計算式を適用することになる。(医療費=負担額ではない)
80,100円+(1,000,000-267,000)×1%=87,430円が上限だ。
本来であれば30万円が必要になるが、約9万円に抑えることができる。
傷病手当金は病気やけがで会社を休んで十分な給料を受け取れない場合に支給されるお金だ。
会社を3日連続して休むと4日目以降の休んだ日に対して傷病手当金が支給される。1日あたりの支給金額は以下のとおりだ。
つまり、元気に働いていた時の給料の約66%を受け取れる仕組みだ。
ただ、傷病手当金はサラリーマンが加入する健康保険にしかない制度である点に注意が必要である。
自営業やフリーランスの人は、病気やケガで働けなくなっても傷病手当金を受け取れない。
公的医療保険制度が適用されない場合とは
保障内容の手厚い公的医療保険制度だが、すべてのシチュエーションで適用されるわけではない。
公的医療保険制度が適用されないのは以下のとおりだ。
- 入院時の食事代
- 入院したことによってかかる雑費や日用品代
- 差額ベッド代
- 保険適用外の治療費や手術代
- 高度先進医療費
- 家族の見舞いの交通費
- 業務上の病気やケガ(労災保険で扱う)
- 通勤途上で起きた事故(労災保険で扱う)
- 日常生活や疲労による肩こり・腰痛等の整骨院、針・きゅう、マッサージ等の施術
- 予防注射
- 正常なお産
- 美容整形手術
- 健康診断、結核診断、人間ドックなど
- その他、医師が治療を必要と認めないもの
がんで入院した場合にどれくらいの費用がかかるか
がんで入院した場合にどのくらいのお金が必要になるか計算する前に、どんな費用がかかるか整理しておこう。
公的医療保険制度の対象内 | 制度の対象外 |
検査費 診察費 入院費 薬代 | 病院までの交通費 差額ベッド代 食費 日用品 |
がんで入院した場合の医療費は以下のとおりだ。
公的医療保険の種類 | 1件当たり診療費 |
協会(一般) | 747,908円 |
組合健保 | 756,397円 |
共済組合 | 746,403円 |
国民健康保険計 | 731,908円 |
後期高齢者医療制度 | 660,369円 |
がんになって入院すると、1回につき約75万円必要になる。
3割負担したとしても、多くの人が高額療養費制度の上限を突破するだろう。
また、同調査によると、がんになった人は約10日入院している。
つまり、差額ベッド代や食事代も10日分必要になるわけだ。
入院時の食事代は1食につき460円と決まっているため、3食を10日間で13,800円かかる。
厚生労働省によると、1日あたりの平均差額ベッド代は6,613円だった。
10日間入院すると66,130円が必要である。
高額療養費制度の上限額+約8万円かかる計算だ。つまり、1回の入院では約20万円が必要になる。
貯金がある人が医療保険に加入する必要性
「民間の医療保険は不要」という主張でよく見られるのが、「貯金で対応できる」というものだ。
とはいえ、どのくらいの貯金があれば大丈夫なのかわからない方も多いだろう。
ここでは、どのくらいの貯金があれば医療保険に加入しなくて良いかや医療保険に加入すべき人の特徴について解説している。
公的医療保険と民間の医療保険の違いも紹介しているので、ぜひチェックしてほしい。
どのくらいの貯金があれば医療保険に加入しなくて良いか
厚生労働省の「生涯医療費(令和2年度)」によると、生涯にかかる医療費は2,695万円だった。
そのうち59%が65歳以上に必要になっており、定年退職後に多額の医療費がかかっていることがわかるだろう。
ただ、自己負担分ではないため、実際に支払う金額は3割以下だ。
70歳を過ぎると医療費の自己負担割合は引き下げられるため、多くの人が3割を下回るだろう。
高額療養費制度を活用すると、さらに支払う金額を抑えられる。
ただ、がんにかかって先進医療を受けると貯金だけでは対応できないケースもある。
先進医療の費用は以下のとおりだ。
先端医療技術名 | 先進医療に係る費用 |
陽子線治療 限局性固形がん [第2項先進医療技術] | 2,941,000円 (患者負担額) |
術後のカペシタビン内服投与及びオキサリプラチン静脈内投与の併用療法 小腸腺がん(ステージがI期、II期又はIII期であって、肉眼による観察及び病理学的見地から完全に切除されたと判断されるものに限る。) [第3項先進医療技術] | 1,747,184円 (実質患者負担額29,600円) |
陽子線治療 根治切除が可能な肝細胞がん(初発のものであり、単独で発生したものであって、その長径が三センチメートルを超え、かつ、十二センチメートル未満のものに限る。) [第3項先進医療技術] | 1,600,000円 (患者負担額) |
プローブ型共焦点レーザー顕微内視鏡による胃上皮性病変の診断 胃上皮性病変 [第3項先進医療技術] | 280,848円 (実質患者負担額13,515円) |
周術期デュルバルマブ静脈内投与療法 肺尖部胸壁浸潤がん(化学放射線療法後のものであって、同側肺門リンパ節・縦隔リンパ節転移、同一肺葉内・同側の異なる肺葉内の肺内転移及び遠隔転移のないものに限る。) [第3項先進医療技術] | 22,099,200円 (実質患者負担額79,200円) |
マルチプレックス遺伝子パネル検査 進行再発固形がん(非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、膵がん又は胆道がんに限る。) [第3項先進医療技術] | 594,810円 (実質患者負担額570,443円) |
シスプラチン静脈内投与及び強度変調陽子線治療の併用療法 頭頸部扁平上皮がん(喉頭がん、中咽頭がん又は下咽頭がんであって、ステージがII期(p16陽性中咽頭がんに限る。)、III期又はIV期のものに限る。) [第3項先進医療技術] | 2,145,000円 (患者負担額) |
ラメルテオン経口投与療法悪性腫瘍(六十五歳以上の患者に係るものに限る。) [第3項先進医療技術] | 13回投与した場合 1,861円(実質患者負担額1,121円) 9回投与した場合 1,516円(実質患者負担額776円) |
ネシツムマブ静脈内投与療法切除が不可能なEGFR遺伝子増幅陽性固形がん(食道がん、胃がん、小腸がん、尿路上皮がん又は乳がんに限る。) [第3項先進医療技術] | 2,985,472円 (実質患者負担額53,520円) |
術前のゲムシタビン静脈内投与及びナブ―パクリタキセル静脈内投与の併用療法切除が可能な膵臓がん(七十歳以上八十歳未満の患者に係るものに限る。) [第3項先進医療技術] | 718,092円 (実質患者負担額2,400円) |
毎月約9万円を支払いながら先進医療分の費用を支払うとなると、かなりの出費になる。
入院がともなうと食事代や差額ベッド代も必要になるため、2,000万円以上の貯金があっても不安になるケースもあるだろう。
公的医療保険と民間の医療保険の違い
公的医療保険は国民全員が加入する保険なのに対して、民間の医療保険は加入するかどうか選択できる。
また、保障内容を自分で選べるかどうかも公的医療保険と民間医療保険との違いだ。
健康保険や国民健康保険などの公的医療保険は、保障される範囲が決まっている。
しかし、民間の医療保険では、がんに備えたり、入院費用をカバーしたりと選択が可能だ。
医療保険に加入すべき人の特徴
民間の医療保険に加入すべき人の特徴は以下のとおりだ。
- 貯蓄だけで自己負担分を払うのが難しい人
- 年金で生活していて新たな労働収入がない人
- 自営業やフリーランスなどの社会保障制度が手薄な人
- 教育資金や老後資金など使う目的がある貯蓄が今後必要になる人
- 先進医療を受けたい人
- 結婚や出産によって貯蓄が減っている人
貯蓄がなかったり、今後の生活に不安がある人は万が一の場合に備えて医療保険に加入しておくべきだろう。
自分に合った医療保険の選び方
民間の医療保険にはさまざまな商品があるため、どのプランに入るのかの選択は非常に重要である。選び方に失敗してしまうと、万が一の場合に備えられない可能性があるからだ。
自分に合った保険選びは以下のポイントを意識してほしい。
- 保険料が高額すぎないか考える
- 必要な保障内容を確認する
- 保険期間が十分か検討する
それぞれ解説しよう。
保険料が高額すぎないか考える
まずは保険料が高額すぎないか考えよう。
万が一の場合に備えるための保険料の負担が重くて家計が苦しくなっては、元も子もないからだ。
万が一の場合に備えて保障内容を手厚くしたくなる気持ちもわかるが、充実させると保険料が高くなる。
保障内容と保険料のバランスを考えて保険を選ぼう。
必要な保障内容を確認する
「がんになったら先進医療を受けたい」「病気で入院した場合の収入を保障してほしい」など、保険に加入する目的は人によって異なるだろう。
加入目的に合わせて必要な保障内容を確認する必要がある。
また、子どもの誕生やマイホーム購入、子どもの独立など、シチュエーションによっても必要な保障内容は違う。
自分の状況と今後のライフプランを考慮して、どんな保障が必要なのか検討しよう。
保険期間が十分か検討する
最後に保険期間が十分か検討しよう。保険には生涯にわたって保障される終身保険のほかに、10年や20年のように期間の定められている保険がある。
保険期間が短いと医療費が必要になりやすい65歳以上をカバーできない恐れもあるだろう。
ただ、子どもの独立によって生活費が少なくなると貯蓄しやすくなり、保険が不要になるケースもある。
ライフプランから保険期間が十分かチェックしておくと良い。
なお、こちらの記事では年代別シチュエーションで医療保険の活用事例を紹介しているので、気になる方はぜひチェックしてみてほしい。
まとめ
本記事では、入院時にかかる費用などを踏まえ、「貯金額がいくらあれば医療保険が不要と言えるのか」について検証した。
生涯にかかる医療費は約2300万円と言われており、おおよそ2000万円程度の貯金があれば、医療保険に加入する必要はないとも考えられる。
ただ、医療費以外にも必要な費用を考えると、2000万円以上の貯金があっても、医療保険を利用する価値はあると言える。
医療保険は保険料や保障内容が保険会社毎に異なっている。
本記事の内容だけで自分に合う保険を選ぶのは難しいと感じたら、保険のプロに相談することも検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、あなたに必要な医療保険を選択することができるはずだ。
また、保険のプロは数多く存在し、その中から自分にとって最適な担当なのかを見定めるのも難しいだろう。
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