- 先進医療について理解したい
- 先進医療特約のメリット・デメリットを理解したい
- 先進医療特約の重複加入はできるのか知りたい
先進医療特約とは、医療保険に追加できる特約の一種であり、高度な医療技術に関連する保障として重大な病気や怪我などのリスクからあなたを守る重要な役割を果たすも。
しかしながら、その制度について正確に理解している、という方は少ないのではないだろうか。
また、複数の保険に加入している場合、先進医療特約に重複して加入できるのか、についても気になるポイントだろう。
そこでこの記事では、先進医療の基本とその役割、そして重複加入について詳しく解説する。
本記事をぜひあなたの保険選びに活用していただきたい。
先進医療とは何か?
そもそも、「先進医療」が何を指す言葉か正しく理解できているだろうか。
先進医療とは、厚生労働省の認可を受けた高度な医療技術の総称だ。
健康保険が適用されず、治療費は全額自己負担になるのが最大の特徴だ。
また、治療を受けられる医療機関には限りがあり、どこでも受けられるものではない点にも注意が必要である。
先進医療の定義
先進医療は、平成16年12月に厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣らとの間による基本合意に基づき、「国民の選択肢を広げ、利便性を向上する」という観点から、保険診療との併用を認めることとなっている。
具体的には、『厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養』として、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされている。
実際の取り扱いとしては、有効性及び安全性を確保する観点から、医療技術ごとに一定の施設基準を設け、施設基準をクリアしている場合は、届出することで保険診療との併用ができることになっている。
先進医療の具体例
令和5年9月1日時点において、厚生労働省が先進医療と定めている医療技術は合計81種類存在する。
具体例は以下のとおりだ。
- 陽子線治療
- 重粒子線治療
- 家族性アルツハイマー病の遺伝子診断
- 糖鎖ナノテクノロジーを用いた高感度ウイルス検査(インフルエンザに対する治療技術)
- 子宮内膜刺激術
- ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術
- 経皮的乳がんラジオ波焼灼療法
さまざまな先進医療技術が開発されているが、その多くはガンに対するものである。
その次に多いのが不妊症に関する技術だ。
対象となる具体的な症状は割愛するが、医療技術は今もなお進歩しており、現在は先進医療扱いとなっているものが保険適用されたり、現時点で認証されていない技術が先進医療扱いされたりすることもあるだろう。
先進医療を受ける際の注意点
先進医療に要した治療費は全て自己負担になることは、最大の注意点である。
また、ある傷病に対する治療に対して、先進医療と保険診療との併用も可能であり、通常の診察や検査といった公的医療保険に該当する治療は保険が適用される。
そのため、総医療費が100万円かかり、うち40万円が先進医療にともなう費用だった場合は、以下の金額を負担する。
- 先進医療にかかる40万円は全額自己負担
- 各種健康保険適用分60万円のうち、3割に該当する18万円を一部負担
つまり、このケースでは合計58万円を実費負担する必要があるのだ。
なお、健康保険適用部分の18万円に関しては、高額療養費制度が適用される場合もあるため、保険適用分の実質的な自己負担は8万円程度に収まることが多いだろう。
当然だが、実際にどれほどの費用になるかは先進医療の内容次第で大きく異なる。
また、医療機関には限りがあるため、治療を受けるために遠方の病院に入院・通院する必要があるケースも想定されるだろう。
先進医療特約のメリット・デメリット
先進医療特約をつけることで、本来なら治療費の全額を負担しなければならないところを免除できるため、「病気に対する万が一を手厚く保障するためのお守り」というイメージで問題ないだろう。
ここでは、先進医療特約に関する基本的な内容とメリット・デメリット、必要性を解説しよう。
先進医療特約の基本
先進医療特約は、医療保険に追加できるオプション(特約)の一つだ。医療保険のほか、がん保険にも付加することができる。
先進医療の治療費は100万円単位でかかることも珍しくないため、その際の経済的なリスクに備えることが基本的な考え方となる。
なお、先進医療特約により保険金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要がある。
- 治療を受けた時点で、当該治療が先進医療に認定されている
- 契約している商品の保障範囲に当該先進医療が該当する
上記からもわかるように、認定されている技術だったとしても、保険商品次第では特約の範囲外のケースもある。
商品によって保障される範囲が異なるため、医療保険やがん保険に加入して特約を追加する場合は、どの治療が適用されるか、適用されない主な治療内容が何かをしっかりと確認しよう。
先進医療特約のメリットとデメリット
先進医療特約に加入するメリット・デメリットは下表のとおりだ。
メリット | デメリット |
費用を気にすることなく治療を受けられる 毎月数百円の費用で先進医療に対する安心を得られる | 治療内容によっては特約の範囲外通常の保険料に上乗せして支払い続ける必要がある |
そもそも、保険の本来的な目的は「万が一に対する備え」であり、「安心感を買うため」のものだ。
基本的な考え方に立ち返れば、先進医療特約に加入することで、費用を気にせず治療に専念できる上、毎月数百円の費用で大きな安心を手に入れられるなら安いと感じられるだろう。
ただし、商品によって保障範囲が異なるため、提案された先進医療が適用の対象外である可能性もゼロではない。
また、先進医療を受けることになる可能性自体が極めて稀であることを踏まえると、そのわずかな可能性に保険料を上乗せすることの意味があるか考えてしまうのは無理もないだろう。
先進医療特約をつける際に確認すべきこと
先進医療特約をつける際に確認しておきたいことがいくつかある。なかでも、以下の4つは必ず確認しておこう。
- 適用された場合の上限額
- 特約の適用範囲
- 特約は終身または更新型のどちらか
- 支払いまでの流れはどのようになっているか
実際に先進医療を受けた際に保障される上限額は必ず確認してほしい。
最新の先進医療特約なら、上限を1,000〜2,000万円とする場合が多いため、よほどのことがない限り問題ないだろう。
なお、上限額は「通算」で計上されることも覚えておこう。
次に、繰り返しになるが、特約の範囲も慎重に確認しておくべきだ。
先進医療特約は、医療保険とがん保険に用意されているが、適用範囲はそれぞれで異なる。
医療保険のほうがカバーされる範囲は広く、がん保険はがんの治療に特化している場合が多い。
この点は次の章で詳しく解説しよう。
ほかにも、終身型か更新型のいずれであるかも確認してほしい。
終身型であれば保障は一生涯続くが、更新型の場合は定期的に見直しが入る。
更新のたびに保険料が値上がりする場合も多いため、特約の保障がどのように継続されるかも調べておこう。
最後に、治療後の支払い・請求プロセスについても確認しておくべきだ。
特約が適用されたとしても、先に医療費(実費)を支払った上で保険金を受け取る場合、一時的ではあるが医療費を用意しなければならない。
この点、保険会社が医療費(保険金)を医療機関に直接支払ってくれるタイプのほうが、支払い時も安心できるだろう。
先進医療特約は必要か
先進医療特約をつける分、毎月の保険料は値上がりする。
この点、「特約は本当に必要なのか」と悩む人も多いのではないだろうか。
保険の本来の目的が「万が一に対する備え」であることは、先ほども解説した通りだ。
その「万が一」をどの程度の確率で捉えるか次第で、特約の必要性は判断が分かれるだろう。
厚生労働省がまとめた令和3年7月から令和4年6月までに行われた実績報告によると、先進医療を受けた人の総数は26,556人だった。
同期間における先進医療費用の総額は約66.7億円で、患者総数で割ると約25万円と計算できる。
なお、上記期間において陽子線治療が行われた件数は1,293件で、先進医療総額は約34.8億円だった。
これを1件あたりで計算すると約269万円になり、がんの治療に対しては高額な治療費がかかることがわかるだろう。
年間でこのような数の先進医療が行われており、平均費用や高額になった場合の治療額を踏まえ、もしもの時に現金を用意できるのであれば特約はなくてもよいだろう。
一方、子育て世代で毎月の生活もギリギリといった家庭であれば、もしもへの備えは柔軟に考えておいたほうが安心だ。
先進医療特約は重複加入できるのか
人によっては「特約を重複して加入できるか知りたい」と悩む人もいるだろう。
結論は、特約を重複加入できるケースとできないケースに分かれる。
そして、重複して加入したからといって複数の保険会社から給付金を受けとれるとは限らない。
以下、重複加入ができるケースとできないケースを詳しく解説しよう。
重複加入ができるケース
先進医療特約の重複加入が可能なケースは、複数社で医療保険またはがん保険に加入し、それぞれに対して特約をつけるというものだ。
もちろん、A社で医療保険に加入し、B社でがん保険に加入するといったケースでも重複加入は可能である。
なお、異なる保険会社で特約に加入した場合、保険金の請求に対する対応はそれぞれ異なる。
そして、各社に保険金を請求しても、二重で保険金を受け取れないのが一般的だ。
保険を契約する際に確認する約款には、重複加入の場合にどのように取り扱うか定められている。
約款に「重複加入した場合は保険金額を両社で按分する」などと記載があれば、保険金はダブルで受け取れない。
重複加入を検討する場合は、約款を読み込み、どのような取り扱いになるか事前に理解しておくことが重要である。
重複加入ができないケース
重複加入できないのは、同じ保険会社の医療保険とがん保険に加入し、それぞれに特約をつけたい場合だ。
この場合は、医療保険またはがん保険のいずれかの特約を選ぶ必要がある。
保険の種類が異なるとしても、保険会社が同一の場合は重複加入できないことは覚えておこう。
同じ保険会社の医療保険とがん保険に加入し、どちらにつけるか判断に迷う場合は、「どの範囲を適用させておきたいか」の優先順位をつけるとよいだろう。
「父方の家系にがんを罹患する人が多い」などの場合は、がんに対する保障が手厚いほうが安心だ。
手広い保障を用意したいのであれば、医療保険のほうがマッチするだろう。
先進医療特約の賢い備え方とは
先進医療特約は、多くの場合が数百円程度で加入できるため、一般的にそれほど大きな負担ではないだろう。
実際、各社の提供する保険商品の主契約の内容とセットで考えることで、特約の効果を最大化できる側面もある。
そのため、自身が不安に感じることを明確にして、優先的に備えたい点を順番にカバーできる保険を選ぶことが最も重要だ。
その上で、先進医療特約をつけることで、より大きな安心感につながるのであれば、特約は積極的につけるべきだろう。
必ずしも特約をつけなければいけないわけでもないため、判断に迷う際は、客観的な立場からアドバイスを受けて、万が一に対する備えをしておくのがおすすめだ。
必ずしも現在加入している医療またはがん保険の特約を検討するのがベストとは限らず、そもそも医療保険の見直しをしたほうがよいケースもあるだろう。
特に、家系的に遺伝する可能性がある場合は、早めに加入しておいて損はない。
さまざまなパターンを含めて加入の是非を検討するなら、ファイナンシャルプランナーに相談すべきだ。
各家庭の状況に合わせて適切な保険を見直せる機会になるため、特約部分に限らず、広い視野で検討するとよいだろう。
まとめ
本記事では、先進医療の基本から先進医療特約のメリット・デメリット、重複加入ができるかできないかについて解説した。
先進医療特約についての理解を深め、また適切な選択をすることは容易でない。
そんなあなたにおすすめするのが、保険のプロに相談をし、あなた自身のニーズに最も適した保険を見つけることだ。
しかし、保険のプロは多いため、自分に合った保険のプロを選ぶことは難しい。
マッチングサイト「生命保険ナビ」はそのようなプロを見つける手助けをしてくれるサービスだ。
ぜひ「生命保険ナビ」を活用して、保険先進医療の選択で後悔のない未来を手に入れよう。