- 基礎控除と生命保険が相続税対策になるかを知りたい
- 相続税と生命保険の関係がよくわからない
- 生命保険の選び方について知りたい
たびたび起こる税制改革の中、税制対策として、生命保険を選択する上での心配事は増えるばかりではないだろうか。
しかし、相続税と基礎控除について適切に理解し、生命保険も自身のシチュエーションに合ったものを選ぶことができれば、十分な税制対策になり得る。
本記事では、相続税と生命保険、その基礎控除の関係性を解説し、個々の状況に最適な対策を見つける手助けをする。
また最適な保険の選び方についても解説しているため、この記事を参考にして、あなたに合った保険を見つけてほしい。
相続税と基礎控除の仕組み
〈相続税〉と聞くと、「難しく感じてしまう…」と思う人も多いだろう。
ここでは、相続税について理解できるよう、丁寧に解説していくので、1つずつ学んでいこう。
相続税の計算手順
ここでは、相続税の計算手順を紹介していくので、どのように計算するのかぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。
計算手順は以下のとおりである。
相続する財産を計算→相続税の総額を計算(基礎控除などを引く)→総額を法定相続分に割り、速算表を使い計算
- 被相続人(亡くなった人)が遺したプラスの財産を計算
- 被相続人(亡くなった人)が遺したマイナスの財産を計算
- プラスの財産からマイナスの財産を引く
- 相続税の基礎控除を計算し、3で計算したプラス財産から基礎控除を引く
- 相続税の対象になる金額が出る
- 法定相続分通りに分け、金額を出す
- 各人が受け取った金額(6の金額)×税率ー控除額(下記の速算表を参照)
- 税額を合計して相続税の総額を出す
表の下から、1つずつ丁寧に解説していくので実際に計算をしてみるとイメージが湧きやすいので、もしよければ試してほしい。
速算素表(相続税)
6で求めた金額を選ぶ | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
被相続人(亡くなった人)が遺したプラスの財産を計算
プラス資産とは、相続できる財産のことを指す。例えば、以下のような例が挙げられる。
- 相続財産:預貯金・株式・建物・土地など
- みなし相続財産:生命保険の保険金・死亡退職金(死後3年以内に支給額が確定したもの)
- 相続時精算課税制度に選択した財産
- 生前(3年以内)に贈与された財産
相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度とは、被相続人(亡くなった人)から亡くなる前に贈与したものを「相続のタイミングで相続税を払う設定をする」と考えると分かりやすいだろう。相続時精算課税制度を利用する理由は、贈与税よりも相続税の方が多くの金額を控除できるためである。
被相続人(亡くなった人)が遺したマイナスの財産を計算
マイナス財産とは、プラスの財産から引いてもいい財産のことを指す。
生命保険金と死亡退職金の非課税枠
プラスの財産の中でも代表的なものは、生命保険金と死亡退職金の非課税枠だ。
下記「生命保険の非課税枠とは」にて詳細を載せているので、ぜひ確認してほしい。
弔慰金(ちょういきん)
弔慰金とは、企業などが被相続人(亡くなった人)の死をいたみ、「悲しい死ですが、乗り越えてくださいね」という気持ちを込めたお金のことを指す。
弔慰金の金額は、被相続人(亡くなった人)が亡くなった理由で控除額が変わるため、以下の表を参考にしてほしい。
死亡原因 | 控除額 |
仕事が原因 | 死亡時の給与×36ヶ月(3年分) |
仕事以外が原因 | 死亡時の給与×6ヶ月分(半年) |
墓地・仏壇・仏具
被相続人(亡くなった人)のために必要になるもの(遺族に利益にならない)のため、マイナス財産になる。
また、「その他相続税が控除されるケースとは」にて、他にマイナス財産の対象になるものを解説しているので、どのようなものが控除にできるか確認してほしい。
基礎控除の内容とその計算方法
上記で紹介した通り、相続税には基礎控除がある。
基礎控除とは、課税対象金額から引いてもいい金額と考えると分かりやすいだろう。
もし、プラスの財産が基礎控除以下だった場合は、相続税はかからない。基礎控除は、法定相続人の人数で変わるため、被相続人(亡くなった人)の環境によって異なる。
相続税の基礎控除を求める計算式は、以下の通りである。
相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人の人数
参考例では、実際に数字を当てはめて計算しているので、参考にしてほしい。
(参考例)
民法上、相続できる人のことを指す。配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹が法定相続人になる。また、胎児・普通養子・特別養子・非嫡出子(認知された場合)も対象。
※普通養子:実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までが対象(相続税法上)
また、さまざまな理由からすべての法定相続人が相続するとは限らない。相続をしない選択を〈相続放棄〉と言う。
「じゃあ、もし誰かが相続放棄をしたら、人数分減ってしまうの?」と思うかもしれないが、相続を放棄した人数も数えられるので、安心してほしい。
その他相続税が控除されるケースとは
相続税が控除されるケースは、非課税制度以外にもある。
どのようなものが控除の対象になるのかを解説するので、1つずつ確認していこう。
債務
債務とは、借金・クレジットカード残高・未払い分の税金や医療費などのことを指す。「払わないといけない金額は控除になる」と考えれば、分かりやすいだろう。
葬儀費用
被相続人(亡くなった人)を見送るための葬儀の費用は、控除の対象になる。しかし、ここで注意してほしいポイントがある。
それは、香典返しの費用や、法要費用などは対象外になるのだ。そのため、「どれが控除になるのか」をしっかり確認して計算しよう。
生命保険を活用した相続税対策
生命保険を活用して相続税対策を行うために、必要な情報をお届けする。
「相続の時に少しでも家族にお金を遺したい」と考えている人は、ぜひ参考にしてほしい。
生命保険に相続税がかかるのはどんな時?
被相続人(亡くなった人)が契約していた生命保険の保険金の受取人が子どもの場合に、受け取った保険金に対して相続税がかかる。下記の表を見てほしい。
生命保険の被保険者=被相続人(亡くなった人) | 契約者(保険料を支払う人) | 受取人 | 税金の種類 |
被相続人(亡くなった人) | 子ども | 相続税 | |
配偶者 | 子ども | 贈与税 | |
子ども | 子ども | 一時所得(所得税) |
このように、「契約者がだれか」によって、税金の種類が変わるのだ。
上記で紹介した通り、生命保険の保険金は、被相続人(亡くなった人)の財産とみなされる。
生命保険の非課税枠とは
生命保険の非課税枠とは、一定金額をプラス資産から引くことができるマイナス資産のことで、計算式は以下のようになる。
計算式
法定相続人の人数によって、非課税枠の金額は変わるため、実際に自分の家族でシミュレーションしておくとイメージしやすいだろう。
もし、「たくさんのお金を遺してあげたい」と考えていたとしても、非課税枠を超えてしまうと相続税の対象になるので注意が必要だ。
相続税対策に生命保険を使うメリット・デメリット
相続税対策に生命保険を使うメリット・デメリットについて解説していくので、ぜひ確認してほしい。
デメリットも把握しておけば、うまく活用できるので、将来のために覚えておくといいだろう。
- 上記で解説した通り、非課税枠を利用できる
- 相続税を納付する際にお金に困らないですむ(原則、現金一括払いのため)
- 相続放棄を選んでも、保険金を受け取れる(非課税枠は対象外)
- 保険金の受取人を決められるため、親族間のトラブルを回避できる可能性がある
- 保険料が原因で、金銭的負担が増える
- 遺産分割の対象にならないため、場合によってはトラブルにつながる
- 法定相続人以外が相続する場合、相続税対策の効果を得られない
例えば、相続で不動産が多くあった場合、相続税を納税する際に困ることになる。
なぜなら、相続税の納付方法は、原則現金(一括払い)のためだ。
しかし、不動産が多い場合、支払うための現金を用意できず「どうやって納付しよう」という重荷を子ども世代に背負わせかねない。
そのため、生命保険を利用すれば現金を用意できるため、トラブルに発展せず相続税の納付まで行えるはずだ。
被相続人(亡くなった人)の財産を受け継ぐことを相続と言うため、法定相続人以外の人でも相続できる。
しかし、法定相続人以外が相続する場合は、相続税対策として活用することはできないため注意しよう。
相続税と基礎控除について理解できたら!生命保険選びのポイント
生命保険選びのポイントを紹介するので、相続税対策を行うためにも覚えておくと役立つだろう。
生命保険の種類とその特徴
生命保険には、どのような種類の保険があるのだろうか。
まずは、生命保険の種類や特徴について解説する。
生命保険の種類 | 特徴 |
終身保険 | 死亡・高度障害などの保障が一生涯続く 保険途中で解約すると解約返戻金を受け取れる |
定期保険 | 一定保険期間のみ、保障を受けられる保険 解釈返戻金は受け取れないが、終身型より保険料が安い |
収入保障保険 | 一定保険期間内に、死亡・高度障害になった場合、保険金を年金形式で受け取れる |
養老保険 | 老後の資金準備のために適している保険死亡・高度障害のリスクにも備えられる |
学資保険 | 子どもの教育資金を準備するための保険 |
個人年金保険 | 老後の生活に不安を感じている人のための保険 |
介護保険 | 介護状態が続いたときに、保険金を受け取れる保険 |
積立保険 | 目標のために保険料を積立られる保険満期を迎えると、満期保険金を受け取れる |
認知症保険 | 認知症と診断されたときに保証される保険 |
このように終身保険や定期保険など、数多くの生命保険があるため、自分が保険に加入する目的をしっかりと明確にし、どの保険がベストか選んでいくのが理想的だ。
税制対策を意識した生命保険の選び方
上記で紹介した通り、生命保険には多くの種類がある。だが、すべての保険が相続税対策に適しているわけではないのだ。
例えば、保険期間が決まっている定期保険は、相続税対策におすすめとは言えないだろう。
なぜなら、期間中に万が一のことが起きれば保障を受けられるが、保険期間が終われば保障を受けられないためだ。
医療の進歩とともに、「人生100年時代」と言われているからこそ、一生涯続く終身保険を選ぶ方が理想的な選択だと言える。
相続税対策として終身保険に加入するのであれば、保障内容がシンプルな終身保険を選ぶといい。なぜなら、月々の保険料を安く抑えられるためだ。
生命保険を選ぶ際の注意点
相続税対策で利用する終身保険などは、保険料を払い続けることで保険金を得られる。
しかし、保険料の支払いが経済的に難しくなり途中で解約してしまうと、解約返戻金を受け取ることはできるが元本割れしてしまうので気を付けよう。
- 元本割れ:保険会社に払った保険料の総額よりも少ない金額になること
「遺された家族のためにお金を少しでも残したい」と考えるかもしれないが、経済的負担が増えてしまっては生活を楽しむことができない。そのため、「この保険料を払い続けられるだろうか?」と慎重に保険を決める必要がある。
相続税対策としての効果を発揮するためには、保険料の安さは重要だと言えるだろう。
「相続税対策に生命保険を使うメリット・デメリット」で紹介した通り、保険の受取人に設定した人が、万が一のときに受け取った保険料は遺産分割の対象にならない。
そのため、仲が良かった兄弟姉妹でも、相続が原因でトラブルに発展し、険悪な関係になるケースも珍しくない。
そうならないためにも、同じ相続人を受取人として設定するのではなく、1人ずつにするなどの工夫をするといいだろう。
相続税と基礎控除について理解を深めて生命保険を相続税対策に活用しよう
本記事では、相続税と基礎控除、および生命保険を活用する方法について解説した。
個々の状況に合わせた生命保険の選択と、その適切な活用が相続税対策にとって重要になることを理解して頂けただろう。
しかし、自分に合った生命保険を選ぶには、専門的な知識が求められる。
困った時は、保険のプロに相談すると良いだろう。ただ、自分に合った保険のプロを選ぶのもまた容易ではない。
そこで、役に立つのが「生命保険ナビ」である。
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