- 生命保険料控除制度の概要や適用条件について知りたい
- 生命保険料控除を利用すると実際にどれほど節税効果があるのか知りたい
- 節税を最大限に行うための保険の利用方法がわからない
生命保険はいざという時に自分や家族の暮らしを保障してくれるもので、日本ではほとんどの人が生命保険へ加入している。
そんな生命保険を利用して節税が行える、という話を聞いたことがある人もいるだろう。
ただ、実際にどう活用すればいいのか詳しく知っている人は少ないのではないか。
そこで本記事では、生命保険料控除の概要や実際の節税効果について解説する。
また、節税効果を高めるための保険の利用法についても解説する。
生命保険を節税対策に利用したいという人は、ぜひ参考にして、お得に生命保険を利用してほしい。
節税できる?生命保険料控除とはなにか
企業に勤めている人のなかで生命保険に加入している人は、人事から渡される年末調整の書類に「生命保険料控除」の欄を記載しているだろう。
会社員として働く人の場合、各種税金は昨年の給料をベースに「ざっくりと」計算されている。
最終的な税金額を計算するために、年末調整として各種控除を申告した結果、場合によって払い過ぎた税金が返ってくるのだ。
その一つが生命保険料控除で、年間に支払った保険料を申告すると、保険料の一部が課税対象から控除されるのである。
生命保険にかかる税金の種類
そもそも、生命保険にまつわる税金はフェーズごとで異なる。具体的には、以下の税金が生命保険に関連するものだ。
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 贈与税
所得税と住民税は、生命保険料の支払いに関連する税金で、生命保険料控除により節税できる。
相続税及び贈与税は、生命保険の保険金を受け取る際に関連する税金だ。
相続税に関しては、「誰を保険金の受取人にするか」で節税効果が異なり、贈与税は仕組みを活用することで節税につなげられる。
生命保険料控除制度の概要
生命保険料控除は、一年間に支払った保険料によって段階的に定められた金額を、所得(課税対象)から差し引く制度のことだ。
これによって所得税と住民税を圧縮でき、節税につながるのである。
生命保険に加入していない、または加入しているが控除の申告をしていない場合、課税対象(所得)から控除できる項目は、給与所得控除や基礎控除などと限定される。
「生命保険料控除を申告すると控除額が増える」というのが、節税につながる根本的な仕組みだ。
なお、名称は「生命保険」となっているが、医療保険や個人年金保険などの各種民間保険が対象である。
民間保険に加入している人は、毎年10月頃になると「保険料に関する通知」などと題したハガキが届くはずだ。
その通知に記載された保険料は控除対象となるため、年末調整で正確に申告する必要がある。
生命保険料控除の種類と適用条件
そもそも生命保険料控除は、契約を締結した年月日で大きく2つに分けられる。
- 旧制度:2011年12月31日よりも前に契約した生命保険など
- 新制度:2012年1月1日よりも後に契約した生命保険など
旧制度に該当する場合、用意されている控除は以下の2つだ。
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
新制度に該当する場合、用意されている控除は以下の3つである。
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
当時の税制改正に伴い、新たに「介護医療保険料控除」が新設されている。
それぞれに該当する保険商品は、下表のとおりだ。
一般生命保険料控除 | ・終身保険 ・定期保険 ・5年を超える養老保険 ・三大疾病保険 ・収入保障保険 ・外貨建て保険 ・学資保険 など |
介護医療保険料控除 | ・医療保険 ・がん保険 ・介護保険 など |
個人年金保険料控除 | 個人年金保険料税制適格特約のつく個人年金保険 |
「自分の加入する保険がどれに適用するか分からない」と不安に感じるかもしれないが、保険会社から届く通知に、どの制度(新旧/一般・介護医療・個人年金の別)に該当するか明記されている。
上記は参考程度で理解しておけば問題なく、それぞれの控除に対して上限額が定められていることは覚えておこう。
控除額の詳細と実際の節税効果は次の章で解説する。
生命保険料控除でどれほど節税効果が得られるのか
概要を把握できたところで、気になるのは「実際にどれくらい節税できるのか」だろう。
結論としては、所得税と住民税を合わせて見込まれる節税額は1〜2万円ほどである。
詳しくは後ほど紹介するシミュレーション結果を見てほしいのだが、人によっては「たったこれだけ?」と思うかもしれない。
しかし、会社員で働く人の場合、企業が所得を把握して税金を源泉徴収するため、節税効果を生み出せるだけでも大きなメリットになる。
「家族で外食に一度行ける程度の節税を見込めるだけでも十分」という見方もできるだろう。
生命保険料控除を利用する際の注意点
生命保険料控除の利用にはいくつか注意点がある。
- 契約時期によって適用される制度が新旧で異なる
- 新制度と旧制度で控除の上限額が異なる
- 各制度内の控除額にも別途上限が設定されている
先ほど解説したように、2012年を境に新旧の制度が分かれている点は押さえておこう。
その上で、年間の払込保険料と所得税の控除額の関係性は下表のとおりである。
所得税の生命保険料控除 | |||
新制度 | 旧制度 | ||
払込保険料(年間) | 控除額 | 払込保険料(年間) | 控除額 |
20,000円以下 | 払込保険料全額 | 25,000円以下 | 払込保険料全額 |
20,000円超〜40,000円以下 | 払込保険料×1/2+10,000円 | 25,000円超〜50,000円以下 | 払込保険料×1/2+12,500円 |
40,000円超〜80,000円以下 | 払込保険料×1/4+20,000円 | 50,000円超〜100,000円以下 | 払込保険料×1/4+25,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 | 100,000円超 | 一律50,000円 |
上記について、「一般」「介護医療」「個人年金」のそれぞれに適用される。
つまり、控除の上限額は新制度で12万円、旧制度で10万円になる。
続いて、年間保険料と住民税の控除額の関係性は下表のとおりだ。
住民税の生命保険料控除 | |||
新制度 | 旧制度 | ||
払込保険料(年間) | 控除額 | 払込保険料(年間) | 控除額 |
12,000円以下 | 払込保険料全額 | 15,000円以下 | 払込保険料全額 |
12,000円超〜32,000円以下 | 払込保険料×1/2+6,000円 | 15,000円超〜40,000円以下 | 払込保険料×1/2+7,500円 |
32,000円超〜56,000円以下 | 払込保険料×1/4+14,000円 | 40,000円超〜70,000円以下 | 払込保険料×1/4+7,500円 |
56,000円超 | 一律28,000円 | 70,000円超 | 一律35,000円 |
住民税の場合は上記のとおりなのだが、控除額の上限は新旧制度ともに7万円になる。
所得税と住民税では控除上限が異なり、控除額が切り替わる保険料の基準額もそれぞれ異なる点には注意が必要だ。
控除金額のシミュレーション
上記の説明を踏まえ、実際の控除額をシミュレーションしてみよう。
年収550万円の会社員を例に、以下の保険料を支払い、新制度に該当する場合を計算する。
- 一般生命保険:90,000円
- 介護医療保険料:30,000円
- 個人年金保険料:50,000円
- 所得税率:10%/住民税率:10%
まず、所得税について控除額を計算しよう。一般生命保険の場合は80,000円を超えているため上限の50,000円が控除額になる。介護医療保険と個人年金保険は下記のとおりだ。
- 介護保険の控除額:30,000円×1/2+10,000円=25,000円
- 個人年金保険の控除額:50,000円×1/4+20,000円=32,500円
つまり、所得税の控除額合計は「50,000円+25,000円+32,500円=107,500円」となり、節税額は「107,500円×10%=10,750円」と計算できる。
次に、住民税について控除額を計算すると以下のとおりになる。
- 一般生命保険の控除額:上限の28,000円
- 介護保険の控除額:30,000円×1/2+6,000円=21,000円
- 個人年金保険の控除額:50,000円×1/4+14,000円=26,500円
住民税の控除額合計は「28,000円+21,000円+26,500円=75,500円」になり、節税額は「75,500円×10%=7,550円」と計算できる。
以上から、生命保険料控除による節税額の合計は「10,750円+7,550円=18,300円」になる。
所得によって所得税の税率は異なるが、控除額は上記に当てはめれば計算できるだろう。
控除額の計算方法についてはこちらの記事でも詳しくまとめたので、あわせてチェックしていただき控除申請の際に役立ててほしい。
生命保険の非課税枠の活用も検討しよう
生命保険料控除とは少し異なる観点だが、生命保険金の受け取りに関しても覚えておきたいのが、「相続税の非課税枠」だ。
相続税の非課税枠とは、生命保険金を法定相続人(パートナーや子ども)が受け取った場合、以下の計算式で算出された金額が非課税限度額として適用される制度である。
相続人以外の人が生命保険金を受け取ると、上記の非課税限度枠はなくなるため注意が必要だ。
なお、相続税の課税対象となるのは、契約者(保険料の負担者)と被保険者が同一人の場合である。
たとえば、パートナーと2人の子どもがいる被保険者が6,000万円の死亡保障がある生命保険に加入しており、生命保険以外の相続財産が一切なかった場合を想定しよう。
その際、パートナーが受け取る6,000万円には、生命保険の非課税枠が適用され「500万円×3人=1,500万円」を引いた4,500万円が相続税の課税対象となる。
ただし、相続税にも基礎控除があり、「3,000万円+法定相続人の数×600万円」を相続税の課税対象から差し引ける。
つまり、相続税の基礎控除は4,800万円と計算でき、先ほど算出した課税対象の4,500万円を上回ることから、相続税は課税されないことがわかる。
生命保険に加入する際は、契約者と被保険者を同一にした上で、法定相続人を保険金の受取人にするとよいだろう。
節税効果を高めるための生命保険の利用法とは
所得税と住民税の節税と相続税の一部に関しては上記のとおりだが、ほかにも節税効果を高めるための保険の利用方法がいくつかある。
ここでは、その方法をピックアップしたので参考にしてほしい。
受取人が子供になるよう保険を選ぶ
先ほど解説した「生命保険の非課税枠」をより効率よく使うための方法であるが、生命保険金の受取人を配偶者ではなく子供にすると、節税効果をさらに高められる。
相続税額を計算する際、配偶者控除として1億6,000万円が認められている。
そのため、相続財産が複数・まとまった金額になる場合、配偶者控除と生命保険の非課税枠をフル活用できるよう、生命保険金の受取人を子供にするというものだ。
子供の場合は配偶者控除のような優遇措置がないため、生命保険の非課税枠が適用できるように保険金の受取人にすることで、相続財産の非課税枠を最大限活用できるのである。
生命保険を活用した相続対策については以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にして活用していただきたい。
生前贈与を行う
贈与税の節税対策として、「年間110万円までなら基礎控除の範囲内になるため税金がかからない」という話を聞いたことがある人も多いだろう。
生前贈与は、毎年110万円ずつ贈与して相続財産を減らすものだが、生命保険と組み合わせてさらなる節税効果も期待できる。
生前贈与に生命保険を活用する際は、以下のような契約形態にして、契約者と保険金受取人を同一人物にする必要がある。
- 契約者:子供
- 被保険者:父親
- 保険金受取人:子供
その上で、年間110万円以下の保険料を支払う生命保険を締結し、父親が保険料相当額を子供に贈与し、贈与を受けた金銭で保険料を支払うものだ。
このとき、生命保険金は所得税扱いとなるのだが、保険金額が払込保険料を50万円以上上回らない限り所得税は課税されない。
また、贈与税もかからないためダブルで節税効果を期待できるというものだ。
もちろん、条件を満たすような生命保険の契約にする必要があるのは言うまでもない。
また、このスキームを使うと毎年一定の金額を贈与する定期贈与と見なされる場合もあり、贈与額全体に対して課税される。
そのため贈与の都度、贈与契約書を交わす必要があることも覚えておこう。
保険料支払者と契約者を同じにしておく
最後に、保険料の支払い者と生命保険の契約者は同一人物にしておくことが重要である。
両者が異なると、生命保険金を受け取る際に贈与税が課税されるだけでなく、生命保険料控除も受けられなくなる。
本記事で紹介したさまざまな節税効果を享受するための大前提ともいえるため、生命保険を契約する際は特に注意しよう。
保険を使った節税はプロからアドバイスをもらおう
生命保険料控除は、保険に加入して数年が経過している人であれば毎年行うものであり、それほど困ることはないだろう。
しかし、相続税や贈与税対策はやや複雑になる場合もある。
相当額の資産があり、効率よく資産を残したいと考えているのであれば、保険のプロからアドバイスをもらうべきだ。
ファイナンシャルプランナーなら、節税効果を求める際の保険についても適切なアドバイスを受けられる。
自分にぴったりな保険を探す手間も省けるうえ、どの程度の節税効果が期待できるかその場でシミュレーションもできるため、安心して加入できるだろう。
相続は日常的に接する内容でもないため、自分の身に万が一の事態が起きた場合について不安がある人は、保険のプロに相談することをおすすめしたい。
所得税や住民税に生命保険料控除を適用して生命保険の節税対策をしよう
本記事では、生命保険料控除の概要や実際の節税効果について解説した。
また、節税効果を高めるための保険の利用法について解説した。
生命保険の節税対策としては所得税や住民税に生命保険料控除を適用する、もしくは相続税に非課税枠を適用する方法がある。
生命保険料控除も非課税枠も上限があるため、利用時には注意しておこう。
また、生命保険を利用して節税する際には、保険料支払者と保険の契約者を同一にしておくなどいくつかの注意点がある。
本記事を理解しただけでは、生命保険を節税の手段として利用できるか自信がないという人は保険のプロに相談することも検討してほしい。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、生命保険を節税対策として確実に活用していくことができるはずだ。
ただ、保険のプロは数多く存在し、自分にとって最適な担当なのかをすぐに見定めることもまた難しい。
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