- 共済「こども型」と学資保険の違いがわからない
- 利用するメリット・デメリットを理解したい
- 共済「こども型」と学資保険のどちらが向いているかわからない
生命保険には子どもの教育資金を準備する商品として「学資保険」が存在する。
一方、共済にも”子ども向けのプラン”はある。
しかし、これらの学資保険と”子ども向けの共済”では、特性が異なることが多い。
この記事では、県民共済(※)の「生命共済 こども型」を例にとり、”子ども向けの共済”と学資保険との違いを詳細に解説する。
どちらがご家庭のニーズに適しているかについて、検討する際の参考にしていただきたい。
※本記事では、「県民共済」という言葉を、県民共済、都民共済、府民共済、道民共済、全国共済を含む総称として用いる。
県民共済と学資保険を比較する前に!子どもの未来とリスクに備える「保険」とは
まず、子ども向けの「保険」を準備する目的と必要性について確認しよう。
そのうえで、”子ども向けの共済”と学資保険について整理する。
「子どもに保険をかける」目的は2つ
子ども向けの「保険」を準備する目的には、主に、「学資金を貯める」と「病気やケガに備える」の2つがある。
学資金を貯める
子どもの教育には、大きなお金が必要だ。
たとえば幼稚園から大学卒業まで、すべて国公立に通った場合は約800〜1,000万円が、すべて私立に通う場合は、文系で約2,200~2,500万円、理系では2,700万円ほどかかる。
自宅から学校までの交通費、自宅外通学をする費用は、別にかかると考えるべきだ。
将来、このような大きな学資金が必要になることを考えると、早いうちから計画的に準備しておく必要がある。
- 出典:文部科学省『令和3年度子供の学習費調査』
- 出典:日本政策金融公庫『令和3年度 教育費負担の実態調査結果』
病気やケガに備える
子どもの病気や怪我に対する保障を得ることが、生命保険に加入する大きな理由だ。
2021年度の「生命保険に関する 全国実態調査」によれば、子どもの生命保険には、「病気やケガの治療や入院に備えるもの」への加入意向が58.1%と最も多かった。
これは「教育資金や結婚資金の準備に重点をおいたもの」より多いという結果である。
子どもの病気や怪我への備えは「手厚くする必要はない」
この調査結果からは、「保険」をかけることで子どもの病気やケガに備えたいという意向を持っていることがわかる。
たしかに「保険」で備えておけば安心だが、大人向けの保障ほどには手厚くする必要はない。
公的な医療費助成が充実している
医療費の自己負担割合は、小学校入学前までは2割、以降も70歳未満は3割だ。
自己負担分についても、日本のほぼすべての自治体では、子どもの医療費に対して様々な助成が受けられる。
これらの制度により、家計の負担は大きく軽減されるのだ。
所属する教育機関が保険等に加入していることがある
子どもが幼稚園や保育園、小学校に通うようになると、それらの教育機関を通して共済や団体保険に加入することがある。
保障の範囲は園や学校でのケガなど限定されることが多いが、少なくとも所属する機関にいる間の保障は確保できているわけだ。
子どもの入院期間は短いことが多い
大人に比べて子どもの入院日数が短い傾向にあることも、理由の一つだ。
厚生労働省が2022年に発表した『令和2年(2020)患者調査の概況』によれば、平均入院日数は1〜4歳で7.0日、5~9歳で7.9日であり、親世代の35〜39歳の16.0日に比べて短い。
子どもの慢性疾患についても医療費助成の範囲は広がっている。
令和3年11月現在、338疾病の「指定難病」が医療費助成の対象となっている。
「適切に」備えるための共済と学資保険
ここでは、こどものリスクと未来に「適切に」備えるためのプランとして”子ども向けの共済”と学資保険を概観する。
子ども向けの共済
「共済」とは、一定の地域や職域に属する人が、お互いにお金を出し合って助け合う仕組みのことだ。
一般的には、協同組合や労働組合が行う「保険事業」を指す。
入院、火災、自然災害、自動車事故など、さまざまなリスクに備え、組合員は「共済掛金」を拠出する。
掛金はプールされ、組合員やその家族に事故や万一のことが発生した場合などに「共済金」として支払われて経済的損失を補填する。
共済を実施する団体には、農業協同組合や生活協同組合などがあり、多くは子どもが日々直面するリスクに備えるプランを扱っている。
たとえば、県民共済では「生命共済 こども型」が、こくみん共済(全労災)では「こども保障タイプ」がある。
これらの共済は、対象となる子どものケガや病気に対しての保障(医療保障)がメインであり、貯蓄性は備えていないものが多い。
民間生命保険の学資保険
民間の生命保険会社の子どものための保険は、子どもの教育費を確保する目的の「学資保険」が中心である。
学資保険は、一定期間保険料を支払うことにより、契約時に決めたタイミングで保険金(祝い金や満期保険金)を受け取ることができる貯蓄型の保険商品である。
契約者(親)や被保険者(子ども)に万一のことがあった場合の「保障」もあるが、どちらかといえば求められているのは、「学資金をより有利に貯める」役割だ。
県民共済と学資保険の違いとは?県民共済「こども型」の概要と特徴
ここからは、県民共済の「生命共済 こども型」に焦点を絞り、概要と特徴を確認する。
さらに、どういうニーズを持つご家庭に向いているのかを考察する。
県民共済「こども型」の概要
県民共済の「生命共済 こども型」は、子どものリスクに総合的に備えるプランである。
都道府県により名称は異なる場合があるが、内容は基本的に同一だ(※)。
プランは「こども1型(月掛金1,000円)」と「こども2型(月掛金2,000円)」があり、申し込み対象年齢は「0歳〜満17歳まで」、保障対象年齢は「0歳〜満18歳まで」までとなっている。
対象 | 内容 |
入院・ケガ | 入院1日目から最長360日分までの保障があり、通院もカバーされる。 |
手術・先進医療保障 | 組合基準に基づく共済金の支払いがある。 |
第三者への損害賠償 | 子どもが第三者に損害を与えた場合に適用される保障がある。 |
契約者の死亡 | 契約者が死亡した場合、共済金が支払われる。 |
※ 埼玉県民共済のみ、申し込み年齢が「0〜満14歳まで」と設定されている。
県民共済「こども型」の特徴
「生命共済 こども型」には、以下のような特徴がある。
メリット1: 加入可能年齢が幅広い
埼玉県民共済を除き、契約可能年齢は満17歳までである。
また、契約者の年齢も幅広く設定されている。多くの「学資保険」が加入可能年齢を小学校入学前に制限し、契約者も50歳あたりから制約が厳しくなるため、この点で「生命共済 こども型」は入り口を広くとっているといえる。
メリット2: 契約者に万一のことがあった場合に保険金が支払われる
「こども1型(月掛金1,000円)」の場合、契約者が交通事故や突発的な事故で亡くなった場合、または重度の障害を負った場合には、500万円が支払われる。
病気での死亡については、加入または変更後1年未満を除き、50万円が支払われる。
メリット3: 割戻金を受け取れる場合もある
県民共済は非営利事業であり、年度末に余剰金が発生した場合、その金額は「割戻金」として契約者に還元される。
この割戻金により、元々低かった掛金がさらに安くなる可能性がある。
デメリット1: 返戻率が低い
共済は保障が手厚く設定されているため、民間保険会社の「学資保険」より返戻率が低い傾向にある。
デメリット2: 契約内容が柔軟性に欠ける
保障がパッケージされていて、必要な場合も不要な場合も「カスタマイズ」ができない。
県民共済の支払い方法は月払いに限定されており、年払いや一括払いのオプションはない。
また、共済金の受取人も契約者に限られているなど、民間の保険商品に比べて柔軟性に欠ける。
県民共済「こども型」: 貯蓄より「安く保障を確保する」ことを重視するご家庭向き
県民共済の「生命共済 こども型」は、子どもの将来の学資金を積み立てることはできないため、貯蓄を主目的とする場合に適していない。
しかし、安い掛金でバランスの取れた保障を求めるご家庭には、このプランは良い選択だ。
医療保険を安価で確保したうえで、学資金に備えるなら、共済に加えて「学資保険」または他の保険商品を併用すると良い。
県民共済「こども型」より学資保険に向いているご家庭
学資保険は名前のとおり、子どもの学資金を貯める目的で設計された保険商品だ。
学資保険の概要
学資保険は、毎月一定の保険料を保険会社に支払い、満期を迎えたとき(一般的には子どもが18歳を迎えたとき)に満期保険金を受け取る「貯蓄型」の保険である。
この保険には、「貯蓄」機能に加え「保障」機能も備わっている。
多くの学資保険には「保険料払込免除」が設定されている。
これは、契約者が死亡したり高度な障害を負った場合に以降の保険料の支払いが免除される一方で、満期保険金は契約時の満額が受け取れるというものだ。
「貯蓄」と「保障」のバランスは、保険商品によって異なる。
貯蓄に重点を置き保障部分は少ない「貯蓄重視型」もあれば、子どもの病気や死亡などのリスクに対して手厚い保障を提供する「保障重視型」もある。
一般的に、保障部分が手厚くなると、払った金額に対する受け取り金額の割合、すなわち「返戻率」は低くなる。
もし、貯めることが主な目的なら、返戻率が高いプランを検討すると良い。
学資保険の特徴
学資保険の最大のメリットは、保険料が半ば強制的に積み立てられることで、貯蓄が習慣化し、教育資金を効率的に貯めることができる点にある。
ほかにもメリットもあるしデメリットもあるが、ここでは共済と比較した場合に限定してこれらを整理する。
メリット1:契約に柔軟性がある
民間保険会社は、個別のさまざまなニーズに応えるために、商品ラインナップや特約やオプションを充実させている。共済にはこうした選択肢はない。
また、保険料の支払方法(分割か、一括か)、保険金等の受取方法(満期一括か、年金方式か)、保険金の受取人の設定も、共済に比べて自由に決められる。
メリット2: 保険料払込免除による安心感がある
「保険料払込免除」が付いている(または特約で追加できる)点は、大きな安心要素だ。
一家の大黒柱が死亡した場合でも、教育資金の確保が可能となる。
メリット3: 解約返戻金と100%を超える返戻率
掛け捨ての共済とは異なり、学資保険には「解約返戻金」がある。
また、学資保険の返戻率は100%を超えるのが一般的であり、最終的には支払い保険料より多くのお金が戻ってくることが期待できる。
デメリット1: 早期解約で元本割れリスクがある
学資保険は、満期まで契約を維持することで最大のメリットを享受できる設計だ。
そのため、契約後に早い段階で解約すると、受け取る金額が支払った金額を下回る「元本割れ」のリスクが高まる。
デメリット2: 共済より高い家計への負担
家計から出ていく金額を単純に比較した場合、学資保険に支払う保険料は、共済掛金に比べて高い。
例えば、”18歳で満期保険金200万円を受け取る学資保険”の場合、月額の保険料は「15,000円〜30,000円」程度となる。
デメリット4: 保険会社倒産による影響がある
保険会社でも共済でも、倒産のリスクはゼロではない。
しかし共済は「掛け捨て」の形態であり、貯蓄機能がないため、支払ったお金が無駄になる心配は少ない。
一方で、生命保険会社が倒産した場合、支払った保険料が一定額失われる可能性がある。
学資保険: 確実に教育資金を確保したいご家庭向き
「教育資金を計画的かつ確実に積み立てたい」というニーズがあるなら、共済よりも学資保険が適している。
学資保険は、毎月の保険料によって確実に貯金できるメリットと、親が万一の場合でも教育資金が確保できる安心感がある。
ただし、他の保険商品と比較すると、返戻率は劣る可能性も考慮に入れるべきだ。
その際は、「低解約返戻金型終身保険」や「個人年金保険」など他の選択肢が検討できる。
教育資金の確保には共済より「学資保険」を検討しよう!
この記事では、県民共済の「生命共済 こども型」に焦点を当て、子ども向けの共済と学資保険の違いについて詳細に解説した。
子どもの「保険」には、リスクへの備えと学資の積立てという2つの目的がある。
共済は、手頃な価格で怪我や病気に対する保障を提供する一方で、貯蓄性はないため、学資金の積立てに適切ではない。
教育資金を確保したいなら、学資保険などの貯蓄性のある保険商品を検討すべきである。
共済や学資保険のどちらを契約するか、あるいはどう組み合わせるかは、家庭のニーズによって異なるだろう。
最適な保障を検討する際には、ぜひ、保険のプロの力を活用していただきたい。
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