- がん保険は「公的保障で埋まらない穴」を先に特定して選ぶ。
- 高額療養費には対象外(差額ベッド代・先進医療等)があり、収入減の穴も別途残る。
- 以下で公的保障の仕組みから保障タイプ別の向き不向きまでを見ていく。
がんと診断されたとき、治療費はどのくらいかかるのか。働けない期間の収入は? そんな不安を抱えながら、がん保険を検討している人は多い。
生涯でがんと診断される確率は男性63.3%、女性50.8%(2021年データ)。2人に1人以上が経験する計算になる。
公的制度で軽減できる範囲と、自己負担として残る「穴」を整理すれば、必要な保障の輪郭が見えてくる。判断の軸を持つことで、後悔しない選び方ができるようになる。
がん保険おすすめは結局何で決まる?
がん保険を選ぶ基準は、公的保障で埋まらない「穴」をどこに見るかで決まる。
日本では2021年に約98万9千人ががんと診断された。年間約38万人ががんで亡くなる一方、治療を続けながら生活する人も増えている。
備え方は一人ひとり違う。まずは「自分にとって何が足りないか」を整理するところから始めよう。
家計リスクを3つに整理する
がんが家計に与える影響は、大きく3つに分けられる。
- 医療費の自己負担:窓口で支払う治療費、薬代、検査費用など
- 収入減:治療のために働けない期間の収入ダウン
- 周辺費用:差額ベッド代、交通費、ウィッグ、家事外注など
医療費の自己負担は、高額療養費制度によって月ごとに上限が設けられている。ただし、差額ベッド代や先進医療の技術料は対象外だ。周辺費用も公的制度ではカバーされない。
公的保障で足りない費用を見積もる
高額療養費制度は、医療費の自己負担に上限を設ける強力な仕組み。69歳以下で年収約370万〜約770万円(所得区分ウ)の場合、月の上限は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」で計算される。
たとえば医療費が100万円かかっても、自己負担は約87,430円に抑えられる。
ただし、注意したい点がある。
- 上限は「月単位」で計算される(月をまたぐと別計算)
- 世帯合算は69歳以下だと2万1千円以上の自己負担のみが対象
- 差額ベッド代、先進医療費用、食費などは対象外
つまり、高額療養費で軽減されるのは「保険診療の範囲内」に限られる。対象外の費用がどのくらい発生しそうかを見積もることで、民間保険で備える範囲が見えてくる。
優先順位の付け方を決める
がん治療は、以前と比べて通院中心にシフトしている。悪性新生物の推計患者数を見ると、外来が18万6千人、入院が10万6千人と、外来のほうが多い(2023年10月時点)。
平均在院日数も総数で14.4日、35〜64歳では10.7日と、長期入院は必ずしも一般的ではない。
入院よりも通院の回数が増える前提で考えると、入院日額だけでは備えとして不十分なケースが出てくる。「通院・治療に対応した保障」と「診断時のまとまった資金」のどちらを優先するか。
では、具体的にどんな給付金があるのか。次章で給付タイプの違いを整理する。
がん保険の基本:給付金と保障範囲の違い
がん保険の給付金は、主に「診断一時金」「治療給付金」「通院給付金」「入院日額」の4つに分かれる。
それぞれ役割が違い、どれを重視するかで選ぶ商品も変わる。用語の意味を押さえておくと、比較のときに迷いにくい。
診断一時金は何に使えるか?
診断一時金(診断給付金)は、がんと診断されたときにまとまった金額が支払われるタイプだ。使い道に制限がないのが特徴で、医療費だけでなく、差額ベッド代や交通費、収入減の補填にも充てられる。
高額療養費の対象外になる費用——たとえば差額ベッド代や先進医療の技術料——にも対応しやすい。
治療・通院給付金の支払いパターン
治療給付金は、抗がん剤治療や放射線治療など、所定の治療を受けたときに支払われる。支払いの単位は商品によって異なり、「月ごと」「治療ごと」「年ごと」などがある。
通院給付金は、入院を伴わない通院でも給付されるタイプだ。がん治療が通院中心になっている現状を踏まえると、入院日額だけでは手薄になりがちな部分をカバーできる。
見落としがちなのが「何を治療とみなすか」の定義だ。手術・放射線・抗がん剤の3つを指すことが多いが、ホルモン療法や分子標的薬が含まれるかどうかは商品で異なる。約款の「給付事由」欄で確認しておきたい。
保障範囲で見落としがちな上皮内新生物
上皮内新生物(じょうひないしんせいぶつ)とは、がん細胞が上皮内にとどまり、周囲の組織に浸潤していない状態を指す。いわゆる「ステージ0」に近い段階で、一般的ながん(悪性新生物)とは区別されることがある。
がん保険のなかには、上皮内新生物を保障対象外としているものや、給付額を半額にしているものがある。比較表を作るときには「上皮内新生物の扱い」を列に入れておくと、見落としを防げる。
給付タイプの違いが分かったところで、次は「公的保障からの逆算」で必要保障を絞り込んでいく。
がん保険は必要かを公的保障から逆算する
がん保険が必要かどうかは、公的保障で軽減できる範囲と「対象外になる穴」を照らし合わせて判断する。
公的制度を過小評価する必要はないが、過信もできない。不足の種類を明確にすることで、必要な民間保険の姿が浮かび上がる。
高額療養費制度の上限と対象外を知る
高額療養費制度は、月ごとの医療費自己負担に上限を設ける仕組みだ。69歳以下の場合、所得区分によって上限額が異なる。
| 所得区分 | 月の自己負担上限(69歳以下) |
|---|---|
| ア(年収約1,160万円〜) | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
| イ(年収約770万〜約1,160万円) | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
| ウ(年収約370万〜約770万円) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
| エ(〜年収約370万円) | 57,600円 |
| オ(住民税非課税) | 35,400円 |
たとえば所得区分ウで医療費が100万円かかった場合、自己負担上限は約87,430円になる。残りは高額療養費として支給される。
ただし、以下は対象外だ。
- 差額ベッド代
- 先進医療の技術料
- 入院時の食費
- 保険適用外の治療費
また、世帯合算するには69歳以下だと「2万1千円以上」の自己負担でなければならない。複数の医療機関にかかる場合は、合算できない部分が残ることもある。
先進医療の技術料が自己負担になる理由
先進医療とは、厚生労働大臣が定めた高度な医療技術のことだ。保険診療と併用できるが、先進医療にかかる技術料は全額自己負担になる。
令和7年度(2024年7月〜2025年6月)の実績を見ると、先進医療を受けた患者数は約21万1千人、先進医療費用の総額は約126.5億円に上る。代表的な技術として、陽子線治療(739件・先進医療総額約20.6億円)や重粒子線治療(303件・先進医療総額約9.7億円)がある。
先進医療が必要になるかどうかは、がんの種類や進行度、治療方針によって異なる。すべての人に必要とは限らないが、「もし必要になったら数百万円」という可能性は頭に入れておきたい。
働けない期間の収入減を補う方法
がん治療中に働けなくなった場合、会社員であれば傷病手当金が支給される。支給期間は支給開始日から通算して1年6か月。支給額は標準報酬日額の約3分の2だ。
ただし、自営業やフリーランスには傷病手当金がない(国民健康保険には原則として傷病手当金制度がない)。収入がゼロになるリスクが高いため、医療費よりも収入減への備えを優先すべきケースがある。
たとえば同じ「3か月間治療に専念する」状況でも、会社員と自営業では優先すべき保障が変わる。
- 会社員:傷病手当金である程度の収入は確保できる → 医療費の「対象外」部分を優先
- 自営業:収入ゼロのリスク → 収入減を補う保障(就業不能保険など)も視野に
がん保険だけで収入減を全額カバーするのは難しい。就業不能保険や貯蓄との組み合わせで考えることになる。この点はFAQでも改めて整理する。
公的保障の仕組みが分かったところで、次は通院・治療中心の備え方について詳しく見ていこう。
がん保険の保障内容は通院・治療中心が強い理由
がん治療が通院中心に変化しているいま、入院日額だけでは備えとして不十分になりやすい。
悪性新生物の推計患者数は外来18万6千人に対し、入院10万6千人。外来のほうが多い(2023年10月時点)。平均在院日数も総数で14.4日、35〜64歳では10.7日と、長期入院は以前ほど一般的ではなくなっている。
通院中心の治療で増えやすい支出
通院回数が増えると、医療費以外の「細かい支出」が積み上がる。
- 通院のための交通費(タクシー、駐車場代など)
- 外食・中食の増加(体調が優れないときの食事)
- 家事代行やベビーシッターの利用
- ウィッグや補正下着などの購入
これらは高額療養費の対象にならない。1回あたりは小さな金額でも、治療が長引くと家計へのインパクトは無視できなくなる。
月ごと給付と一時金の組み合わせ
高額療養費は月単位で計算される。つまり、毎月の自己負担上限に達するかどうかが家計への影響を左右する。
この「毎月の負担」に対応しやすいのが、月ごとに支払われる治療給付金だ。一方、診断時や治療開始時の「まとまった支出」——差額ベッド代、先進医療費用、当面の生活費——には診断一時金が対応しやすい。
どちらか一方だけでなく、両方を組み合わせる設計も選択肢になる。毎月の負担と突発の負担、どちらが家計に響きやすいかを考えて配分を決めたい。
長期化に強い保障設計にする
がん治療が長期化すると、高額療養費の「多数回該当」が適用される。直近12か月以内に3回以上上限額に達した場合、4回目からは上限がさらに下がる。たとえば所得区分ウなら、通常の約87,000円から44,400円に軽減される。
ただし、多数回該当が適用されても「対象外」は対象外のままだ。先進医療費用や差額ベッド代は軽減されない。
また、5年ネット・サバイバル(診断から5年後に生存している割合)は全がんで64.1%。治療を続けながら生活する期間が長くなるケースも増えている。
長期化に備えるなら、「診断一時金の支払い回数」「治療給付金の支払い期間」を確認しておく。1回限りの給付では再発や転移時に心もとない。複数回支払われる設計かどうかが、長期化への耐性を左右する。
次は、保障の方向性が決まった後の「給付条件の読み解き方」を整理する。
がん保険の選び方は給付条件の読み解きが鍵
保障の厚さを比べる前に、「支払われる条件」を揃えることが先決だ。
同じ「診断一時金100万円」でも、支払い回数や治療の定義が違えば、実際に受け取れる金額は大きく変わる。約款の給付条件を確認することで、「契約したのに支払われなかった」という事態を防げる。
免責期間と待機期間でつまずく例
がん保険には、契約から一定期間は保障が始まらない「待機期間」や「免責期間」が設けられていることが多い。加入直後にがんが見つかった場合、給付金が支払われない可能性がある。
確認しておきたいのは次の3点。
- 責任開始日:保障が有効になる日はいつか
- 待機期間:契約から何日間は保障対象外か(90日が多い)
- 免責条項:どのような場合に給付されないか
診断給付金の「回数・間隔」を確認する
診断一時金が「1回きり」なのか「複数回支払われる」のかは、長期的な備えに大きく影響する。再発や転移のたびに給付されるタイプと、初回のみのタイプでは、5年後・10年後の安心感がまったく違う。
チェック項目は3つ。
- 支払い回数:1回限りか、複数回か
- 支払い間隔:2回目以降の給付には何年空ける必要があるか
- 対象イベント:再発・転移も対象か、新たな診断のみか
比較表を作るときには、これらを列に固定しておくと、商品ごとの違いが一目で分かる。
支払い対象の「治療」定義を比べる
治療給付金は「所定の治療を受けたとき」に支払われるが、「所定の治療」の範囲は商品によって異なる。
| 治療の種類 | 確認ポイント |
|---|---|
| 手術 | 入院中の手術のみか、外来手術も含むか |
| 放射線治療 | 温熱療法や粒子線治療も含むか |
| 抗がん剤治療 | ホルモン療法、分子標的薬は含むか |
| 通院 | 入院後の通院のみか、入院なしの通院も対象か |
定義が揃っていないまま「こっちのほうが給付額が大きい」と比べても意味がない。約款の「給付事由」欄で治療の範囲を確認し、同じ土俵で比較することが大切だ。
更新・解約返戻金の有無を整理する
がん保険には、大きく分けて「更新型」と「終身型」がある。
- 更新型:一定期間(5年・10年など)ごとに契約が更新され、保険料も見直される。若いうちは安いが、更新のたびに上がる傾向がある。
- 終身型:保険料が契約時のまま一生涯続く。月々の負担は更新型より高くなることが多いが、将来の見通しが立てやすい。
また、解約返戻金(解約時に戻ってくるお金)の有無も商品差がある。返戻金があるタイプは保険料が高くなりがちだが、「貯蓄代わり」として期待するのは慎重に。保険と貯蓄は役割が違うため、混同すると家計設計が崩れやすい。
給付条件の読み解き方が分かったところで、次は「タイプ別の向き不向き」を整理する。
がん保険のタイプ別(診断一時金・治療・入院)向き不向き
がん保険のタイプは、「どの穴を優先的に埋めたいか」で向き不向きが分かれる。
診断一時金型、治療給付金型、入院日額型、それぞれに強みと弱みがある。自分の働き方や家計状況に照らして、合うタイプを絞り込んでいこう。
診断一時金型が向く人の特徴
診断一時金型は、がんと診断されたときにまとまった金額を受け取れる。使い道に制限がなく、こんな場面で役立つ。
- 高額療養費の対象外(差額ベッド代、先進医療費用など)
- 当面の生活費や収入減の補填
- 治療方針が決まる前の「とりあえずの資金」
会社員で傷病手当金がある場合でも、最初の数か月は収入と支出のギャップが生じやすい。診断時点で手元資金を確保しておきたい人に向いている。
ただし、1回きりの給付だと再発・転移への備えが弱くなる。複数回支払われるタイプを選ぶか、治療給付金型と組み合わせるかを検討したい。
治療給付金型が向く人の特徴
治療給付金型は、抗がん剤や放射線など所定の治療を受けるたびに給付されるタイプだ。治療が長期化しても、一定の給付が続く点が強みになる。
通院中心のがん治療が増えているいま、「毎月の支出」に対応しやすいのはこのタイプだ。高額療養費の多数回該当が適用されても、対象外の費用は残る。その部分を治療給付金でカバーする発想になる。
悪性新生物の推計患者数は外来が入院を上回っている(外来18万6千人・入院10万6千人)。入院日数も短縮傾向にあるため、入院日額だけでは手薄になりがちな通院期間をカバーしたい人に向いている。
入院日額型が向く人の特徴
入院日額型は、入院1日あたり一定額が支払われるシンプルな設計だ。入院中の収入減や差額ベッド代を補填するイメージで使いやすい。
ただし、注意点がある。悪性新生物の平均在院日数は総数で14.4日、35〜64歳では10.7日。長期入院を前提にした設計だと、実際には給付額が期待より少なくなることもある。
医療保険のがん特約が向くケース
すでに医療保険に入っている場合、がん特約を追加するという選択肢もある。単体のがん保険よりも保険料を抑えられることが多い。
次のような人に向いている。
- すでに医療保険に入っていて、追加の保険料を抑えたい
- がんへの備えは「最低限」でよいと考えている
- 先進医療特約をすでに付けている(重複を避けたい)
ただし、がん特約は単体のがん保険に比べて保障内容が限定的なことが多い。「対象外の穴」や「先進医療のリスク」をどの程度重く見るかで、特約で足りるか・単体が必要かの判断が分かれる。
タイプの向き不向きが整理できたら、次は実際に「比較→決定」の手順に入っていく。
がん保険おすすめはこの順で決めよう
比較は「比較表テンプレ→給付条件チェック→家計上限」の順で進めると、見落としを防ぎやすい。
いきなり商品を選ぶのではなく、まず比較軸を固定し、同じ条件で見比べることが大切だ。
候補を3つに絞る比較手順
商品が多すぎると比較が難しい。まずは3つ程度に絞るとよい。以下の比較表テンプレを使って、同じ項目で並べてみよう。
| 比較項目 | 候補A | 候補B | 候補C |
|---|---|---|---|
| 診断一時金(回数/間隔) | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 治療給付金(治療定義/支払単位) | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 通院給付金 | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 先進医療特約 | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 上皮内新生物の扱い | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 免責/待機期間 | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 保険期間(更新/終身) | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 保険料(家計上限内か) | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
「高額療養費の上限」や「先進医療費用の規模感」は制度側の前提として別枠で把握しておき、商品比較はこの表で行う。列を固定することで、定義違いの数字を並べてしまう失敗を防げる。
最終チェックで見るべき落とし穴
候補が絞れたら、契約前に以下の順でセルフチェックを行う。
- 免責・待機期間:いつから保障が有効になるか
- 支払い回数・間隔:診断一時金は複数回支払われるか
- 治療定義:治療給付金の対象範囲は自分の想定と合っているか
- 上皮内新生物:保障対象か、減額か、対象外か
- 更新・終身:将来の保険料はどう変化するか
見落としやすいのは「上皮内新生物の扱い」と「治療定義」だ。パンフレットだけでは分からないことが多いので、約款を確認するか、募集人に直接聞くのが確実だ。
無料相談を使う場合の注意点
保険ショップやFP(ファイナンシャルプランナー)への無料相談は、比較の補助として有効だ。ただし、相談員によって得意分野や提案傾向が異なる点は認識しておきたい。
相談を有効に使うには、以下を自分で整理しておくと話が早い。
- 自分が埋めたい「穴」はどこか(医療費/収入減/周辺費用)
- 優先したい給付条件は何か(一時金重視/治療重視/通院重視)
- 月々の保険料の上限はいくらか
比較と決定の手順が分かったところで、最後に「加入時の注意点」を押さえておこう。
がん保険の加入で失敗しない注意点
申込時に詰まりやすいのは、告知・更新と終身の違い・保険料の上限設定の3点だ。
比較と決定が終わっても、この3点で失敗すると元も子もない。契約前に確認しておきたい。
告知と健康状態で起こる加入制限
がん保険に加入するときは、健康状態の告知が必要だ。過去の病歴や現在の治療状況によっては、加入を断られたり、条件が付いたりする。
告知のポイントは「事実を正確に伝えること」に尽きる。告知内容が不正確だと、いざというときに給付金が支払われない可能性がある。不明な点は自己判断せず、募集人や保険会社に確認するのが原則だ。
すでに病気を経験した人向けの「引受基準緩和型」や「無選択型」の商品もあるが、保険料が高めに設定されていたり、保障内容に制限があったりする。条件と費用対効果を冷静に見極めたい。
更新型と終身型の保険料変化を理解する
更新型は、契約期間ごと(5年・10年など)に保険料が見直される。若いうちは安いが、更新のたびに年齢に応じて上がっていく。60代・70代で保険料が想定以上に高くなり、続けられなくなる人もいる。
終身型は、契約時の保険料がそのまま続く。月々の負担は更新型より高いことが多いが、将来の見通しが立てやすい。ただし、途中で解約すると、払い込んだ保険料に見合う返戻金が得られない場合がある。
どちらが良いかは一概には言えない。家計のキャッシュフローや、保険をいつまで続ける想定かによって判断が分かれる。「今の保険料」だけでなく「将来の保険料」も視野に入れて検討しよう。
家計を圧迫しない保険料の決め方
保険料を「払える上限」まで設定してしまうと、家計の余裕がなくなる。保険は「もしものとき」の備えであり、日常生活を圧迫しては本末転倒だ。
上限を決める手順はこうだ。
- 毎月の固定費(家賃、光熱費、通信費など)を把握する
- 貯蓄や投資に回したい金額を確保する
- 残った「保険に回せる枠」を算出する
- すでに加入している保険(医療保険、生命保険など)との重複を整理する
特に、医療保険にがん特約を付けている場合は、単体のがん保険と保障が重複していないかを確認しておきたい。比較表(H2-7)を使って整理すると、無駄な支出を防げる。
がん保険は「公的保障で埋まらない穴」を先に特定し、その穴に合ったタイプを選ぶことで決まる。高額療養費制度は強力だが、差額ベッド代や先進医療費用は対象外であり、収入減の穴も別途残る。
給付条件(免責、回数、治療定義、上皮内新生物の扱いなど)を揃えて比較し、将来の保険料変化も視野に入れて判断することが、後悔しない選び方につながる。判断材料がそろったら、保険ショップやFPに相談してみるのも一つの手だ。
FAQ
がん保険は複数加入すると給付金はどうなる?
がん保険の多くは「定額給付型」で、実際にかかった医療費とは関係なく、契約で定めた金額が支払われる。複数加入していれば、条件を満たす限りそれぞれから給付を受けられるのが一般的だ。
ただし、損害保険のように「実損填補型」の商品であれば、実際の損害額を上限に支払われるため、複数加入しても合計で実損額までしか受け取れない。自分の契約がどちらのタイプか、約款の給付条項で確認しておくと安心だ。
がん保険の一時金はいくらが現実的?
診断一時金の金額は、「公的保障で軽減できない穴」を積み上げて考えるのが基本だ。
- 高額療養費の対象外:差額ベッド代、先進医療費用など
- 収入減:治療期間中の収入ダウン分
- 周辺費用:交通費、ウィッグ、家事外注など
先進医療を受ける可能性まで考えると、陽子線治療で1件あたり約278万円、重粒子線治療で約319万円の費用実績がある(令和7年度実績の単純平均)。ただし、先進医療が必要になるかどうかはケースバイケースであり、すべての人に当てはまるわけではない。
調査データを参考にすると、がん保険の入院日額平均は世帯主で1万2千円、配偶者で1万900円(2024年、民保加入世帯ベース)。診断一時金の設定金額は、50万〜200万円程度で設定する人が多いとされるが、断定は避けたい。自分の家計状況と「埋めたい穴」の大きさから逆算するのが確実だ。
がん保険と就業不能保険、優先順位は?
会社員と自営業で、優先順位が変わる。
会社員の場合、傷病手当金が支給開始日から通算1年6か月支給される(支給額は標準報酬日額の約3分の2)。収入減のリスクはある程度カバーされるため、「医療費の対象外部分」を優先してがん保険を検討するのが合理的だ。
一方、自営業やフリーランスには傷病手当金がない。治療期間中の収入がゼロになるリスクが高いため、就業不能保険の優先度が上がることがある。がん保険と就業不能保険のどちらを先に検討するかは、「収入減の穴」と「医療費の穴」のどちらが家計に響くかで判断したい。
がん保険の保険料は年齢でどれくらい変わる?
がん保険の保険料は、年齢・性別・保障内容・払込期間・健康状態によって変わる。加入時の年齢が上がるほど保険料も上がるのが一般的だ。
具体的な金額は商品ごとに違うため、「〇歳なら〇円」とは言い切れない。比較するときは、以下の条件を揃えて見積もりを取ると、商品ごとの違いが分かりやすくなる。
- 年齢・性別
- 保障額(診断一時金、治療給付金など)
- 保険期間(更新型/終身型)
- 払込期間
複数の商品を同条件で比較し、将来の保険料変化も含めて判断したい。
がん保険は生命保険料控除の対象になる?
がん保険(医療系の保険)は、所得税の生命保険料控除の対象になり得る。ただし、契約時期によって「旧契約」と「新契約」に分かれ、控除額の計算方法が異なる。
新契約(2012年1月1日以降の契約)の場合、「介護医療保険料控除」として最大4万円(所得税)が控除される。生命保険料控除全体の上限は12万円(所得税)だ。
また、2026年分(令和8年分)に限り、23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の限度が6万円に引き上げられる時限措置がある。子育て世帯は該当するか確認しておきたい。
住民税側の控除上限は別途設定されているため、詳しくは国税庁や各自治体の情報で確認してほしい。
出典一覧
国立がん研究センター「がん統計まとめ」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/kanjya.pdf
厚生労働省「患者調査(令和5年)平均在院日数」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/heikin.pdf
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/content/000333280.pdf
厚生労働省「先進医療の実績報告について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001633583.pdf
厚生労働省「傷病手当金の支給期間が通算化されます」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html
全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/
国税庁「No.1140 生命保険料控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
財務省「令和7年度税制改正の大綱」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_01.htm
生命保険文化センター「生活保障に関する調査」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/9156.html
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査<速報版>」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024sokuhou.pdf


