- 一時払い終身保険のメリットやデメリットを理解したい
- 80歳以上でも一時払い終身保険に加入できるのか知りたい
- 一時払い終身保険を利用した相続税対策の方法が知りたい
一時払い終身保険という言葉に、聞き馴染みはあるだろうか。
契約時に保険料を一回で支払う終身保険のことで、相続税対策としても利用できる特徴がある。
そんな一時払い終身保険を、80歳以上の高齢者でも利用するべきか、気になっている人もいるだろうか。
結論から言えば、告知事項を満たすことで加入の申し込みができる保険は存在する。
そこで本記事では、一時払い終身保険の特徴をあらためて整理し、80歳以上の方の一時払い終身保険への加入可否や相続税対策としての利用方法について解説する。
80歳以上の方で、現在加入できる一時払い終身保険を探しているという方には、ぜひ参考にしてほしい。
80歳以上でも加入できる?一時払い終身保険とは
「一時払い終身保険がどんな商品なのかわからない」「一時払い終身保険にしてどんなメリットがあるのか知りたい」という人も多いだろう。
ここでは、一時払い終身保険の特徴やメリット、デメリットについて紹介する。
全期前納払との違いについても紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
一時払い終身保険の特徴
一時払い終身保険とは、契約した時点で保険料を一括で払い込む保険だ。
分割で払い込む月払いや年払いと違って、まとまった資金が必要になる。
一時払い終身保険の特徴は以下のとおりだ。
- 月払いや年払いよりも保険料が安い傾向にある
- 解約返戻金が払込期間を上回るまでに要する期間が短い
- 保障は一生涯継続される
一般的に保険料は払込期間が長いほど、保険料の総額は高くなりやすい。
そのため、契約時にすべて払い込む一時払い終身保険では、保険料が安い傾向にあるのだ。
また、解約返戻金が払込総額を上回るまでのスピードが早いのも特徴だ。
やむを得ず途中で解約することになっても、元本割れする可能性が低くなっている。
一時払い終身保険には日本円で払い込んで円で受け取る円建てのほか、ドルやユーロで払い込んで受け取り時の通過を選択できる外貨建て一時払い終身保険、払い込んだ保険料の一部を株式や債券などが組み込まれたファンドで運用する一時払い変額終身保険などがある。
一時払い終身保険のメリットとデメリット
一時払い終身保険は保険料が安く、元本割れしにくいというメリットに加えて、相続対策としても効果的だ。
生命保険金は別枠で控除を活用できるからだ。詳しい説明は後の章で行う。
一方で、生命保険料控除が1回しか受けられないというデメリットもある。
生命保険料控除とは、支払った保険料に応じて所得が差し引かれて所得税や住民税の負担が軽くなる制度だ。
2012年以降に加入した保険で受け取れる控除額の計算方法は以下のとおりだ。
年間の支払保険料等 | 所得税の控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
年間払込保険料額 | 住民税の控除額 |
12,000円以下 | 払込保険料全額 |
12,000円超 32,000円以下 | (払込保険料×1/2)+6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 | (払込保険料×1/4)+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
年間の払込金額が80,000円を超えると、所得税、住民税ともに控除額は上限となる。
月払いや年払いのように定期的に払い込む契約であれば、毎年控除を受けられる。
しかし、一時払い終身保険では最初にまとめて支払うため、1回しか適用できないうえに、年間払込保険料額を大幅に突破してしまうのだ。
一時払いと全期前納払いの違い
契約時に保険料をすべて支払うという点では、一時払いと全期前納払いに違いはない。
しかし、全期前納払いで支払った保険料は生命保険会社が預かっており、設定された期日になると預けたお金から自動的に払い込まれる仕組みだ。
全期前納払込は保険料を預けているだけであり、期日になるまでは実際には払い込まれていないのだ。
そのため、全期前納払いでは払込期間が満了するまで生命保険料控除を受けられる。
解約した場合は解約返戻金と合わせてまだ払い込んでいない分の保険料が返金される。
80歳以上でも一時払い終身保険に加入できるのか
一時払い終身保険は80歳以上でも加入できる数少ない生命保険だ。
ここでは、一時払い終身保険への加入条件や注意点を紹介する。
一時払い終身保険を高齢者が利用するメリットについても紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
一時払い終身保険への加入条件
一時払い終身保険を取り扱っている保険会社は多いが、加入条件はそれぞれ違う。
生命保険会社ごとの加入条件を以下の表で比較した。
生命保険会社 | 商品 | 加入年齢可能範囲 | 告知 |
---|---|---|---|
日本生命 | ニッセイ一時払終身保険 | 3歳~90歳 | 「告知書」に記載の事項のほか、医師が口頭で告知を求める場合あり |
住友生命 | 充実クラブWⅡ | 15歳~90歳 | 職業のみ |
明治安田生命 | 期間がえらべる外貨建一時払終身保険 | 被保険者:0歳~満90歳 契約者:満18歳~満90歳 | 告知不要 |
第一生命 | 無配当一時払終身保険(告知不要型)「グランロード」 | 0歳~75歳 | 告知不要 |
定年退職した後でも加入でき、健康状態を問わない保険が多い。
そのため、一時払終身保険は80歳以上でも加入しやすい保険と言えるだろう。
80歳以上で加入する際の注意点
80歳以上で加入する際の注意点は以下のとおりだ。
- 加入時にまとまったお金が必要
- 預金ではなく保険である
一時払終身保険は契約時にすべての保険料を払い込むため、加入時にまとまったお金が必要である。
年金を受給しながら貯金を切り崩して生活している場合、急に大金を払うのが難しいケースもあるだろう。
相続税対策のために手元の現金がなくなって生活が苦しくなっては元も子もない。
高齢になってから一時払終身保険に加入するのは、相続税がかかるほど手元にまとまったお金がある場合のみで良いだろう。
また、銀行の窓口で保険商品を購入できるため、保険を定期預金と勘違いして契約してしまうケースもある。
銀行の担当者の説明が理解できないまま契約し、最初は解約返戻金が払い込んだ保険料よりも少なくてトラブルに発展することもある。
一時払終身保険は、預金ではなく保険であることを認識しておこう。
一時払い終身保険を高齢者が利用するメリットとは
一時払い終身保険を高齢者が利用するメリットは相続税対策だ。
相続税の課税対象となる遺産を減らして、遺族にかかる税負担を軽減できるのだ。
法定相続人の人数に応じて非課税枠が増えるので、法定相続人が多ければ多いほど非課税枠を有効に活用できる。
相続税の額が大きくなりそうな場合は、一時払い終身保険に加入しておくと節税しながら万が一の場合に備えられるので安心だ。
80歳以上の方必見!一時払い終身保険を利用した相続税対策とは
一時払い終身保険が相続税対策に役立つと紹介したが、なぜかわからない人も多いだろう。
ここでは、一時払い終身保険が相続税対策に役立つ理由を紹介する。
保険金にかかる税金の仕組みとは
保険金にかかる税金は、契約書や被保険者、保険金受取人が誰なのかによって異なる。以下の表で簡単にチェックできるようになっている。
契約形態 | 契約者 | 被保険者 | 死亡保険金受取人 | 税金の種類 |
契約者と被保険者が同一人の場合 | A(例)夫 | A(例)夫 | B(例)妻 | 相続税 |
契約者と受取人が同一人の場合 | A(例)夫 | B(例)妻 | A(例)夫 | 所得税 |
契約者、被保険者、受取人がそれぞれ異なる場合 | A(例)夫 | B(例)妻 | C( 例)子 | 贈与税 |
契約者と被保険者が同一で、死亡保険金受取人のみ違う場合は相続税の対象となる。
現預金・株式・不動産などの相続財産と保険金を合わせて、課税遺産総額が決定される仕組みだ。
ただ、保険金はすべて課税対象になるわけではない。
「500万円×法定相続人の数」は保険金を非課税で受け取ることができる。
法定相続人が1人の場合は500万円、2人の場合は1,000万円、3人の場合は1,500万円まで非課税になるわけだ。
相続を放棄した人がいたとしても、法定相続人の人数としてはカウントできる。
相続税にも基礎控除が認められており、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算できる。
つまり、相続財産が5,000万円で相続人が2人の場合、4,200万円が控除されて800万円が課税対象となるのだ。
なぜ一時払い終身保険が相続税対策になるのか
一時払い終身保険が相続税対策に役立つのは、基礎控除とは別枠で非課税枠を活用できるからだ。
「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の基礎控除額よりも相続財産が大きい場合は、保険金の非課税枠が非常に役立つのである。
3,000万円+1,200万円=4,200万円 5,000万円-4,200万円=800万円に対しては税金がかかる。
保険金なしの相続財産は4,000万円であるため、基礎控除の範囲内。500万円×2=1,000万円なので、保険金に対しても税金がかからない。
現預金を保険金に変えることで、非課税を有効に活用できる。
相続する遺産額が大きくて相続税がかかりそうな場合は、節税して遺族の負担を軽減するためにも一時払い終身保険を活用すると良いだろう。
相続税対策で一時払い終身保険を利用する際の注意点
相続税対策で一時払い終身保険を利用する際の注意点は以下のとおりだ。
- 相続税対策を行う必要があるか検討する
- 相続税の課税対象となる契約になっているか確認する
非課税枠を活用できる一時払終身保険だが、遺産総額によっては基礎控除だけで十分なケースもある。
せっかく手間をかけて契約しても、相続税対策のためにならない可能性があるのだ。
一時払終身保険に加入する前に、相続税対策を行う必要があるか検討しよう。
また、契約形態が相続税の課税対象であるかも確認しなければならない。
契約形態によっては所得税や贈与税の対象となり、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠の対象外になってしまうからだ。
契約者と被保険者が同一で、保険金受取人が違う場合は相続税の対象である。
そのほかの契約になっていないか加入前に確認しておこう。
あなたにとって最適な選択を
今回は一時払い終身保険に焦点を当て、80代の方向けにポイントを解説してきた。
しかし、「いつ・どんな人が保険に加入するか」で最適なプランは異なる。つまり、同じ80代であっても、性別や独身・既婚などのステイタスによってその最適解は変わってくるということだ。
年齢別におすすめの保険や60代におすすめの保険をまとめたこちらの記事も参考にしていただくと、より80代のあなたに合った保険を見つけることができるだろう。
一時払い終身保険は80歳以上でも加入できる可能性がある!
本記事では、一時払い終身保険の特徴、および80歳以上の方の一時払い終身保険への加入可否と相続税対策としての利用方法について解説した。
一時払い終身保険は80歳以上でも加入できる可能性がある。
加入する最大のメリットは、受取人を指定することで相続税対策に結びつけられることだろう。
ただ、加入条件は年齢を重ねるほどに厳しくなり、保険料も高額になる傾向がある。
加入するべきかは慎重に判断してほしい。
また、本記事の内容だけでは、一時払い終身保険に入るべきかわからないという人は保険のプロに相談することも検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、一時払い終身保険が自分に必要なのか判断できるはずだ。
また、保険のプロは数多く存在し、その中から自分にとって最適な担当を見つけるのは難しいだろう。
そんな時はマッチングサイト「生命保険ナビ」を使えば、自身の条件に合った保険のプロを簡単に見つけることができる。
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