- 公的医療保険の適用範囲を知りたい
- 公的医療保険と民間医療保険を上手に組み合わせて利用したい
- 民間医療保険を利用する際に注意すべき点を知りたい
国民皆保険制度が導入されている日本では、全ての国民が公的医療保険に加入しており、これにより少ない自己負担額で治療を受けることができる。
しかし、公的医療保険の保障範囲は限定的なため、適用範囲外の費用については、民間の医療保険で補うことが必要になる。
果たして二つの制度の上手な活用法を、皆さんは正しく理解できているだろうか。
そこで本記事では、公的医療保険の適用範囲と民間医療保険の活用法、およびその際の注意点について解説する。
ぜひ参考にして、公的医療保険と民間医療保険を上手に組み合わせて利用できるようになってほしい。
公的医療保険の適用範囲とは
「公的医療保険の適用範囲は?」と聞かれても、すべて応えられない人も多いだろう。
しかし、公的医療保険が適用される内容について知っていると、自分にとってベストな民間医療保険を探し出せる。
ここでは公的医療保険について1つ1つ解説していくので、民間医療保険を選ぶ際にぜひ参考にしてほしい。
公的医療保険の種類と概要
公的医療保険とは、すべての日本国民(日本に住んでいる人)が加入しなければならない保険のことを指す。
すべての国民が加入することで、ケガや病気をしたときに全額自己負担する必要がないなどのメリットがあるのだ。
働き方などによって加入する公的医療保険が異なるため、以下の表で詳しく紹介していくので確認していこう。
健康保険 | 国民健康保険 | 後期高齢者医療制度 | |
---|---|---|---|
年齢 | 74歳以下 | 74歳以下 | 75歳以上 ※障害認定:65歳以上 |
自己負担割合 | 原則3割 0~5歳:2割 69~74歳:2割 ※現役並みの所得あり:3割 | 原則3割 0~5歳:2割 69~74歳:2割 ※現役並みの所得あり:3割 | 原則1割 一定以上の所得あり:2割 現役並みの所得あり:3割 |
対象者 | 会社員 パート アルバイト ※条件を満たす場合 | 自営業 無職 パート アルバイト | 75歳以上のすべての人 |
保険料 | 会社と折半(労使折半) | 全額自己負担 | 全額自己負担 |
扶養制度 | あり | なし | なし |
このように、年齢や働き方によって自己負担割合や保険料の支払い方が異なる。
また、健康保険では扶養制度を利用できるが、国民健康保険では扶養制度がないので注意が必要である。
公的医療保険が適用される費用
上記で医療費の自己負担額割合について触れたが、他にも公的医療保険で受け取れる保険金がある。
ここでは、公的医療保険が適用される費用について解説していくので、「公的医療保険でどのような部分がカバーされるのか」について学んでいこう。
上記で紹介した「健康保険」と「国民健康保険」で受けられる保障が異なるため、下記の表を参考にしてほしい。
適用される費用 | 健康保険 | 国民健康保険 |
---|---|---|
①高額療養費 | 〇 | 〇 |
②入院時食事療養費 | 〇 | 〇 |
③入院時生活療養費 | 〇 | 〇 |
④傷病手当金 | 〇 | ✕ |
⑤出産手当金 | 〇 | ✕ |
⑥出産育児一時金 | 〇 | 〇 |
⑦埋葬料・家族埋葬料 | 〇 | 〇 |
各保険金の詳細
①高額療養費
高額療養費とは、被保険者の医療費が自己負担限度額を超えた場合、差額を払い戻す制度のことを指す。自己負担限度額は年齢や年収で異なるため、注意が必要である。
②入院時食事療養費
入院時食事療養費とは、被保険者が病気やケガが原因で入院した際の自己負担額を軽減できる制度のことを指す。入院時食事療養費制度を利用すれば、原則「1食460円」の自己負担額で食事ができる。
③入院時生活療養費
入院時生活療養費とは、65~74歳の被保険者が入院する場合、食事代と住居費の負担額を軽減させる制度のことだ。原則「食事代460円」「居住費370円」となっている。
④傷病手当金(国民健康保険:適用外)
〈受給金額:標準報酬日額×2/3=1日あたりの支給額〉
傷病手当金とは、被保険者が病気やケガが原因で3日連続で会社を休んだ際に4日目から受け取れる手当金のことを指す。最長1年6ヶ月の間、傷病手当金を受給できるため、安心して治療に専念できるのだ。
⑤出産手当金(国民健康保険:適用外)
〈受給金額:標準報酬日額相当額×2/3=1日あたりの支給額〉
出産手当金とは、被保険者が出産のために会社を休んだ際に受け取れる手当金のことを指す。出産日以前42日、出産後56日間受給可能である。
⑤出産育児一時金
出産育児一時金とは、被保険者や被扶養者が子どもを出産した際に「1人につき500,000円」の一時金を受け取ることができることを指す。
⑦埋葬料・家族埋葬料
埋葬料・家族埋葬料とは、被保険者や被扶養者が死亡した際に受け取れる保険金のことを指す。生計を共にしていた家族・葬儀を行う人が「50,000円」受け取ることが可能だ。
以上のような保障を受けられるため、公的医療保険の範囲を知っておくことは非常に重要である。
公的医療保険の適用範囲外になる費用
幅広い部分をカバーできる公的医療保険だが、適用範囲外になる部分もあるのだ。
この部分を民間医療保険でカバーすることが必要になるため、「どのような部分が公的医療保険でカバーできないか」について学んでいこう。
- 入院時の差額ベッド代(個室などを利用する場合)
- 入院時の食事代
- 入院時に必要な日用品などの購入費
- 高度先進医療費
- 正常分娩
- 保険適用外の治療費など
- 予防注射
- 美容整形手術
- 整骨院やマッサージなどの施術
- 健康診断や人間ドックなどの検査
- 医師から「治療が必要」と判断されなかったもの
- 仕事が原因で患った病気・ケガ(労災保険)
- 通勤中に起きた事故(労災保険)
- 上記理由から家族にサポートしてもらう場合の交通費など
このように、公的医療保険だけではカバーしきれない部分が多くあるため、どのようにカバーしていくか考えていかなければならない。
公的医療保険が適用されない場合はどうするか
上記「公的医療保険の適用範囲外になる費用」で紹介した項目は、公的医療保険を適用できないため、どのようにカバーしていくか考えておく必要がある。
ここでは、公的医療保険で適用されない部分をカバーする方法を紹介していくので、今後の参考にしてみてはいかがだろうか。
預貯金を増やしておく
もしものシーンに備えて、預貯金を増やしておく方法も1つの選択である。
ここで言う預貯金とは、「老後のための資金」「子どものための教育資金」とは別に「もしものシーンに備えた資金」を指す。
生命保険文化センターが行った調査(令和元年度)では、入院したときの平均的な自己負担額は約210,000円という調査結果が発表されている。
※病気やケガの状態などで入院に必要な費用は異なる
この調査結果だけで考えれば「預貯金が約210,000円」あれば、もしものシーンに備えられる可能性が高い。
しかし、長期間入院する必要のある病気などを患ってしまうと、210,000円よりも高額になることを覚えておこう。
だが、すべての人が預貯金で対応するのは難しい傾向にある。
例えば、「配偶者が専業主婦(主夫)、もしくは扶養内勤務+子どもがいる」という家族構成であれば、預貯金だけでは不安に感じるシーンも多いと予測できる。
「〇日程の入院で完治しますよ」と診断されていても、「検査をしたら別の病気で長期間入院する必要がある」などの状況に陥ってしまうケースもある。
入院のサポートを行うために、配偶者が仕事を休む(辞める)と収入が無くなってしまう可能性も否めないのだ。
預貯金でもしものシーンに備える方法は、保険に加入すると必要になる保険料の支払いがなく、病気などにならなかった場合は他の物事にお金をかけられるメリットがある。
しかし、長期間入院が必要になる可能性が0ではないため、預貯金だけに頼る方法が不向きな家族構成があることを知っておく必要があるだろう。
独身であっても、病気(ケガ)が原因で働けなくなるケースもあるため、しっかりと考えていかなければならない。
民間医療保険の必要性
もう1つの方法として、民間医療保険に加入するという方法がある。
公的医療保険ではカバーできない部分を民間医療保険でカバーし、もしものシーンに陥っても経済的負担を減らせるため、代表的な方法だと言える。
自分が求めている保障範囲に合わせて、シンプルな保険から手厚いサポートを受けられる保険を選ぶことができる。
また、「ここだけサポートを手厚いものに変えたい」と思う部分のみ、特約を付帯させることで叶えられるのだ。
終身型と定期型があるため、保険料や保険に加入する目的から適した保険を選べるのも嬉しいポイントだろう。
人によってベストな保険は異なるため、自分に適した保険を選ぶことが重要になる。
預貯金が少ない人の場合、保険に加入していないと、「どうやってお金を用意しよう…」とストレスに感じてしまうだろう。
しかし、保険に加入していれば、入院時に一時金を受け取れる・入院日数に応じて保険金を受け取れるなどの方法でサポートしてもらえるのだ。
また、「配偶者が専業主婦(主夫)、もしくは扶養内勤務+子どもがいる」という人でも、預貯金が大きく減ることなく経済的負担を軽減できるため、前向きに治療に挑めるようになるはずだ。
病気を患う・ケガをするなどの状態になると、ネガティブに考えてしまうことも多い。
しかし、民間医療保険でカバーできるように環境を整えておけば、ポジティブに考えられるようになる可能性が高くなる。
民間医療保険はどこまでカバーできるのか
民間医療保険に加入することで「どこまでカバーできるのか」を知り、「自分に保険は必要か?」「どのような保険に加入するべきか?」について考えていこう。
- 入院給付金:入院するときの保障
- 手術給付金:手術を受けるときの保障
- 先進医療給付金:先進医療を受けるときの保障
- 通院給付金:通院するときの保障
- 放射線治療給付金:放射線治療を受けるときの保障
- 特約:保障内容を手厚くしたいとき
入院給付金:入院するときの保障
病気やケガが原因で入院が必要になった場合、入院給付金を受け取れる。
保険会社によって異なるが「入院〇日目から支給」などの条件があり、入院給付金日額(例:5000円×入院日数)で給付金額が決まるのだ。
上記「公的医療保険の適用範囲外になる費用」で紹介した通り、公的医療保険が適用されない部分に充てることができるため、サポート力の高い保障内容だと言える。
支払限度額日数というものが設定されているケースが一般的で、「30日・60日・120日」などがある。
そのため、長期間入院が必要になる場合は注意しなければならない。
また、「通算〇〇〇日」などの支払限度日数もあるため、保障内容をしっかりと確認して選ぶ必要がある、
手術給付金:手術を受けるときの保障
保険会社が定めている手術を受けた場合、手術給付金を受け取れる。
保険会社によって異なるが、「入院給付金日額×給付倍率」で手術給付金の金額を求めるのが一般的だ。
給付倍率は保険会社が定めた倍率のことで、「〇〇手術は20倍(入院給付金日額10,000円)」というケースであれば、200,000円の手術給付金を受け取れる。
「外来手術」か「入院+手術」などによっても倍率が異なる保険もあるため、複数の保険を見比べるといい。
先進医療給付金:先進医療を受けるときの保障
先進医療とは厚生労働大臣が効果を認めた治療法のことで、治療費が高額になる傾向がある。
「先進医療で病気の治療をしたい」と考えた場合、公的医療保険が適用されないため全額自己負担になり、経済的負担が大きいのだ。
しかし、先進医療の保障があれば「1回〇万円支給」などの保障を受けられるため、幅広い選択肢から治療法を選べるのは大きなメリットである。
通院給付金:通院するときの保障
例えば、病気になり治療をすべく入院をしても、入院中に完治しないケースも0ではない。
そのため、退院後も通院が必要になることがあるのだ。
「検査があるから、仕事を休まないといけない」「子どものサポ―トを親に頼むための交通費を渡さないといけない」「病院までの交通費が必要」など、通院には経済的負担がのしかかる。
しかし、通院の保障があれば、収入減少分のカバーや交通費に充てることが可能になるため経済的負担が軽くなるだろう。
放射線治療給付金:放射線治療を受けるときの保障
保険会社が指定している放射線治療を受けた場合、放射線治療給付金を受け取ることが可能だ。
がん治療やバセドウ病などさまざまな病気で活用されているからこそ、給付金を受け取れるのは大きなサポートになるだろう。
例えば、がん治療で放射線治療を行った場合、疲労感・食欲不振・むかつき(嘔吐)・頭痛などの副作用が出るケースが多い。
そのようなシーンで、家族にサポートしてもらうなどの選択をする際にも給付金から交通費などを渡せるので、経済的不安を感じることなく治療を行える。
特約:保障内容を手厚くしたいとき
年齢や性別などによっては、「この部分の保障を手厚くしたい」と考える人も多く、そのようなシーンで活躍するのは〈特約〉である。
特約とは、主契約に付帯できるオプションのようなもので、女性特有の病気を発病すると保険金が上乗せされる特約など、さまざまな種類の特約を付けられるのだ。
代表的な特約を一部紹介するので、今後の参考にしてみてはいかがだろうか。
- 三大疾病保障特約:三大疾病を患った際に保険金を受け取れる
- 特定疾病支払限度無制限特約:特定の病気を患うと、支払限度日数が無制限になる
- 入院一時金特約:入院する際に一時金でまとまった金額を受け取れる
- がん特約:がんを患った際に保障内容を手厚くできる(一時金など)
- 女性疾病特約:女性特有の病気を患うと、手厚い保障を受けられる
- 保険料払込免除特約(特則):条件に当てはまる人は、保険料の払込が免除される
以上のように、さまざまな保障内容などが用意されているので、自分にあった保険を選ぶといいだろう。
上記で紹介した保障内容は代表的な内容のため、保障内容が保険会社によって異なるケースがあるので注意してほしい。
民間医療保険を利用する際の注意点
上記で民間医療保険について解説したが、民間医療保険を利用する際に注意してほしいポイントがあるため、1つ1つ解説していくので参考にしてほしい。
加入には審査が必要になる
民間医療保険の場合、加入するには審査が必要になるのだ。
「審査って、どんなことを調べるの?」と不安に感じる人もいるだろう。今回は、保険会社がどのような審査を行うか代表的な例を紹介していく。
①健康状態について
健康状態について、過去に患った病気・現在の健康状態(持病など)を正しく告知していかなければならない。
例えば、健康診断などで「血圧が高い」などの理由から要検査になっている場合、審査に影響する可能性がある。
保険によっては、保険会社が指定した医師に診査をしてもらうケースもあるため、覚えておくといいだろう。
もし、健康状態に自信がない人は、持病があっても加入しやすい保険があるので、そのような保険に加入するのも1つの選択だと言える。
②職業について
他の人よりも「危険性の高い職業」であれば、審査に影響する可能性が高い。
例えば以下の通りである。
- 格闘家
- 爆破作業員
- 漁船乗組員
- 高圧電気取扱者
- 高所作業車
- 航空搭乗員 など
このような職業は、一般事務などの職業に比べると「ケガをするリスクが高い」ため、保険に加入できないケースがあるのだ。
③道徳上の審査
「道徳上」と聞くと難しく感じてしまうが、簡単に言えば「医療保険で不正な使い方をしないか」「反社会的勢力に該当しないか」ということである。
収入よりも保険金が高く設定されているなどのケースは、犯罪に関与する可能性があるため、断られるケースがある。
保険料で家計に負担がかかる可能性がある
リスクに備えるためには、保険料を支払わなければならない。
しかし、正しい保険料に設定していなければ、家計に大きく負担がかかる可能性があるのだ。
例えば、「もしものシーンで困りたくない」という理由から、手厚いサポートの保険に複数の特約を付帯させていると保険料は高額になる。
そのため、「自分に必要な保障はどれか」というポイントをハッキリとさせ、支払い続けられる保険料に設定することが大切だ。
ライフステージに合った保障内容を選ぶ必要がある
医療保険はライフステージに合わせて、保障内容を選ぶ必要があるのだ。
独身のときに加入した医療保険であれば、結婚や妊娠(出産)などのタイミングで見直すことが重要である。
年齢・家族構成などによって、保障を手厚くする・特約をつけてもしものシーンに備えるなど幅広い選択肢から選んでいかなければならない。
しかし、実際に自分のライフステージにあった保険を見つけることに難易度の高さを感じてしまう人もいるだろう。
保険料を高額にしないよう、自分にベストな保険を見つけるのは難しいのも事実だ。
そのように悩んでいる人におすすめなのが、保険のプロに相談するということである。
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まとめ
本記事では、公的医療保険の適用範囲と民間医療保険の活用法、およびその際の注意点について解説した。
公的医療保険は治療費から出産に関する費用までを年齢に応じた割合で賄うことができる。
ただ、入院時の一部費用には適用されないものもあるため、貯蓄の他民間医療保険も活用し、備える必要があるだろう。
ただ、民間医療保険は商品によって加入条件や保険料が異なる。
そのため、本記事の内容だけではどの医療保険に入るべきか判断できないという人は、保険のプロに相談することも積極的に検討してほしい。
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