- 医療保険における先進医療の対象が知りたい
- 先進医療特約を利用すべきか判断する基準がわからない
- 先進医療特約を利用する際の注意点が知りたい
先進医療とは、厚生労働大臣が承認する高度な技術を必要とする手術方法のことを指す。
通常の医療保険では先進医療は保険対象外で、全額自己負担となる。
ただ、医療保険には主契約に加えて保障内容を拡張する特約を付けることが可能で、先進医療も特約により費用を負担してもらえる。
では、実際にはどのように活用すれば良いのだろうか。
そこで本記事では、医療保険における先進医療の概要と先進医療特約の必要性、さらに特約を利用する際の注意点について解説する。
先進医療特約を利用するべきか悩んでいるという方には、ぜひ参考にしてほしい。
医療保険における先進医療とは
まずは、先進医療の基本事項や治療内容の種類を解説する。
そのうえで、対象となる部分や保険で備えられる機能、保障範囲について説明する。
先進医療とはなにか
先進医療とは、新たに開発された手術法や治療法のうち、国が承認・認可しているものを指す。
大学や研究施設での最新の治療や高度な手術などがこれにあたる。
有効性や安全性を確認し、公的保険の対象として認めるかどうか判断する段階の治療であり、適宜見直されている。
効果が高ければ公的保険に移行する一方で、有用性や安全性の面で適応外になることもある。
例えば、前立腺がんに対する重粒子線治療は、2018年に先進医療から公的保険へと変更になった。
先進医療には保険が適用されず、治療費は自己負担となる。
日本の医療保険制度では、保険診療と保険外診療の併用は原則禁止されており、保険外診療となった段階で、全ての診察・治療が保険外になり自身で支払う仕組みになっている。
自己負担が一気に跳ね上がることから、自由診療を選択する幅を狭めている問題も一面としてあるのだ。
そこで、先進医療に限っては、保険診療の部分を公的保険として扱う混合診療が特別に認められている。
厚生労働省が承認している先進医療は、将来的に公的保険の対象へ移行する可能性があることから例外的に混合診療が認められているのだ。
2021年から2022年の1年間で、先進医療を利用した人数は26,556人だった。
人数としてはまだまだ少ない。ただ、日々医療は進歩している。
今後その発展にともなって先進医療に該当する数も増加し、利用する人の数も増えることが予想される。
先進医療の治療や技術の種類
現在、先進医療には81種類が指定され、先進医療Aと先進医療Bの2つに分かれている。
両者の特徴や主な治療法はそれぞれ次のとおりだ。
先進医療A
使用する医薬品や医療機器が薬機法上などの認証・承認を得ているものが含まれる。
安全性が極めて高く、公的保険へ移行する可能性が高い。
現在28種類が指定されており、放射線治療の一つである陽子線治療や重粒子線治療、細胞診検体を用いた遺伝子検査などがんの治療や診断があてはまる。
他に不妊症の二段階胚移植術、慢性閉塞性動脈硬化症の血管再生治療、家族性アルツハイマー病の遺伝子診断などがある。
先進医療B
薬機法上の承認が得られていない医療機器や技術、薬剤を用いるもの、または承認されているが、実施にあたって評価や判断をしなければならないものが分類される。
現在は53種類あり、成人T細胞白血病リンパ腫の投薬治療、早期乳がんのラジオ波焼灼療法、胃がんのリンパ節生検、再発した子宮頸がんの体外循環動注化学療法などが対象となっている。
先進医療は保険で備えられる
先進医療は、疾病や症状の改善効果が高いと期待できるが、高額な治療費がかかる。
例えば、がんの治療に用いられる陽子線治療は約269万円、重粒子線治療は約316万円だ。
これらの先進医療で必要な費用には、がん保険や医療保険に付加する先進医療特約が活用できる。
この特約をつけていれば、先進医療の治療費に対し原則同じ額の給付金を受けられる。
経済的な理由で先進医療をあきらめてしまうことなく、希望どおりの治療を選択できるのだ。
現在多くの保険会社でさまざまな保障内容の先進医療特約が扱われている。
医療保険に加入する際は、主契約だけでなく特約についても事前に確認しておくと良いだろう。
医療保険に先進医療特約は必要か
前述の通り、現状で先進医療を受けている人数は決して多くない。
自分がそのような状態になる確率も低いのに、特約を付けてまで準備する必要はあるのかと疑問に感じる人もいるかもしれない。
しかし先進医療特約は、いざというときに大きな金額を保障する重要な役割を果たす。
ここでは先進医療特約の必要性について確認していこう。
先進医療の治療で負担する費用
先進医療を選ぶ場合、いくらぐらいの費用がかかるのだろうか。
次に主な先進医療のおおよその金額を挙げる。
先進医療技術 | 技術料(1件当たりの平均) |
---|---|
陽子線治療 | 2,692,988円 |
重粒子線 | 3,162,781円 |
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術及び十二指腸空腸バイパス術 | 723,742円 |
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 | 301,951円 |
腹腔鏡下膀胱尿管逆流防止術 | 246,900円 |
子宮内膜受容能検査 | 123,437円 |
特に高額なのは、ガンの治療に用いられる陽子線治療や重粒子線治療だ。
例えば、がんを患い検査や診察、入院など公的医療保険制度の対象になる費用が50万円、先進医療(重粒子線治療)の費用に300万円かかったとしよう。
公的医療保険として扱われる部分の自己負担割合を3割とすると、50万円のうち15万円が自己負担額だ。
先進医療の部分は保険外のため、すべて自己負担となる。
そのため、このがん治療で支払う金額の合計は、315万円となる。
- 公的保険自己負担:150,000円
- 先進医療自己負担:3,000,000円
ただし、公的保険の治療費については、1ヶ月間に支払った金額が年齢や年収によって決められた自己負担限度額を超えた場合、上回った部分は還付される「高額療養費制度」を活用することができる。
とはいえ、何百万円もの治療費を治療後に一括で医療機関へ支払わなければいけないことを考えると、負担が大きいと感じる人も多いだろう。
さらに、がん治療は先進医療だけを受ければ完治というわけではない。
その後の検査や通院治療などは続き、負担はさらに大きくなる可能性がある。
医療保険に先進医療特約を付加するメリット
先進医療の治療は「受ける可能性は低い一方で、万が一受けた場合の経済的損失が大きい」といえる。
そのようなリスクのコントロールは、保険が得意とする部分だ。
先進医療特約を付加していれば、より効果の高い最新の治療を検討することができる。
費用面を理由に治療を諦めることなく、ニーズにあった治療を選択できるのだ。
医療は日々進歩しており、今後先進医療と認められる治療法も増えていくだろう。
それらを、経済的な負担を気にせず幅広く選択できるようにするには、先進医療特約の存在が重要になってくる。
がんになった時や病状が悪化した時、「あの治療をしておけば良かった」と自分や家族が後悔するのは、誰しも避けたいはずだ。
大切なのは、病気になってしまった時に、治療の選択肢として先進医療も含めた幅広い選択が出来ることだ。
先進医療特約があれば、大病を患ったときに納得できる治療を選ぶための準備と心構えができるはずだ。
「病気と闘うための保障」「選択肢を狭めないための保障」として、日々進歩する医療技術を踏まえた治療が選択できるよう検討してみてはいかがだろうか。
先進医療特約で支払われる金額
先進医療特約を付けた場合の支払い事例を具体的に見ていこう。
オリックス生命の「医療保険キュア・ネクスト」に加入し、肺がんで20日間入院、陽子線治療を受けた例を説明する。
主な契約内容は次のとおりとする。
- 疾病入院給付金(日額10,000円コース)
- がん一時金特約(100万円)
- 先進医療特約あり
支払われる給付金は次のとおりだ。
- 疾病入院給付金:20万円(日額10,000円×20日)
- がん一時金:100万円
- 先進医療給付金:269万円(実費※)
- 先進医療一時金:26.9万(先進医療給付金の10%相当)
医療保険キュア・ネクストのように、先進医療の治療で発生した実費とは別に一時金を受け取れるものもある。
病院までの交通費や宿泊代、その他の雑費を補うのに役立つ。
先進医療特約の追加保険料は商品によって異なるが、ひと月あたり数百円ほどだ。
少ない保険料で大きな保障を得られ、治療の選択肢を広げられることを念頭に置き、検討してみてほしい。
また、給付金を直接支払いするサービスが付いている商品もある。
これは高額な治療に限り契約者への保険金支払いではなく、保険会社から医療機関へ直接支払いをするサービスだ。
被保険者が高額な医療費を用意し立て替える必要がなくなるため、費用負担の心配をせずに済む。
先進医療特約を利用する際の注意点
ここまで、先進医療の仕組みやその重要性について解説した。
最後の章では、実際に先進医療特約を付加するときに注意すべきポイントを説明する。
限度額や保障範囲を理解しておく
先進医療特約では、生じた治療費が限度額の範囲内で全額保障される。
回数や一疾病当たりの限度額はなく、通算で支払った金額を基準に受け取った給付金が限度額を超えると支払いは終了する。
従来、限度額は1,000万円であったが、治療費の高額化に対応するため現在は2,000万円が主流になっている。
また、合わせて確認したいのが保障範囲だ。
まず、先進医療特約が利用できる医療施設に限りがあることに注意してほしい。
先進医療の技術と同等の診察や検査を行っている医療機関であっても、厚生労働省から承認を受けていなければ「先進医療」とは認められない。
なお、先進医療を行っている医療機関は厚生労働省のホームページに掲載されているため参考にしてほしい。
次に、特約の対象となるのは契約時点ではなく、治療開始時点で認められている技術となる。
契約時は先進医療だったが、その後除外となった場合は支払いの対象外となってしまう。
このように先進医療特約は日々支払い対象が変化するため、最新の内容を確認しておかなければならない。
さらに、給付金を受けられる疾病は保険責任開始日以降に発症したものに限る。
例えば契約申し込み前にがんの告知を受けていた、疾病の治療中だったものは責任開始日後に手術をしたとしても保険金を受け取ることができない。
医療保険は必要と感じたタイミングでは役立たないことがある。健康なうちにできるだけ早く保険を準備しておきたい。
更新型か終身型か確認する
先進医療特約の保障期間は定期型、終身型の2種類がある。
どちらのタイプにするかは医療保険の主契約とは別に個別で選択できる。
定期型は、保障期間は5年・10年間など期限が設けられ、都度更新をしていく。更新の度に保険の見直しがしやすい。
一方で、更新時点での年齢で保険料が見直されるため、年々保険料が上がることが多い。
終身型は、一度加入すれば一生涯保障が続く。
保険料は加入時と変わらず同じ保障を受けられ、うっかり保障が切れてしまっていたといった心配がない。
しかし、保険料がもともと高めに設定されていることが多い。
それぞれの特徴を踏まえたうえで、自分にとってどちらが最適か検討してほしい。
1つの医療保険にしか付加できない
先進医療特約は、同じ保険会社内では1つの保険にしか付けられない。
複数の保険に加入しそれぞれに特約を付加したとしても、重複して給付金を受け取れないため保険料が無駄になってしまう。
そのため、既に加入している保険契約に先進医療特約がついていないかよく確認しておこう。
また。この機会に自分が加入している保障内容を一度確認してみるのもおすすめだ。
どの先進医療特約がいいのか、現在契約している保険の内容を詳しく理解したい場合は、保険のプロに相談する方法もある。
複数の保険商品を扱う担当者であれば、一度に比較検討ができる。
効率的に最適な組み合わせが見つかるため、一度利用を検討してみてはいかがだろうか。
まとめ
本記事では、医療保険における先進医療の概要と先進医療特約の必要性、さらに特約を利用する際の注意点について解説した。
陽子線治療や前立腺針生検法などの先進医療は、医療保険に加入していても全額自己負担となる。
この手術の金額を保障してくれるのが、先進医療特約である。
ただ、先進医療特約を利用する際は、上限金額が決まっていたり利用できる施設も限られるなど注意すべき点が多い。
そのため、必要性や特約の正しい活用法について少しでも疑問や不安があれば、保険のプロに相談することも積極的に検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、特約の必要性を的確に判断し、安心して医療保険を利用できるはずだ。
また、保険のプロは数多く存在し、その中から自分にとって最適な担当を見つけるのは難しいだろう。
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