- 医療保険の要否は「対象外費用・収入減・貯蓄」の3軸で判断できる。
- 入院時の自己負担費用は平均18.7万円、逸失収入を含めると平均25.3万円と報告されている。
- 以下で後悔パターン、落とし穴、判断フロー、代替策を詳しく解説する。
「医療保険に入っていなくて、あとで後悔したらどうしよう」——そんな不安を抱えていないだろうか。
公的保険があるから大丈夫という声もあれば、万一のときに困るという意見もある。結局、自分はどちらなのかがわからないまま、判断を先送りにしている人は多い。
後悔が起きやすい場面と、入る・入らないを決めるための判断基準を整理すれば、自分の条件で答えを出せるようになる。
医療保険に入らないと後悔する典型パターン
後悔は「医療費」だけで起きるわけではない。自己負担、収入減、加入可否、家族負担——この4つの切り口で整理すると、どこにリスクがあるのかが見えてくる。
医療保険に入らなかった人が「しまった」と感じる場面は、大きく次の4類型に分かれる。
- 想定外の自己負担が発生した
- 長期入院・通院で収入が減った
- 健康状態の変化で加入できなくなった
- 家族の負担が増えた
どれか一つでも当てはまると、家計や生活に影響が出やすい。順番に見ていこう。
想定外の自己負担が発生した
公的医療保険でカバーされない費用が重なると、思った以上にお金がかかる。代表的なのが差額ベッド代と入院中の食費だ。
厚生労働省の集計によると、差額ベッド代の平均徴収額(推計)は1人室で8,625円/日、全体平均でも6,862円/日となっている(2024年8月1日時点)。入院が10日続けば、1人室なら8万円以上が上乗せされる計算だ。
入院中の食費も自己負担がある。一般所得者の場合、1食510円(令和7年4月〜)と示されている。1日3食で1,530円、30日なら約4万5,000円になる。
長期入院・通院で収入が減った
入院や療養が続くと、医療費とは別に「働けない期間の収入減」が家計を揺らす。調査によると、入院で逸失収入が「あり」と答えた人は18.3%(N=854)で、ありの場合の平均は27.3万円(N=160)と報告されている。
会社員であれば、健康保険から傷病手当金が支給される。協会けんぽの説明では、支給額は「支給開始日以前12か月の平均標準報酬月額÷30日×2/3」で、支給期間は支給開始日から通算して1年6か月だ。
ただし、傷病手当金があっても収入は約3分の2に減る。住宅ローンや教育費など固定費が大きい家庭では、この差額が重くのしかかる可能性がある。自営業やフリーランスには傷病手当金自体がない点も見落としやすい。
健康状態で加入できなくなった
「いつか入ればいい」と先送りしていると、健康診断で指摘を受けたり、通院歴ができたりして、希望する保険に入れなくなることがある。
民間の医療保険は加入時に健康状態の告知が求められる。過去の病歴や現在の治療状況によっては、加入を断られたり、特定の病気が保障対象外になったりする場合がある。
「入りたいときに入れない」という後悔は、金額では測れない。選択肢が狭まる前に、自分の条件で加入できるかどうかを一度確認しておくと安心だ。
家族の負担が増えた
入院や療養中は、本人だけでなく家族にも負担がかかる。お金の問題だけではない。
付き添いや見舞いの時間、各種手続きの代行、生活リズムの調整——こうしたタスクが家族に集中しやすい。共働き世帯や小さな子どもがいる家庭では、負担の偏りがストレスにつながることもある。
事前に「入院時の連絡先」「治療方針の意思決定者」「必要書類の保管場所」などを家族で共有しておくと、いざというときの混乱を減らせる。
後悔のパターンがわかったところで、次は「入らない理由」に潜む落とし穴を確認しよう。
医療保険に入らない理由と落とし穴
「入らない」という判断自体は悪くない。問題は、その根拠が正しいかどうかだ。よくある4つの理由と、それぞれに潜む落とし穴を整理する。
公的医療保険で十分と思った
日本の公的医療保険は手厚い。医療費の自己負担は原則3割で、高額療養費制度もある。「だから民間保険は不要」と考える人は少なくない。
ただし、公的保険には対象外の費用がある。差額ベッド代の平均は1人室で8,625円/日、食費は1食510円。これらは高額療養費の計算に含まれない。
「公的で十分」と判断するなら、対象外費用まで含めて試算したうえで結論を出す必要がある。
高額療養費制度があると考えた
高額療養費制度は、医療費の自己負担に月ごとの上限を設ける仕組みだ。70歳未満で標準報酬月額28万〜50万円(区分ウ)の場合、上限は「80,100円+(総医療費−267,000円)×1%」で計算される。4か月目以降の多数該当なら44,400円まで下がる。
ただし、落とし穴が2つある。
1つ目は立替だ。高額療養費は原則として後から払い戻される仕組みのため、窓口では一度全額を支払う必要がある。事前に「限度額適用認定証」を取得するか、マイナ保険証で限度額情報の提供に同意しておくと、窓口負担を限度額まで抑えられる。
2つ目は合算条件だ。70歳未満の場合、同一月内に同一世帯で21,000円以上の自己負担が複数あるときに合算対象となる。この条件を知らないと、合算できるはずの費用を見落とすことがある。
健康に自信があった
「自分は健康だから病気にならない」——そう考えるのは自然なことだ。ただ、保険の役割は「確率」ではなく「一撃への耐性」で考えるとわかりやすい。
調査では、入院時の自己負担費用の平均は18.7万円(N=613)と報告されている。逸失収入を加えた合計では平均25.3万円(N=524)だ。
この金額を貯蓄から出しても生活に影響がないなら、保険がなくても耐えられる。逆に、急な出費で家計が崩れるなら、保険で備える意味が出てくる。
保険料がもったいないと思った
「払った保険料より給付金が少なければ損」——期待値で考えると、保険は割に合わないように見える。
しかし、保険の本来の目的は「得をすること」ではなく「破綻を防ぐこと」だ。めったに起きないが、起きたら生活が立ち行かなくなるリスクに備える——それが保険の役割だ。
「もったいない」と感じるなら、まず「最悪の月に何が起きるか」を試算してみてほしい。その金額を貯蓄でカバーできるなら、保険を削る選択は合理的だ。
| 入らない理由 | 落とし穴 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 公的保険で十分 | 対象外費用がある | 差額ベッド代・食費を含めた試算 |
| 高額療養費がある | 立替・合算条件がある | 限度額適用の準備、21,000円ルール |
| 健康に自信がある | 一撃で家計が崩れる可能性 | 自己負担+逸失収入を貯蓄で賄えるか |
| 保険料がもったいない | 期待値と破綻回避は別の話 | 最悪月の不足額を試算 |
落とし穴を確認したら、次は「自分に保険が必要か」を判断するための比較軸を見ていこう。
医療保険が不要か判断する比較軸
「入る・入らない」を決めるカギは、5つの軸で自分の状況をチェックすることだ。公的制度、貯蓄、勤務先制度、収入減リスク、希望——この5つを確認すれば、判断材料がそろう。
公的保障でカバーされない費用
まず確認したいのは、公的保険の対象外になる費用だ。代表的なものを挙げる。
- 差額ベッド代(1人室平均8,625円/日、全体平均6,862円/日)
- 入院中の食費(一般所得者は1食510円)
- 先進医療の技術料
- 入院中の日用品、家族の交通費など
これらは高額療養費の計算に含まれない。入院が長引けば、対象外費用だけで数十万円になることもある。
なお、差額ベッド代は参考値として最低50円から最高385,000円まで報告されており、病院や部屋タイプで金額差が大きい点にも注意が必要だ(2024年8月1日時点)。
高額療養費の限度と立替
高額療養費制度の上限額は所得区分によって異なる。70歳未満・区分ウ(標準報酬月額28万〜50万円)の場合、自己負担限度額は「80,100円+(総医療費−267,000円)×1%」だ。多数該当(直近12か月で4回目以降)なら44,400円になる。
低所得者(区分オ)の場合は35,400円、多数該当で24,600円とさらに下がる。自分がどの区分に該当するかは、標準報酬月額から確認できる。
立替を減らす方法は2つある。事前に「限度額適用認定証」を取得するか、マイナ保険証で限度額情報の提供に同意しておくかだ。どちらでも窓口での支払いが限度額までに抑えられる。
休業・収入減への備え
医療費と別に考えたいのが、働けない期間の収入減だ。
会社員であれば、傷病手当金で収入の約3分の2が補填される(支給開始日から通算1年6か月)。ただし、自営業・フリーランス・専業主婦(夫)には傷病手当金がない。
調査では、入院で逸失収入が「あり」と答えた人は18.3%だ。割合としては少数派だが、ありの場合の平均は27.3万円と決して小さくない。
自分の働き方で「休んだらどうなるか」を確認し、制度で埋まらない部分をどう備えるかを考える必要がある。
貯蓄で賄える金額の目安
医療保険が不要かどうかは、最終的に「貯蓄で乗り切れるか」で決まる。
調査では、入院時の自己負担費用の平均は18.7万円、逸失収入を加えた合計は平均25.3万円と報告されている。これが一つの目安になる。
ただし、入院が長引いたり、対象外費用がかさんだりすれば、実際の負担はこれを上回る。家計の試算では「最悪の月」を想定し、以下を足し合わせて確認してみてほしい。
- 高額療養費の自己負担限度額
- 差額ベッド代(希望する場合)
- 食費・日用品など
- 固定費(住居費・ローン・保険料など)
- 収入減(傷病手当金で埋まらない部分)
治療の選択肢と入院環境の希望
最後に確認したいのが、自分の希望だ。個室に入りたいか、先進医療を選べる状態にしておきたいか——こうした希望は「対象外費用を許容できるか」という問いに置き換えられる。
集計によると、特別療養環境の病床(差額ベッド代を徴収し得る病床)は264,707床で、総病床数1,275,612床の20.8%を占める(2024年8月1日時点)。希望すれば必ず個室に入れるわけではないが、選択肢として持っておきたいなら、費用を準備しておく必要がある。
「標準治療で十分」「大部屋でかまわない」という人は、対象外費用を抑えられる分、保険の優先度が下がる。
| 比較軸 | 確認ポイント | NGサイン |
|---|---|---|
| 対象外費用 | 差額ベッド代・食費の目安 | 希望と費用がズレている |
| 高額療養費 | 所得区分・立替準備 | 限度額認定を知らない |
| 収入減 | 傷病手当金の有無 | 制度がない・足りない |
| 貯蓄 | 最悪月の不足額 | 貯蓄が生活費を下回る |
| 希望 | 個室・先進医療の優先度 | 希望が高いのに備えがない |
5軸のチェックが終わったら、「入らなくても大丈夫な人」の条件を見てみよう。
医療保険に入らないでも大丈夫な人
医療保険に入らないでも後悔しにくいのは、「資金・制度・家族・方針」の4条件がそろっている人だ。自分が当てはまるかどうか、一つずつ確認してみてほしい。
生活防衛資金が十分にある
「入らない」が成立する最大の条件は、貯蓄で乗り切れることだ。
目安としては、以下を同時に賄える状態が望ましい。
- 高額療養費の自己負担限度額(区分ウなら月8万円台)
- 対象外費用(差額ベッド代、食費など)
- 固定費×数か月分(住居費、ローン、生活費)
- 収入減があれば、その穴埋め分
入院時の自己負担費用の平均は18.7万円と報告されているが、あくまで平均値だ。長期化や対象外費用で上振れする可能性がある。余裕をもった貯蓄があれば、その分だけ心の余裕も生まれる。
勤務先や共済の上乗せ保障がある
会社員であれば、傷病手当金に加えて、勤務先独自の給付制度がある場合もある。
確認したい項目は以下のとおり。
- 病気休職中の給与保障(全額か一部か、期間は)
- 見舞金や入院補助の有無
- 団体保険や共済の加入状況
これらが手厚いなら、民間医療保険の優先度は相対的に下がる。まずは社内規程や福利厚生の案内を引っ張り出して、何がカバーされているか確認してみてほしい。
扶養家族への影響が小さい
自分が働けなくなったとき、家計にどれだけ影響が出るか。
単身で固定費が少ない人、共働きで片方の収入でも生活が回る人、子どもが独立している人——こうした条件に当てはまるなら、「入らない」のハードルは下がる。
逆に、住宅ローンの返済中、教育費がかかる時期、収入源が自分だけという状況では、影響が大きくなりやすい。
標準治療で納得できる
治療方針や入院環境にこだわりがない人も、保険の優先度は低い。
公的保険でカバーされる標準治療で十分と考えられるなら、対象外費用を心配する必要が減る。大部屋でも問題ないなら、差額ベッド代もかからない。
「選択肢を広げたい」「いざというときに自分で選びたい」という気持ちが強い人は、次の章で「入ったほうが安心な人」の条件を確認してみてほしい。
医療保険に入ったほうが安心な人
貯蓄に不安がある
急な入院で18万円、逸失収入を含めて25万円——この金額を出すと生活費が足りなくなるなら、保険で備える意味が出てくる。
調査では、入院時の自己負担費用と逸失収入の合計は平均25.3万円(N=524)と報告されている。1日あたりでは平均30,100円(N=520)だ。
貯蓄を崩すと精神的にも不安になりやすい。「万一のときの出費を保険で賄う」という設計にしておくと、貯蓄を生活防衛に集中させられる。
自営業・フリーランス・専業主婦(夫)
働き方によって、公的な収入補填の有無が変わる。
協会けんぽの傷病手当金は、支給額が平均標準報酬月額から算出され2/3となり、支給期間は支給開始日から通算1年6か月だ。しかし、国民健康保険には傷病手当金がない。自営業やフリーランスは、休んだ分だけ収入が減る。
専業主婦(夫)の場合も、入院中の家事代行や育児サポートにお金がかかることがある。「自分が動けなくなったらどうなるか」を具体的に考えてみると、答えは自然と出てくる。
家族がいる・ローンがある
家族を養っている人、住宅ローンや教育費を抱えている人は、収入減の影響が家族全体に波及しやすい。
調査では、入院で逸失収入が「あり」と答えた人は18.3%だ。割合としては多くないが、該当した場合の平均は27.3万円。ローン返済や子どもの学費と重なると、家計のやりくりが一気に厳しくなる。
「自分が倒れても家族の生活は回るか」——この問いにすぐ答えられないなら、備えを検討する余地がある。
先進医療や個室も選びたい
治療の選択肢を広げたい、入院するなら個室がいい——こうした希望がある人は、対象外費用を許容できるかどうかが分岐点になる。
差額ベッド代の平均は1人室で8,625円/日だ。10日で8万円以上、30日なら25万円を超える。先進医療の技術料は治療内容によって大きく異なり、数十万円から数百万円になることもある。
希望が強いなら、それに見合った備えが必要だ。貯蓄で準備するか、保険でカバーするかを選ぶことになる。
若く健康なうちに検討したい
保険料は年齢とともに上がる傾向があり、健康状態によっては加入を断られることもある。
「今は健康だから必要ない」という判断は間違いではない。ただ、健康なうちに条件を確認しておくと、選択肢を残せる。
加入するかどうかは別として、「自分の条件で入れるか」「保険料はいくらか」を一度調べておくと、将来の判断がしやすくなる。
ここまでで「入る側」「入らない側」の条件が整理できた。次は、実際に判断するためのフローを見ていこう。
医療保険を決める5分判断フロー
迷いを短縮するには、手順を決めて進めるのが近道だ。「棚卸し→試算→最小保障→調整」の4ステップで、自分の答えを出せるようにする。
最初に、自分が使える公的制度と勤務先制度を確認する。書類を手元に用意すると、具体的に進められる。確認したい項目:高額療養費の所得区分(標準報酬月額から判定)、傷病手当金の有無と支給水準(協会けんぽなら2/3・1年6か月)、勤務先の病気休職制度・見舞金・団体保険、加入中の共済や保険の保障内容。これらを一覧にすれば、「すでにカバーされている部分」と「穴になっている部分」が一目でわかる。
次に、入院が発生した「最悪の月」に何が起きるかを試算する。足す項目:高額療養費の自己負担限度額(区分ウなら80,100円+α)、差額ベッド代(1人室なら8,625円/日が目安)、食費(1食510円×3食×日数)、固定費(住居費、ローン、生活費など)。引ける項目:傷病手当金(あれば収入の約2/3)、勤務先からの給付。「足す項目」から「引ける項目」を差し引いた金額が、最悪月の不足額だ。この金額を貯蓄で賄えるかどうか——答えはシンプルにそこで決まる。
保険が必要と判断したら、どこまで備えるかを決める。すべてをカバーしようとすると保険料が上がる。優先順位をつけて絞り込むのがコツだ。一般的な優先順位:①収入減への備え(傷病手当金がない場合は特に重要)、②対象外費用への備え(差額ベッド代、食費など)、③選択肢の確保(先進医療特約など)。入院給付金の設計には「日額型」と「一時金型」がある。調査によると、入院時の自己負担費用は1日あたり平均24,300円(N=609)と報告されている。この数字を参考に、自分の希望に合った設計を選べばいい。
最後に、「払い続けられる金額」で調整する。保障を手厚くすれば安心は増すが、保険料が家計を圧迫しては本末転倒だ。「月いくらなら無理なく続けられるか」を先に決め、その範囲で保障を組み立てる。見直しのタイミングは、転職・結婚・出産・独立・健康診断後など、ライフイベントが起きたときが目安だ。一度決めたら終わりではない。状況が変われば、保険も見直す。それくらいの気持ちでいい。
保険に入らないと決めた場合でも、代替策を用意しておくと安心だ。次の章で確認しよう。
医療保険に入らない場合の代替策
「入らない」と決めたなら、放置せずに代替策をセットで実装しておきたい。貯蓄、手続き、収入減対策、見直しタイミング——この4つを押さえておけば、後悔のリスクを減らせる。
医療費用の専用貯蓄を作る
保険に入らない代わりに、医療費用の専用口座を作るという方法がある。
目標額の考え方としては、入院時の自己負担費用の平均18.7万円、逸失収入を含めた合計25.3万円が一つの目安になる。ただし、これは平均値であり、長期化や対象外費用で上振れする可能性がある。
「医療イベント枠」と「立替枠」を分けて考えると管理しやすい。立替枠は、高額療養費の還付を待つ間の資金だ。限度額適用認定証を使わない場合、一時的に数十万円の立替が発生することがある。
専用口座を作り、生活費と切り離しておくと、いざというときに迷わず使える。
手続き(限度額適用認定など)を準備
高額療養費の立替を減らすには、事前準備が有効だ。
「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられる。協会けんぽの場合は、加入している支部に申請する。
マイナ保険証を使う場合は、医療機関の窓口で「限度額情報の提供に同意する」と伝えれば、認定証がなくても同様の扱いになる。
入院が急に決まると、手続きに手が回らないことがある。元気なうちに準備しておけば、いざというときに慌てずに済む。
収入減への備えを別で用意
医療費と収入減は別の問題だ。医療費用の貯蓄があっても、収入が途絶えれば生活費が足りなくなる。
会社員で傷病手当金がある場合でも、支給は収入の約2/3だ。残りの3分の1をどう埋めるかを考えておく必要がある。
固定費を見直して支出を下げる、副収入を確保する、就業不能保険を検討する——方法はいくつかある。医療保険とは別の備えとして、収入面の穴を意識しておきたい。
見直しタイミングを決めて放置しない
「入らない」という判断は、一度決めたら終わりではない。状況が変われば、必要性も変わる。
見直しのきっかけとしては、以下が挙げられる。
- 転職して傷病手当金の条件が変わったとき
- 結婚・出産で扶養家族が増えたとき
- 住宅ローンを組んだとき
- 健康診断で指摘を受けたとき
- 独立・フリーランスになったとき
「○歳になったら見直す」「ライフイベントが起きたら確認する」といったルールを決めておくと、放置による後悔を防げる。
医療保険に入らない後悔のFAQ
よくある疑問を整理しておく。最終判断の参考にしてほしい。
公的医療保険があるのに民間の医療保険は必要?
公的医療保険は手厚いが、カバーされない費用がある。差額ベッド代(1人室平均8,625円/日)、入院中の食費(1食510円)、先進医療の技術料などは自己負担だ。高額療養費制度も、これらの費用は対象外となる。必要かどうかは、「対象外費用+収入減+希望」を貯蓄で賄えるかどうかで決まる。賄えるなら民間保険は不要。足りないなら、検討の余地がある。
医療保険に入らないなら貯蓄はいくら必要?
一概には言えないが、目安として「固定費×数か月分+医療イベント枠+立替枠」で考えてみてほしい。調査では、入院時の自己負担費用の平均は18.7万円、逸失収入を含めた合計は平均25.3万円と報告されている。高額療養費の立替が発生する場合は、区分ウで月8万円台の自己負担限度額も想定しておく必要がある。これらを足し合わせ、生活費が崩れない水準を確保しておきたい。
若いうちは医療保険に入らないほうが得?
「若いほど保険料が安い」のは事実だ。一方で、「若いうちは病気になりにくい」のも確かだ。どちらを重視するかは人による。ただ、保険の役割は「確率」ではなく「一撃への耐性」で考えると判断しやすい。入院時の自己負担費用の平均は18.7万円。この金額を出しても生活に影響がないなら、若いうちは貯蓄で備えるという選択も合理的だ。健康状態が変わると加入条件が厳しくなることがあるため、「選択肢を残すために入っておく」という考え方もある。
持病があると医療保険に入れない?
持病があっても、加入できる保険はある。引受基準緩和型や無選択型と呼ばれる商品は、告知項目が少なく、持病があっても入りやすい。ただし、保険料が割高になる、一定期間は給付金が減額される、特定の病気が保障対象外になるといった条件がつくことが多い。商品ごとに条件が異なるため、複数の保険会社に相談して比較するのがおすすめだ。告知内容を正確に伝えることが大前提となる。
医療保険の「日額」と「一時金」はどちらが後悔しにくい?
日額型は入院日数に応じて給付金が出るタイプ、一時金型は入院したら定額が出るタイプだ。どちらが合うかは、備えたいリスクによって変わる。日額型は長期入院への備えに向くが、短期入院では給付が少ない。一時金型は周辺費用・短期入院への備えに向くが、長期化すると足りない可能性がある。病院報告によると、2024年の一般病床の平均在院日数は15.5日だ。入院が短期化する傾向を踏まえると、一時金型のほうが使いやすいという見方もある。一方、入院時の自己負担費用は1日あたり平均24,300円と報告されている。長期化が心配なら、日額型で日数に応じた保障を確保する考え方もある。自分が何に不安を感じているかを整理すると、選びやすくなる。
共済に入っていれば医療保険に入らないでも平気?
共済は掛金が安く、手軽に始められるメリットがある。ただし、保障内容や条件は商品によって異なるため、「共済に入っているから大丈夫」とは一概に言えない。確認したいポイント:入院給付金の日額と支払限度日数、通院保障の有無、免責期間(入院から何日目で給付されるか)、更新条件と掛金の変動、年齢による保障内容の変化。約款を確認し、自分の希望する保障水準を満たしているかをチェックしてみてほしい。不足があれば、民間医療保険で補うという選択肢もある。
まとめ
医療保険に入らないと後悔するかどうかは、「対象外費用・収入減・貯蓄」の3軸で判断できる。
高額療養費制度があっても、差額ベッド代や食費などは対象外であり、入院時の自己負担費用は平均18.7万円と報告されている。収入減まで含めると平均25.3万円だ。
この金額を貯蓄で乗り切れるなら「入らない」は合理的な選択といえる。一方、貯蓄に不安がある、収入減リスクが大きい、希望が強いといった条件に当てはまるなら、保険で備える意味がある。
どちらを選ぶにしても、判断基準を明確にしておけば、後悔は減らせる。迷ったときは、まず「最悪の月」を試算してみてほしい。自分だけで判断がつかない場合は、保険の専門家やファイナンシャルプランナーに相談してみるのも一つの手だ。
出典一覧
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31709/ - 厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001521279.pdf - 厚生労働省 社会保障審議会 医療保険部会 資料「入院時の食費の基準額について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001604409.pdf - 生命保険文化センター「生活保障に関する調査《速報版》」
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r7/seikatuhoshouchousa_2025sokuhouban.pdf - 厚生労働省「病院報告(令和6年)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/byouin/m24/dl/byouinhoukoku_2024.pdf - 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31710/1950-271/ - 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査<速報版>」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024sokuhou.pdf


