- 「5年満期の養老保険」の税金の扱いについて知りたい
- 「一時払い養老保険」について詳しく知りたい
- 金融類似商品は自分に合っているかを知りたい
皆さんは、「5年満期の一時払い養老保険」について耳にしたことがあるだろうか?
養老保険は老後資金の確保が主な目的の保険商品であるから、長い保険期間のものというイメージをお持ちかもしれない。しかし、5年という短い満期の商品も存在する。
5年以下の商品は、税制上、特別な意味を持つ。
保険期間が5年以下であるか、または5年超でも5年以内に解約された一時払い養老保険等は、「金融類似商品」として特別に扱われるからだ。
この記事では、「一時払い養老保険」という保険商品と、「金融類似商品」の税制上の扱いについて詳しく解説する。
この記事を通じて、保険選びに役立つ知識を得ていただければ幸いである。
「一時払い」養老保険とは何か
まずは、「養老保険」がなんであるかを確認しておこう。
養老保険の「一時払い」とは
養老保険とは、被保険者(保険がかけられている人)が死亡した場合は「死亡保険金」が、生存のまま満期を迎えた場合は「満期保険金」を受け取れる、貯蓄型の保険である。
保険料の払込方法には、期間ごとの「月払い」、「半年払い」、「年払い」のほか、契約時にすべての保険料を一括で払い込む「一時払い」がある。
なお、保険料の払込方法以外に配当金や通貨により分類するケースもある。
養老保険の種類について、詳しくは以下の記事で解説しているので、適宜参考にしていただきたい。
一時払い養老保険の変遷
一時払いの養老保険は、「一時払い養老保険」として、よく知られている。
現在はあまりメジャーではないが、かつては保険会社の主力商品として販売されていた。
1980年代には、生命保険の貯蓄機能が注目を集めるようになった。
この市場ニーズに対応するため、一時払い養老保険や個人年金商品、変額保険商品などが、比較的高い予定利率で設計された。
1984年4月には、年金保険の払込保険料に対する所得控除が認められるとともに、5年満期の一時払い養老保険の満期保険金も一時所得として控除の対象となる新税制が施行された。
このような税制優遇と、市場金利の下落傾向が相まって、高利回りの一時払い養老保険は「財テク」商品として注目を集めることとなった。
しかし、1988年の税制改正で税制優遇が廃止され、低金利傾向が続いたことから、一時払い養老保険の人気は減退し、「かつては人気だった」という商品になってしまった。
一時払い養老保険のメリットは限定的
以下に、現在は「一時払い養老保険」はおすすめの商品とはいえない理由を説明する。
返戻率は比較的高いが「それほど高くない」
一時払い養老保険は、保険料が一括で払い込まれることから、比較的高い予定利率が設定できた。
「予定利率」とは、保険会社が保険料から得た資金をどれくらいの利率で運用すると予想しているかを示す指標である。
この利率が高ければ、運用によるリターンも高くなる可能性があり、それが解約返戻金や保険金の額にも影響を与える可能性が高くなる。
しかし、金利が低迷する市場環境では、高いリターンを期待することは難しく、新規に販売される保険商品で高い予定利率を設定するのも難しくなる。
既存の保険についても、運用による利益が低くなるため、解約返戻金や保険金の額にも影響が出ると考えられる。
「一時払い」することで解約返戻金や保険金に与えるプラスの影響は、あまり大きくないのだ。
生命保険料控除の対象は保険料を支払った年だけ
養老保険は、支払った保険料が、年末調整や確定申告時に生命保険料控除の対象となる。
この控除が適用されれば、所得税や住民税の負担が軽減できる。ただし、控除の対象となるのは「その年に支払った」保険料だけだ。
一時払いを選択した場合、保険期間中の他の年は控除の対象とはならず、控除の上限を超える部分は対象外となってしまう。
一方で、「全期前納払い」を選択すると、毎年、生命保険料控除の対象になる可能性がでてくる。
全期前納払いとは、保険期間中の保険料を一括で「預ける」方式で、支払い期日が来ると保険会社が契約者に代わって保険料を支払ういというものだ。
このケースでは、他の生命保険の保険料と合算しても上限を超えなければ、生命保険料控除の対象となる。
ゆえに、税金の控除を複数年受けたいのであれば、「一時払い」より「全期前納払い」を選択すべきなのだ。
5年満期の一時払い養老保険は「金融類似商品」に該当する
ここでは、「保険期間が5年以下の一時払い養老保険は税金の扱いが異なる」という点について解説する。
まず、一般的な税金の扱いについて確認した後、5年以下の一時払い養老保険、すなわち「金融類似商品」の税制上の取り扱いに焦点を当てて説明する。
一時払い養老保険の税金の取り扱い
一時払い養老保険を含む生命保険商品においては、一般的に保険金を受け取る際に税金が課される。
この際に課される税金の種類は、受け取る保険金の種類や契約形態に応じて、「所得税(一時所得または雑所得)、住民税」「相続税」「贈与税」のいずれかとなる。
この場合、基礎控除や特別控除が適用される可能性があり、その結果、税金の全部または一部が免除されることもある。
控除対象の詳細等は、最新の税法に関する通達やガイドラインを確認して欲しい。
5年満期の一時払い養老保険における税金の取り扱い
一時払い養老保険のうち、「保険期間が5年以下のもの」は、税法上では「金融類似商品」となる。
金融類似商品とは、投資信託、株式、社債、公債、保険などの金融商品に似たものだが、税法上は利子所得以外に分類される商品のことである。
該当する商品は、具体的には
- 定期積金の給付補てん金
- 銀行法に基づく給付補てん金
- 一定の契約により支払われる抵当証券の利息
- 貴金属などの売戻し条件付売買の利益
- 外貨建預貯金の換算差益
- 保険のうち一定の要件を満たすものの差益
である。税金に関しては、以下のとおり定められている。
- 税率
- 一律で20.315%(所得税15.315%、地方税5%)
- 源泉分離課税
- 源泉徴収だけで課税関係が終了する
- 確定申告
- 対象となる商品については、他の所得と合算して確定申告する必要はない
- また、扶養親族などに該当するか否かを判定するときの合計所得金額からも除かれる
保険期間が5年以下の一時払い養老保険は、上記の⑥に該当する。
一時払い養老保険以外の金融類似商品
前述の「⑥保険のうち一定の要件を満たすもの」に該当するものには、「一時払養老保険等で保険期間等が5年以下のもの」のほかに、保険期間等が5年超で5年以内に解約されたものがある。
5年を超える契約であっても、一時払養老保険、一時払変額保険(有期型)、一時払の個人年金保険、一時払変額個人年金保険(いずれも給付年金総額が定められる確定年金)を契約から5年以内に解約した場合、税務上は金融類似商品として扱われる。
つまり、これらの保険料を「全額・契約時に・一括で払った」ときは、「5年」を境に税金の扱いが変わるのだ。
このとき、注意しておきたいのは、家計全体の所得の額により、税負担感が変わるということである。
前述のとおり、金融類似商品の対象となる商品については、他の所得と合算の必要がない。
もしあなたの給与所得や利子所得などが多く、高い税率が課される可能性があるなら、金融類似商品の税率である20.315%は、お得に感じられるかもしれない。
しかし、所得が少なく、課される税率が低い場合は、この税率だと負担が大きくなる恐れがあるのだ。
この点には注意をしていただきたい。
「5年満期の一時払い養老保険」は選択肢に入れるべき?
ここまでの記述で、「一時払い養老保険」および「5年満期の一時払い養老保険」について、深くご理解いただけただろう。
現在はメリットがあまりない「一時払い養老保険」だが、2022年12月、日本生命が16年ぶりに予定利率の引き上げを発表したことで、一時払い養老保険は再び注目を集めている。
金利が上昇傾向を継続するなら、一時払い養老保険の商品性を見直す動きが広がるのかもしれない。
その場合、5年満期の一時払い養老保険は、あなたの資産形成の選択肢になりうるだろうか?
5年満期の一時払い養老保険の税負担はあなたにとって有利なものか?
5年満期の一時払い養老保険を検討する場合、真っ先に確認すべきは、税金の負担が得か損かという点である。
まず、「一時払い」では、保険期間の生命保険控除の対象になる年は1回のみだ。
一方、分割して支払う場合(全期前納を含む)は、生命保険期間にわたり控除の対象となる可能性がある。
保険料を「一時払い」にするケースと、それ以外のケースを想定して、税負担の額をシミュレーションしてみよう。
金融類似商品に該当した場合の税率(20.315%)が、あなたにとって有利なのか否かも、確認しておきたい。
あなたのこれまでの所得や、満期を迎える年の所得の予想を立て、そのときにこの税率は有利なのか不利なのかを見通しておこう。
5年満期の一時払い養老保険以外の「金融類似商品」についても検討する
上記の検討を行ったうえでも「金融類似商品」に魅力を感じるのなら、「一時払い終身保険」や、「一時払い年金保険」についても検討してみるべきだ。
以下に、それぞれの特徴を表形式で整理する。
項目 | 一時払い養老保険 | 一時払い終身保険 | 一時払い年金保険 |
目的 | 老後の生活費確保 貯蓄 | 終身にわたる死亡保障 相続対策 | 定期的な年金収入の確保 |
保障内容 | 死亡保険金 満期保険金 | 死亡時に保険金が支払われる | 一定期間または終身にわたる年金支給 |
税制 | 一定条件下で生命保険控除の対象 | 死亡保険金は一定額まで非課税 | 年金での受取は雑所得一括受取は所得税が課される |
解約 | 解約返戻金あり | 解約返戻金あり 早期解約にペナルティがある場合がある | 基本的に解約不可またはペナルティ ※保険会社によっては柔軟な解約オプション |
期間 | 保険期間は一定 | 終身 | 年金受給開始までの短期〜中期 |
その他特徴 | 保障と貯蓄を兼ね備える | 保険料の総額が月払や年払よりも安い 解約返戻金額が払込保険料の総額を上回るまでの期間が短い傾向がある 資金使途が自由なので教育費等にも使える | 年金の受取期間、死亡保障、運用方法(運用通貨)など、様々な商品タイプがある 返戻率(年金受取総額÷払込保険料総額)が高い方が投資リターンが高い 途中解約しても元本割れしないタイミングを確認しておくこと |
具体的な商品やプランによっては、これらの特徴が異なる場合もある。
詳細は各保険会社の説明や資料を参照することが重要である。
米ドル建ての一時払い養老保険も検討する
現在、家計に余裕があり、「一時払い」が可能で、なおかつ資産形成を重視したいのであれば、「米ドル建ての一時払い養老保険」も検討しておきたい。
日本の金利は上昇傾向がみえてきたとはいえ、アメリカの金利に比べれば低金利である。
それゆえ、予定利率は高く設定されている。市場環境によっては、為替差益を狙うことができる。
また、据置期間があり、有利な為替レートになったタイミングで支払い用為替レートを確定することも可能な契約もある。
もちろん、為替差損が生じることはリスクだ。しかし米ドルは、「世界の基軸通貨」と言われる取引量や流通量が多い通貨であり、他の通貨建てに比べれば比較的リスクは低い。
為替リスクはあるものの、投資対象として魅力は大きく、検討に値する商品だといえる。
5年満期の一時払い養老保険に入るべきかはご自身のニーズ次第
この記事では、「5年」という期間が税制上の意味を持つこと、そして一時払い養老保険や金融類似商品について詳しく解説した。
「5年以内か、5年超か」という選択は、一時払い養老保険等が金融類似商品に該当するかどうかを決定する。すなわち、この選択により、税率が変わる可能性があるということだ。
記事を通して説明したように、一つの保険商品だけを考慮するにしても、検討すべき要点は非常に多い。多様な商品から最適なものを選ぶ場合、考慮すべきポイントはさらに増える。
「人生において2番目に高い買い物」と言われる生命保険商品の選択に際しては、一人で悩むよりも、保険の専門家に相談することをおすすめする。
保険のプロなら、多くの選択肢から、あなたに最適な選択をするための指針を示すことができる。
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