- 貯金があれば医療保険に入る必要はないのかがわからない
- 医療保険が不要な人・必要な人の特徴が知りたい
- 医療保険を利用する際の注意点が知りたい
貯金が十分にあれば医療保険に加入する必要はない、と考えている人もいるだろうが、果たして本当にそうだろうか。
結論から述べると、貯金があっても医療保険は基本的に利用すべきであると言える。
本記事では、その理由を詳しく解説し、医療保険が必要な人や不要な人の特徴、さらに医療保険を利用する際の注意点についても解説する。
貯金はあるが医療保険を利用するべきか悩んでいるという方には、ぜひ参考にしてほしい。
貯金があれば医療保険は不要なのか
「貯金が十分にあれば医療保険はいらない」と言われることは少なくない。
実際、日本では公的医療保険制度が充実しているため、民間の医療保険に加入する必要性が低いという考え方もある。
加入すべきかどうかを悩んでいる方も多いだろう。
ここでは健康上のリスクや医療費を踏まえ、医療保険の必要性を考えていく。
加齢に伴う健康リスクの上昇と保険の必要性
若いうちは病気やケガで入院・手術を受けるリスクが低いため、医療保険の必要性を低く感じている方も多いだろう。
しかし年齢を重ねるとともに健康上のリスクは上昇し、保険の必要性も高まっていく。
厚生労働省が行った「令和2年(2020)患者調査」によると、年齢階級別にみた人口10万人あたりの受療率は以下の表(一部抜粋)のような結果となった。
年齢階級 | 入院 | 外来 |
20〜24歳 | 141 | 2,321 |
25〜29歳 | 198 | 2,692 |
30〜34歳 | 246 | 3,043 |
35〜39歳 | 257 | 3,174 |
40〜44歳 | 273 | 3,480 |
45〜49歳 | 345 | 3,745 |
50〜54歳 | 478 | 4,285 |
55〜59歳 | 664 | 5,113 |
60〜64歳 | 895 | 6,113 |
65〜69歳 | 1,207 | 7,951 |
70〜74歳 | 1,544 | 9,649 |
75〜79歳 | 2,204 | 11,527 |
上記の表を見て分かる通り、入院・外来ともに年齢を重ねるごとに受療率は高くなっていく。
つまり現時点で医療保険の必要性が低くても、将来的には必要性が高くなる可能性があるということだ。
入院時にかかる医療費
医療保険は、基本的に入院や手術にかかる費用を保障する商品だ。
公的医療保険制度で保障できない自己負担費用をカバーする役割となっているが、実際入院中にはどのくらいの自己負担費用が発生するのだろうか。
公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、過去5年間に入院して自己費用を支払った人の平均負担額は19.8万円だった。
また、負担額ごとの分布は以下の表のようになっている。
負担額 | 割合 |
5万円未満 | 9.4% |
5〜10万円未満 | 26.5% |
10〜20万円未満 | 33.7% |
20〜30万円未満 | 11.5% |
30〜50万円未満 | 10.1% |
50〜100万円未満 | 5.8% |
100万円以上 | 3.0% |
もっとも多いのが「10〜20万円未満」で全体の3割となっている。
次いで多いのが「5〜10万円」となっているため、そこまで大きな自己負担費用が発生するケースは少ないように見えるだろう。
しかし、20万円以上の自己負担費用がかかったケースを合計すると30%を超える。
全体から見ると少ない割合とはいえ「100万円以上」の自己負担費用がかかっているケースもある。
治療の内容によっては高額な自己負担費用が発生するリスクがあることも頭に入れておくべきだろう。
自己負担が必要な費用
「貯金があれば医療保険は不要」と言われる理由のひとつに、公的医療保険制度の充実が挙げられる。
治療にかかる費用が原則3割となっていたり、1ヶ月の医療費が一定額を超えたときに還付を受けられる「高額療養費制度」があったりと、自己負担費用が小さいことからわざわざ民間の医療保険で備える必要がないという考え方だ。
しかし、公的医療保険制度は入院中にかかる費用をすべてカバーできるわけではない。
差額ベッド代や食費、見舞いに来る家族の交通費などは保障対象外であるため、自己負担をする必要がある。
また、高度な医療技術によって治療を行う「先進医療」にかかる技術料は全額自己負担となる。
数十万円〜数百万円程度の費用がかかるケースもあり、いくら貯金があるからといって簡単に支払える金額ではないだろう。
こうした公的医療保険制度ではカバーできない費用を補うのが、民間の医療保険の役割だ。自己負担が必要となる費用を把握した上で、本当に医療保険が必要ないか判断しよう。
医療保険が不要な人・必要な人の特徴
ここまで「貯金があれば医療保険は不要なのか」という点を解説してきたが、正解は人によって異なる。
不要な人と必要な人の特徴をそれぞれ把握し、自分がどちらに該当するか見極めることが大切だ。
ここでは、医療保険が不要な人と必要な人の特徴、医療保険を上手に活用するためのポイントについて解説していく。
医療保険が不要な人の特徴
医療保険が不要な人の特徴としては以下の3点が挙げられる。
- 十分な資産があって「貯金が減っても良い」と考えている人
- 勤め先の福利厚生で医療保険に加入している人
- パートナーの収入で生活できる専業主婦(夫)
まず、資産が十分にある人は民間の医療保険に加入する必要性は低いと言える。
医療費の自己負担がかかっても支払えるだけの貯金があれば、わざわざ医療保険に加入しなくても良いだろう。
ただし「貯金は別の使い道があるから減らしたくない」という人は、医療保険に加入して入院・手術に備える必要がある。
また、勤め先の福利厚生で医療保険に加入済みの場合、個人で医療保険に加入する必要性は低い。
保障が重複していると支払う保険料が無駄になってしまうリスクがあるためだ。
特に公務員の場合は福利厚生が充実しているケースが多く、入院・手術にかかる医療費や収入減少をカバーできる可能性が高い。
そして、自分自身が専業主婦(夫)でパートナーが安定した収入を得ている場合も医療保険の必要性は低い。
ケガや病気で入院する際の自己負担はかかるものの、働けないことによる収入減少のリスクがないためだ。
ただし自分が不在の間に家事代行やベビーシッターなどを依頼する予定がある場合、最低限の医療保障を備えておくと良いだろう。
医療保険が必要な人の特徴
一方、医療保険が必要な人の特徴としては以下の3点が挙げられる。
- 貯金がないまたは少ない人
- 自営業者やフリーランス
- 治療の選択肢を広げたい人
現段階での貯金がない、または少ない場合は医療保険に加入しておく必要性が高い。
月々数千円程度の負担でまとまった医療費を備えられるため、お金が貯まるまでは医療保険でリスクに備えておくと良いだろう。
また、自営業者やフリーランスなどの国民健康保険加入者は医療保険の必要性が高い。
なぜなら会社員・公務員とは違って、働けない期間中の「傷病手当金」が支給されないためだ。
ケガや病気で入院することとなった場合、完全に収入が途絶えてしまうリスクがあるため医療保険で備えておく必要がある。
そして、ケガや病気を治療する際の選択肢を増やしておきたい人も医療保険に加入しておくと良いだろう。
前述した通り、先進医療にかかる技術料は全額自己負担になり、場合によっては数百万円の費用が発生する場合がある。
医療保険の先進医療特約を契約しておけば、先進医療にかかる技術料が保障されるため治療の選択肢を増やすことができる。
自分自身の貯蓄状況や働き方、治療に対する考え方などを踏まえて医療保険に加入すべきかどうかを判断しよう。
医療保険を上手に活用するには
医療保険を上手く活用するためのポイントは「公的医療保険制度の保障内容を把握する」という点だ。
公的医療保険制度の内容を把握することで保障の不足分が理解でき、足りない分を補う形で民間の医療保険を活用できる。
例えば、会社員や公務員が利用できる「傷病手当金」という制度は、病気やケガで4日以上働けなかったときに給与の約3分の2にあたる金額が支給される。
傷病手当金を受け取れれば大幅に収入が減少する心配はないため、そこまで手厚い保障は必要ない。
傷病手当金を受け取った上で、なお不足する治療費の自己負担や差額ベッド代、食費などを計算して医療保険で備えると良いだろう。
また、1ヶ月の医療費が年収に応じた上限額を超えた際に、超えた部分が払い戻される「高額療養費制度」も設けられている。
1ヶ月の医療費が過度に大きくなる心配はないため、医療保障は最低限カバーできれば十分だ。
このように公的医療保険制度の内容を理解していると、民間の医療保険で過剰に保障を備える必要がないことが分かる。
保障がどれくらい不足しているのかを把握し、足りない分だけを補うシンプルな保険プランを設計して医療保険を有効活用しよう。
さらに「医療保険の選び方や活用例が知りたい」という方には、年代別のシチュエーションで医療保険の活用事例をこちらの記事でまとめたので合わせて参考にしてほしい。
医療保険を利用する際の注意点
医療保険への加入を検討している場合、以下の3点に注意する必要がある。
- 出来る限り健康なうちに保険に加入する
- 家計に負担がかかりすぎないように保険を選ぶ
- 複数の保険に入る際は保障内容の重複に気を付ける
それぞれの内容を解説していくので、加入の際はぜひ参考にしてほしい。
出来る限り健康なうちに保険に加入する
医療保険への加入を検討しているのであれば、出来る限り健康なタイミングで早めに契約手続きを進めよう。
健康上の問題を抱えていると、希望する医療保険に加入できないリスクがあるためだ。
医療保険に申し込む際、自身の健康状態や過去の病歴などの告知が義務付けられている。
保険会社は告知された内容をもとに審査を行っており、病気のリスクが高いと判断された場合は加入ができなかったり、特定の部位だけ保障の対象外となったりする。
つまり希望通りの保障を得られない可能性があるのだ。
持病や既往歴があっても「引受基準緩和型保険」や「無選択型保険」などの加入しやすい商品を選ぶことはできる。
しかしそういった商品の多くは保障が制限されていたり、保険料が通常よりも割高だったりとデメリットが多い。
このように、健康上の問題を抱えてしまうと医療保険の選択肢は狭まり、希望の保障を得られないリスクがある。
医療保険に加入しようと考えている場合は、出来るだけ早く契約することをおすすめする。
家計に負担がかかりすぎないように保険を選ぶ
医療保険を選ぶ際、保障内容の充実度だけでなく保険料についても考慮しておく必要がある。
家計に無理な負担をかけずに契約できる医療保険を選択しよう。
保険料を安く抑えるためのポイントとして以下の3点が挙げられる。
- 必要最低限の保障だけを選ぶ
- 複数の保険会社で見積もりを取る
- 保障期間を見直す
まずもっとも重要となるのが、無駄な保障を省いたシンプルな保険プランを設計するという点だ。
前述の通り、日本は公的医療保険制度が充実しているため、医療保障を過剰に手厚くする必要はない。
不足分をカバーするだけの最低限の保障を備え、保険料を安く抑える工夫をしよう。
また、保険会社によって保険料の算出方法が異なるため、同じ保障内容でも商品ごとに保険料が異なる。
保険会社の公式サイト等で保険料シミュレーションが提供されているので、複数の保険会社・商品で見積もりを取って比較すると良いだろう。
そして、保障期間の見直しも保険料の負担軽減に効果的だ。保障期間が生涯続く終身タイプより、一定期間の保障が得られる定期タイプの方が保険料は安い。
「子どもが独立するまで」「自分が退職するまで」など一定期間の医療保障を得られれば十分、と考えている場合は定期タイプに見直すことをおすすめする。
上記のポイントを押さえておけば、保険料の負担が少ない医療保険を選ぶことができる。
なるべく保険料が安い商品を探し、家計にかかる負担を最小限に抑えよう。
複数の保険に入る際は保障内容の重複に気を付ける
複数の保険商品を契約する予定がある場合、保障内容が重複していないかチェックしよう。
重複している分の保障が過剰となる可能性があり、支払う保険料が無駄になってしまうためだ。
例えば、医療保険とがん保険を契約するようなケースは保障の重複が起こりやすい。
過去に加入していた医療保険で「がん特約」を契約しているにもかかわらず、新規でがん保険に加入してしまうようなパターンだ。
がん保障が充実していてお得に感じるかもしれないが、支払う保険料は多くなっているため負担がかかってしまう。
また、同じ医療保険を複数契約するケースもある。
入院保障が手厚い医療保険と通院保障が手厚い医療保険を契約することで、双方のいいとこ取りができる。
この場合も保障が重複して過剰になっていないか確かめておくと良いだろう。
複数の保険を契約すること自体は問題ではない。
「保障内容が重複していないか」「無駄な保険料を支払っていないか」という点を注意した上で、複数の保険商品を契約しよう。
まとめ
本記事では、医療保険の必要性と利用時の注意点を解説した。
入院・外来ともに年齢を重ねるごとに受療率は高くなっていく。
つまり現時点で医療保険の必要性が低くても、将来的には必要性が高くなる可能性があるのだ。
また、医療保険は年齢が若く健康なうちであれば有利な条件で加入できる。
保障内容と保険料のバランスには注意し、なるべく早い段階から加入を検討をするようにしよう。
もし、一人で選ぶのは不安だという方は、保険のプロに相談することも積極的に検討してほしい。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、あなたに必要な医療保険を的確に選択することができるはずだ。
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