- がん治療に必要な医療費の目安を知りたい
- がん保険の保険金をいくらにするべきかわからない
- がん保険に加入する際の注意点が知りたい
がんは日本人の2人に1人が罹患すると言われるほど私たちにとって身近な病気である。
そのため、万一の際の備えとしてがん保険を利用すべきか検討している方も多いだろう。
がん保険を選ぶ上で、考えるべきポイントの一つに保険金の金額がある。
一体どれくらいの治療費を想定し設定するべきなのだろうか。
そこで本記事では、改めてがん保険の必要性について解説した上で、適切な保険金の金額について必要な治療費をもとに考察する。
また、加入時の注意点についても述べるので、あなたががん保険に加入する際の判断材料となれば幸いだ。
がん治療におけるがん保険の必要性と保険金額
三大疾病の一つである「がん」は、転移や再発しやすく、発見が遅れると治療が難しいこともある病だ。
日本で病院に罹ると医療費は基本的に3割負担であり、高額療養費制度によって毎月の保険診療にかかる費用は9万円前後に収まることも多い。
日本の社会保険制度は優れているものの、がん治療に関しては国の医療保険が適用外になる先進医療を施す場合も多く、その場合の治療費は全額自己負担だ。
そして、がんに関する先進医療は高額になることが多く、治療費の高さがネックで先進医療による治療を諦めたり、生活が困窮したりするケースもある。
民間の各種生命保険は、「もしもの備え」として用意しておきたいものであるものの、がんに対する備えは疎かにされがちだ。
ここでは、がんにまつわる統計データやがん保険に備えられている一般的な保障内容、各種給付金についてまとめた。
がん保険の必要性について、改めて考えてみてほしい。
がんの罹患者及び死亡者は年々増加傾向
国立がん研究センターがん情報サービスによると、2019年に新たに診断されたがんは999,075例とされている(男性:約56万例、女性:約43万例)。
そして、2021年にがんで死亡した人は381,505人だった(男性:約22万人、女性:約16万人)。
厚生労働省がまとめた「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2022年に亡くなった方の死因の第一位が悪性新生物(がん)で、割合は24.6%だった。第二位が心疾患(高血圧性を除く)で、割合は14.8%、第三位は老衰(11.4%)という結果である。
国立がん研究センターの統計によると、がんによる死亡者及び罹患者は年々増えており、それぞれの推移は下表のとおりだ。
年 | 罹患者(統計のある範囲) | 死亡者 |
---|---|---|
2016 | 995,131 | 372,986 |
2017 | 977,393 | 373,334 |
2018 | 980,856 | 373,584 |
2019 | 999,075 | 376,425 |
2020 | – | 378,385 |
2021 | – | 381,505 |
2019年のデータに基づくものであるが、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性65.5%、女性が51.2%とされている。
がんは死因として最も多く、一生の間で診断される確率は、少なく見積もって2人に1人なのだ。
がん保険は男性ほど入るべきであるし、女性の場合は乳がんや子宮がんなどの特有の症状もあるため、当然加入の必要性は高いと言えるだろう。
がん保険の一般的な保障内容
がん保険の一般的な保障内容は以下のとおりである。
- がん(悪性新生物)と診断された際に受けられる給付
- 入院時の給付
- がん治療のための通院に対する給付
- がん治療のための手術に対する給付
- がん治療のための放射線治療に対する給付
- 抗がん剤やホルモン剤による治療に対する給付
- がん治療のための先進医療に対する給付
がんの治療で最もネックになるのが、治療期間が長引きやすい点だ。
一般的な医療保険でもがんは保障の対象になるものの、がんの場合は再発や転移する可能性もあり、一度発症すると長い付き合いになるケースが多い。
一般的な医療保険の場合、給付金の支給日数が短めに設定されていることが多く、保障が限定的になりかねない。
がん治療は長期的に取り組む必要があり、その分、経済的な負担や不安はつきものだ。
そこで、医療保険とは別にがん保険に加入することで、手厚い保障を別途用意しておくべきとされているのである。
がん保険で給付される各種給付金
がん保険で給付される各種給付金は、上記の各フェーズにおいて支給される。
よりシンプルにまとめるなら、以下の4つの場合に給付金が支給されるものと理解しておこう。
- がんと診断されたときの「がん診断一時金」
- 抗がん剤治療などを受けたときの「治療給付金」
- がん治療をするための手術したときの「がん手術給付金」
- がん治療をするために入院・通院したときの「がん入院・通院給付金」
がん保険で支給される給付金について、「一時金」とされるものは、その時に一回限り支払われるものだ。
「給付金」という名称であれば、該当する場合に毎月支給されるものになる。
当然だが、保険会社によって支給される条件や給付額は異なる。
詳細は各保険会社のパンフレットなどで確認するしかないが、治療の長期化にも備えられるよう、給付期間が長い点は全体的な特徴として共通している。
次の章で保険金額(給付額)をいくらにすべきかについて具体的に解説するが、結局のところ、自身のライフスタイルや働き方などで保障に対する考え方は異なる。
ぜひ自身の状況を整理しながら、がん保険に必要な保障内容・保障額について具体的に考えてみてほしい。
がん保険の保険金はいくらにするべきか
がんは一度罹患すると再発する可能性もあり、治療は長期化するケースも多い。
生涯における発症率の高さからしても、がん保険に加入する必要性は高いと言えるだろう。
ただし、どの程度の保障を用意すべきか判断に迷う人は多いはずだ。
ここでは、がん保険の保険金額をどの程度にすべきか、実際にかかる費用を統計データを参照しつつ解説しよう。
がんで入院した際の平均額
公益財団法人全日本病院協会がまとめた「診療アウトカム評価事業」のデータによると、2022年度の悪性新生物(がん)治療にかかった医療費(公的保険適用前)の平均は以下のとおりである。
がんの種類 | 入院費用(円) | 1日単価(円) | 症例数(人) |
---|---|---|---|
胃がん | 996,965 | 76,901 | 1,690 |
結腸がん | 978,567 | 84,672 | 2,496 |
直腸がん | 1,150,026 | 88,925 | 1,336 |
気管支及び肺がん | 913,065 | 104,558 | 3,206 |
上記はあくまで平均で、症状の深刻さによって入院期間は前後するため参考程度としてほしい。
平均すると、公的医療保険が適用される前において、がん治療にかかる入院費用は100万円ほどかかると考えて差し支えないだろう。
つまり、自己負担額は3割負担の場合、約30万円であることがわかる。
そこから高額療養費制度により、最終的な自己負担は9万円前後になるケースが多く、差額の21万円は後ほど返金されたり、事前に高額療養費相当を差し引いた額を窓口で負担する場合もある。
がんに罹患した場合の入院額の平均は上記のとおりだが、入院後に通院するのが通常で、入院時には医療費以外にもさまざまな費用がかかる。それらも含めて対策を講じる必要があるのは言うまでもない。
がんに関する先進医療の平均額
厚生労働省がまとめた先進医療の実績報告によると、令和3年7月から令和4年6月までに先進医療を受けた人の総数は26,556人だった。
同期間における先進医療費の合計は約66.7億円で、患者数で割ると約25万円であることがわかる。
なお、がん治療で行われることが多い陽子線治療は1,293件実施されており、総額は約34.8億円だった。
つまり、1件あたり約269万円となり、一般的な先進医療に比べるとかなり高額であることがわかる。
また、同様にがんの治療法の一つである重粒子線治療の場合、実施件数は562件、費用総額は約17.7億円で、実施件数で割ると約316万円にも及ぶ。
先進医療にかかる費用は全額自己負担で、がん治療の場合は相当程度のまとまった金額を用意しておく必要があるのだ。
がん保険の保険金額に対する考え方
がん保険の場合、公的医療保険の対象とならない先進医療を受ける場合もある点に注意が必要である。
そのうえで、先進医療にかかる金額は250〜300万円ほどになる見込みで、かなり高額になる点も押さえておくべきポイントだ。
通常の入院をするだけであれば、一回あたりの入院に30万円ほどかかったとしても高額療養費制度によって実質負担は9万円前後だが、それでも医療費負担は重くのしかかるだろう。
入院に際して、以下の費用が別途かかることも忘れてはならない。
- 食事代
- 個室代などの差額ベッド代
- 交通費
- 入院中の寝衣代
- その他入院に必要な物品費用 など
さらに、入院が長期化すれば、その期間は働けないため収入の減少も免れないだろう。
そのうえ、通院する場合は通院にかかる費用がかかり、仕事も完全に復帰できるわけではなく、罹患前の収入を得られるものではないのが通常だ。
がんに対しては厚めの保障があるほど、安心して治療に取り組めるだろう。
がん保険の保険金額の設定例
がん保険の保険金額について、一例として設定するなら、以下が想定されるのではないだろうか。
- がん診断一時金:100万円
- 治療給付金:1回10万円
- がん手術給付金:1回20万円
- がん入院・通院給付金:入院1日1万円、通院1日5,000円
- 先進医療給付金:通算2,000万円
診断一時金を受け取れると、治療に関する費用に対して自由に使えるため、精神的な安心材料になるだろう。
また、各フェーズで給付金や日額給付金を上記のとおり設定すれば、入院・通院にかかる費用の実質負担をほぼなくせるはずだ。
もちろん例外はあり、一概には言えない点には注意が必要である。
がん保険の保険金額を決める際の注意点
給付金の額をどのように設定するか考えるにあたって、自身の雇用形態も大きく関係する。
会社員や公務員の場合、最長1年6ヶ月間にわたって、給与の3分の2ほどの金額が傷病手当金として勤務先から支給される。
自営業や個人事業主の場合(会社の健康保険に加入していない場合)は傷病手当金の支給がないため、収入減少に対する備えも必要だ。
この点を踏まえると、先ほどの設定例に加えて、自営業や個人事業主の場合は収入保障できるような特約ないし保障を追加したほうが安心できる。
会社員や公務員の場合、収入減少に対する備えは、パートナーが働いているかであったり、子どもの有無によって異なる。傷病手当金が支給されたとしても、収入が減少するのは間違いないため、減少分をシミュレーションしたうえで、不足額を保険で賄うのが正しい考え方だ。
保険金額を加味したがん保険に加入する際の注意点
がん保険の必要性や保険金額・給付金額の考え方は、今まで解説したとおりである。
一般的な医療保険に比べて、がん保険は手厚い保障を用意しておいたほうが、長期化した場合も安心して治療に専念できるだろう。
ここでは、がん保険に加入する際の注意点を解説する。
一口に「がん」と言っても、その症状や進行度合いなどが異なり、状況によっては保険の対象外になることもある。
特に注意しておきたい項目を3つ紹介するので、がん保険を比較検討する際の参考にしてほしい。
保険の対象範囲を確認する
がん保険の対象範囲は最も注視しておきたい項目だ。
「がん」と呼ばれる前提として、「悪性新生物」「上皮内新生物」の違いを理解しておくことが重要で、がんが体内のどこに発症しているかによって、給付金が支給されるかどうか異なる点には注意が必要である。
上皮内新生物とは、がんが臓器の表面を覆う「上皮内」にできている状態で、転移の可能性はほぼない。
これに対して悪性新生物は、いわゆるがんと呼ばれるものだ。
上皮内新生物の場合、診断一時金が支給されなかったり、支給されてもごくわずかだったりする。
診断名によって給付の条件が左右されることも多いため、「どの症状のときにいくら給付されるか」は、しっかり確認しておこう。
免責期間を確認しておく
がんは一度かかると生涯にわたって向き合う必要が高いため、罹患してから再発・転移した際の保障内容についても入念に確認しておく必要がある。
前回手術からの期間が条件になっている場合もあれば、そもそもがん保険に加入する条件として、「過去3年以内にがんの診断を受けていない」などを設定していることもある。
保障内容が魅力的だとしても、自身の状況によっては保険に加入できない場合もあるため、加入条件も必ずチェックしておこう。
保険金の支払い回数やタイミングを確認する
がん保険にはさまざまな給付金が用意されているが、支払い回数やタイミングも確認しておこう。
- 1年に1回
- 2年に1回
- 回数無制限
- 通算〇〇万円・〇回まで
- 支給期間は半年・一年まで
がんは転移や再発する恐れもあるため、給付金は複数回受け取れるほうがメリットは大きい。
もちろん、一回の治療が長期間に及ぶ場合もあるため、保障期間が長いほど安心材料になるだろう。
保険商品によって対応状況が異なるため、給付額はもちろん、回数を比較検討することが大切だ。
一度でもがんに罹患すると、がん保険に加入するのはかなり難しくなり、加入できても保険料が割高になってしまう。
保障内容を慎重に見極めて、「一生涯にわたってリスクに備えられるかどうか」という視点を持っておくとよいだろう。
また、支給されるタイミングも重要だ。
支払いまでがスムーズであればあるほど助かるのは間違いなく、窓口負担の時点でがん保険が適用されていると、まとまった金額を用意する手間もない。
一時的に立て替えるのも、数十万円程度ならまだしも、200万円・300万円などをすぐさま用意するのが難しい人もいるだろう。
給付金の支給タイミングも生命保険会社によって異なるため、あわせて確認しておこう。
がん保険の保険金額はあなたとあなたの家族に合わせて設定しよう
本記事では、がん保険の適切な保険金の金額について、必要な治療費をもとに考察した。
年齢が上がるにつれてがんへの罹患率は高まる。また、がん治療にかかる費用は軒並み高額で、治療費の平均は100万程度になる。
そのため、リスクに備えるとともに、万一の際の費用負担を軽減するためにも、がん保険の必要性は高いと言える。
また、がん保険を選ぶ際に考慮すべき点は、免責期間や保険の対象範囲など、保険金の金額以外にも多数存在する。
もし、どのがん保険を選ぶべきか、一人で考えるのが不安だという方がいれば、保険のプロに相談すると良いだろう。
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