- 米ドル建て養老保険のメリットとデメリットについて知りたい。
- 米ドル建て養老保険の運用リスクについて理解したい
- 米ドル建て養老保険の効果的な活用法について知りたい
養老保険は、不測の事態に備えた保障と貯蓄の二つを兼ね備え、老後の生活を安定させる大切な役割をもつ。
その中でも昨今の金利情勢などから特に注目されているのが、米ドル建ての養老保険だ。
円建てと比較して高い利回りを期待できる点が評価されているのだろう。
しかし、一方でその運用リスクも忘れてはならない。
そこでこの記事では、米ドル建ての養老保険のメリットとデメリットについて詳しく解説している。
この記事を参考にして、あなたに最適な保険を見つけてもらいたい。
米ドル建て養老保険とは
「米ドル建て養老保険」は、「日本円ではなく米ドル」で取り扱う「養老保険」である。
これら2点を正しく理解することが自身に適切な保険商品を選ぶためには欠かせない。
保険に加入する目的は、「もしもの時に備えるため」である。
- 病気に罹った際に働けなくなるリスク
- 死亡した際に遺された家族が路頭に迷わないようにするため
- 老後の資産不足を補うため
保険商品は、日常で起こり得るさまざまなリスクに備えられるように設計されている。
「米ドル建て養老保険」は、「死亡時の保障」「満期を迎えた際の保険金(貯蓄)」の2つを同時に満たす保険商品だ。
以下、米ドル建て養老保険の特徴を具体的に解説するので、自身が保険に加入する目的を考えながら読み進めて欲しい。
養老保険の概要
そもそも養老保険とは、死亡した際に支払われる保険金と、契約が満期を迎えた際に支払われる満期金(保険金)が同額となる保険商品だ。
つまり、死亡保障と老後などの資産形成を同時にカバーできる保険である。
通常の保険商品の場合、掛け捨て型または終身型のいずれかに分類され、それぞれ以下の特徴を備えている。
- 掛け捨て型
- 解約返戻金はなく、保険金の支払い事由に該当しなければ保険料は支払い損となる。その分、毎月の保険料は抑えられる
- 終身型
- 解約返戻金があるため、保険金の支払い事由に該当する前に解約しても一定額は返金される。保障が一生涯続くため、毎月の保険料は高くなる
「支払った保険料が返ってくるか(どれだけ支払い損をする可能性があるか)」という視点で見ると、掛け捨て型は、万が一の事態が起きなければ支払い損になる。
もちろん、何事もなく健康で過ごせるに越したことはないが、払込保険料が返ってこないという点はあらかじめ理解しておくべきだろう。
養老保険の場合、「万が一」に該当した場合は保険料が支払われ、該当しなかった場合も満期の保険金が支払われるため、保険料の支払い損はほぼない。
当然、契約に際して各種手数料や契約料などがかかり、完全に損しないわけではない点にも注意が必要だ。
また、養老保険は死亡時だけでなく、高度障害状態に該当した際にも保険金が支払われることも覚えておこう。
以下の記事で解説している養老保険の種類についても改めておさらいしていただくと、商品への理解もより深まるはずだ。
養老保険とは、保険と貯蓄の両側面を兼ね備えた商品なのである。
円建て養老保険とドル建て養老保険
養老保険の加入方法・運用方法の違いが、「円建て」「ドル建て」の違いである。
養老保険が誕生した当初は、日本円で保険料を支払い、死亡時または満期を迎えた際に保険金を日本円で受け取る「円建て養老保険」が主流だった。
しかし、低金利の環境下で日本円(日本国債に連動する形)で長期間運用しても利回りは期待できない。
そのため、円建て養老保険を保険商品として存続させるのが難しくなったことから、「ドル建て養老保険」が誕生したのである。
ドル建て養老保険は、保険料の支払い自体は日本円で行うため、この点で円建て養老保険との違いはない。
ドル建て養老保険の場合、払い込まれた日本円を米ドルに交換(両替)して、おもにアメリカ国債に連動する形で運用している。
その後、被保険者の死亡または契約期間が満了を迎えた際は、米ドルまたは日本円で保険金を受け取る仕組みだ。
保険金の受け取り方は保険会社によって異なり、米ドルで支払われることもあれば日本円と選択可能な場合もある。
為替レートを勘案できるよう、満期を迎えた後の一定期間は受け取りを留保することも可能だ。
要するに、払い込んだ保険料を「どの通貨で運用するか」という点に違いがあるのである。
米ドル建て養老保険が注目を集める理由
米ドル建て養老保険が注目を集めている理由は、大きく分けて以下の3点が挙げられる。
- 資産運用の必要性が高まっている
- 一定程度の利回りを期待できる
- 保険と貯蓄の両機能を兼ね備えている
少子高齢化が顕著な日本において、将来を悲観視している人もいるだろう。
- 年金制度は保たれるのか
- 健康保険は維持されるのか
- 国の借金は今後どうなるのか
現役世代や子育て世代からすると、安心したセカンドライフを過ごすには、国や政府に頼るだけでは心許ないと考えているのではないだろうか。
「老後資金が2,000万円不足する」という発言もあったように、貯蓄から投資に向けたアクションを各自がとっていく必要を迫られているのが現状だ。
こうした背景から、米ドル建て養老保険も投資先の選択肢の一つに挙がるだろう。
米ドル建て養老保険の場合、一度契約すればその運用に関しては自身で管理する必要はない。
しかし、投資信託や個別株で資産運用する場合、一定期間ごとに投資成績を振り返り、運用状況によっては投資先の見直しや資産分配を改める必要がある。
こうした手間を惜しまない人であれば問題ないが、ある程度の知識は当然必要で、リスク許容度の高さも求められる。
また、保険会社によっては一定の利率を最低保証しているため、ある程度おまかせで資産運用をしながら万が一にも備えられる米ドル建て養老保険に注目が集まっているのである。
円貯蓄は日本の未来にお金を託す行為
なかには、「投資は怖いから」という理由で、毎月の給料をコツコツと貯金し続けている人もいるだろう。
特に、50代以降の世代の場合、定期預金で年利5%ほどの利回りを経験していることもあり、「投資をする必要はない」と思っている人は多いかもしれない。
2023年10月時点において、メガバンクの預金金利は0.002%程度が普通である。
1,000万円を預けても、1年後に支払われる利息はわずか200円だ。これではATMの引出手数料を支払った時点でほぼマイナスである。
しかも、現在は物価が高騰しているだけでなく、円の価値はどんどん低くなっている。
一年前に100円で買えた商品が、今では120円やそれ以上になっていることもあるだろう。
物価の上昇に伴って賃金が上昇すれば対応できるが、現実問題として現在の日本では、賃金は物価上昇と同様に上がることは考えにくい。
このように、日本円を銀行に預けたままでは、何年経っても利息が増えることはなく、むしろ実質的な価値は目減りしてしまうのである。
現在の100万円の価値と数年先の100万円の価値は、必ずしも同じではないのだ。むしろ一般的には価値が下がっているのである。
「投資」という行為は、自分のお金を託す行為であると理解しよう。
日本円の預金は日本の未来に託す行為と同義であり、「預金しかしない」のは、自分の資産を日本の未来に全額託す行為なのである。
投資の本質を理解すれば、資産は分散して保有すべきであることを理解できるだろう。
米ドル建て養老保険のメリットとデメリット
米ドル建て養老保険の概要や特徴などを踏まえて、以下ではメリットとデメリットを詳しく解説する。
自身の保険加入の目的が死亡保障と資産運用に備えたい場合は、養老保険が有力な選択肢になるだろう。
しかし、メリットとデメリットを正しく理解しなければ、自身に適切な保険商品を選べない。
「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、以下の内容は必ず押さえておこう。
米ドル建て養老保険は高い利回りが期待できる
米ドル建て養老保険に加入する最大のメリットは、保険商品のなかで高い利回りを期待できることだ。
商品の特徴でも解説したように、米ドル建て養老保険はアメリカ国債に連動するように払込保険料を運用するため、ある程度の高利回りを望めるのである。
日本では金融緩和政策により、長年にわたって超低金利が続いており、円建ての養老保険は、優れた運用効果を期待できるものではない。
そこで、米ドル建てで運用することにより、円建て以上の運用成績が望めるのだ。
なお、実際の運用成績は保険会社によって異なる上、以下の点は特に注意して比較する必要がある。
- どの時点の利回りを採用するか
- 最低利率の保証はあるか、その場合の利率はどれほどか
- 保険金受け取り時の取り扱いはどうなっているか
- 運用に関する手数料はどれくらいかかるか
高い利回りを維持できたとしても、後述する為替差損や為替手数料によっては、実質利回りが思ったほど高くない場合も想定される。
リスクとリターンは表裏一体であるため、高利回りを期待できる反面、受け取り時のリスクがあることも覚えておこう。
米ドル建て養老保険によるインフレリスクの緩和
米ドル建て養老保険は、インフレに対するリスク分散の観点においてもメリットがある。
2023年10月時点において、継続的に物価は上昇しており、円安状況が続いている状況だ。
一年前の現金100万円で購入できた商品の量と、現在の100万円で購入できる商品の量は少なくなっているだろう。
これがインフレの最も恐ろしいところである。
自分の資産を何に投資するかによって、そのリターンは大きく異なる。
投資先の選択肢として「米ドル(アメリカ国債)」を選択することで、資産の一部を米ドルで保有できるようになる。
その結果、為替が変動して円安が進行したとしても、ドルを保有していれば全体の価値としてはバランスが保たれるはずだ。
投資の格言に「タマゴは一つのカゴに盛るな」というものがある。
これは、資産を一つに集中させた場合、その資産が暴落すると取り返しのつかない損失が出ることを例えた表現だ。
日本円だけでなく、養老保険を通じて米ドルに資産を分散させることで、インフレリスクに対応しやすくなるのである。
米ドル建て養老保険の為替差損と為替手数料
米ドル建て養老保険で最も覚えておきたい注意点・デメリットは、為替差損と為替手数料次第で損失が発生する可能性があることだ。
保険料の払込自体は日本円だが、運用する際は米ドルに交換しなければならない。
まずはこのタイミングで為替レートの影響を受ける。
さらに、保険金を受け取る際も、米ドルから日本円に交換するため、そこでも為替レート次第で資産額が前後するのだ。
たとえば、契約時の為替レートが1ドル150円だった場合、払込保険料が150万円であれば10,000ドルと交換される。
一方、1ドルが100円であれば、払込保険料が同じ場合でも15,000ドルと交換できるのだ。
つまり、契約時は円高であるほど有利になる。
逆に、保険金として10,000ドルを受け取るケースを考えよう。
受け取り時の為替レートが1ドル150円であれば、日本円にして150万円を受け取れる。
しかし、1ドル100円の場合は保険金が100万円にしかならないのだ。要するに、保険金受取時は円安であるほど有利になる。
このように、米ドル建ての場合は為替レートによる影響をダイレクトに受ける点は必ず覚えておこう。
米ドル建て養老保険が向いている人とは
米ドル建て養老保険のメリット・デメリットを踏まえて、保険の加入が向いている人の特徴を解説しよう。
以下に該当する場合は、米ドル建て養老保険の加入がおすすめだ。
決まった時期にまとまったお金が欲しい人
養老保険の場合、加入期間が10年などと決まっているため、将来に向けた資産形成を考えやすい。
「年金の足しになるよう、70歳の時点で満期を迎えるようにしたい」という目的であれば、養老保険はニーズにピッタリ合うだろう。
ほかにも、子育て世代で「子どもの大学進学時に備えて学資保険以外の方法で資産を確保しておきたい」といった場合にも、米ドル建て養老保険を検討するのもおすすめだ。
ライフプランを策定した上で、いつ、どれくらいのお金が必要か明確な場合は、養老保険で資産を用意する方法を検討してもよいだろう。
運用でより多くの資産を形成したい人
通常の場合、保険の目的は万が一の備えであるため、保険に加入しても資産形成に役立つわけではない。
しかし、米ドル建て養老保険であれば、アメリカ国債に連動する形で資産運用する性質を備えているため、資産形成を効率よく行いたい人に特におすすめだ。
なかでも、自分で銘柄を選定して投資信託に投資したり、資産配分を定期的に見直したりするのが面倒に感じるのであれば、米ドル建て養老保険の加入はぴったりである。
保険の契約を済ませて保険料を払い込めば、あとは契約期間が満了するまで運用に関してはおまかせで構わない。
時間の取れない方やこまめな管理が苦手な性格の人にも米ドル建て養老保険はおすすめである。
円安リスクに備えたい人
日本円が急激に安くなっている現状に対して、適切な対策を取りたいと思っている人も米ドル建て養老保険を検討しよう。
保険に加入すれば、払込保険料分は米ドル建てで資産を保有することになる。
日本円以外の資産を分散保有できるため、総資産額はバランスを保てるだろう。
今とは反対に、円高になればドル安になるものの、米ドルの保有割合は日本円に比べて限定的だ
。さらに、昨今の経済情勢からして、円高局面を迎えるのは想定しにくいだろう。
長期的に見ても、日本が世界を驚かすような経済発展を見込むのは残念ながら難しく、「円安に対する備え」はしておいて損することはないはずだ。
米ドル建て養老保険で資産を増やそう
本記事では、米ドル建て養老保険のメリットとデメリットについて詳しく解説した。
円建て養老保険と比べて、利回りの高さやインフレリスクへの対策ができるというメリットがある。
そのため、運用により資産を増やしたいと考えている人には向いている。
一方、為替リスクや為替取引の手数料といったデメリットもあるため、自身のライフプランに合った保険選びを行うことが重要となる。
正しい知識がないとせっかく積み立てたお金を減らしてしまう恐れもあるので、保険のプロの適切なアドバイスを受けながら保険選びをすることが大切になるだろう。
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