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【9165】株式会社クオルテック 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年1月26日に実施したIRインタビュー、2024年2月20日の決算説明会をもとにしております。

株式会社クオルテックは、昨年の2023年7月に独立系検査会社として初めて東証グロース市場に上場を果たしました。

自動車・半導体業界における大手企業をメイン顧客とし、電気自動車等で使われる車載向けパワー半導体を始め、エレクトロニクスメーカーの半導体・電子部品などの分析、故障解析を含む信頼性評価から研究開発においてお客様が抱える技術的課題解決にワンストップで対応できる「トータル・クオリティ・ソリューション」を提供しています。

代表取締役社長の山口友宏氏に事業戦略の変遷や今後の成長戦略を伺いました。

目次

株式会社クオルテックを一言で言うと

「未来品質の創造」に向けた「品質技術サービス」をワンストップで提供する独立系検査会社です。 

クオルテックの沿革

株式会社クオルテック代表取締役社長 山口友宏氏

創業経緯

当社は1993年に設立され、電子部品に関する技術指導や品質管理のコンサルティングサービスを提供する会社として創業しました。

電気系を出発点とし、お客様の要求水準に応えるだけでなく、限界まで不良ゼロを目指すという「ゼロ思想」を掲げ、品質向上を目指して技術開発に取り組んできました。

このマインドは、検査会社としての私たちの礎です。

事業拡大と上場

1998年には、技術追求の一環として自社での微細加工をスタートしました。

我々はレーザ加工市場の成長に早くから注目し、積極的な投資により技術力を高めていきました。

これらの努力が認められ、2006年にはISO/IEC 17025規格の認証取得をきっかけに、大手を含む自動車業界からの依頼が増え始めました。

以降、事業拠点の拡大とともに成長を続け、2023年7月28日には独立系検査会社として初めて東証グロース市場に上場を果たしました。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

クオルテックの事業の概要と特徴

概要

我々のコアコンピタンスは、「品質技術サービス」です。

そのサービスは3つの柱の事業と研究開発部門で展開されています。

まず1つ目の柱である信頼性評価事業では、自動車部品や電子機器メーカー向けに半導体電子部品の外部評価サービスを提供しています。

そして2つ目の柱である微細加工事業においては、基板メーカーなどに対してレーザ加工を提供しています。

3つ目の柱であるその他事業では、遺伝子検査、バイオ受託検査、表面処理加工などのサービスを提供しています。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

事業における優位性

高い専門性と幅広い技術力

当社の主な強みは、電気系統における高い専門性と、幅広い分野での技術力の高さです。

これにより、独立系検査会社としての確固たる地位を築いています。

特に、自動車業界においては、急速な技術革新と電動化の進展が見られます。

この業界は、開発のスピード競争と高度な安全性の確保という、二つの相反する要求を同時に満たすことが必要です。

これらの課題に対応するため、信頼性評価を外部に委託する需要が顕著に増加しており、当社はこのニーズに応えるための技術力と経験を有しています。

独立系検査会社特有の豊富な試験メニューと確立されたポジション

当社の位置づけを示すポジショニングマップについてご説明いたします。

このマップは、縦軸に試験メニューの豊富さを、横軸に子会社系と独立系の区分を配置しており、当社は独立系としての位置にあります。

独立系企業としての特性上、安定したオーダーを親会社から受けるわけではありませんが、コンサルティングからスタートした経緯を活かし、困難な試験にも解決策を提供することで積極的に受注してきました。

その結果、競合他社にはない多様な試験やユニークなソリューションを提供できるようになりました。

特に、大手メーカーの品質問題がクローズアップされる中で、資本関係に左右されない中立的な第三者機関としての役割が重要視されています。

このような背景から、難易度の高い試験の外注ニーズは拡大しており、当社の高い技術力を持つ独立系検査会社としてのポジションが強みとなっています。

加えて、分析・信頼性試験業界で初めて上場を果たしたことにより、当社のユニークな地位をさらに確固たるものにしています。

株式会社クオルテック 2023年6月期 決算説明資料 より引用

断面研磨からファーストチョイスを獲得

当社が提供する信頼性評価事業におけるお客様の製造プロセスと、当社への受注の関係についてご説明します。

製品製造において、信頼性評価は極めて重要な役割を果たしています。

製品開発の初期段階から市場投入後まで、すべてのフェーズで信頼性評価のニーズが存在します。

具体的には、研究開発フェーズでの試験依頼はもちろん、製品の量産フェーズでもサービスを提供しています。

先行開発で受注したプロジェクトは、多くの場合、量産開発や市場投入後のサポートにも継続して関わることになります。

これは、お客様が供給元を変更する際のコストが高いため、初期段階での選定が非常に重要になるからです。

そこで当社の持つ断面研磨技術が強みとなっています。

この技術は、細かい観察が必要とされるため、専門家の技術が求められます。

一般的にメーカーでは週に一度程度の断面研磨しか行わないため、技術力の向上が難しいという課題があります。

しかし、当社の研磨センターでは事業化したことにより日常的にこれを実施しており、技術力の高さとコストパフォーマンスの良さを実現しています。

この技術力の高さにより、信頼性試験や分析業務の受注につながっています。

株式会社クオルテック 2023年6月期 決算説明資料 より引用

クオルテックの中長期の成長イメージとそのための施策

自動車業界の現状と展望

自動車業界は、CASE(Connected, Automated/Autonomous, Shared & Services, Electric)と呼ばれる技術革新により、大きな変革期を迎えています。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

この変化は、自動車のシステム開発にも大きく影響を及ぼしており、V字モデルとして知られるプロセスを採用しています。

このプロセスでは、設計開発フェーズとテスト評価フェーズの各ステップを密接に連携させ、効率的に検証作業を行っています。

特に、モデルベースの開発(MBD)が主流となり、ソフトウェア開発へのリソースシフトが進んでいます。

これに伴い、ハードウェア開発では、設計の初期段階で信頼性を高め、問題点を特定するニーズが高まっています。

当社の信頼性評価技術は、このようなニーズに応えることができるため、今後のビジネス拡大に向けて大きな可能性を秘めています。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

信頼性事業の成長戦略

当社の信頼性評価事業の成長戦略についてお話しします。

製造業界では、製品の信頼性評価が非常に重要とされており、開発初期段階から製品が市場に出るまでの全フェーズで必要とされています。

特に、当社が先行開発段階で受注する案件は、顧客のスイッチングコストの高さから、量産開発や市場投入後も継続して受注することが多いです。

今後はサービスの多様性や提案力が、重要な役割を果たします。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

また、外注市場の規模に関して2022年時点で、国内の環境試験やパワーサイクル試験、故障解析分析などの外注総計が約670億円であると推定されています。

さらに2027年には、この市場規模が920億円と、1,000億円近くに拡大すると見込まれています。

特に注目されているパワー半導体は、高電圧や大電流を扱う能力を持ち、自動車の電動化における核心的な役割を果たしています。

この分野において、当社は早くから技術開発や設備投資に取り組んできました。

2014年からは、お客様と共同で技術開発を進め、日本の主要なパワー半導体メーカーからの注文を受けています。

半導体材料の変化に伴い、評価需要が増大しており、今後もこの傾向は続くと予測されます。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

パワー半導体に関するトータルクオリティソリューション戦略

当社はパワー半導体に関するトータル・クオリティ・ソリューションの戦略を推進しています。

まず、インフラ戦略として、手狭になってきた既存の施設を集約する新たなパワエレ試験センター(仮称)の建設を計画しています。

そして半導体産業が集積する九州地区へのアプローチを強化するため、2024年2月に熊本営業所を開設しました。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

また、新規次世代パワー半導体では特に二酸化ゲルマニウムGeO2に注目しています。

この素材はコスト、成長性、バンドギャップにおいて優位性を持ち、次世代パワー半導体市場で一定のシェアを獲得できると考えています。

2023年12月14日には、新規次世代半導体二酸化ゲルマニウムの研究開発と製造を行うPatentix株式会社と資本業務提携を結びました。

この提携により、当社のこれまでのパワー半導体評価領域は後工程が主流でしたが、新たに前工程においても貢献できる領域を拡大する事となります。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

微細加工事業の成長戦略

今後の市場拡大に向けて、通信分野からヘルスケア分野への進出を図っています。

特に、微細な加工が必要とされるバイオセンサなどが今後のキラーコンテンツになると見込んでおり、ヘルスケア市場の成長性と長期にわたる開発サイクル、高い参入障壁が安定した受注につながると考えています。

当社が保有する国内で稀有なレーザ加工装置と高い技術力は、バイオセンサ向け部品開発の加工分野での参入を可能にし、高く評価されています。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

その他事業

当社のその他事業部門では、自動車業界で培った技術をヘルスケア分野に応用することを目指しています。

特に、シングルユースバッグと呼ばれる医薬品製造用部品が、シングルユースバッグの世界市場において重要な役割を担っており、その市場占有率は約30.5%に上ります。

今後は厚生労働省の事業開始に伴う国産ワクチンの開発・生産体制強化の流れを受け、この分野での需要増加が見込まれます。

このような背景の下、安全性や安定性試験に関して当社がイニシアチブを取って実施していくことができる、という結論に至りました。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

注目していただきたいポイント

我々の「トータル・クオリティ・ソリューション」のアプローチがクオルテックの成長を加速させる鍵であると確信しています。

また、以下の成長ロードマップを見ていただくとご理解いただけると思いますが、現在最も注目されているパワー半導体市場において、我々のソリューションがスムーズに進化すれば、その成長速度は飛躍的に増すと考えています。

ぜひ、今後の当社の持続的な成長性に注目していただきたいと思います。

株式会社クオルテック 中期成長戦略 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社は、自動車業界を始め、様々な業界で独自のソリューションを提供し、パワー半導体市場や新規次世代パワー半導体への積極的な展開を通じて、他社とは一線を画すチャンスに恵まれています。

私たちの挑戦と成長のロードマップに共感し、ファンになってくださると嬉しいです。

株式会社クオルテック

本社所在地:〒590-0906 大阪府堺市堺区三宝町4丁230番地

設立:1993年01月18日

資本金:392,100,000円(2023年12月31日時点)

上場市場:東証グロース市場 (2023年7月28日上場)

証券コード:9165

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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