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【7096】株式会社ステムセル研究所代表取締役社長 清水崇文氏「二軸のマーケティング戦略で臍帯血保管事業を伸ばし、潤沢なキャッシュで新たなビジネスを生み出す」

※本コラムは2022年11月24日に実施したIRインタビューをもとにしております。

将来の再生医療に備え臍帯血(へその緒を流れる血液)や臍帯(へその緒そのもの)を保管するというニッチな業界で圧倒的シェアを誇る株式会社ステムセル研究所。

代表取締役社長の清水崇文氏に、民間バンクのパイオニアとして走り続ける当事業の、再生医療にとどまらない拡大と成長の戦略を教えていただきました。

目次

株式会社ステムセル研究所を一言で言うと

臍帯血や臍帯等周産期の組織、細胞を扱うというニッチかつ競合のいないビジネスモデルで、高い成長率と利益率を確保している会社です。

代表就任の経緯

当社は慈恵医大の医師により1999年に設立されました。当時は今よりもさらに認知度が低く、業績を伸ばすことが難しい状況でした。そのため資金調達等で徐々に創業者らの持分比率が下がってきておりました。

そのような中、2013年に当時私が勤務していた株式会社日本トリム(東証プライム上場)という会社が、当社の株式を50.1%取得し、筆頭株主となります。そして、3年後の2016年に、当時のM&Aの担当でもあった私が当社代表取締役に就任致しました。

事業環境的には、ちょうどこの前後で、臍帯血を保管し将来の治療に役立てるという当分野への風向きが変化し始めたタイミングでした。2014年には「再生医療の安全性の確保等に関する法律(安確法)」により、民間の事業者が保管する細胞を治療に活用するため法的な枠組みが整理されました。

一方、業界的には2016年に、臍帯血が違法に利用されるという出来事があり、ある事業者の違法な業務実態が報道されるなど注目を集めました。

この事態に対し、厚労省が2017年に臍帯血を扱う業者にも届出を求める方針を定めました。この事が逆に、認知度と信頼を高めるきっかけにもなりました。法律という外部環境、そして業界内がクリアになったことで、2019年にかけては5-6割の高い事業成長を実現させていきました。

また、ちょうどこの年の初めから上場準備を本格化させ内部統制を進めて行きました。すでに業績も伸びていましたし、事業環境も整備されていたこともあり順調に審査が進み、2020年の3月に上場承認をいただき、4月に上場予定でした。

しかし、そこでコロナショックが起き多くの会社が上場を延期。当社も上場を期限の同年6月まで粘りましたが、感染症拡大等の状況等を判断し、最終的には1年延期し、2021年6月25日に当時の東証マザーズ市場へ上場いたしました。

コロナ禍において、当社のマーケティング施策は大きく変化いたしました。従来は全国に2000軒ある産婦人科との信頼関係の構築に注力し、その病院内で妊婦さんに直接PRさせて頂くという戦略を取っていました。しかし、2020年の2月頃からコロナ禍の影響で徐々に訪問が難しくなり、我々は新しい施策をする必要性に迫られていました。

そのような中たどりついたのが、毎年80万人いる妊婦さんへ、直接アプローチをするBtoCのデジタルマーケティングです。実は、全国の産婦人科のうち、当社に積極的に協力し妊婦さんに採取を促してくれるような濃い関係性のある先は1割ほどにとどまっていたのです。

単純計算で年間8万人の妊婦さんにしか届けられていなかった当社の情報を、いかに効率的に多くの方に届けるかと考えた結果、答えは一つでした。

同年の5月より本格的に投資を開始し、広告出稿とSEO対策を行なっていきました。現在のアクセス数は月間平均で100万UUを超え、業績にも大きく反映されてきました。コロナがなければ、業績が順調に伸びていた分、オンラインでのマーケティング施策の拡大余地にこの段階では気づいていなかったと思います。

また、結果として上場時のバリュエーション(時価総額)も一年で4割ほど上昇しましたので、当社にとって大きな転換点であったと言えます。

【7096】株式会社ステムセル研究所代表取締役社長 清水崇文氏「二軸のマーケティング戦略で臍帯血保管事業を伸ばし、潤沢なキャッシュで新たなビジネスを生み出す」 わたしのIFAコラム
株式会社ステムセル研究所 2022年3月期 事業内容説明資料 より引用

事業内容について

臍帯血や臍帯という、出産時にしか採取することができない貴重な細胞を将来の医療に活用することができるよう、保管する業務をメインでおこなっています。

現在、民間の業者でこの事業の届出をしているのは2社であり、そのうち当社は99.9%とほぼ100%のシェアを有しています。

【7096】株式会社ステムセル研究所代表取締役社長 清水崇文氏「二軸のマーケティング戦略で臍帯血保管事業を伸ばし、潤沢なキャッシュで新たなビジネスを生み出す」 わたしのIFAコラム

株式会社ステムセル研究所 2022年3月期 事業内容説明資料
 より引用

また、この事業を ベースとして、女性の健康といった周辺事業への取り組みや、潤沢なバランスシートを生かした関係ベンチャーへの出資、M&A等も行なっております。

当社の強みは、やはり全国2000軒の産婦人科とのネットワークにあります。

【7096】株式会社ステムセル研究所代表取締役社長 清水崇文氏「二軸のマーケティング戦略で臍帯血保管事業を伸ばし、潤沢なキャッシュで新たなビジネスを生み出す」 わたしのIFAコラム

株式会社ステムセル研究所 2022年3月期 事業内容説明資料
 より引用

産科クリニックの多くは個人経営で、いわば企業オーナーの方々です。その一つ一つと関係性を構築していくには相当な期間がかかりますし、容易なことではありません。さらに、細胞の保管というは長期的なものですし、医療機関はレピュテーションリスクを抑えるという面で実績のある業者を選ばれます。25期目に入る当社の実績とノウハウは、この点において高い参入障壁となっています。

また、他社が参入しづらいブルーオーシャンであるこのネットワークが周辺事業への展開にも生かされています。フェムテックと言われる女性の健康に関わる領域は、 近年その重要性からサービスが増加しております。すでに国内外の数社から、当社のネットワークを期待して提携のお話をいただいております。

我々としてもマネタイズの方向性も見えやすいですし、チャネルをすでに持っていることで、臍帯血の分野と同様に高い利益率を実現できると考えており、今後注力していく予定です。臍帯血マーケットの拡大には新たな治療法への活用はもちろんのこと幅広く使われることで、保管の意義が増し、市場も成長していきます。

また、そもそも現在の臍帯血の採取率は1%程度に過ぎません。ですので、今後国内の出生率が低下1割低下したとしても、マーケットの成長に貢献し採取率を高めていくことがで、マクロ環境に左右されず継続的に成長することが出来るのです。

【7096】株式会社ステムセル研究所代表取締役社長 清水崇文氏「二軸のマーケティング戦略で臍帯血保管事業を伸ばし、潤沢なキャッシュで新たなビジネスを生み出す」 わたしのIFAコラム

株式会社ステムセル研究所 2022年3月期 事業内容説明資料
 より引用

中長期の成長イメージとそのための施策

定量的には、臍帯血の保管率3%、売上高60億円、営業利益率25〜30%を中期的な目標と定めております。

すでにこれに向けた設備投資も完了しておりますし、デジタルマーケティング戦略を継続しつつ、コロナが落ち着いたタイミングでオフラインでの開拓も本格的に再開させますので、数年で十分に実現可能な数字と見ています。

【7096】株式会社ステムセル研究所代表取締役社長 清水崇文氏「二軸のマーケティング戦略で臍帯血保管事業を伸ばし、潤沢なキャッシュで新たなビジネスを生み出す」 わたしのIFAコラム
株式会社ステムセル研究所 2023年3月期第2四半期 決算補足説明資料+成長戦略 より引用

また、さらなる成長の種として全国2000軒の産婦人科とのネットワークを活用し周辺事業の確立を進めて行きます。フェムテックの領域は、注目が高まって来ており、当社としても今後の業界動向を見極めながら、出資ないしはM&Aを行い積極的に取り組んで行きたいと考えております。

逆に製薬や創薬の領域などリスクが高い分野に対しては、新しい治療法に取り組まれる事業者様に対して、まずは共同研究という形でサポートさせていただき、将来的には出資等も検討していければと思います。

【7096】株式会社ステムセル研究所代表取締役社長 清水崇文氏「二軸のマーケティング戦略で臍帯血保管事業を伸ばし、潤沢なキャッシュで新たなビジネスを生み出す」 わたしのIFAコラム
株式会社ステムセル研究所 2023年3月期第2四半期 決算補足説明資料+成長戦略 より引用

さらに長期的な目線では、事業の海外展開も視野にあります。臍帯血の保管ビジネスは世界中にマーケットが存在しますが、特に東南アジアでは浸透率が低く日本への信用度も高いですので、(シンガポール以外)ターゲットになってくると思います。

中期的な定量目標の達成により時価総額を500-600億円に上げつつ、長期的なこれらの戦略を含め、トータルで1000億円を目指してまいります。

投資家の皆様へメッセージ

上場している以上、事業会社として成長することは使命だと思います。

また、業績だけでなく、働きやすさや社会貢献等も含め、やはり上場会社の最終的な企業評価は時価総額ですので、トータルで時価総額1000億円という数字を意識して、今後も経営をしていきたいと考えております。

株式会社ステムセル研究所

本社所在地:東京都港区新橋5丁目22番10号 松岡田村町ビル

設立:1999年8月5日

資本金:7億480万円(2022年12月アクセス時)

上場市場:東証グロース(2021年6月25日上場)

証券コード:7096

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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