- 60代の約2割が1年以内に投資を始めている
- 60代で積極的にリスクをとる運用は失敗のもと
- 60代の運用ポートフォリオには配当株・投資信託・債券がおすすめ
- 効率的な投資戦略を立てるなら「資産運用ナビ」でアドバイザーに相談がおすすめ
定年を迎え、セカンドライフに入る60代。退職金などまとまった金額が入るタイミングであることから、資産運用を検討している人も多いかもしれない。
本記事では、60代から始める資産運用のポイントやおすすめの運用方法について紹介していく。
だが、資産運用をいつから始めるか、またどのような目的で行うかによって、投資家ごとにおすすめの運用法は異なる。また、若い世代と比較すると運用にあてられる期間も限られることから「失敗したくない」と考える方も多く、「やってはいけない老後の資産運用」が気になるところではないだろうか。
そこでこの記事では、60代から資産運用を始めようと考えている方に向けて、60代が理解しておきたい資産運用の基本と注意点、そしておすすめの運用ポートフォリオについて解説する。
最後には資産運用のおすすめの相談先についても解説するので、あわせてぜひ参考にしてほしい。
資産運用は60代にも必要

資産運用は若い世代のみが行うものではない。60代も資産運用をして、資産形成をする必要がある。
では、なぜ資産運用は60代にも必要なのだろうか。
まずは、資産運用が60代に必要な理由について解説していく。
平均寿命は延びているが退職金と年金額は減少傾向
平均寿命は男女ともに延びている。こちらのデータを見てほしい。
昭和22年調査 | 平成2年調査 | 令和5年調査 | |
---|---|---|---|
男性 | 50.06歳 | 75.92歳 | 81.09歳 |
女性 | 53.96歳 | 81.90歳 | 87.14歳 |
昭和22年と令和5年の平均寿命を比較すると、30歳以上延びている。
一方、退職金と年金額は減少傾向にある。勤続35年以上の退職者1人あたりの給付額を見てみよう。
平成30年調査 | 令和5年調査 | |
---|---|---|
大卒・大学院卒 | 2,173万円 | 2,037万円 |
高校卒(現業職) | 1,629万円 | 1.471万円 |
現業職の高校卒の場合、およそ150万円も減額されていることが分かる。
さらに、年金額も減少している点に注目してほしい。こちらの表は、厚生年金受給者の平均年金月額を記載している。
平成元年調査 | 平成10年調査 | 平成19年調査 |
---|---|---|
138,186円 | 175,646円 | 161,059円 |
上記のデータをまとめると、平均寿命は延びているものの、退職金と年金額は減少傾向にある。
60代は年金以外にも収入源を見つけなければ、老後の生活が苦しくなるだろう。

こうしたデータを踏まえたうえで、退職後の資金計画を見直すことが重要です。
特に「年金+退職金だけで暮らす」という従来型の考えに頼らず、資産運用や副収入の可能性も含めた総合的なプランニングが必要です。
老後生活は取り崩しが必須
総務省統計局の2023年度版「家計調査年報」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、毎月37,916円の赤字となっている。
また、65歳以上の単身無職世帯でも30,768円の赤字だ。
赤字分は貯金から切り崩すこととなるため、もし貯金がなければ厳しい老後生活を送ることが予想される。
また、近年では物価高のニュースを見る機会も多い。日用品や食品などの値上げが続いており、節約をしている人も多いと思うが、これにも限界がある。
今度も物価高が続くのであれば、より多くの生活費が必要となるだろう。
60代から資産運用を始める場合の運用期間
60代から資産運用を始めると仮定した場合、運用期間は10年~20年程度だろう。
40代や50代と比べると運用期間は短くなるが、長期投資をするには十分な期間だと判断できる。
60代に限った話ではないが、安定したリターンを得たいのであれば長期運用をおすすめする。
時間を味方につけるためにも、60代はできるだけ早く資産運用を始めるとよいだろう。



60代であっても、「リスクを抑えつつ資産を増やす」というスタンスでの運用は十分可能です。
個々のライフプランや生活費の見通しに応じた、分散投資やインカムゲイン型の運用方法をおすすめします。
60代で資産運用をしている人はどのくらいいる?


では、実際に60代で資産運用を実践している人はどの程度いるのだろうか。
60代で投資をしている人の割合
60代で株式や債券、投資信託を持っている人がどの程度の割合でいるのかをまとめたのが以下の表だ。
金融資産の種類 | 60代が保有している割合 |
---|---|
株式 | 33.7% |
債券 | 9.6% |
投資信託 (MRF、MMF、REITなどを含む) | 27.0% |
デリバティブ | 6.3% |
金融広報中央委員会の調査データによると、株式を保有している人が33.7%、投資信託を保有している人が27.0%という結果が確認できる。
この数字から概ね60代の3割程度は元本割れのリスクがある株式や投資信託に投資をしていると言えそうだ。



60代は資産を守りつつ増やす意識が高まる時期です。
実際、株式や投資信託といったリスク資産をバランスよく組み入れて運用を継続している方は少なくありません。
高配当株など、安定収益を見込める商品への関心が特に強まっています。
60代以下の他の年代の比較もしてみよう。
株式の 保有割合 | 債券の 保有割合 | 投資信託(MRF、MMF、REITなどを含む)の 保有割合 | デリバティブの 保有割合 | |
---|---|---|---|---|
60代 | 33.7% | 9.6% | 27.0% | 6.3% |
50代 | 28.6% | 6.2% | 24.9% | 6.4% |
40代 | 28.4% | 4.1% | 28.9% | 6.3% |
30代 | 27.6% | 4.9% | 29.5% | 5.9% |
20代 | 19.0% | 4.4% | 24.7% | 3.3% |
60代の株式や投資信託の保有割合は若い世代に比べて低くはない。株式と債券の保有割合に至っては、むしろ他の年代に比べて高いことが確認できる。
データ以外でも意外に60代以上の投資家が多いことを実感できる機会も多い。
投資セミナーや大都市で開かれる投資フェアなどに足を運んでみると高齢者と見られる参加者がかなり多いことが分かるはずだ。
投資を経験したことがないと、もしかしたら働き盛りの若い人がするものだという認識を持っているかもしれない。
しかし60代以上のシニア世代の投資家は若い世代に比べ少ないということはない。むしろシニア世代の投資家は投資に対して熱心で積極的なところもある。
60代の投資家は増えているのか?
令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
---|---|---|---|
株式 | 40.4% | 36.0% | 33.7% |
債券 | 8.0% | 10.3% | 9.6% |
投資信託 | 28.3% | 26.3% | 27.0% |
デリバティブ | 6.9% | 7.1% | 6.3% |
令和3〜5年までの直近の動向を見てみると60代で株式や投資信託を保有している割合に大きな変化はない。
株式は減少しているが投資信託に関しては、ほぼ横ばいだ。
公的なデータ以外にNRI(野村総合研究所)で年齢階層別に、2009年〜2021年までの投資をおこなっている人の割合の推移を確認できる。
参考:NRI 高まる投資熱-投資している人と投資に興味を持つ人の割合が大きく上昇-
概要は以下の通り。
- 25歳〜69歳の幅広い年代で投資をしている人の割合は急増している
- 20代〜50代で投資を行なっている人の割合は上昇傾向にある
- 60代で投資をしている人の割合は多いが横ばいからやや減少
実は20代〜60代の中でも60代は投資を行なっている割合が多かった。
しかし、近年は若い世代が投資を新しく始めることが増えている。
60代はもともと投資をしている人の割合が高いこともあり、増えているかどうかという観点でいくと横ばいと言えるだろう。
ただ、老後の不安や投資ブームの影響で若い世代の投資への新規参入は増えているが、60代の投資家はもともと若い世代に比べて多かった。
全世代の中でも60代投資家の存在感は依然として大きいことに変わりはない。



老後資金への不安や低金利を背景に、60代でも“貯蓄から投資へ”の意識が浸透しています。
ただし、リスク許容度や資金の取り崩し時期を考慮した設計が不可欠。
資産を減らさず、インフレ対策としてもバランスの取れた運用が求められています。
60代におすすめの5つの投資法


60代におすすめの投資法を5つ紹介していく。それぞれのニーズに合う投資方法を選択してみてほしい。
老後資金の運用をプロに任せたいなら投資信託
「投資信託」とは、投資家から集めたお金を資産運用のプロが運用する金融商品のことだ。投資信託の投資先は、国内株式や先進国債券など多岐にわたる。
投資初心者が自分で資産運用をするのは容易ではない。
投資先の価格変動を注視したり、銘柄選定したりするのは、投資に関する知識や経験のない人にとってはハードルが高いだろう。
そこで投資信託を選べば、資産運用のプロが運用してくれるので安心だ。
また、投資信託は少額から投資ができるため、投資初心者でも始めやすい投資方法として人気が高い。
60代から始める資産運用に適した金融商品だと判断できる。



運用判断に不安がある方には、分散効果と手軽さを備えた投資信託がおすすめです。
特に60代にとって投資信託は、リスクを抑えつつ安定した資産形成を目指せる心強い選択肢です。
リスクを取りつつもリターンを狙いたいなら株式投資
「せっかく資産運用にチャレンジするのであれば、老後資金を大きく増やしたい」と考えている60代も多いだろう。
リターンの大きさを重視したい60代におすすめなのが株式投資だ。
「株式投資」とは、企業が発行する株式に投資をする投資方法だ。
株式を安く買って高く売るときに得られるキャピタルゲインや、配当金などのインカムゲインを狙っていく。
また、特定の株式を購入すると、株主優待を受けられることがある。
株主優待の内容は企業によって異なり、特定のサービスを割引価格で利用できたり、食料品が自宅に送られてきたりする。
上記のような魅力がある株式投資だが、価格変動リスクが高い点を忘れてはならない。株式の価格は日々変動する。
株価が暴騰して大きなリターンを得られる可能性があるが、購入してすぐに大幅下落するケースも珍しくない。
リスク管理を徹底しつつ、株価の変動に注視しながら運用するようにしよう。
定期的に利子を受け取りたいなら債券投資
「債券投資」とは、国や地方公共団体、企業などが資金を調達するために発行する債券に投資をする投資方法だ。
投資家はお金を貸す代わりに、定期的に利子を得られる。
一般的に定期預金よりも金利が高く設定されており、投資初心者でもリターンを得やすいメリットがある。
また、償還日が決まっているので、計画的に運用したい60代には魅力的に感じるだろう。
債券投資で注意しておきたいのは信用リスクだ。債券の発行体が破綻すると債務不履行(デフォルト)に陥る。
債務不履行となった場合、元本の返済ができなくなってしまい、損失を被る可能性が高い。
また、償還日前に売却すると元本割れとなることも考えられる。運用期間を把握してから投資するようにしよう。
元本割れリスクを取りたくないなら退職金定期預金
これまで様々な投資商品を紹介してきたが、原則として投資にはリスクがつきものだ。運用次第では元本割れとなり、資産が減少するおそれがある。
「絶対に損をしたくない」「元本割れしない金融商品を選びたい」と考えている60代も多いだろう。
元本割れリスクを取りたくない60代におすすめなのが退職金定期預金だ。
預入の対象はがg退職金に限定される代わりに、通常の定期預金よりも高い金利が設定される特徴がある。
また、退職金定期預金は元本保証型の投資法だ。元本割れをする金融商品に投資をしたくない60代は検討してみるとよいだろう。
ただし、退職金定期預金の運用期間は比較的短い。数か月~数年ほどで満期を迎えるため、次の投資先を考えておく必要がある。
また自動継続型で契約している場合、金利の優遇期間が過ぎてしまうと通常の定期預金の金利が適用されてしまう。
低金利でお金を預けてしまうと、資産の増加するスピードが遅くなってしまう点には注意しておこう。
非課税で運用したいのなら新NISA
新NISAとは、投資で得た利益に対して税金がかからない制度のことだ。一般的には、投資信託や株式投資などで利益が出ると、20.315%の税金がかかってしまう。
例えば、ある株式を売却して5万円の利益が出たとしよう。課税口座で取引をした場合、およそ1万円の税金が引かれてしまう。
税金が引かれた金額が手元に残るので、思ったよりも儲からないと思うかもしれない。
しかし、NISA口座なら税金がかからずに済む。上記のケースでは、利益額の5万円をそのまま受け取れるのだ。
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの投資枠がある。
これから資産運用を始める60代におすすめなのは、つみたて投資枠を使った投資信託への投資だ。
つみたて投資枠で投資できるのは、長期の積立投資や分散投資に適していると認められている投資信託だ。
投資対象が限られているので、初心者でも銘柄選定がしやすい。



新NISAは非課税枠を活用して効率的に資産を増やせる制度で、特に老後の生活費確保と資産保全の両立を目指す60代に適しています。
税負担を抑えながら長期・分散投資ができるため、安定的な資産形成を望む方にとって非常に有効な手段です。
ただ「投資信託の種類が多くなかなか選べない」という悩みを抱える60代も多い。そこで、60代がつみたて投資枠で選ぶべき銘柄について紹介していく。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
基準価額 | 26,449円 |
---|---|
純資産総額 | 5兆9387億円 |
カテゴリ | 国際株式・グローバル・含む日本(F) |
ベンチマーク | MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース) |
信託報酬(年率) | 0.05775%以内 |
トータルリターン | ・-11.50%(1か月) ・-7.90%(6か月) ・+0.20%(1年) ・+13.97%(3年) ・+18.73%(5年) |
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、世界各国の株式に投資をする投資信託だ。
「オルカン」とも呼ばれており、多くの投資家から支持されている銘柄の一つとして知られている。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)に投資をするだけで、様々な国に分散投資ができる。
そのため、自分で銘柄を選定できない60代にもおすすめだ。
また、トータルリターンと呼ばれる運用成績も良いので、60代から資産運用を始めたい人はポートフォリオに組み入れておこう。
eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
基準価額 | 18,384円 |
---|---|
純資産総額 | 1,817億2200万円 |
カテゴリ | 国内大型グロース |
ベンチマーク | 日経平均トータルリターン・インデックス |
信託報酬(年率) | 0.143%以内 |
トータルリターン | ・-8.14%(1か月) ・-6.89%(6か月) ・-4.54%(1年) ・+12.36%(3年) ・+4.22%(5年) |
「海外の株式はよく分からないから、馴染みのある日本企業に投資をしたい」という60代も多い。
このような人におすすめしたいのがeMAXIS Slim 国内株式(日経平均)だ。
「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」は、日本を代表する株価指数である日経平均株価の値動きに連動した運用成果を目指す投資信託だ。
ファーストリテイリングやダイキン工業などの株式が投資対象となっており、国内有数の企業に分散投資ができる。
日経平均株価は長らく低迷が続いていたが、バブル期につけた3万8,957円44銭を突破し、上昇トレンドを形成していた。
しかし、2025年4月3日、トランプ大統領による相互関税の発表を受けて、株式市場では自動車など輸出関連株を中心に売り注文が殺到した。
日経平均株価も大幅に下落したが、5月16日現在では、短期的な値動きには引き続き注意が必要ながらも、中長期の成長性や日本株市場の回復力を重視するスタンスは依然有効と考えられている。
60代が知っておくべき投資のコツ


60代は、投資のコツを把握してから資産運用を始めるほうがよい。投資のコツを把握しておけば、資産運用の成功確率を高めることができるようになるからだ。
ここから解説する内容を確認して、老後の資産形成に役立ててほしい。
老後資金をシミュレーションしておく
投資をする前に、予想収支と老後に必要な資金を計算しておくと、具体的な運用目標を設計できるようになる。以下に計算しておくべき項目を記載したので参考にしてほしい。
収入 | 支出 |
---|---|
公的年金・再就職などによる収入(本人・配偶者) 退職金 その他の収入 | 生活費 ライフイベント資金(孫の誕生日祝いや旅行など) 住宅ローンなどの返済額 |
また、金融庁などのライフプランシミュレーターを利用する方法も有効だ。年齢や現在の資産額などを入力すると、シミュレーション結果が表示される。
様々な条件を入力して、何度もシミュレーションをしてみることをおすすめする。



資産運用は“いくら必要か”を知ることから始まります。
老後資金を見える化することで、過剰なリスクを避けた現実的な投資計画が立てやすくなります。
安全性の高い投資戦略を立てておく
60代の資産運用で重要なのは、攻めではなく守りだ。現役世代のように働ける60代は限られており、多くの収入を得ることは難しくなる。
そのため、資産を減らさないことを最優先すべきだ。
資産を減らさないために考えておきたいのが、安全性の高い投資戦略だ。例えば、リスクの高い株式に投資をするのは、投資資金の5%~10%程度にしておく。
投資資金の50%~60%程度を投資信託で運用し、リスクを抑えつつリターンを狙いにいく。
残りの投資資金を債券や退職金定期預金に回しておくことで、低リスクでの運用が可能となる。
投資の3原則を実践する
投資を始める際に知っておきたいのが、投資の3原則だ。「投資の3原則」とは、長期投資・積立投資・分散投資を指す。
投資信託や債券などを購入した後は、数年~数十年ほど保有したままにすることが原則だ。
長期保有をすれば、短期的な値動きに振り回されることがなくなる。また、経済の成長に連動して、資産が増える可能性が高まるのだ。
積立投資とは、事前に購入額を決めておき、定期的に金融商品を購入する投資方法だ。
積立投資を実践すると、金融商品の購入価格の平準化が期待できる。また、自分で購入タイミングを判断する必要がなくなるので、投資初心者も取り組みやすい。
また、複数の資産に投資するのが分散投資だ。
例えば投資先の一つが大幅な価格の下落に見舞われた場合、資産も大きく減少することが予想される。
下落分を他の銘柄でカバーするのは容易ではない。資産の回復に、数年もの月日を要する可能性があるのだ。
そこで、複数の資産を保有しておけば、価格変動リスクを抑えながら投資ができる。
説明を見るだけだと簡単に感じるかもしれない。しかし、長期にわたって運用するとなると、投資の3原則を実践し続けるのは難しい。
資産運用を始める前に、投資の3原則の重要性を把握して継続するようにしよう。



60代からの投資では“守りの運用”が重要です。
長期・積立・分散という投資の3原則を軸にすれば、ブレずに安定した資産形成が可能です。
特に分散投資は、リスク軽減の観点から欠かせない要素です。
許容できるリスクを把握してから金融商品を選定する
資産運用をしていると、必ず保有資産の下落に見舞われるケースが訪れる。
一時的な下落で済めばよいが、先のことは誰にも分からない。何年にもわたって元本割れの状態が続くことも珍しくないのだ。
含み損に耐えられる人は少なく、また含み益を抱えると、正常な判断ができなくなる人も多い。
長期投資が前提で投資を始めたとしても、投げ売りをしてしまったりするのだ。
もし、大幅下落に耐えられないようであれば、安全性の高い金融商品がおすすめだ。
反対に、ある程度のリスクを許容できる人には、大きなリターンを狙える金融商品に投資をしてもよいだろう。
自分のリスク許容度を把握しておくと、投資すべき金融商品が見つかりやすい。
60代におすすめの運用ポートフォリオとは?


安全な運用をするために考えておきたいのが、運用ポートフォリオだ。しかし、資産運用の経験がない人が運用ポートフォリオを構築するのは難しいだろう。
そこでここからは、60代におすすめの運用ポートフォリオについて解説していく。
ポートフォリオの具体例を紹介するので、投資する金融商品を選ぶ際の参考にしてほしい。
ポートフォリオの概要と重要性
「ポートフォリオ」とは、投資する金融商品の組み合わせのことだ。資産運用をする際、必ず耳にする言葉である。
60代が投資で成功するためには、以下の理由から適切なポートフォリオを構築する必要がある。
- リスク分散に効果的である
- 投資目的に応じた運用ができる
一つの金融商品に集中投資をすると、大きな価格変動リスクを負うこととなる。
価格が大きく下がった場合、取り返しのつかない損失を被ってしまうかもしれない。
そこで複数の資産に投資をすれば、リスク分散が可能となる。一部の金融商品がマイナスになったとしても、他の資産でカバーできる可能性が高まるのだ。
一般的には、投資目的を明確にした上で投資する銘柄を選定する。
例えば、リスクを抑えたポートフォリオを構築する場合、債券や退職金定期預金などを選ぶケースが多い。
大きなリターンを得たい人は、株式の投資比率が高くなるだろう。
このように、適切なポートフォリオを構築しておけば、投資目的に応じた運用が可能となるのだ。
ポートフォリオの決め方
ポートフォリオを決める際は、下記の3つのポイントを抑えておこう。
- 運用期間を決めておく
- 老後生活でかかる支出を把握しておく
- リスク許容度は若年層よりも下がることを理解しておく
60代から資産運用を始める場合、運用期間は10年~20年程度となることが予想される。
原則として資産運用は長期投資となるため、金融商品を購入した後はしばらく保有しておくこととなる。
ただし、保有期限が設けられている金融商品がある点に注意が必要だ。
例えば個人向け国債の場合、10年と5年、3年の3つの運用期間が設けられている。
10年の運用を希望しているのにも関わらず、3年満期の個人向け国債を購入すると、再度投資をする金融商品を選ぶこととなる。



運用期間のズレは、再投資のタイミングで市場環境が悪化しているリスクや、再選定の手間が発生する要因となります。
60代からの運用では、こうした事態を避けるためにも初期の資産設計が極めて重要です。
運用期間を決めておけば、投資する金融商品の絞り込みが可能となり、選びやすくなるだろう。
資産運用は余剰資金で行うことが基本だ。老後生活でかかる支出を把握しておくと、余剰資金を計算できる。
しかし、老後生活で何が起こるのかは分からない。突発的な病気やリフォーム工事など、多額の支出が発生する可能性がある。
想定よりも多くの支出が発生すると考えておいたほうが無難だ。
60代は若年層よりも高いリスクを取ることは避けるべきだ。現在の保有資産を減らさないように運用することが求められる。
若年層のポートフォリオを参考にするのは問題ないが、そのまま真似をするのは避けよう。
60代におすすめの運用ポートフォリオの具体例
60代におすすめの運用ポートフォリオの具体例を3つ紹介する。ニーズに合う運用ポートフォリオを確認して、銘柄選定時の参考としてほしい。
安全運用型
安全運用型は、攻めよりも守りを重視する組み合わせとなっている。資産配分はこちらだ。
- 国内債券:50%
- 国外債券:20%
- 株式(投資信託):20%
- 退職金定期預金:10%
比較的安全性の高い債券を中心としたポートフォリオとなっている。債券は価格変動が小さい特徴があり、短期間で大きな損失となる可能性は低い。
退職金定期預金は利用条件があるため、利用できない60代もいるだろう。退職金定期預金が利用できなければ、10%分を債券か株式に振り分ければよい。
株式は株式型投資信託での運用を想定している。先述したeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)やeMAXIS Slim 国内株式(日経平均)がおすすめだ。
価格変動リスクを抑えるため、複数銘柄に投資をする株式型投資信託を選ぶようにしよう。
また、複数の株式型投資信託に投資をすることで、更なる分散投資が可能となる。
リターン追求型
リターン追求型は、リターンを狙いにいく組み合わせとなっている。リターン追求型の構成はこちらだ。
- 国内債券:30%
- 国外債券:20%
- 国内株式(個別銘柄):10%
- 国外株式(個別銘柄):10%
- 株式(投資信託):10%
- REIT:20%
運用のメインは安全運用型と同じように債券だが、株式の比率が高くなっていることが一つ目と異なる点だ。
3種類の株式を組み合わせることで、リスクとリターンのバランスを取っている。また、分散投資ができるように、株式型投資信託を組み入れた。
さらに、REITに20%投資をする。REITとは不動産投資信託のことだ。投資家から集めた資金を不動産に投資をして、収益を分配する仕組みとなっている。
一般的な不動産投資は多額の資金が必要であるが、REITは少額での購入に対応しており、分散投資がしやすい。投資する資産の分散にもつながるため、購入をおすすめする。
バランス型
バランス型は、安全運用型とリターン追求型の中間に位置するものだと考えてほしい。資産の組み合わせはこちらだ。
- 国内債券:40%
- 国外債券:20%
- 国内株式:5%
- 国外株式:5%
- 株式(投資信託):20%
- REIT:10%
債券の投資配分を高めつつ、国内外の株式にも投資をして、リスクとリターンのバランスを取っている。
また、株式型投資信託とREITにも投資をすることで、分散投資を実現している。
60代の資産運用を成功させるなら「資産運用ナビ」で専門家に相談しよう


60代から資産運用を始めるのは決して遅くはない。しかし、知識や経験がない60代が資産運用を成功させるのは、そう簡単ではない。
資産運用を成功させたい60代は、専門家に相談しながら運用することをおすすめする。
ここからは、資産運用の専門家に相談すべき理由やおすすめのサービスについて解説していく。
60代が資産運用でやってしまいがちな失敗例
60代が資産運用でやってしまいがちな失敗例を3つ紹介していく。ここで解説する失敗例を確認して、同じ轍を踏まないようにしてもらいたい。
すべての退職金を投資に回してしまう
「この退職金を投資に回したら、さらに多くのお金が手元に入る」と考えてしまい、すべての退職金を投資に回してしまうパターンだ。
勤めていた会社から退職金を受け取ると、臨時ボーナスをもらった気になってしまうかもしれない。しかし、退職後は定期的な収入源がなくなってしまう。
もし退職金を使った資産運用に失敗すると、老後生活に悪影響を及ぼす可能性が高まり、ゆったりとした余生を過ごすことができなくなるかもしれない。
事前に前退職金の使い道を決めておくことが重要だ。



退職金は老後生活の柱となる大切な資金です。
全額を投資に回すのはリスクが大きく、生活費・予備費・運用資金に分けて使途を明確にすることが、安心した老後の第一歩となります。
お気に入りの企業の株式を何となく購入してしまう
証券口座を開設すると株式の購入ができるようになる。お気に入りの企業の株式が見つかることもあるだろう。
しかし「この企業の商品やサービスが好きだから購入したい」という安易な気持ちだけで株式を購入するのはNGだ。
企業の商品やサービスの良さと株価は、必ずしも連動するわけではない。何も調べないまま思いつきで株式を購入してしまうと、思わぬ含み損を抱える恐れもある。
必ず投資戦略やリスク許容度に合う金融商品を選ぶようにしよう。
購入した金融商品を短期間で売却してしまう
安定したリターンを得るためには、長期投資を行う必要がある。株式や投資信託などを購入した後は売却せず、数年~数十年ほど保有しておくのだ。
「売却しなくてもいいだけなら簡単」と思うかもしれない。しかし、実際に投資をしてみると、長期投資の難しさを実感するだろう。
例えば、保有している投資信託が値下がりし続け、5%の含み損を抱えたとする。この時点ではまだ保有できるかもしれない。しかし、10%もの含み損となった時はどうか。
「このまま値下がり続けるかもしれない」「含み損が20%になるかもしれない」と心配になってしまうだろう。
また心配のあまり何度も評価損益を確認してしまうケースも考えられる。結果として、感情に任せてしまい途中で売却してしまうのだ。
60代の資産運用を専門家と進めるべき理由
60代が慣れない資産運用を始めると、先述した失敗をしてしまう可能性がある。60代が資産運用を始めるのであれば、専門家と進めることをおすすめする。
60代の資産運用を専門家と進めるべき理由には、下記の3つがある。
- 自分に合う運用方法を見つけるのは非常に難しい
- 最新のマーケット情報や株価などをチェックするのは困難
- 継続的なリターンを得るためには専門家のフォローがカギとなる
これまで、様々な運用方法について紹介してきた。しかし、自分に合う方法を決める要因はいくつもあるため、万人におすすめできる運用方法はない。
60代から資産運用を始める投資初心者が、自分に合う運用方法を見つけるのは非常に難しい。
また、市場は常に変動しているので、最新情報をチェックしておく必要がある。ただ、最新情報をチェックするのは手間と時間がかかる。
上記の理由から、60代が自分の力だけで成功するのはハードルが高い。しかし、自分に合う運用方法が見つかれば、自信を持って運用を続けられるだろう。
そこで専門家のフォローがあれば、自分に合う運用方法を提案してもらえる。また、適切なアフターフォローを受けることで、成功確率が高まるのだ。
資産運用ナビを利用するメリットと活用法
資産運用の専門家に相談してみたいと考えているものの、探し方が分からない人もいるだろう。資産運用の専門家を探したいのなら「資産運用ナビ」の利用をおすすめする。
「資産運用ナビ」は、投資家と専門家をマッチングさせるサービスだ。相談内容を解決できる専門家が紹介されるので、心強い味方となるだろう。
また、専門家のデータを確認できる点もうれしい。得意分野や経歴などをチェックすれば、自分に合う専門家を見つけやすい。
さらに、専門家は投資する銘柄やポートフォリオに関するアドバイスも可能だ。
専門家に相談しながらポートフォリオを構築すれば、安定したリターンを得られる可能性が高まる。
相談料は無料となっている。まずは相談をしてみて、信頼できる専門家を探してみてはいかがだろうか。
60代は早めに資産運用を始めて老後資金を形成していくことが重要
近年、平均寿命は延びているものの退職金と年金額は減少傾向にある。また、物価高も重なったことで、60代は早い段階から老後資金を貯めておく必要がある。
60代におすすめの運用方法は債券投資だ。債券投資は価格変動リスクが少ないため、資産を守りながら運用ができる。
他には株式や投資信託への投資などもある。60代は、安全性の高い投資戦略を立てておくことが重要だ。
また、老後資金のシミュレーションや投資の3原則を実践するなどのコツもあるので、チェックしておいてほしい。



60代は“守り”が基本ですが、何もしないことがリスクになる時代です。
インフレに備える意味でも、低リスク資産での運用は必須。預貯金だけでは資産が目減りする可能性があるため、計画的な運用が重要です。
「60代から資産運用を始めるのは難しい」と感じている人は多いだろう。もし資産運用に対する心配があれば、専門家に相談してみよう。
専門家に相談しながら資産運用をすれば、より効果的な運用が期待できる。
資産運用の専門家を紹介するサービスが「資産運用ナビ」だ。
「資産運用ナビ」を利用すると、自分に合う専門家を紹介してくれるので、安定したリターンを出せる可能性が高まる。
初回相談は無料となっているので、この機会に相談してみてはいかがだろうか。