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近年の証券会社を取り巻く環境の変化、今後の課題を解説

近年、ネット証券の利用者増加や売買手数料の低下など、証券業界を取り巻く環境は大きく変化している。それに合わせて証券会社の取り組みにも変化が見られ、今後の課題についても明確になってきた。

今後も時代に合わせて柔軟にビジネスモデルを変化させ、課題に向き合っていくことが重要だ。

この記事では、近年の証券会社を取り巻く環境や取り組みの変化、今後の証券業界の課題について解説していく。

目次

証券会社を取り巻く環境の変化

近年の証券会社を取り巻く環境は、以下のような変化が見られる。

  • ネット証券がシェアを拡大
  • 売買手数料の低下
  • 資産運用の意識が浸透

それぞれのポイントについて見ていこう。

ネット証券がシェアを拡大

近年の証券業界における大きな変化として、ネット証券の台頭が挙げられる。手数料の安さや取引の利便性の高さを顧客が評価し、利用者数が急速に増加しているのだ。

例えば証券業界大手の野村證券では、2022年3月末時点での残高ありの口座開設数は534.8万口座である。

一方でネット証券大手のSBI銀行では、2021年9月末時点で771.7万口座となっており、野村証券よりも多い。富裕層が多い野村證券に比べて営業収益は少ないものの、口座開設数はすでにSBI証券が上回っている。

低コストや気軽な取引を求める顧客のニーズを満たすネット証券が、近年は大きく勢力を拡大しているのである。

売買手数料の低下

1999年に手数料自由化が行われてから、各証券会社は独自で売買手数料を決定してきた。

しかし、近年は売買手数料の引き下げ競争となっており、従来のような株式売買の手数料では収益を上げることが難しい状況への変化している。

例えばネット証券大手のSBI証券では、25歳以下の顧客に対して取引金額に関わらず手数料がかからないプランを設けたことが話題となった。また、楽天証券では1日の約定代金100万円までで取引手数料が無料になるコースを用意している。

売買手数料の引き下げ・無料化を進めると顧客が集まる一方、ほかの事業で収益を上げなければならない。

従来のように株式売買による手数料を収益源とする経営戦略では、証券業界を生き抜いていくことが難しくなっているのだ。

資産運用の意識が浸透

近年、若い世代を中心に資産運用の意識が浸透し始めている点も大きな変化として挙げられる。NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用し、着実な資産形成を始める人が増えてきた。

例えば、NISA口座(一般NISA・つみたてNISA)の2022年6月末時点の開設数は1,109万口座だった。

2014年末時点では513万口座だったため、およそ8年間で2倍以上に利用者が増えている

特に、コロナ禍をきっかけに個人の資産運用の意識はより高まっている。売買手数料の低下により収益を上げることが厳しい証券会社にとって、個人投資家の増加は追い風になるだろう。

証券会社の取り組みの変化

環境の変化に合わせて、各証券会社の取り組みにも以下のような変化が見られる。

  • オンラインの活用
  • 少額投資への対応
  • ロボアドバイザーの登場

それぞれの変化について見ていこう。

オンラインの活用

新型コロナウイルスの影響により、対面型の証券会社は顧客と接触することを制限された。そのため、各証券会社ではオンラインを活用した営業スタイルにシフトチェンジしている。

オンライン面談を活用することで、遠距離に住む顧客に対しても積極的にアプローチができる。これまでは電話で進めていた商談も、顔を合わせて話すことで以前よりも互いを信頼できるようになったというメリットもある。

オンラインと対面を上手く組み合わせ、顧客のニーズに合わせて対応する営業スタイルは今後も必須となるだろう。

少額投資への対応

個人投資家の増加をきっかけに、少額投資への対応を始めた証券会社も多い。100株単位での購入が基本だった日本株が1株単位で買えたり、1,000円から取引できたりと、少額から投資しやすい環境が整えられている。

例えばLINE証券では「いちかぶ」という愛称で1株単位の取引ができ、少額からでも投資を始めやすいことが特徴だ。

また、野村證券でも「まめ株」という制度を設け、1株からの売買を可能としている。単元未満株制度の導入は、投資を始めたいと考えている顧客の心理的なハードルを下げることができる。

今後も少額投資に対応できる証券会社はさらに増えていくだろう。

ロボアドバイザーの登場

AIによるロボアドバイザーサービスが登場したことも、証券業界にとって大きな変化と言える。

ロボアドバイザーはポートフォリオを提案する「助言型」と、ポートフォリオの設計から運用・リバランスまでを代行する「投資一任型」に分かれ、利用者からの人気が高い。

例えば、楽天証券では「楽ラップ」と呼ばれる投資一任型ロボアドバイザーを提供している。

また、松井証券でも目的に合わせた3つのロボアドバイザーから選ぶことが可能だ。ファンドマネージャーが運用を代行するよりも低コストで利用できるため、投資家からも人気を集めている。

今後も低コストで運用できるロボアドバイザーが勢力を伸ばしていくだろう。

今後の証券業界の課題

環境や取り組みが大きく変化してきた証券業界の今後の課題として、以下の3つの点が挙げられる。

  • 若年層の取り込み
  • 顧客への価値提供
  • ESG投資への取り組み

それぞれの課題を把握し、今後の対応を考えていくことが大切だ。

若年層の取り込み

証券業界の今後成長していくためには、若年層の取り込みが非常に重要である。若い世代の投資家を増やし、顧客を獲得していくことが各証券会社の課題となるだろう。

2022年からは高校の家庭科で金融教育が組み込まれ、若い世代の投資意識が高まっていくことが予想される。

また、2022年10月時点ではNISA拡充の議論がされており、非課税期間の恒久化や非課税限度額の拡大などを金融庁が求めている。高校の金融教育やNISA拡充の議論は、若年層を取り込みたい証券会社にとって追い風だ。

こうした変化のなかで若い世代の投資家を取り込んだ証券会社が、今後も成長を続けていくだろう。

顧客への価値提供

近年は手数料が安く、気軽に取引ができるネット証券が台頭してきている。

従来の対面型証券会社は手数料競争でネット証券に勝つことは難しいため、手数料以外で勝負していかなければならない。そこで重要になるのが、顧客に対しての付加価値の提供だ。

例えば、顧客のライフプランに合わせて適切な商品を紹介したり、贈与・相続などの資産承継問題に関するアドバイスをしたりと、対面型だからこそできる価値提供は少なくない。

「専門家から助言をもらえる」という点は、ネット証券にはない対面型証券の強みと言える。

今後は、証券会社に勤める社員があらゆるニーズに対応できるよう、スキル・知識を身に付けていかなければならない。

ESG投資への取り組み

これからの時代は「ESG投資」への取り組みも強化していく必要がある。環境・社会・ガバナンスを考慮した投資先を選ぶことが今後の大きなポイントとなるだろう。従来は、売上高や利益などの財務情報を重視して投資先を選ぶことが多かった。

しかし、これからは証券業界がESGへの取り組みを進めるだけでなく、ESGに配慮した金融商品の組成なども必要となってくる。

変わっていくニーズや時代の流れをしっかりと読み取り、速やかに対応していく姿勢が重要だ。

まとめ

近年の証券会社はネット証券の台頭や売買手数料の低下など、対面型の証券会社にとっては厳しい状況を迎えている。

しかし、NISA・iDeCoの浸透などにより若年層投資家が増加傾向にあるなど前向きなニュースもあるため、少額投資への対応や付加価値の提供などで取り込んでいくことが重要だ。

手数料以上の付加価値を顧客に提供できるよう、証券会社の社員はしっかりとスキルを磨いていくことが大切になるだろう。

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