- 個人年金保険の必要性がわからない
- 個人年金保険の受給額の平均がどのくらいなのか知りたい
- 個人年金保険の適切な受給額の設定方法が知りたい
高齢化社会と老後生活の長期化に伴い、公的年金だけでは経済的に安定したセカンドライフを送ることが難しくなってきている。
そこで注目されているのが個人年金保険だ。加入しようと考えている方で、受給額の平均がどのくらいなのか知りたいという方はいないだろうか。
本記事では、個人年金保険の必要性や受給平均額、適切な受給額の決め方について解説する。
個人年金保険の受給額をどれくらいに設定すべきか、悩んでいるという方はぜひ参考にしてほしい。
個人年金保険の必要性
そもそも、個人年金保険はなぜ必要なのだろうか。
この章では、個人年金保険の基本事項と、メリット・デメリットについて解説する。
個人年金保険とは
個人年金保険とは、将来受け取る公的年金に上乗せできる保険のことだ。
自分で選んだ保険会社と契約し、老後の資金を自身で備えることができる。保険料を毎月払い込み、決められた時期になると年金として定期的に資金を受け取れる。
もしくは、一括で給付を受けられるものもある。
「保険」という名の通り、保障が付いているため、保険料の払い込み中に被保険者が死亡した場合には死亡給付金が相続人に支払われる。
資産形成と保障を併せ持つ商品というのが大きな特徴だ。
個人年金保険にはいくつかタイプがあり、大まかに次のように分類される。
- 終身年金
- 生存している間受け取れる
- 確定年金
- 受け取る期間が定められている
- 被保険者が亡くなった場合、相続人が残額を受け取る
- 有期年金
- 受け取る期間が決まっている
- 被保険者が亡くなった場合、支払いは終了する
- 定額型
- 将来受け取れる金額が決まっている
- 変額型
- 払った保険料が運用され、実績によって年金額が増減する
- 円建て
- 保険料が日本円で運用される
- 為替の影響を受けないので、払い込む保険料や受け取る年金額が安定している
- 外貨建て
- 米ドルや豪ドル、ユーロなど外国の通貨で運用される
- 高い利回りが期待できるが、為替の影響を受けるので受け取る年金が増減するリスクは大きい
個人年金保険のメリット・デメリット
個人年金保険のメリットは主に3つある。
- 資金を計画的に準備できる
個人年金保険は、毎月クレジットカードや銀行口座から引き落としが自動的にかかる。将来の資金を強制的に確保できるので計画的に資金形成ができるというわけだ。
早期に解約すると、返戻金は払い込み保険料を下回ることが多いので、引きだし防止にも一定の効果がある。
- 将来受け取る金額を想定しやすい
個人年金保険は、他の資産形成と比べ大きな値動きをするものが少ない。特に、定額型を選べば将来の受取額が確定しているため、ライフプランが立てやすく安心だ。
変額型にしても、元本割れのリスクはあるものの、変動幅が小さい商品を選べば、運用成果を安定させることができる。
- 税制上のメリットがある
支払った保険料は、年末調整や確定申告の際に「個人年金保険料控除」または「一般生命保険料控除」が適用される。
控除された分だけ、所得税や住民税の負担を軽くすることができる。
次にデメリットについても確認しておこう。
- インフレに弱い
個人年金保険は、契約した時点で年金額がほぼ確定している。
仮に受け取り期間までに物価が上がったとしても、決められた額で支払いが行われる。
そのため、インフレ時には契約時点に比べてお金の価値が減ってしまい、計画していた生活をするには資金が足りないということも考えられる。
インフレに備えるには、変額型や外貨建ての商品を選ぶ方法がある。これらは値動きが大きく、資産を増やすことが出来る可能性が高い。
個人年金保険が必要な人とは
これらのメリット・デメリットを踏まえると、次のような場合に個人年金保険への加入を検討すると良いだろう。
老後の生活資金に不安がある人
日本には公的な年金制度があるため、老後も一定額の資金支給はある。
しかし受給できる金額は人それぞれ異なり、年金だけでは不十分な人もいるだろう。公的年金だけでは不安だという人は、個人年金保険を利用し、自身で資金を用意しておくと良い。
受取額をある程度把握しておきたい人
老後の資金を確保する方法としては、他にもiDeCoやつみたてNISAなどがあげられる。
しかし、これらは投資運用を重点的に行うので、最終的な受取額に関しては不確定な要素が多い。
一方、個人年金保険は、契約時に受取金額が確定していたり、最低保障金額が定められていたりする。将来の資金計画を明確にしておきたい人には最適だと言えるだろう。
万が一のに備えたい人
個人年金保険には死亡保障が付いている。そのため、保険料の払い込み中に被保険者が死亡した場合は、遺族に保険金が支払われる。
また、保障期間つきの商品であれば、年金受け取り中に亡くなったとしても残された人に年金の支給もしくは一時金の支払いがある。
個人年金保険なら、保険加入者本人だけではなく、家族の安心のために準備したいというニーズも叶えられるというわけだ。
個人年金保険の受給平均額はいくらか
ここまでで、個人年金保険を利用したいと考え始めた方もいるだろう。
では、実際に個人年金保険に加入している人は、どのくらいの受け取り金額を設定しているのだろうか。
そこでこの章では、平均受給額やライフステージ別の受給額を示し、適切な金額について検討していく。
世帯の基本年金年額はいくらか
(公財)生命保険文化センターの令和3年度調査によると、世帯(夫婦)の基本年金年額(1年間に受け取る年金額)の平均は、97.1万円となっている。
月額にすると、約81,000円の給付となる。前回の平成30年度調査の年額102万円からは、減少した。
また、世帯員別にみると、世帯主は平均82.7万円、配偶者は平均65.5万円と、世帯主が10万円以上多い結果となった。
こちらも前回調査の世帯主89.4万円、配偶者71.5万円から減少した。
減少の理由としては、iDeCoなど老後の資産形成を推進する制度が整いつつあることから、それらと併用している、ということが考えられる。
続いて金額別の割合をみていこう。
全体の年金受取額は平均97.1万円だが、もっとも多いのは「108万円以上」と回答した人で全体の22.7%を占めている。次いで多いのは「36万未満」で19.6%となっている。
このように、受取額を高めにしている人と最低限の備えとしている人で結果は二極化している。
個人年金保険の最適額は一人ひとり異なり、それに対応している表れとも言えるだろう。
個人年金保険の基本年金年額
36万円未満 | 19.6% |
36~48万円未満 | 5.7% |
48~60万円未満 | 10.1% |
60~72万円未満 | 10.2% |
72~84万円未満 | 7.0% |
84~96万円未満 | 2.9% |
96~108万円未満 | 6.8% |
108万円以上 | 22.7% |
不明 | 15.1% |
ライフステージ毎の基本年金年額
次にライフステージごとの基本年金年額を確認していく。
(公財)生命保険文化センターの令和3年調査において、基本年金年額が最も高いのは、40歳から59歳の夫婦のみの世帯で、平均130.7万円だった。
次いで末子が保育園児・幼稚園児の世帯が118.1万円となる。
現役世代でこれから年金を受け取る世帯や、幼い子どもを育てながら働く比較的若い世代では、受取額平均額が100万円を超えている。
年金年額の高さが目立つのは、公的年金の支給開始時期の繰り下げや減額、さらに老後資金2,000万円問題などが背景にあると考えられる。
老後資金を働いているうちに自分自身でしっかり準備しておこうという意識の表れと言えるだろう。
一方、最も低かったのは、末子が乳児の世帯で75.0万円、次に末子が高校・短大・大学生の世帯で80.5万円だった。
このように、ライフステージごとの受給額は最大50万円以上の差があり、金額もまちまちだ。
そのため、加入する際には目的をはっきりと決め、自分に最適な受取金額を設定した上で運用することが重要になる。
世帯(夫婦)の個人年金保険の基本年金年額【ライフステージ別】
夫婦のみ(40歳未満) | 84.0万円 |
夫婦のみ(40~59歳) | 130.7万円 |
末子乳児 | 75.0万円 |
末子保育園児・幼稚園児 | 118.1万円 |
末子小・中学生 | 93.5万円 |
末子高校・短大・大学生 | 80.5万円 |
末子就学終了 | 99.1万円 |
高齢夫婦有職(60歳以上) | 95.1万円 |
高齢夫婦無職(60歳以上) | 109.6万円 |
その他 | 83.3万円 |
受給額でみる個人年金保険の利用用途
個人年金保険は受け取る金額によって使い方もまた異なる。
ここでは受給金額別に活用法を紹介する。
受給金額が少ない場合は、生活費を補うために利用すると良いだろう。
公的年金では足りない部分をカバーし、食事や住居、医療費などの支払いにあてることで、生活を安定させることができる。
ある程度の受給金額を得られる場合、生活の質を向上させる手段として活用できる。
趣味を満喫する、旅行に使う、自宅をリフォームするといった理想の生活を実現するために使うことができ、充実した老後を迎えることが可能となるだろう。
高い受給金額を受け取る場合は、高齢者サービスのグレードアップなどが叶う。より質の高い施設や支援を受けながら生活することも可能だ。
また、潤沢な資金があれば、亡くなった際に残された家族も、安定した生活を送ることができる。その他にも、余剰資金での投資や、寄付・社会貢献などにも利用できるだろう。
適切な受給額はいくら?個人年金保険の受給額を決めるポイント
平均額を理解した上で、自身の受給額を決定するにはどうすればいいのだろうか。
最後の章では、金額を決める際のポイントを3つ紹介しよう。
- 利用用途をはっきりさせる
- 年金を受け取るタイミングを考慮する
- 無理なく支払える保険料に設定する
それぞれ順に説明する。
利用用途をはっきりさせる
まずは、なぜ個人年金保険に入るのか、受け取る年金で何がしたいか、どんな生活にするのかを明確にしてほしい。
個人年金で必要な額は、世帯状況や退職金の額や資産、希望するライフスタイルによって一人ひとり異なる。
「みんなそうだから」と平均だけを参考に金額を決めてしまっては、本当に必要な額が確保できていない、もしくは、必要以上の保険料負担となってしまう恐れもある。
ネットには口コミや参考事例が大量に溢れている。しかし、多くの人が支持する方法であっても、それが必ずしも自分にとってベストとは限らない。
自分にとっての必要額は、自分で把握しなければわからないのだ。
具体的に次の方法で整理してみてほしい。
- 将来目指すライフスタイル、実現したいことなどを考える
- 年代別のライフプランを検討し、いつどのぐらいの資金が必要か確認する
- 公的年金制度で補える部分を理解する
- 公的年金で足りない部分を個人年金の受取額として設定する
必要金額が定まらないまま保険選びをするのは大変だ。
加入し、払い込みを始めたとしても、このままで良いのか不安になったり、長期間資金を積み立てていくモチーベンションを保つのが難しくなるだろう。
理想の生活を思い描いたうえで、必要な金額がはっきりすれば、目標に向かって前向きに資産形成ができるはずだ。
年金を受け取るタイミングを考慮する
公的年金である老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されるのは、原則65歳以降だ。
個人年金保険は、それに合わせて、もしくはずらした形で受け取りを選択するのが良い。
それぞれの利点を整理する。
- 公的年金と同時に受け取る
- 公的年金に上乗せするかたちで給付を受けられるため、資金に余裕をもって生活できる。
- 公的年金より早めに受け取る
- 公的年金の受け取りより前に定年退職する場合、収入が不安定になる。その際、個人年金保険を早めに受け取れば、不足分を補うことができる。
- 公的年金より遅く受け取る
- 個人年金保険の積立期間や運用期間が長くなるため、受取額が増えることがある。
また、公的年金は支給開始時期を65歳より早くする繰り上げや、遅くする繰り下げも可能だ。
繰り上げは60歳から65歳になるまでの間で可能となり、減額率は1ヵ月につき原則0.4%となる。
一方、繰り下げは66歳から原則75歳の間で可能となり、増額率は1ヵ月につき0.7%となる。場合によっては、公的年金の支給時期を繰り下げ、先に個人年金を受け取る方がお得ということも考えられる。
公的年金、個人年金保険の最適な受取時期は個々の事情によって異なってくる。
どちらの年金を先に受け取るか、もしくは同時の方が良いのか迷った場合は、保険の担当者に相談し、シミュレーションしながら解決することもできる。
無理なく支払える保険料に設定する
個人年金保険は、長期間にわたって保険料の支払いが続く。
そのため、長い期間問題なく支払い続けることができるか注意する必要がある。将来にしっかり備えたいがあまり、必要以上の保険をかけてしまってはならない。
個人年金保険は、将来の安心のために備えるものだ。したがって、家計を圧迫し、現在の生活が不安定になるほどの保険は必要ない。
今の暮らしも大切にしつつ、適切な保険料を支払うことを重視してほしい。既に加入している保険と重複する部分はないか確認し、保険料は無駄のないようにしておこう。
なお、以下の記事では個人年金保険の平均保険料について紹介している。具体的な数値をもとに検討してみたいという方がいればぜひチェックしてほしい。
また、最適な商品の選定にあたっては、保険のプロを頼る方法がある。保険を専門に扱う担当者は多数の保険商品知識を持っている。
保険会社を跨いだ組み合わせで、ひとり一人にあった最適なプランの提案が可能だ。各社から販売されている個人年金保険を、一度に比較しながら検討することもできる。
個人年金保険の受給額をいくらにするべきか、迷ったらプロに相談しよう
本記事では、個人年金保険の必要性や受給平均額、適切な受給額の決め方について解説した。
世帯の個人年金保険の基本年金年額は約97.1万円となっている。
一方、ライフステージごとの受給額には最大50万円以上の差がある。そのため、利用する際には目的を明確にした上で受給額を決めることが重要になる。
また、年金を受け取るタイミングや適正な保険料の設定など、個人年金保険の受給額を決める際のポイントは多岐にわたる。
そのため、もしこれらの判断に迷ったら、保険のプロに相談することも検討してみよう。一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、自分に必要な保険を的確に判断することができるはずだ。
また、全国の保険のプロから自分に合った担当者を探す際には「生命保険ナビ」の活用をおすすめする。
「生命保険ナビ」は、自身の条件に合った保険のプロを簡単に見つけることができるマッチングサービスである。
気になった担当者とは無料相談もできるので、ぜひ活用してほしい。