- 住宅ローンを組む際に加入できる団体信用生命保険について知りたい
- 団体信用生命保険と医療保険を併用すべきかわからない
- 住宅ローンを組む際に保険を見直すポイントが知りたい
住宅ローンを組むときに加入することになるのが、団体信用生命保険(以降、団信と表記)である。
団信では、ローンを支払う人に万が一の事態があった場合、保険会社から残りのローン費用が支払われる。
では、一度団信へ加入すれば医療保険を含む生命保険を利用する必要はないのだろうか。
本記事では、「住宅ローンを組んだら医療保険は必要ないのか」という疑問について徹底解説する。
住宅ローンを組もうとしている医療保険加入者は、ぜひ参考にしてほしい。
住宅ローンを組む時に加入する団信とは
団信は、住宅ローンを組む人が加入できる保険である。
一体どんな種類があり、どれくらいの保険料が必要になるものなのだろうか。
そこで本章では、団信の基本情報に関して解説を行う。
団信の仕組みを解説
最初に、団信の仕組みについて理解しておこう。
団信とは、以下の関係性で契約される生命保険のことを指す。
保険契約者 | 被保険者 | 受取人 |
銀行等ローン債権者 | ローン債務者 | 銀行等ローン債権者 |
ローン債務者が死亡もしくは所定の高度障害になった時、保険会社がローンの残額を銀行等ローン債権者に支払う仕組みだ。債権者は保険金としてローン残額を受け取り、全額債務返済に充てる。
債務者の家族は、安心して住宅に住み続けられる、という構造になっているわけだ。
ここでのポイントは、費用が債務者の家族ではなく、銀行等債権者へ直接振り込まれるという点にある。
確実に住宅ローンの支払が行われ、家族の生活保障がなされるのだ。
ただ、住宅ローン以外の費用は支払われないため、子どもの教育費などは別で準備する必要がある。
団信の保障範囲
近年、死亡や高度障害以外の疾病発症時でも、保険金が支払われる団信が登場している。
SBI生命の「住信SBIネット銀行住宅ローン」を申し込んだ際に加入できる団信を例に、保障範囲について確認しよう。
この保険では、死亡や高度障害以外でも保険金が支払われる特約が4種類用意されている。
特約の適用条件と特徴を以下の表でまとめた。
①リビングニーズ特約 | ローン債務者が、医師の診断書等を元に保険会社から余命6ヶ月以内と判断された場合、保険金が債権者へ振り込まれる。通常よりも支払われるタイミングが早くなり、債務者とその家族の生活がより安定する仕組みになっている。 |
②重度ガン保険金前払特約 | ローン債務者ががんを発症し、治療を受けても改善する余地がないと保険会社が判断した時、保険金が債権者へ振り込まれる。リビングニーズ特約と同様に、債務者と家族の生活をより安定させる役割を果たす。 |
③先進医療特約 | ローン返済中に、債務者が傷害・疾病によって受ける先進医療の費用を1,000万円まで負担する。通常の団信や他の特約と異なり、保険金が債務者へ直接支払われる。 |
④3大疾病 保障特約 | ・ローン債務者が悪性新生物(がん)と診断される ・債務者が心筋梗塞もしくは脳卒中を発症し、60日以上所定の状態が継続した場合 ・心筋梗塞もしくは脳卒中によって手術が必要になった場合 上記の状況になった際、ローン残高の半額もしくは全額が債権者へ振り込まれる。 |
なお、先進医療特約と3大疾病保障特約の半額保障を除き、保険金が債権者へ振り込まれた時点で団信の契約は消滅する。
このように、一部の団信では先進医療特約のような医療保険の保障内容までカバーすることもできる。
団信に必要な保険料の目安とは
団信の毎月の保険料はどれくらいになのだろうか。
三菱UFJ銀行「7大疾病保障付住宅ローンビッグ&セブン〈Plus〉」の団信は2種類から選ぶことができる。
保険金が支払われる基準が緩くなる「金利上乗せ型」と、保険料が安い「保険料支払型」の2種類である。
それぞれ保険料の支払い方法が異なっており、「金利上乗せ型」は住宅ローンの金利+0.3%、「保険料支払型」は契約当初に設定した保険料を毎月支払う形だ。
「保険料支払型」の保険料は、契約時の年齢が上がるもしくはローンを支払う年数が長くなるほど金額が増える。
例えば、30歳男性が2,000万円で住宅ローンを借りた場合、初月保険料は144円だが30年後の保険料は2,279円まで上昇する。
また、40歳で借りた場合の金額は、初月保険料が714円、30年後の保険料が4,453円だ。
上記結果を見れば分かるが、団信は通常の生命保険と同じくらいの費用で利用できる。
また、前述したSBI生命の場合は保険料を保険会社が負担してくれる。ただし、金利上乗せ型を利用し、高額の住宅ローンを組む場合は金額が大きく上がる可能性もある。
買おうとしている物件の価格にも注意しておこう。
住宅ローンを組んだら医療保険は不要なのか
ここまでの説明で、団信に関する理解が深まったと思う。
では、住宅ローンを組んで団信へ加入すれば、医療保険を含む他の保険を利用する必要はないのだろうか。
結論から書くと、医療保険を中心に他の保険を利用する必要はあると言える。
そこで本章では、「団信と医療保険を併用すべき理由」について徹底解説する。
団信と医療保険の保障内容を比較
最初に、団信と医療保険の保障内容を比較してみよう。
auじぶん銀行の団信「がん100%保障団信プレミアム」とライフネット生命の終身医療保険「じぶんへの保険3・おすすめコース」を例に挙げる。
「がん100%保障団信プレミアム」は3つあるプランの中でも最も保障内容が手厚くなっている。
また、auじぶん銀行の団信はライフネット生命から提供されているものであり、内容の比較もしやすいはずだ。
項目ごとの違いを以下の表でまとめた。
「がん100%保障団信プレミアム」 | 「じぶんへの保険3・おすすめコース」 | |
保障範囲 | 精神障害を除く全ての傷病や死亡時に対応。ただし、それぞれ保障の適用条件が異なる。 | 保険加入後に発症した精神障害を含めた多くの傷病に対応。ただし、抜歯や鼻の粘膜を焼く手術など一部対象外の手術がある。 |
保障金額 | 基本・・・ローン残高の100% がん・・・診断時に50万円or100万円、先進医療利用時は2,000万円を上限にかかった費用を債権者へ振り込む。 入院・・・5日連続入院すると10万円、31日以上入院すると1ヶ月ごとのローン返済額を債権者へ振り込む。 | 基本・・・入院時、5,000円〜15,000円/日額で設定された費用が支払われる。 手術・・・入院時の日額×5倍もしくは10倍の費用が給付される。がん・・・診断を受けた時と手術を受けた際に入院時の日額×100倍の費用が給付される。 先進医療・・・利用した際にかかった費用+10万円が給付される。 |
保険料 | ローンの金利+0.15% | 30歳男性が入院日額を5,000円で設定した場合、月額3,079円 |
どちらの保険も、がんや先進医療などの費用が高額になりやすい部分への保障が手厚いことが分かる。
ただ、医療保険であれば入院すれば何かしらの費用給付が見込めるのに対し、団信は連続した入院でないと保障が受けられない。
そのため、それぞれ必要な状況も異なると言える。
団信と医療保険を併用するべき理由
団信と医療保険を併用するべき理由は「保険金の利用方法が異なる」という点にある。
団信で給付される費用は、全額ローン返済に充てられ、他の目的で利用することはできない。
一方、医療保険の場合は使用用途が定められていないため、生活費や子どもの教育費などで使用することもできる。
家族の生活を保障しつつ、生活の水準を落としたくない場合には、医療保険も同時に併用する必要があると言える。
また、団信はローン返済が完了すると契約が消滅する。
そのため、団信による保障は高齢時に受けられない可能性が高い。
高齢になってから、医療保険をはじめとする保険へ加入しようとすると、条件が厳しくなり加入できない可能性が上がってしまう。
また、加入できたとしても保険料が高額になるなど、不利な条件になってしまいがちだ。
団信を利用できるからといって安心せず、自分に必要な医療保険の内容を見定める必要がある。
医療保険以外で併用するべき保険とは
団信と併用すべき保険は、医療保険以外にも存在する。
ここでは、個人年金保険と就業不能保険の2種類をあげて説明する。
個人年金保険は老後の資金を積み立てる保険であり、国民年金・厚生年金に続く第三の年金と言える。
契約時に決めた資金を積み立てる定額型と、外貨などで投資信託を行う運用型の2種類が存在する。
団信の保障期間と個人年金保険の積立満期のタイミングを合わせると、生涯にわたって保障を受けることができる。
2つの保険の相性は良いと言えるだろう。
就業不能保険は、疾病等で就労できなくなった際に不足する生活費を保障する保険だ。
傷病手当などの公的保障が利用しづらい自営業の方には特におすすめのものとなる。
収入が減少し、ローンの支払いと生活の両立が困難になることを防ぐため、就業不能保険を利用する必要性は高いと言えるのだ。
上記のように、団信だけでなく様々な保険を組み合わせて利用することで、生活水準を安定させることができるだろう。
住宅ローンを組む前に保険を見直そう
これまでの説明で、団信と他の保険を組み合わせることの重要性が理解できたと思う。
これらの保険を適切に利用するためには、住宅ローンを組む前に、現在加入している保険を見直し、今後の方針を考えることが必要になる。
最後の章では、「住宅ローンを組む前に保険を見直す際のポイント」について解説する。
団信と保障内容の重複がないか確認する
はじめに、団信でカバーしている範囲と既加入の保険の保障範囲が重複していないか確認しよう。
前述した通り、団信による保障はがんや3大疾病、先進医療を含んだ広範囲になる場合が多い。
医療保険やがん保険に加入している場合は、保障範囲が重なることもあるだろう。
特に先進医療のような特約で保障される費用については、内容が全く同じというケースもある。
このような場合には、あらかじめ医療保険の特約を外すなどの対応をとり、無駄な保険料を支払わないように注意しよう。
まずは団信の保障内容と加入済保険の保障内容に重複がないかを必ず確認しよう。
万が一の生活保障が十分か検討する
また、団信以外の保険で生活保障ができているかについても改めて確認しよう。
団信は、あくまで住宅ローンへの保障を行う保険であり、生活費は別に用意する必要がある。
疾病にかかり、入院が長引いた場合は家族の生活を保障する手段を確保しなくてはならない。
そのため、医療保険やがん保険などで生活に十分な金額が用意できているか、確認するようにしよう。
医療保険で用意すべき生活費は、入院期間中に働いて得るはずだった逸失収入と入院時に支払うべき自己負担費用の合計金額で考えると良い。
入院時は当然ながら給与を得ることはできないため、本来家族の生活費になるはずだった分の費用を、貯金や医療保険で用意しなくてはならないのだ。
また、入院時の自己負担費用には、先進医療など特殊な治療にかかる費用や、見舞いに来る家族の交通費などが該当する。
特に治療費については医療保険で補填される場合が多い。
自分が備えたい手術があれば、今入っている医療保険で対応できるか確認しておくと良いだろう。
上記のように、必要な生活費がどれくらいか考えておくと、医療保険を中心に保険の見直しがしやすくなるはずだ。
保険料が適切か確認する
最後に、保険料が無理なく支払える金額になっているかについても確認するようにしよう。
団信の保険料は高額になりにくいが、金利に上乗せするタイプだと数万円以上の費用が必要になる場合もある。
例えば、5,000万円のローンを期間40年で借り、年0.3%の金利で団信に加入した場合の毎月支払額は9万2,128円、総返済額は5,313万4,840円となる。
さらに、手厚い保障がついている0.3%の金利上乗せタイプの団信を選択した場合、金利は年0.6%になり、毎月返済額は11万7,192円、総返済額は5,638万8,880円へ上昇する。
年利が少し変化しただけでも、返済額は一気に上昇する恐れがある。
毎年払える金額になっているかどうか、契約先の保険会社に確認することを忘れないようにしよう。
団信は住宅ローン利用時に生活を保障する役割を果たす。ただ、医療保険など他の保険と活用すれば、さらに生活は安定したものとなるだろう。
本記事を参考にして、団信やその他の保険を上手に活用できるようにしてほしい。
まとめ
本記事では、「住宅ローンを組んだら医療保険は必要ないのか」という疑問に対して解説を行った。
住宅ローンを組む際には、団体信用生命保険という保険へ加入する必要がある。
ローン返済者に万が一の事態があった場合、銀行等債権者にローン残額が振り込まれるというものだ。
保障範囲はがんと診断された時など多岐にわたるが、あくまでローンの返済に当てられる。
そのため、病気やケガになった時の治療費や入院費には医療保険で備えておく必要があるのだ。
住宅ローンを組む前に、加入している保険の見直しをしておくと、より効果的に団体信用生命保険も活用できるだろう。
保険の見直しを一人で進めるのが不安な時は、生命保険のプロへ相談することをおすすめする。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、自分に必要な保険を的確に判断できるはずだ。
また、全国の保険のプロから自分に合った担当者を探す際には「生命保険ナビ」の活用をおすすめする。
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