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医療保険の保険料は経費にできるのか?個人事業主や法人が契約した場合の取り扱いを解説

この記事で解決できるお悩み
  • 医療保険の保険料を経費計上できる具体的なケースを知りたい
  • 医療保険の保険料を経費として処理する際の注意点を知りたい
  • 法人向けの医療保険を効果的に活用したい

個人事業主や法人が加入する保険には、保険料を経費にできるものとできないものがある。

では、医療保険はどちらに当たるのだろうか。また、経費として処理する際はどういった点に気をつければ良いのだろうか。

そこで本記事では、「医療保険の保険料は経費として取り扱えるのか」という疑問について解説していく。

医療保険の利用を考えている個人事業主や企業役員の方には、ぜひ参考にしてほしい。

目次

医療保険の保険料は経費にできるのか

医療保険の保険料は経費にできるのか 生命保険ナビ

個人事業主が医療保険に加入する、もしくは法人やその役員を契約者として医療保険へ加入する場合、条件次第で保険料を経費として処理することができる。

以下で詳しく見ていこう。

個人事業主や法人が経費にできる範囲とは

まず、個人事業主や法人が経費として計上できる費用にどんなものがあるか理解する必要がある。

以下の表で経費にできるもの・できないものの一例をまとめた。

ポイントは、「会社の経営を続けていくために必要な費用かどうか」である。

スクロールできます
経費にできる経費にできない
個人事業主法人が
利用した費用一覧
従業員を保険対象者として会社で契約した医療保険の保険料
会社の所有車や事務所にかけた自動車保険・火災保険・地震保険の保険料
店舗兼住宅で事業を継続するのに使用した家事関連費(料理店で料理を作るのに利用した光熱費や水道代など)
業務用資産の購入費や取り壊し
修繕費用・事業税や業務で必要になる固定資産税   
事業主や会社役員が個人的に契約した生命保険の保険料
店舗兼住宅で、生活するのに使用した家事関連費(光熱費や水道代など)
生計を一つにする配偶者や親族に支払う給与
事業主や法人にかかる所得税や住民税
罰金や賄賂など、不正に利用された費用
参考:国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」

同じ光熱費でも、「仕事をするのに利用した費用」と「生活時に利用した費用」で経費になるかどうかが分かれるのだ。

上記を前提に、経費にできる保険とできない保険について、深掘りして解説する。

医療保険の保険料が経費になるケース

結論から言えば、「法人として契約し、従業員を対象にした医療保険」であれば経費として処理することができる。

一方、個人事業主や会社役員が個人で契約した医療保険は経費にはできない。ただし、生命保険料控除の控除対象にすることは可能だ。

生命保険料控除とは、生命保険の保険料が課税対象となる年間所得から控除される制度のことだ。

平成24年1月1日以降に契約された保険には新制度が、平成23年12月31日以前に契約された保険には旧制度が適用される。

新制度の控除には3種類存在し、医療保険の保険料は「介護医療保険料控除」に該当する。

3種類の控除の上限金額はそれぞれ4万円、合計12万円となる。

生命保険料控除については、以下の記事で詳細に解説をしているので、ぜひ参考にしてみてほしい。

保険料を経費計上できる保険とは

従業員を対象者とする医療保険や傷害保険に法人が加入した場合は、保険料を経費として処理することができる。

ただし、傷害保険についてはあくまで利用した部分の保険料しか計上できない、という点には注意したい。

例えば、仕事で自家用車を利用している場合を考えてみよう。

運送業であれば車がないと仕事にならないため、自動車保険の保険料は基本的に経費計上の対象になる。

ただ、保険料全額ではなく、事業で利用した部分と個人的に利用した部分を分けて経費計上を行う必要がある。

車の利用回数や走行距離で区分が判断される。

一方、医療保険の場合は、事業主や役員を含む全従業員の保険料を会社の損金として取り扱うことができる。

ただ、保険料の支払いタイプや合計金額によって、損金にできる割合が変化する。

詳細な取り扱いや計算式については最後の章で解説を行うので、参考にしてほしい。

法人向け医療保険のメリット・デメリット

法人向け医療保険のメリット・デメリット 生命保険ナビ

法人が契約者となることで医療保険の保険料を経費として処理することができる。

では、それ以外に法人向け医療保険を利用するメリットはあるのだろうか。また、デメリットについても知っておくべきだろう。

そこで本章では、「法人向け医療保険のメリット・デメリット」について解説を行う。

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法人向け医療保険とは

まずは、法人向け医療保険について改めて解説しよう。

法人向け医療保険は、基本的には以下のような関係性で利用される。

契約者被保険者受取人
法人経営者や会社役員、従業員法人か被保険者

具体的な保険商品を例に考えてみよう。メットライフ生命の終身医療保険「My Flexi 経営者向けプラン」は契約者を法人・被保険者を経営者・保険金受取人を法人とする保険だ。

主に、①経営者に万が一の事態があった時の休業保障②経営者の退職金としての解約返戻金の支給、という2つの役割を果たす。

上記のように、法人向け医療保険には、会社の経営者に対象を絞ったものと従業員全体を対象にしたものの2種類が存在する。

法人向け医療保険のメリット

法人向け医療保険のメリットとしては、

  • 会社の事業保障や退職金の代わりになる
  • 保険料を損金として経費計上できる
  • 従業員の福利厚生として活用できる

という3点が挙げられる。

前述したように会社の経営と退職後の経営者の生活に対して保障を備えることが可能だ。

ただ、注意すべき点が1つある。退職後に医療保障を受けるためには、契約者を法人から経営者個人へ変更する必要がある。

その際、解約返戻金が経営者に現物支給された扱いになり、所得税が発生する。

退職金の一部として取り扱えれば課税対象額を減らせるが、思わぬ負担となる可能性もある。名義変更時は注意しよう。

また、法人向けの医療保険とがん保険は第三分野の保険として取り扱われる。

そのため、経理処理の方法が法人向け定期死亡保険や養老保険と異なることを覚えておこう。

さらに、医療保険を導入することで、従業員の安心感を高め人材の定着や業績向上につながる可能性がある。

ただ、福利厚生として法人向け医療保険を導入する際には、「従業員全員を対象とする」「福利厚生規定や慶弔見舞金規定を作成する」という2点には注意してほしい。

特に、規定を作らないと保険料が損金の対象にならない場合もあるため、事前に規定を策定するようにしよう。

いくつかの注意点はあるものの、法人向け医療保険を利用するメリットは十分にあると言えるだろう。

法人向け医療保険のデメリット

一方法人向け医療保険のデメリットとしては、①支払われる保険金が益金扱いになることがある②法人から従業員へ保険金を支払った場合に税負担が重くなる可能性がある、という2点が挙げられる。

個人で医療保険に加入した場合、保険金に対して税金はかからない。

ただ、法人が医療保険に加入して保険金を受け取った場合には、保険金を雑所得とみなして益金に算入する必要があり、収益に計上される可能性が出てくるのだ。

また、法人が保険金を受け取り、経営者を含む従業員へ支払いを行った際には給与扱いとなり、所得税が発生する場合がある。

ただ、見舞金という形で渡せれば、5万円未満の保険金は非課税となる。

保険金を見舞金として取り扱うためには、前述した慶弔見舞金規定に定めておく必要がある。

税金関係で損をしないよう、事前に規定を定めておくようにしよう。

医療保険の保険料を経費処理する際のポイント

医療保険の保険料を経費処理する際のポイント 生命保険ナビ

法人向け医療保険には、会社経営者を支援する様々な機能がついている。

中でも、保険料を損金扱いで経費と見なせるのは、会社の適切な運用に欠かせないものとなるだろう。

ただ、医療保険の保険料を経費として処理するためには、複数の注意点がある。

最後の章では、法人向け医療保険を経費として処理する際に気をつけるべき点を解説していく。

法人向け定期保険を経費計上できる割合

2019年7月の税制改正によって、医療保険を含む法人向け定期保険の損金計算方法に新しいルールが定められた。

新ルールでは、解約返戻率に応じて損金扱いにできる割合が変化する。以下の表に返戻率による違いをまとめた。

スクロールできます
解約返戻率保険料を損金にできる割合
50%を下回る場合100%
50%超〜70%以下の場合保険期間の前半(40%):60%、残りの40%は後程資産計上
保険期間の中盤(60%〜75%):100%
保険期間の後半(75%〜100%):100%+資産計上した40%を取り崩して算入
70%超〜85%以下の場合保険期間の前半(40%):40%、残りの60%は後程資産計上
保険期間の中盤(60%〜75%):100%
保険期間の後半(75%〜100%):100%+資産計上した60%を取り崩して算入
85%を超える場合保険期間の当初10年:最高解約返戻率×10%、残りの90%は後程資産計上
11年目〜最高解約返戻率を迎える年:最高解約返戻率×30%、残りの70%は後程資産計上
最高解約返戻率の年〜返戻金の額が最大になる年:100%〜最終年:100%+資産計上された保険料を取り崩して算入
参考:国税庁「No.5364−2 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」

このように、法人向け定期保険の経費計上ルールは複雑だ。

続けて解説する経費処理のポイントと合わせて、特に解約返戻率が50%を超える保険に加入している場合は、慎重に計算を行うようにしよう。

ポイント①保険料の支払方法による違い

法人向け医療保険の経費処理については、前述した基本ルール以外にも抑えるべきポイントがある。

医療保険の種類と支払い方法によって、取り扱いが異なるのだ。

医療保険には、保険期間が決まっている定期保険と、生涯にわたって保障がある終身保険の2種類が存在する。

さらに保険料の支払方法も、保険期間中払い続ける全期払いと、保険期間前に支払いを完了させる短期払いにわかれる。

そして、それぞれに異なる経費処理方法が適用される。以下の表にまとめたので確認してほしい。

保険の種類と支払い方法保険料の処理方法
定期法人向け定期保険と同様
終身・全期払い法人向け定期保険と同様
終身・短期払い独自の取扱が必要
参考:国税庁「No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」

このように、保険期間が終身タイプで短期払いの保険に加入する場合は、別の処理方法が必要になるのだ。

ポイント②保険料による計算方法の違い

では、終身・短期払いの法人向け医療保険の保険料はどのように計算すれば良いのだろうか。

保険料の金額によって、以下の表のように計算方法が変わるのがポイントになる。

年間で支払った
保険料の合計額
損金にできる保険料の計算方法
〜30万円100%損金扱いにする
30万円を超える場合年間支払保険料×保険料払込期間÷保険期間を損金扱い、残りは資産として計上する
保険期間は116歳ー契約した時の被保険者の年齢で計算
参考:国税庁「法令解釈通達 第3節保険料等 9ー3ー5」

この場合の被保険者とは、経営者を含む従業員を指している。

つまり、それぞれの年齢に応じて保険期間が変化するのだ。

例えば、経営者を被保険者として医療保険に加入し、年間支払い保険料が100万円だったとしよう。

保険料払込期間を10年、経営者の加入時年齢を40歳とすると、計算式は以下のようになる。

100万円×10年÷(116歳ー40歳)=13万1,578円(小数点以下切り捨て)

保険料の取り扱いとしては、13万1,578円を損金とし、残りの86万8,422円は資産計上することになる。

このように、保険料が30万円を超えてしまうと損金にできる割合は大きく下がってしまう。

法人向け医療保険を利用する際は、保険料をなるべく30万円以内に収めるようにしよう。

法人向け医療保険を経費計上するには、様々な注意点を把握する必要がある。

ただ、上手に活用すれば、会社の経営を助けてくれるものとなるだろう。

本記事を参考に、法人向け医療保険を効果的に活用できるようにしてほしい。

まとめ

まとめ 生命保険ナビ

本記事では、「医療保険の保険料を経費として取り扱えるのか」という疑問について解説した。

個人事業主や法人が経費として保険料を計上できるかは、「事業継続に必要なものか」という点で判断される。

従業員の福利厚生で加入する場合は、保険料を損金として計上することができるのだ。

ただ、保険金を受け取った場合は益金として税金がかかる場合がある。

また、実際に経費として処理する際は解約返戻率によって損金にできる割合が変化するなど、気をつけるべき点が多い。

自分だけで法人向け医療保険を適切に活用できるか不安になったときは、保険のプロに相談することも検討しよう。

一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、法人向け医療保険を的確に運用することができるはずだ。

また、保険のプロは数多く存在し、その中から自分にとって最適な担当を見つけるのは難しいだろう。

そんな時はマッチングサイト「生命保険ナビ」を使えば、自身の条件に合った保険のプロを簡単に見つけることができる。

無料で利用できるので、ぜひ活用してほしい。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。お客様と保険のプロを結ぶマッチングサイト「生命保険ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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