- 個人年金保険選びにおける返戻率の役割が理解できない
- 個人年金保険の返戻率の計算方法や適正な返戻率の数値が知りたい
- 自分に最適な個人年金保険の選び方が知りたい
個人年金保険を選ぶにあたって、返戻率は重視するべきポイントの一つとされている。
返戻率とは、個人年金保険の払込保険料総額に対して、どのくらい年金を受け取れるのかを表したものである。
一般的には返戻率が高い個人年金保険を選択するべきと言われているが、その計算方法や適正な数値を、みなさんは正しく理解できているだろうか。
本記事では、個人年金保険における返戻率の概要や役割を改めて説明した上で、計算方法や適正な返戻率の数値について解説する。
また、返戻率以外に抑えるべき個人年金保険選びのポイントについても解説する。
自分に合った個人年金保険を選びたいという方は、ぜひ参考にしてほしい。
個人年金保険における返戻率とは
個人年金保険では返戻率が重要となる。個人年金保険は貯蓄タイプの保険であるため、基本的に返戻率は高いほどよい。ここでは、返戻率について解説する。
返戻率の定義
返戻率は、支払った保険料の総額に対してどのぐらい年金を受け取れるかを数値化したものである。
払込保険料総額が100万円で、毎年10万円の年金を10年間受け取る場合、返戻率は100%となる。
返戻率を求める計算式は次のとおりだ。
個人年金保険を検討する場合、返戻率を比較しながら自分に合った商品を絞り込む。
個人年金保険において返戻率が高いことは重要なのか
基本的に返戻率が高いほど優れた商品といえる。
個人年金保険は、死亡保障や医療保障などの保障を目的にするのではなく、貯蓄目的で加入する保険であるため、返戻率の高さが重要となる。
たとえば、次のケースを比べるとわかりやすい。
- A:保険料総額500万円 受取総額510万円
- B:保険料総額195万円 受取総額200万円
保険料総額と受取総額をみると、Bは5万円の増加に対しAは10万円の増加というようにAのほうが増加額が大きい。
では、返戻率で比べるとどうなるだろうか。
- A:受取総額510万円 ÷ 保険料総額500万円 × 100 = 101.02%
- B:受取総額200万円 ÷ 保険料総額195万円 × 100 ≒ 101.027%
若干ではあるがBのほうが返戻率は高い。
このように、金額が異なる各保険会社の個人年金保険を比べる場合には返戻率が重要となり、高いことが重要となる。
個人年金保険における返戻率と利率の違い
返戻率と利率は異なる。利率は予定利率のことで、保険会社が保険料を運用する際の利率を意味する。
保険会社が高い運用成果を予測した場合は予定利率が高くなり、保険料は安くなる。逆に、予定利率が低いと保険料は高くなる。
金融庁が、経済状況などを加味して標準利率を公表し、各保険会社はその数値を参考に、予定利率を決定する。
予定利率は保険会社ごとに決定できるが、標準利率よりかけ離れ過ぎていると、保険金支払いに影響がでる可能性があるため、近似値になるのが一般的である。
個人年金保険における返戻率の計算方法と適正率
ここでは、さらに個人年金保険の返戻率について深堀していく。
返戻率の仕組みを理解しておけば、個人年金保険の設計方法がどのように返戻率に影響するか理解できるだろう。
個人年金保険の返戻率の計算方法
前述のとおり、個人年金保険の返戻率は「年金総額 ÷ 払込保険料総額 × 100」で求める。
年金総額が多いほど、払込保険料総額が少ないほど返戻率は高くなる。個人年金保険は、年金額を決めて契約するため、保険料がどのくらい安くなるかがカギとなる。
個人年金保険のシミュレーションは、各保険会社のサイトで行えるが、返戻率が表示されないケースもある。
その場合は、自分で計算しなければならない。
また保険会社によって、保険料から算出したり、基礎年金額から算出したりの違いもあり、比較する際には注意が必要だ。
予定利率が高い時期に加入すれば、保険料は安くなり、返戻率は高くなる。
近年のように、予定利率が低いと、保険料払込期間を短くするなどして、返戻率を高くするしかない。
保険料払込期間を短くすれば、保険料総額を安くすることができる。
個人年金保険の返戻率は、最低限100%を超えていて、110%に近いと高い。
近年はおおむね、102〜 105%が相場だろう。年金総額が200万円の場合は、次のようになる。
- 年金総額200万円 ÷ 保険料総額200万円 × 100 = 100%
- 年金総額200万円 ÷ 保険料総額181.8万円 × 100 ≒ 110.0%
- 年金総額200万円 ÷ 保険料総額153.8万円 × 100 ≒ 103.0%
受取総額200万円に対して、保険料総額が181万円程度だと、優れた個人年金保険といえるだろう。
なお、時期によっては110%を超える商品が増える場合もある。
個人年金保険の適正な返戻率とは
返戻率は高いほどよいが、適正とはいえないこともある。
保険の基本設計では、保険料払込期間が長いほど、毎回の保険料は安くなる。
一方、保険料払込期間を短くすれば、毎回の保険料は高くなるが、返戻率は上がる。
個人年金保険では「据え置き期間」を設定でき、この期間中は年金を受け取れないが、保険会社が運用できるため、受取額を増やすことができる。
たとえば、40歳で契約し、65歳から年金を受け取りたい場合、保険料を65歳まで支払うより、60歳までに支払い終え、5年間をすえ置き期間とすると、返戻率は上がる(受取額が増える)。
据え置き以外でも、「月払」を「半年払」や「年払」にすれば、1回で支払う保険料の額は増えるが、まとめて払うことによる割引を受けられる。
つまり、保険期間と保険料払込期間が同じであれば毎回支払う保険料の負担をおさえられるが、返戻率を上げようとすると保険料の負担が重くなる。
適正な返戻率とは、無理のない保険料の範囲内で最も高い返戻率といえる。
各保険会社のサイトに掲載されている返戻率は、できるだけ高い返戻率を選んでいるため、適正な返戻率を見極めるためにシミュレーションして比較してみよう。
また、返礼率を参考に老後資金準備の方法を決めるという方もいるだろう。
貯金と個人年金保険のどちらが老後資金準備に適切か、判断にまよった際には以下の記事も参考にしてみてほしい。
返戻率が高い個人年金保険の具体例
A社
契約年齢:40歳、毎月の保険料:10,000円、受取開始年齢:65歳、10年確定年金
返戻率 | 月払保険料 | 据え置き期間 | 年金額 | |
---|---|---|---|---|
⓵ | 102.8% | 10,000円 | 10年 | 18.52万円(×10年) |
A社は、毎月の保険料から年金額が決まる。40歳で契約し受取開始年齢を65歳とすると、15年間保険料を支払う。
据え置き期間0年や5年はなく、10年しか設計できない。10年据え置かなければ、100%を超えないのだろう。
次に契約年齢30歳の場合でシミュレーションする。
A社
契約年齢:30歳、毎月の保険料:10,000円、受取開始年齢:65歳、10年確定年金
返戻率 | 月払保険料 | 据え置き期間 | 年金額 | |
---|---|---|---|---|
② | 104.5% | 10,000円 | 10年 | 31.36万円(×10年) |
③ | 103.0% | 10,000円 | 5年 | 37.08万円(×10年) |
契約年齢30歳になると、据え置き期間5年の設計ができるが、0年はない。
25年間保険料を支払うが、返戻率は105%を超えない。35年で5%増えるので、単純計算で年間およそ0.14%の増加である。
このように、個人年金保険は、できる限り若いときに加入しないと十分な返戻率を得られない。
比較する際には、返戻率だけでなく、据え置き期間にも注意して、シミュレーションするとよいだろう。
返戻率以外に押さえるべき個人年金保険選びのポイント
ここまで返戻率について詳しく解説したが、最後に返戻率以外でおさえておくべき個人年金保険の選び方のポイントをまとめる。
また、以下の記事ではおすすめの個人年金保険を紹介しているので、あわせてチェックしていただくとより具体的にイメージすることができるはずだ。
運用実績で会社の信頼性を確認
生命保険の運用実績が重要となるのは、変額保険である。
変額保険は受取額が運用成績によって変動する。個人年金保険には定額型と変額型があり、これまでシミュレーションした商品はすべて定額型である。
変額型の個人年金保険を希望する場合は、各保険会社のサイトに掲載されている運用実績を参考にするとよいだろう。
なお、「定額型」「円建て」の返戻率に魅力を感じない場合は、「変額型」や「外貨建て」を検討してみよう。
元本割れする可能性がある保険に注意
個人年金保険の返戻率が100%未満になると、元本割れとなる。
将来受け取れる年金総額よりも支払う保険料総額のほうが多くなる。
基本的に返戻率100%未満の設計はできないが、元本割れには注意する必要がある。
保険料の支払方法に注意
保険料の払込方法には、月払や半年払、年払のほか、一時払いなどもある。保険料はまとめて支払うほど返戻率は高くなるが、個人年金保険の支払期間は長期になるため、一括で無理なく払える金額かを確認する必要がある。
個人年金保険の返戻率は参考程度に!あなたに最適なプランを選ぼう
本記事では、個人年金保険における返戻率の概要や役割、計算方法、そして適正な返戻率の数値を紹介した。
また、返戻率以外に抑えるべき個人年金保険選びのポイントについても解説した。
一見、返戻率が高い個人年金保険は良い保険であるように思えるが、それだけで保険を選ぶのは得策ではない。
自身の保障ニーズに合う内容や信頼できる保険会社の選定、保険料の支払い方法を確認しておくことも大切な選定基準となる。
もし保険の比較や自身にとって適切な保険の選択にまよったら、保険のプロに相談することも検討してみよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、あなたに必要な保険を的確に判断することができるはずだ。
また、全国の保険のプロから自分に合った担当者を探す際には「生命保険ナビ」の活用をおすすめする。
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