- 生命保険の保険金にどんな税金がかかるのかわからない
- 保険金に税金がかからない非課税枠について条件や活用の際の注意点を知りたい
- 実際に生命保険の保険金にどれくらい税金がかかるのか知りたい
万一のときに自分や家族の暮らしを経済的に守ってくれる生命保険は、ほとんどの日本人が加入している。
被保険者(保険の対象者)が亡くなったときには、保険会社から死亡保険金が支払われるが、この保険金には税金がかかる。
あなたは、この税金の金額がどのように決められているかご存知だろうか。
本記事では保険金を安心して受け取れるよう、保険に課税される税金の種類や計算方法、税金の非課税枠について説明する。
生命保険の相続税対策に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてほしい。
生命保険の保険金にかかる相続税評価額の求め方
生命保険から給付される死亡保険金には、保険契約の内容により、相続税、贈与税、所得税+住民税のいずれかが発生する。
遺産相続があった際には、生命保険以外の相続分と合わせて、相続が発生したことを知った日から10か月以内に申告・納税までしなければならない。
さらに申告時には、対象となる税金を明確にし、自分で課税対象額を算出しなければならない。
また、死亡保険金にかかる税金は、他の相続分とは扱いが別になることがある。
ここでは、どのような場合にどの税金が発生するのか、またその金額はどのようにして決まるのかということを解説する。
生命保険にかかる税金の種類と決まり方
死亡保険金の税金が、相続税、贈与税、所得税+住民税のうち、どの税金が適用されるのかは生命保険の契約内容により決定する。
契約上での被保険者、保険契約者(保険料を負担している人)、保険金受取人との関係性により、適用される税金が決まる。
被保険者と保険契約者が同じ人なら相続税、保険契約者と保険受取人が同じなら所得税+住民税、3人とも別なら贈与税が課税される。
これらのことをまとめると、下記の表になる。
適用される税金 | 税金の内容 | 生命保険の契約関係者 | ||
被保険者 | 契約者 | 保険保険金 受取人※ | ||
①相続税 | 亡くなった人から受け継いだ財産にかかる税金 | A | B | |
②贈与税 | ほかの人から譲り受けた財産にかかる税金 | A | B | C |
③所得税+住民税 | 個人の所得に対してかかる税金、所得税は国税、住民税は地方税 | A | B |
相続手続きの2つのパターンとは
保険金受取人が定まっているかいないかで、保険金の相続手続きを行う者が異なる。
保険契約書や遺言書に受取人が記載されていれば、その者が手続きを行う。
しかし保険契約書に保険金受取人の記載がなく、遺言書もない場合や、受取人がすでに亡くなっている場合もある。
この場合は配偶者が保険金受取人になるが、配偶者が亡くなっている場合は、法定相続人の相続順位で受取人が定められる。
第1位:子ども(養子も含む)、子どもが亡くなっている場合は孫(子どもの子)※
第2位:両親、両親が亡くなっている場合は直系尊属(祖父母)
第3位:兄弟姉妹、兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥姪(兄弟姉妹の子)※
※本来相続人となるはずの人が既に亡くなっている場合に、その子が代わって相続することを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼ぶ
同順位の人が複数いる場合は全員が相続人として手続きを行うが、先順位の人が1人でもいれば、後順位の人は相続人になれない。
相続税評価額はどう計算されるのか
亡くなった後の遺族の生活を心配し、自分で自分に保険をかけ、保険金受取人を遺族にしている保険は多い(上記①の保険契約)。
このため相続税が発生するケースが多く、ここでは相続税の金額(相続税評価額)の算出方法を説明する。
相続税評価額
=[みなし相続財産の課税評価額]+[本来の相続財産の課税評価額]- A ― B=([保険金額]- C)+([本来の相続財産:預貯金・不動産など] ― D)― A ― B
A:債務控除額(亡くなった人が未返済となっている借金や債務、未納の税金など)
B:葬儀代
C:みなし相続財産の非課税枠
D:相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×[法定相続人の数] )
上記の「みなし相続財産」については、次章で解説する。
評価額に関係する生命保険の「非課税枠」とは
相続手続きにおいては、生命保険での死亡保険金は、「みなし相続財産」の扱いとなる。
みなし相続財産とは、被保険者が亡くなったことがきっかけで受け取れる財産であり、一定額までは相続税が課税されない。
また受け取る人が指定されていることから、法律上では受取人固有の財産とされ、通常の相続財産とは別扱いとなる。
このため預貯金や不動産など、法定相続人の間で行われる遺産分割協議の対象から、みなし相続財産は外される。
保険金を相続人の代表者が相続して、納税資金や、分割が困難な不動産などを代償分割する際の資金に用いる場合もある。
- 代償分割:特定の相続人へ現物を相続する代わりに、相続分に相当する額の金銭などを支払う方法。物理的に分割が困難な不動産・貴金属・美術品などの相続に有効な手段。
非課税枠の概要と適用条件
みなし相続財産の非課税枠が適用されるのは、保険契約者と被保険者が同じ場合に限られる。
つまり上記の表では①のみが適用対象となり、保険契約者と被保険者が異なる上記の表にある②③は適用対象外となる。
生命保険では以下のものも、みなし相続財産として扱われる。
- 被保険者が死亡後も一定期間の給付がある個人年金
- 亡くなった人が保険料負担していた保険の満期保険金
- 保険料を負担していた人が亡くなったため、契約を解約した保険の解約返戻金
非課税限度額の計算方法
みなし相続財産の非課税枠は、以下の計算式で算出される。
※[法定相続人の数]について相続放棄をした人がいても、上記の法定相続人に数えられる。例えば父親が亡くなったときの法定相続人が3人(母親、子供2人)いて、母親が相続を放棄しても「法定相続人は3人」で計算する。養子は法定相続人に含まれるが、亡くなった人に実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までしか人数に入れない。ただし養子縁組した配偶者の連れ子や、特別養子縁組による養子の場合には、人数制限はない。
相続人のうち下記のような法定相続人でない人は、みなし相続財産の非課税枠だけでなく、相続税の基礎控除も使えない。
そのうえ相続税は、2割加算した税額を納めなければならない。
- 代襲相続人でない孫や甥・姪、その他親族
- 家族ではあるが戸籍上の第三者(内縁関係者、事実婚関係者、同性パートナーなど)
- 離婚した元配偶者
- 養子縁組をしていない配偶者の連れ子
- 受贈者(遺言によって財産を受け取る人または法人)
非課税枠を利用する際の注意点
故人の預貯金など「本来の相続財産」の相続を放棄しても、保険金は受け取れるが、みなし相続財産の非課税枠が使えなくなる。
相続税の基礎控除額も、「本来の相続財産」に対するものであるため、「本来の相続財産」を相続放棄すれば控除対象もなくなる。
父親の「本来の相続財産」の相続を放棄した子どもが、2,000万円の保険金を得た場合には、保険金全額に相続税がかかる。
また生命保険金の請求権は、権利発生日翌日から3年で時効により消滅するため、このとき保険金の非課税枠も無くなる。
相続税評価額について理解できたら!生命保険の保険金の受け取り額を計算してみよう
これまで説明してきた内容を踏まえ、ここでは以下の三つのケースで、保険金額の受取額を算出する。
- 子どもなしの夫婦の家族で、保険契約者が夫、保険金受取人が妻の保険契約
- 夫婦と子ども2人の家族で、保険契約者が夫、保険金受取人が妻の保険契約
- 夫婦と子ども1人の家族で、保険契約者が妻、保険金受取人が子どもの保険契約
これらの保険金額を算出するにあたり、以下の内容をすべてのケースに共通する前提とする。
- 被保険者は夫とし、亡くなったときの死亡保険金は1,000万円とする
- 夫には債務がなく、葬儀代も発生しないものとする
- 子どもはすべて小学生とする
- ここでの算出は保険金受取額のみとする
- このため「本来の相続財産」の課税評価額を加算したうえで算出する相続税の全体額は省略する
これから先、読み進めることを一旦やめて、皆さんの方でも上記の内容をもとに計算してほしい。
計算が終わったら、答え合わせも兼ねて、読み進めていただきたい。
【子どもなしの夫婦】契約者夫・受取人妻の場合
生命保険の被保険者と契約者は同一人物(夫)であるため、「みなし相続財産」の対象として、以下の計算式で税額を算出する。
このケースでは法定相続人が1人(妻)だけであるため、上記の式を用いると「みなし相続財産の課税評価額」は以下のようになる。
みなし相続財産の課税評価額
=1,000万円-(500万円 × 1人)
=500万円
この500万円がそのまま課税されるわけではなく、「本来の相続財産」の課税評価額と合算して、妻の相続税全体額を算出する。
相続税全体額を算出する際には、妻には配偶者控除が適用されるため、相続額全体が1億 6,000万円以下であれば課税されない。
このように相続税全体額が1億 6,000万円を超えず、妻に相続税が発生しない場合には、妻が受け取れる保険金額も1,000万円全額になる場合がある。
【夫婦と子ども2人】契約者夫・受取人妻の場合
このケースでは、3人が法定相続人(妻と子ども2人)であるため、以下が(1)の算出結果となる。
みなし相続財産の課税評価額
=1,000万円- (500万円 × 3人)
=1,000万円- 1,500万円
=-500万円 < 0
この時点で、課税評価額は0円以下なので、相続税はなくなる。
以上の結果から、このケースでは保険金受取人である妻が受け取れる保険金額は、1,000万円全額になる。
【夫婦と子ども1人】契約者妻・受取人子どもの場合
このケースでは被保険者(夫)、保険契約者(妻)、保険契約者(子ども)となるため贈与税の適用対象となる。
贈与税の計算式は以下のようになる。
(ⅰ)贈与税評価額
=([保険金額]-110万円)×[贈与税率]-[控除額]
(ⅱ) 受取保険金額
=[保険金額] -[贈与税評価額]
※贈与税率と控除額は以下を参照
贈与税評価額の算出では、保険金受取人の子どもが18歳未満であるため、「一般贈与財産用」の贈与税率と控除額を適用する。
保険料(贈与額)が1,000万円であることから、税率40%、控除額125万円として算出した (ⅰ)の結果は以下となる。
さらに(ⅱ)で受取保険金額を以下で算出する。
以上の結果から、このケースでは保険金受取人である子どもが受け取れる保険金額は、769万円となる。
生命保険の相続税評価額を算出して保険金の受取額をシミュレーションしてみよう
本記事では、生命保険金にかかる税金の種類、保険金の計算方法について解説した。
保険金にかかる税金は、保険契約者・被保険者・保険金受取人の関係によって、変わってくる。
また相続税には非課税枠という考え方があり、法定相続人の数が多ければ税金は少なくなるが、非課税枠が適用外になる場合もある。
さらに相続にかかる税金の総額、納税資金や代償分割も考慮した保険金額の設定なども考える必要があるだろう。
考えるべきことがさまざまあると、不安になる人もいるだろうが、そのときは保険のプロへの相談を検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスがもらえるので、税金や相続も考慮した、最適な生命保険の内容を考えられるようになるだろう。
しかし保険のプロは数多く存在するため、自分にとって最適なアドバイザーをすぐに見定めることも難しい。
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