- 養老保険の入院給付金の受け取り方がわからない
- 入院給付金の支給要件について理解したい
- 入院給付金に関する知っておくべきポイントを知りたい
養老保険は、高齢期の医療費や生活費を支える重要な保険商品である。
定年退職後の収入補填を目的とした保険でありながら、確定拠出年金と同様、掛金の一部が税制上の優遇措置を受けることができ、節税効果も期待できるというものだ。
しかし、養老保険から給付される入院保険金や一時金の具体的な受け取り方、その要件は皆さんご存知だろうか?
この記事では、そんな養老保険の入院給付金の受け取り方や支給要件について詳しく解説する。
また、入院給付金に関する知っておくべきポイントも紹介しているので、ぜひ本記事を参考に養老保険への理解を深めていただきたい。
養老保険の入院給付金の特徴と役割を理解しよう
養老保険の保険金には、万が一の時の死亡保険金や満期時の満期保険金などいくつかの種類がある。
また、中には入院特約をつけられる商品も多数存在し、特約をつけておくと入院した際には入院給付金が受け取れる。
将来に向けてコツコツ貯蓄しつつ、被保険者が亡くなった場合やケガ・病気などで入院した際にも備えられるため、万が一に備えて養老保険に入院特約をつけて加入する方も一定数存在する。
ここでは、まず養老保険の入院給付金の基本的な役割や、給付金が支給されるケース、給付金の金額の決め方などについて確認していこう。
養老保険の入院給付金の基本的な役割
養老保険は、万が一の際の死亡保険金+満期の際の満期保険金という保険機能と貯蓄機能の両方を併せ持つ保険だが、入院特約をつけることでさらに手厚い保障内容となる。
養老保険の入院給付金とは、入院特約をつけた被保険者が病気やケガなどで入院した際に受け取れる給付金のことだ。医療保険と同じような仕組みで、不測のケガや病気に備えられる。
日本は国民皆保険を掲げているため、ほとんどの人が1〜3割の医療費負担で済む。
しかし、入院中の食費や差額ベッド代など保険の適用外となる部分については全額自己負担となるため、入院日数や病院によっては大きな負担となる。
入院時に自己負担となるもの
- 公的医療保険(保険診療)の自己負担分
- 差額ベッド代
- 先進医療技術料
- 入院中の食費
- 衣類や日用品など入院中の生活に必要なものの費用
- 公共交通機関やタクシーなどの交通費
生命保険文化センターの「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、直近の入院時の自己負担費用総額の平均は19.8万円、1日あたりの自己負担費用の平均は20,700円となっている。
入院日数別の自己負担費用は下記のとおりで、入院日数が長引くほど自己負担費用が高くなる。
入院日数/自己負担費用額 | 5万円未満 | 5〜10万円未満 | 10〜20万円未満 | 20〜30万円未満 | 30〜50万円未満 | 50〜100万円未満 | 100万円以上 | 平均(万円) |
全体 | 9.4 | 26.5 | 33.7 | 11.5 | 10.1 | 5.8 | 3.0 | 19.8 |
5日未満 | 25.9 | 38.8 | 26.7 | 6.0 | 1.7 | 0.9 | 0.0 | 8.7 |
5〜7日 | 6.8 | 36.4 | 34.0 | 11.1 | 8.6 | 1.9 | 1.2 | 15.2 |
8〜14日 | 6.8 | 23.5 | 44.7 | 12.1 | 9.1 | 2.3 | 1.5 | 16.4 |
15〜30日 | 2.7 | 11.8 | 36.4 | 14.5 | 18.2 | 12.7 | 3.6 | 28.4 |
31〜60日 | 3.0 | 9.1 | 18.2 | 24.2 | 24.2 | 15.2 | 6.1 | 30.9 |
61日以上 | 0.0 | 0.0 | 14.3 | 7.1 | 14.3 | 35.7 | 28.6 | 75.9 |
加えて、入院中は仕事ができないことが多いため、入院中の収入が減ってしまう場合もあるだろう。
入院給付金は、このように公的医療保険制度で賄えない部分をカバーしてくれるという役割を持つ。
養老保険で入院給付金が給付されるケース
入院給付金が支払われるのは、病気やケガの治療など保険診療の対象となる治療を目的として入院した場合だ。
保険商品によっては、日帰りでの入院でも入院給付金が給付されるため、
ただし、以下のようなケースでは、入院給付金が給付されないため注意しよう。
- 免責事由に該当する場合
- 告知義務違反による解除の場合
- 重大事由による解除・詐欺による取消に該当する場合/不法取得目的による無効の場合
まずは、保険の約款所定の支払事由に該当するかが重要だ。
保険の責任開始日前に生じた病気やケガを原因とする入院は、当然ながら入院給付金の対象外となる。
入院日数が約款所定の日数に満たない場合や、すでに支払日数の限度まで給付金を受け取っている場合も同様だ。
さらに、人間ドックや健康診断、検査入院、美容目的での入院・手術などでは入院給付金は受け取れない。
約款で定められた「所定の入院」に該当するか事前にチェックしておこう。
養老保険における入院給付金の給付期間と金額設定のポイント
養老保険の入院特約では、一般的に一回の入院につき給付金が支払われる限度日数や通算の支払い限度日数が定められている。
例えば、一回の入院での支払い限度日数が90日と定められている方が100日間入院した場合でも、最大で90日分しか入院給付金は支払われないため注意しよう。
また、直近の入院給付金対象となった入院から一定日数以内の入院は、継続した一回の入院とみなされることも多いため、加入前に約款等をよく確認しておくのをおすすめする。
入院給付金の金額を決める際は、どの程度の自己負担額が必要となり、どのくらい貯蓄があるかも重要となる。
上記の表で紹介したとおり、入院1日あたりの平均自己負担額は約20,000円となっている。平均の金額を参考にしつつ、自分に合った入院日額を決定しよう。
特に、自営業者やフリーランスの場合は、傷病手当金が給付される会社員と違い、自己負担の金額が大きくなりやすい。
入院中は収入が減少してしまいやすいことや、支出が嵩むことを考えて、慎重に日額を判断する必要がある。
ただし、「入院時にはなるべくたくさんの入院給付金をもらいたい」と考えて日額を高めに設定してしまうと、特約分の付加保険料が高額になり、家計を圧迫してしまう可能性もある。
家計に無理なく支払える範囲で入院日額の金額を決めることが大事だ。
養老保険の入院給付金の受け取り方
養老保険で入院特約をつけた場合、どのように入院給付金を受け取ればよいのだろうか。
入院給付金の申請方法と準備すべき書類、申請から給付までの流れについて解説していく。
養老保険で入院給付金を申請する方法と必要な書類
入院給付金を受け取るためには、まずは生命保険会社への連絡が必須だ。
入院給付金の対象となる入院・手術をした場合は、加入している保険会社の担当者やサービスセンター、コールセンターへ速やかに連絡しよう。
保険会社によっては、給付金の請求手続きや請求書類の取り寄せをオンラインで行える場合がある。あらかじめ申請方法について確認しておくと手続きがスムーズだ。
申請にあたっては、保険証券の証券番号や被保険者の氏名、入院日・退院(予定)日などが必要となる。
請求書や生命保険会社所定の診断書など、保険会社指定の必要書類を準備して提出しよう。
なお、入院給付金の申請は、原則として被保険者本人が行うこととなっている。
ただし、「指定代理請求制度」を利用すれば、本人に代わって代理人が請求できるケースもある。
指定代理請求制度とは、被保険者に特別な事情がある場合に、あらかじめ指定した代理人が保険金を代わりに請求できる制度だ。
特別な事情に該当するのは、「傷病または疾病により保険金等を請求する意思表示ができない場合」「治療上の都合により、傷病名または余命の告知を受けていない場合」といったように、やむを得ない場合に限られる。
指定代理請求制度を利用する際は、あらかじめ被保険者の同意を得ておくことや代理請求可能な旨を伝えておくことを忘れないようにしよう。
養老保険の入院給付金の申請時期と支給開始時期
入院給付金には、請求期限が設けられている。
請求権の時効は一般的に3年と定められており、期限を過ぎてしまうと請求を行っても給付されない。
入院・手術当時は給付の対象にならないと思っていたがあとで確認したら給付の対象になっていた、ということがないように、些細な入院・手術であっても保険会社に必ず確認するようにしよう。
逆にいうと、3年以内であれば過去の入院・手術も給付の対象となる。
給付申請を忘れていた場合は、直ちに保険会社に連絡して手続きについて確認するのをおすすめする。また、入院給付金は入院途中でもそれまでの入院期間に相当する入院給付金の請求が可能だ。
入院中に一旦請求手続きを行い、退院後に残りの入院給付金を請求するという流れとなる。
入院が長引きそうなので、当面の生活費のために入院給付金を請求しておきたい場合などは、入院中に請求手続きを行うと良いだろう。
ただし、入院給付金を分けて請求する場合、その都度診断書等の必要書類を提出しなくてはいけないため、手間やコストがかかるという点がデメリットとなる。
入院給付金の請求手続きから実際に受け取れるまでの期間は保険会社によってまちまちだ。大手の保険会社の場合は、請求から給付まで5営業日以内としているケースが多いが、保険会社によっては1ヶ月以上手続きにかかる場合もある。
なるべく早く給付を受けたいという場合は、オンラインでの請求手続きを行い、郵送でのやりとりをなるべく省くと良いだろう。
養老保険の入院給付金の申請から支給までの流れ
入院給付金を受け取る際の、申請から支給までの大きな流れは下記のとおりだ。
- 生命保険会社への連絡
- 必要書類の提出
- 保険会社での支払い可否判断
- 給付金受け取り
入院給付金の受け取り手続きを行う際、最初に必要なのは生命保険会社への連絡だ。
本人からの連絡がない限り、保険会社は入院・手術の事実を知ることができないため、速やかに連絡を行おう。
加入している特約の内容によっては支払い対象外となる場合もあるため、病名や入退院(予定)日、手術名などなるべく詳しく状況を説明できるとよいだろう。
入院・手術について連絡すると、生命保険会社から必要書類が案内される。案内に従って請求書や診断書などの必要書類を準備して、保険会社へ提出する。
保険会社や特約によっては診断書の添付が不要となる場合もあるため、最初の連絡時に必要書類についても確認するのをおすすめする。
必要書類の提出後、保険会社で支払い可否が判断される。入院給付金の対象となる場合は、指定の金融機関口座に入院給付金が振り込まれる。
合わせて給付金の明細書も保険会社から送付されるため、内容に間違いがないかや振込金額に相違ないかをチェックしよう。
養老保険の入院給付金におけるポイント
養老保険の入院給付金を受け取る際の注意点やポイントについて、いくつかのケースに分けて説明していく。
入院給付金を受け取る際の税金についてや、高額療養費制度といった公的医療保険制度との併用については、誤解している方が多い部分でもあるため、しっかりと確認しておこう。
養老保険の入院給付金を受給する際の税務処理
養老保険から給付される入院給付金は、金額にかかわらず税法上非課税とされている。
所得税法施行令第30条には、「損害保険契約に基づく保険金、生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金」は非課税とみなされると明記されている。
入院給付金のほか、手術給付金や通院給付金、がん診断給付金、特定疾病保険金なども非課税の対象だ。
非課税であるため税金の申告は必要ないが、確定申告で医療費控除を受ける際は、医療費の自己負担分から受け取った入院給付金などを差し引く必要がある。
失業や退職時に受け取る養老保険の入院給付金
失業や退職時にケガや病気で入院した場合も、入院給付金は問題なく支払われる。
失業時のケガや病気であれば、退職後に加入した国民健康保険や雇用保険の手当でカバーしつつ、養老保険に加入している場合は入院給付金の請求手続きを行おう。
雇用保険では、仕事に就けない期間が14日以内の場合は基本手当が支給され、15日以上であれば傷病手当が支給される。
仕事に就けない期間が30日以上の場合は、傷病手当を受給するか基本手当の受給期間を延長するかを選択できる。
そのため、失業中の入院であっても雇用保険の基本手当や傷病手当をうまく活用すれば、一定の収入が保障される場合がある。
そもそも、養老保険は民間の保険であるため公的な医療保険や雇用保険などの社会保険の制度とは異なる。
入院給付金の給付条件を満たしていれば、雇用の状況に関わらず入院給付金を受け取れる。
それぞれの制度をきちんと理解して、正しく請求しよう。
養老保険の入院給付金と高額療養費制度との関係性
高額な医療費の負担をカバーするために「高額療養費」制度というものがある。
これは、公的医療保険制度の一つで、1ヶ月間に支払った医療費の自己負担額が大きくなった場合に、一定の限度額を超える分が払い戻されるという制度だ。
たまに、この高額療養費制度を利用する場合は、かかった医療費から医療保険などの入院給付金を差し引く必要があると誤解する方もいるようだが、それは誤りだ。
公的医療保険制度と民間の医療保険は併用が可能なので、養老保険からの入院給付金を受け取った場合も問題なく高額療養費制度を利用できる。
高額療養費の給付額を計算する際も、養老保険からの入院給付金の金額を差し引く必要はない。
入院が長引いた場合や医療費が高額となった場合に備えて、公的医療保健の制度を正しく理解しつつ、民間の養老保険などの入院給付金などで支出を上手にカバーすることが重要だ。
養老保険の入院給付金について正しく理解しよう
養老保険の入院給付金は、高齢期の医療費や生活費を補う重要な制度である。
これからの生活設計を考える上で、入院給付金の申請方法や支給条件、さらに税務処理などを事前に理解しておくことは非常に重要だ。
また、それぞれの養老保険によって具体的な給付内容が異なるため、自身の契約内容を再確認し、必要に応じて保険のプロに相談することも視野に入れるべきだ。
しかし、保険のプロもたくさんいて、自分に合った担当者を見つけるのは難しいだろう。
そのためにおすすめなのが「生命保険ナビ」だ。「生命保険ナビ」では、ご自身のニーズに合った保険のプロを選ぶことができる。
安心の生活を実現するための一歩として、ぜひご活用してほしい。