- 特定疾病に対して医療保険が活用できるかわからない
- 特定疾病にかかってしまった時の対策法が知りたい
- 特定疾病向けの医療保険の選び方を学びたい
がんや脳血管疾患などの特定疾病にかかると、本人だけでなく、家族全体に経済的な負担がかかることになる。
その際、医療保険が活用できるか不安に思う方も多いだろうが、特定疾病を保障対象とする医療保険がその不安を解消させる。
本記事では、特定疾病に対応する医療保険の選び方と活用法、そして特定疾病に罹患した時の対策を解説する。
特定疾病への備えを考えている方は、特定疾病に対する医療保険の活用法を理解し、将来の経済的負担を軽減する参考としてほしい。
特定疾病に対する医療保険の活用法
特定疾病(とくていしっぺい)とは、各保険制度において他の疾病と異なる取り扱いをする病気をさす。
特定疾病に対応する公的保険制度もあるが、さまざまな保障を備える医療保険がある中で、特定疾病に対応する保険商品も各保険会社から提供されている。
この保険商品は、医療保険の一種であり、特定疾病医療保険と呼ぶ。
この保険が通常の医療保険と異なる点は、保障対象の疾病が定められていることだ。
ここでは、特定疾病医療保険の概要や、そのメリットについて解説する。
特定疾病医療保険の概念と種類
特定疾病医療保険では、保険契約に規定された病状になると保険金が得られる。
死亡時や高度障害時には一時金、入院や手術した際には給付金が、保険金として受け取れる。ただし一時金が支給された段階で保険契約は終了する。
また特定疾病には一般的な共通定義がないため、対象となる病気は、公的保険制度や保険会社の保険商品ごとに異なる。
保険会社が扱う特定疾病医療保険と、その保障対象となる疾病を、以下の表にまとめたので参照してほしい。
保険の種類 | 保障対象となる疾病 |
① がん保険 | がん |
② 三大疾病医療保険※1 | がん、心疾患、脳血管疾患 |
③ 七大疾病医療保険※2 | 上記②に加え、肝疾患、腎疾患、糖尿病、高血圧疾患(大動脈瘤、大動脈解離など) |
④ 女性特定疾病 医療保険※2 | がん、子宮・乳房の病気や甲状腺の障害、貧血、低血圧、胆石症、関節リウマチ、分娩時の合併症など |
※2:保険商品によっては、保障対象疾病が上記と異なる場合がある。
特定疾病に利用できる医療保険とは
特定疾病は病気の一種なので、保険会社が扱う通常の医療保険でも、保障してくれる。
しかし特定疾病医療保険のほうが、一時金や給付金が高額に設定されている。またこれらの病気は、長期療養が必要となるので、給付金なども長期間にわたり支払われる。
この保険の保障対象となる疾病が限定されているので、通常の医療保険と比べて、保険料も割安だ。
しかし、これは特定疾病医療保険が、特定疾病以外の保障をしないことを意味するので注意が必要だ。
特定疾病に医療保険を利用するメリット
通常の医療保険と特定疾病医療保険のいずれも、特定疾病になった場合には保険金が受け取れ、その使い道は自由に決められる。
健康保険では以下の内容は保険適用外となるため、この費用は医療保険の保険金で補える。
健康保険の 適用外となる内容 | 説明 |
入院時の食事代 | 入院中の食事代のうち、食事療法での費用は、健康保険の保険適用対象となる。 |
差額ベット代 | 患者が重篤な状態、同室患者との間でプライバシーが気になる場合などでは、個室(差額ベッド)が必要になることがある。 |
先進医療 | 「先進医療」とは、がん治療の一種である重粒子線治療など大学・研究機関などで開発された先端医療のうち、厚生労働大臣が「先進医療」と承認した治療方法や薬。 先進医療では、施術にともなう費用は健康保険の保険適用対象外となる(ただし診察料、検査料、投薬料、入院料などは健康保険の保険適用対象)。 |
自由診療 | 「自由診療」とは、(たとえ海外で効果が確認されていても)厚生労働省が承認していない治療方法や新薬。 自由診療では、診察、検査、施術、投薬、入院などの一連の医療行為にともなう費用は、すべて健康保険の保険適用対象外となる。 |
その他 | 入院時に用いる雑費や日用品仕事ができない入院・療養中の経済的保障看護する家族の費用(交通費、食費)など |
特定疾患は療養が長期化する場合も多いが、保険金は現金で給付されるため、治療による収入の減少・損失に備えることもできる。
保険会社が規定する特定疾患は死亡率の高い病気が多いので、万一のことがあった場合は、遺族に死亡保険金が残せる。
特定疾病にかかってしまった場合は
自分や家族が、担当医から重篤な病気名の診断を受けたら、まず家族や親族に連絡して今後の支援をお願いしよう。
その次に、契約している保険会社に連絡して、その病気が保障対象かを確認する。
このとき市区町村の介護保険担当窓口に相談することもおすすめする。厚生労働省が認定する16の特定疾患であれば、介護保険の適用が受けられる可能性があるからだ。
ここでは、介護保険制度の活用方法を解説する。
介護保険の活用も検討する
厚生労働省が認定する以下の特定疾病にかかると、本来65歳以上から支給対象となる介護保険も、40歳から支給が受けられる。
厚生労働省が介護保険の適用を認めている特定疾病 ①がん(末期がん) ②関節リウマチ ③筋萎縮性側索硬化症 ④後縦靱帯骨化症 ⑤骨折を伴う骨粗鬆症 ⑥初老期における認知症 ⑦パーキンソン病関連疾患: 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(アルコール性認知症は特定疾病の対象外) ⑧脊髄小脳変性症 ⑨脊柱管狭窄症 ⑩早老症 ⑪多系統萎縮症 ⑫糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症 ⑬脳血管疾患 ⑭閉塞性動脈硬化症 ⑮慢性閉塞性肺疾患 ⑯両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 |
これらの疾病は、介護認定がされれば介護保険を用いて、さまざまな公的介護サービスが受けられる。
介護保険を受けるまでの手続きや流れは、以下の通りだ。
実施項目 | 内容 | |
STEP1 | 要介護認定の申請 | ・市区町村の介護保険担当窓口で申請を行う ・申請時に必要な書類 所定の申請書個人番号(マイナンバーカード) 保険証(40~64歳:健康保険被保険証、65歳以上:介護保険証) 申請者の身元確認書類:運転免許証、身体障害者手帳、介護支援専門員証など 主治医の情報が確認できる書類:診察券など 印鑑 ・入院中などで本人が窓口に行けない場合は、地域包括支援センター、介護保険施設、居宅介護支援事業者などが申請代行することも可能 |
STEP2 | 認定調査 | ・市区町村の認定調査員が申請者の自宅・施設などを訪問し、保険の対象者(被保険者)の心身状態・生活環境について聞き取り調査を実施 ・調査員は調査結果をもとに「要介護認定調査票」を作成 |
STEP3 | 意見書 | 主治医・被保険者の主治医が、市区町村から送付された「主治医意見書」に病状などを記入し、市区町村に返送 |
STEP4 | 判定 | ①一次判定:要介護認定調査票、主治医意見書をもとにコンピュータが要介護度を判定 ②二次判定:介護認定審査会にて、被保険者の心身状況・介護実態を考慮のうえ一次判定の変更を検討し、要介護度を判定。その結果を市区町村に通知。 ③決定:申請から約30日までに被保険者本人に決定通知書が送付される。 決定通知書には、市区町村にて決定された8段階での要介護度が記載されている(自立、要支援1〜2、要介護1〜5)。 自立認定を除き、要介護度に応じた保険額が支給される。認定結果に不服がある場合は、異議申し立ても可能。 |
介護保険の給付方法は、現物給付と償還払いの二種類あり、費用の一部は自己負担となる。
※償還払い:被保険者が費用全額を一旦払ったのち、領収書を市町区村に提出して、自己負担額を除いた金額が返還される給付方式。
自分の病状に合わせた介護業者を選定する
市区町村の介護保険課に連絡すれば、ケアマネージャーが所属する介護事業所を紹介してもらえる。
ケアマネージャーは、患者本人・家族の意思や状態をもとに、さまざまな公的介護サービスの活用を提案する。
その結果をケアプラン(療養計画書)にまとめ、市区町村に提出することで、公的介護サービスが利用できるようになる。
ケアマネージャーは患者本人・家族との相性が重要なので、相性が合わない場合には介護事業所やケアマネージャーの変更も可能だ。
病状に合わせて医療保険と介護保険を両方利用する
介護保険と特定疾病医療保険との両方を利用すれば、保障対象となる特定疾病の範囲も広がる。
また、それぞれの規定で重複する疾病は、両方から保障を受けられる。
担当医から診断された病名が、両者とも保障対象外であった場合は、難病相談支援センターに相談してみよう。
このセンターでは、都道府県・指定都市に設置され、患者や家族からの相談に応じて必要な情報提供や助言を与えてくれる。
特定疾病に有効な医療保険の選び方
特定疾病医療保険は、通常の医療保険と同様に、定期型と終身型の二種類ある。
前者では加入時の保険料が安いが、年齢を重ねると病気になるリスクが高まるので、更新ごとに保険料は上がる。
また貯蓄性がないため、解約返戻金などがない場合が多い。
一方の終身型は、保険料は高いが貯蓄性があるため、「医療保障+死亡保障+資産形成」を一つでまとめたい場合におすすめだ。
このように保険の目的にあった医療保険を選ぶべきだが、ここではその選び方を説明する。
保障の範囲を明確にする
医療保険の保障範囲は保険商品ごとに異なる。
このため自分にあった保険選びをするうえで、保険商品の保障内容を明確にしなければならない。
特定疾病に関し、確認点の一例を以下にまとめたので、参考にしてほしい。
- 自分の親兄弟が罹患したことがある特定疾病は保障対象か?(遺伝リスクへの対応)
- どのような状態になれば、保険金が支給されるのか?
- がん
- 上皮内新生物は保障対象に含むか?含まないか?※
- 保険加入後の免責期間はどの程度か?
- 心疾患
- 保障対象は急性心筋梗塞のみか?全ての心疾患が対象か?
- 医師の診断内容(労働制限日数、保険会社規定の手術実施、など)
- 脳血管疾患
- 保障対象は急性心筋梗塞のみか?全ての脳血管疾患が対象か?
- 医師の診断内容(脳神経後遺症の継続日数、保険会社規定の手術実施、など)
- 退院後の治療にともなう通院保障はついているか?
- 入院・手術の給付金は、自分の希望する算出方式か?
- 計算方式:(1日当たりの入院給付金額 × 手術割増)× 入院日数
- 一律方式:1回の手術ごとに手術給付金額が設定など
※上皮内新生物とはがん細胞が上皮内にとどまっている状態。この状態のうちに手術で取り除くことで、再発や転移の可能性は低減される。
保険金の支払いを理解する
医療保険の保障内容とともに、保険商品では、保険金の支払内容についても理解が必要だ。
支払内容についても確認すべき点の一例を以下にまとめたので、こちらも参考にしてほしい。
自分が望む支払内容でなければ調整可能か、保険会社に確認したほうがよいだろう。
- がんによる再発・転移、脳血管疾患での治療の長期化などに、どこまで対応できるか?
給付金の給付は1回のみか?複数回受け取れるか?
給付回数に限度があるか?
- 死亡時の一時金の支払方式は、希望通りの内容か?
- 一括方式:一時金は一括で支払われる
- 年金方式:契約時に定めた一定の期間内で継続的に支払われる
保険料の負担度を考慮する
さまざまな保険を契約しておくと、安心感は高まるが、保険料が家計を圧迫する。
特定疾病への医療保障は、生命保険など他の保険の特約内容と重複する場合も多い。
費用や保障内容を比較し、重複している保障内容があれば、特約か特定疾病医療保険かのいずれかを解約することも考えたい。
下記は、年収に占める保険料の割合を、世帯年収別に調査した結果だ。
この調査結果の値と比較して、現在支払っている保険料が著しく超える場合は、保険内容を再考したほうがよいだろう。
世帯年収 | 年収に占める保険料の割合 |
200万円未満 | 11.7% |
200~300万円未満 | 11.2% |
300~400万円未満 | 9.0% |
400~500万円未満 | 6.8% |
500~600万円未満 | 5.8% |
600~700万円未満 | 5.1% |
700~1,000万円未満 | 5.2% |
1,000万円以上 | 4.2% |
まとめ
本記事では、特定疾病に対する医療保険の活用法と特定疾病に罹患した場合の対策法、有効な医療保険の選び方を解説した。
特定疾病では医療保険を活用することで、費用負担を抑えられる。
特定疾病医療保険と介護保険とで、重複して規定されている疾病には、両保険の併用をおすすめする。
医療保険を考えるうえで不安があっても、保険のプロは一人一人に合ったアドバイスをするため、必要な保険を的確に選択できる。
しかし生命保険のプロは数多く存在するため、自分にとって最適なアドバイザーを見極めることは難しい。
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