- 個人年金保険の選び方のポイントが知りたい
- 個人年金保険を利用するメリットやデメリットが知りたい
- 個人年金保険を利用する際の注意点が知りたい
日本人の平均寿命は、1950年代では男女ともに60歳代であったが、2040年の推計では、男性83歳、女性87歳と予想されている。
少子高齢化が進むと共に懸念されるのが、現在の年金制度だ。
年金制度は、5年に一度「公的年金の財政検証」によって見直しをすることになっている。
厚生労働省では、100年先までの見通しを検証しており、令和元年の財政検証では、若い世代が将来受け取る年金は、将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込みだとしているが、現実的にその保障はなく、不安を抱えている方も多い。
このような不安から公的年金以外に、自分で老後資金を確保しておきたいと考えている方も多いだろう。
この記事では年金不安解消の選択肢として個人年金保険について紹介する。
興味がある方はぜひ最後まで読んで検討してほしい。
個人年金保険を選ぶために知っておきたい基本知識
まずは個人年金保険とはどのような保険なのか、また具体的なメリット・デメリットを見ていこう。
個人年金保険の特徴
年金の種類は大きく分けて3種類に分類できる。
①公的年金
法律によって国が管理運営しているもので、強制加入となる。
自営業や専業主婦(夫)などが加入する国民年金、会社員や公務員が加入するのが厚生年金だ。
日本国民全員がどちらかに加入しなければならない。
②企業年金
会社に勤めていることで受給できる年金。
会社が生命保険会社などに運営を委託している年金で、会社によっては企業年金がない場合もあるが、企業年金がある場合には必ず加入することになる。
③個人年金
①の公的年金や②の企業年金の他に、老後の資金が不安な人、公的年金や企業年金では足りないと思う場合に、個人が自分の選択で加入する私的年金だ。
個人年金保険は③に該当する。
個人年金保険は、毎月保険料を一定年齢まで払い込み、受取開始時期になると、一定期間または終身にわたって年金形式または一括で受け取ることができる保険だ。
民間個人年金保険の加入率は、生命保険文化センターの調べによると、2022(令和4)年では18.9%となっている。
性・年齢別にみると、男女とも50歳代の加入率が最も高く、男性では23.7%、女性では25.2%となっている。
個人年金保険の加入率(性・年齢別)
個人年金保険を利用するメリット
個人年金保険を利用するメリットは以下の3つだ。
個人年金保険料控除で税金の負担を軽減できる
個人年金保険に加入する大きなメリットとして所得控除が受けられる点があり、年間で支払った保険料に応じて一定額が所得から控除され、所得税・住民税の負担を軽減できる。
- 個人年金保険料控除の条件年金受取人が契約者、または契約者の配偶者となっている
- 年金受取人が被保険者と同じである
- 保険料払込期間が10年以上
- 年金の支払い開始日は、被保険者が60歳以上で10年以上の定期預金または終身年金
老後の資金を準備しながら、節税もできることは大きなメリットだ。
貯蓄が苦手でも強制的に老後資金を積立てられる
個人年金保険の保険料は、口座引き落としやクレジットカードでの決済が一般的であり、現金があるとついつい使ってしまう人でも、半強制的に続けられる。
毎月の支出から余った金額を貯蓄に回すよりも計画的で、預貯金よりも解約のハードルも高いため、継続しやすい点が貯蓄が苦手な人にはメリットとなるだろう。
保険料を一括払い(一時払い)にしたり、据え置き期間を置くと、解約返戻率が上昇する
割引率は保険会社や契約する商品によって異なるが、保険料の払込総額を下げることで受取率(解約返戻率)が上昇し、より効率的に老後の資金を貯められる。
一度にまとまったお金を支払わなければいけない一括払い(一時払い)だが、余裕資金が十分にあるなら一括払い(一時払い)を選択するといいだろう。
返戻率を上昇させるもうひとつの方法として「据え置き期間を置く」というものがある。
公的年金は60歳から年金を受け取るより、65歳から受け取る方が年金額が増額されるのと同じく、個人年金保険も60歳で払い込みを完了して65歳から年金を受け取る方が返戻率が高くなる。
資金的な余裕があるならば検討してみよう。
個人年金保険を利用するデメリット
個人年金保険を利用するデメリットは以下の3つだ。
個人年金保険は受給開始時期が決まっており、中途解約をすると元本割れする可能性が大きくなる
年金の受取開始時期は、一般的に60歳、あるいは65歳などで設定可能だが、それ以前に受け取りたいと思っても、できないことがほとんどだ。
また、中途解約すると元本割れの可能性が高い。
契約前に、ライフステージの変化も踏まえ、保険料の払い込みの計画をしっかり立てて検討しよう。
インフレに弱い
市場全体の物価が上がり、お金の価値が下がることをインフレといい、現在の日本はインフレが急激に進んでいる状態だ。
貯蓄性のある生命保険の多くは、契約時の予定利率によって総支払保険料が決まる。
この保険料は、払い込みが終わるまで変わらないため、保険加入後にインフレが進むと実質的な資産価値が目減りすることになる。
個人年金保険も例外ではなく、特に現在20代など若い方は、保険料の払い込み期間が20年から30年になることが大半だ。
長期間にわたり金利が固定されるという点は、今後市場の金利が上昇しても、契約済みの個人年金保険の利率は変わらないため、大きく不利になる可能性もある。
受け取った年金は課税対象になる
個人年金保険で受け取れるようになった年金には基本的に税金がかかり、契約者と受取人の内容によって税金の種類が以下のように変わる。
- 契約者と受取人が同じで一括で受け取る
- 所得税(一時所得)
- 契約者と受取人が同じで年金形式で受け取る
- 所得税(雑所得)
- 契約者と受取人が異なる
- 贈与税
契約者と受取人が別の場合は、贈与税の対象となるが、贈与税は所得税(雑所得)とみなされるよりも税率が高く税金を多く支払う必要がある。
そのため、特にこだわりや事情がない限り、個人年金保険の契約者は受取人と同じにしておくことで、余分な税金を負担しなくて済む。
個人年金保険の選び方のポイント
個人年金保険で貯蓄する保険金の使い道を考える
生命保険文化センターが行った調査によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均23.2万円となっており、さらにゆとりある老後生活を送るための費用として、最低日常生活費以外に必要と考える金額は平均14.8万円となっている。
その結果、「最低日常生活費」と「ゆとりのための上乗せ額」を合計した「ゆとりある老後生活費」は平均で37.9万円となる。
このような状況の中で、個人年金保険の保険金は重要な役割を果たすに違いない。
公的年金だけでは生活のための資金で使い切ってしまう方も多いだろう。
上乗せで個人年金があれば気持ちの余裕も持てるかもしれない。
保険金の使い道はさまざまあり、日常生活費の補てんや、旅行やレジャーにも利用できる。
子どもや孫への資金援助も必要になるだろう。また趣味やつきあいに使ったり、耐久消費財の買い替えなど多岐にわたるであろう。
ゆとりあるセカンドライフに利用してほしい。
定額個人年金保険・変額個人年金保険のどちらが最適か考える
また、個人年金保険には、契約時に決めた予定利率で運用する「定額個人年金保険」と、選択した投資信託などで運用する「変額個人年金保険」の2種類がある。
定額個人年金保険
定額型の最大のメリットは、将来受け取れる金額が確定している点だ。
早期で解約をした場合は元本割れがあるが、年金原資に基づいて最低保証があるため、安全性が高く、老後の生活設計が行いやすい特徴がある。
デメリットは、インフレで物価が大幅に上昇した際、受け取れる年金の価値が目減りしてしまう点だ。
また、予定利率の低い時期に契約した場合、利率の高い時期に契約した場合に比べて割高な保険料になることがある。
変額個人年金保険
変額型では、契約者自身が事前に定められた投資信託などの運用商品を選択し、その運用実績によって年金額が増減するのが特徴だ。
そのため、運用方法次第では、受け取れる年金額が払い込んだ保険料を上回る可能性がある。
また、変額型はインフレ時に強いというメリットもある。
変額型は運用方法によっては高い運用利率を期待できる一方、定額型のように受け取れる年金額の最低保証がない。
そのため、年金額が元本割れするなど、大きな損失を招くリスクがある。
このほか、保険関係費のみでなく、運用に関する費用などがかかるのも、デメリットのひとつといえるだろう。
安定的な老後資金を望むのであれば、「定額型」を選択し、リスクをとっても少しでも多くの資金を得たい場合は、「変額型」も選択肢に入るだろう。
個人年金保険の保険料の支払い方法や保険金の受け取り方から考える
個人年金保険の保険料の払込方法は主に以下の3種類だ。
- 一時払
- 保障期間全体の保険料を、契約時に1回で払い込む
- 月払、半年払、年払月ごと、半年ごと、1年ごとに保険料を払い込む
- 前納、一括払
- 前納は半年払、年払の保険料をまとめて、また、一括払は月払の保険料数回分をまとめて払い込む方法
- これらの方法で払い込まれた保険料は、生命保険会社が預かり、本来の払込期日が来るたび、保険料として充てられる
払込方法による違いは、保険料を払い込む回数だけではなく払い込んだ保険料の総額にも違いが現れる。
例えば、同じ保険会社・保険金額の年金保険で、保険料の払込方法を月払と半年払とで比較したとする。
月払の場合、半年払に比べて一度に払い込む金額は少ないが、保険料払込期間まで払い込む保険料の総額は最終的に高くなる。
つまり、保険料を節約するなら、まとめて払い込んだ方が、一時的に負担は大きくても、長い目で見ると全体の保険料を抑えることにつながる。
保険金の受取方
契約者と受取人が同じで【年金形式】で受け取る場合
契約者と受取人が同じで年金形式で受け取る場合には、雑所得として所得税と住民税がかる。
ちなみにこの必要経費部分の計算方法は下記のようになる。
まず必要経費を求める。
仮に年に100万円を20年間受け取るとする。
合計払込保険料は1,000万円とすると計算式は以下のようになる。
その他に仮に50万円の収入があると仮定する。
つまり100万円に対して所得税がかかる。
そうすると200万円未満の所得税は税率 5%により100万円×5%=5万円の税金が毎年かかる。
契約者と受取人が同じで【一括】で受け取る場合
契約者と受取人が同じで一括で受け取る場合の計算方法は以下のとおりだ。
課税対象となるのは、この金額をさらに二分の一にした額になる。
950万円÷2=475万円=一時所得になる。
475万円(課税所得)× 20%(税率)=95万円(所得税)となる。
契約者と受取人が異なる場合
支給初年度は贈与税として計算します。
契約者と受取人が異なる場合の計算方法は以下のとおりです。
90万円×10%(税率)=9万円=贈与税となる。
個人年金保険を利用する際の注意点
無理のない保険料に設定する
個人年金保険は、老後の生活費を補てんするための保険であり、大切な資産でもある。
より多くの保険金があれば良いと考えるだろうが、長く保険料を支払い続けるものでもあるので、できるだけ中途解約は避けたい。
若い頃は大きな負担ではなくても、結婚、出産とライフステージの変化があれば、必要な資金も増えてくる。
保険料が負担に感じる時代も来るだろう。
そんな時でも解約せずに払い続けられる保険料に設定しておこう。
また低金利の今だからこそ、あまり大きな保険金を設定するのは止めておこう。
契約後金利が上昇すれば、実質的に損をすることになるかもしれない。
生命保険料控除の適用条件を確認する
先述したが、「個人年金保険料控除」の条件は以下の通りだ。
この条件に当てはまらないと、一般生命保険控除になってしまう。
他の保険にも加入している場合は、一般生命保険控除枠も利用できなくなってしまう可能性もあるので再度確認してほしい。
- 個人年金保険料控除の条件年金受取人が契約者、または契約者の配偶者となっている
- 年金受取人が被保険者と同じである
- 保険料払込期間が10年以上
- 年金の支払い開始日は、被保険者が60歳以上で10年以上の定期預金または終身年金
インフレによる損失の可能性を考慮し適切な保険金額に設定する
個人年金保険のデメリットでも記載したが、日本全体の物価が上がり、お金の価値が下がることをインフレといい、現在の日本はインフレが急激に進んでいる状態だ。
貯蓄性のある生命保険の多くは、契約時の予定利率によって総支払保険料が決まる。
この保険料は、払い込みが終わるまで変わらないため、保険加入後にインフレが進むと実質的な資産価値が目減りすることになる。
個人年金保険も例外ではなく、特に現在20代など若い方は保険料の払い込み期間が20年から30年になることが大半だ。
長期間にわたり金利が固定されるという点は、今後市場の金利が上昇しても、契約済みの個人年金保険の利率は変わらないため、大きく不利になる可能性もある。
個人年金保険の選び方を理解して最適なものを選ぼう
この記事では、個人年金保険の必要性やメリット・デメリットから年金保険の選び方などについて解説してきた。
公的年金制度の継続の不確実さや、寿命の延びなどから個人年金保険に加入する意義は大きいが、現在の金利の低さから、今加入しても定額年金ではインフレリスクが高いため大きな利益は見込めない可能性もある。
かと言って変額年金を選択すれば、大きく年金原資を増やせる可能性もあるが、逆に運用がうまくいかなければ予想していた金額よりもかなり低くなってしまう恐れもある。
また円での運用だけでなく外貨建て年金保険もあるが、海外の利率の高さの恩恵を受けられる反面、為替リスクが大きく関わってくる、円高に触れた場合は金利の高さの恩恵が無くなる可能性さえあるので、外貨変額年金は一種の資産運用だと考えるようにしたい。
年金保険は定額、変額、円建て、外貨建てと種類が多い。
本当に自分に合っている保険はどれなのかを、一人で選ぶのは難しい。
そんな時はぜひプロの力を借りるようにしてほしい。
保険選びで大切なことはあなたにとって最適な保険を見つけることだ。
そのため、保険選びに少しでも疑問や不安があれば、保険のプロに相談することをおすすめする。
専門的なアドバイスを受けることで自分に必要な保険を見つけることができるだろう。
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