- 相続税対策としての生命保険の活用方法を知りたい
- どのような生命保険を選べば効率的な相続税対策になるかわからない
- 生命保険を相続する際にかかる相続税を把握したい
被相続人の死亡時に遺族が受け取る生命保険の保険金は、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象になる場合がある。
一方、生命保険金には「非課税枠」があるため、相続税対策として生命保険の活用を考えている方も多いだろう。
しかし、制度や活用方法について詳しく理解できているだろうか。
生命保険を相続する際に発生する税金や適切な保険選びに、不安や疑問を抱いている方も多いはずだ。
そこで本記事では、相続税対策としての生命保険の活用方法や生命保険を相続する際に発生する税金、そして節税対策方法について解説していく。
これから生命保険への加入を検討している方や、既に加入している方で相続対策について考えたいという方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてほしい。
生命保険と相続税対策の関わり
生命保険を上手く活用すると、相続税の負担を軽減できる場合がある。
少しでも多くの財産を家族に残したいと考えている方にとっては、その方法が気になるところだろう。
ここでは、相続税の基本的な内容や生命保険を活用した相続の方法、相続に生命保険を利用するメリット・デメリットについて解説していく。
相続税とは何か?
相続税とは、亡くなった人から財産を引き継いだ場合に、受け取った財産に対してかかる税金のことだ。
課税されるのは現金や預貯金だけでなく、株式や債券などの有価証券、不動産、書画骨董など亡くなった人が所有していた財産が対象となる。
相続税は、相続財産の一部を税金として納めて資産を再分配することが目的とされている。
財産が大きくなるほど税額も大きくなるため、家庭の経済状況による格差を縮小させることも目的のひとつだ。
そして相続税は財産を引き継いだら必ず課税されるというわけではない。
相続した財産から借金や葬儀費用などを差し引いて残った額が、基礎控除額を上回った場合のみ税金がかかる仕組みとなっている。
従来は、相続財産が基礎控除額の範囲内に収まるケースが多く、相続をしても税金が発生しない場合が多かった。
しかし、2015年の法改正によって基礎控除額は引き下げられ、相続税が課税される範囲が広がってしまった。
現在、相続税は資産家や富裕層だけの問題ではなくなってきている。
効果的な税金対策の方法を考え、できる限り多くの財産を家族に残せるような工夫をしていくことが重要だ。
生命保険を活用した相続とは
生命保険を活用し、財産を家族に相続する方法がある。
保険の契約者(保険料負担者)と被保険者を自分、保険金の受取人を配偶者や子どもに設定するという方法だ。
例えば、Aという人物が被保険者を自分、保険金の受取人を自分の子どもに設定した生命保険を契約し、保険料を自分で支払うとする。
万が一Aが亡くなった場合、死亡保険金は子どもに支給される。
Aが保険料(自分の財産)を支払ったことで子どもが保険金(財産)を受け取ったことになるため、間接的に相続をしたことになるのだ。
中には「わざわざ生命保険を使って回りくどいことをせず、現金を相続すれば良いのに」と考える方も多いだろう。
しかし、生命保険を活用して財産を家族に残すことにはいくつかのメリットがある。
相続に生命保険を活用するメリット・デメリット
相続に生命保険を活用するメリットとしては、主に以下の3点が挙げられる。
- 死亡保険金の非課税枠を利用できる
- 財産を引き継ぐ相手を指定できる
- 納税資金にも活用できる
残された家族に死亡保険金が支給される場合、保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象となる。
しかし死亡保険金には「500万円×法定相続人の人数」で計算される非課税枠がある。
単純に相続する場合に比べ、非課税枠の分だけ税負担を軽減できる点がメリットだ。また、相続が発生すると遺産分割によるトラブルの可能性も想定される。
しかし、生命保険では保険金の受取人を指定できるため、確実に意図した相手に財産を引き継ぐことができる。
さらに死亡保険金以外にも多くの財産を所有している場合、相続税が大きな負担になるリスクがある。
死亡保険金を納税資金として活用できる点も大きな魅力だ。
一方、相続に生命保険を活用する際にはデメリットもある。
- 保険料の支払いが負担になる可能性がある
- 法定相続人以外は非課税枠が適用されない
生命保険に加入する以上、保険料を負担しなければならない。
長期間にわたって保険料を支払う場合、家計に大きな負担がかかる可能性がある点はデメリットと言える。
また、前述した死亡保険金の非課税枠は法定相続人のみに適用される仕組みである。
法定相続人以外の人が保険金を受け取る場合は、非課税枠が適用されないため注意しておこう。
これらのメリット・デメリットを踏まえた上で、相続に生命保険を活用するかどうかを見極めることが大切だ。
生命保険の相続時に発生する税金
生命保険は、受け取った保険金に対して税金がかかる。「契約者(保険料負担者)」「被保険者」「保険金受取人」の違いによって税金の種類も異なるため、事前に確認しておくことが大切だ。
ここでは、生命保険の税金について解説していく。
生命保険の保険金にかかる税金の種類
生命保険で受け取る保険金にかかる税金には、以下の3つのパターンがある。
(保険料負担者) | 契約者被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 | |
パターン① | A | A | B | 相続税 |
パターン② | A | B | C | 贈与税 |
パターン③ | A | B | A | 所得税 |
上記の中で相続税が発生するのは「パターン①」のみだ。
契約者と被保険者が同一人物で、保険金受取人を違う人物に指定しているパターンである。
例えば、親が親自身を被保険者とする生命保険の契約者となり、保険金の受取人を子どもに設定するケースがパターン①に該当する。
前述の通り、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となるため、続けて解説する計算方法を把握しておくことが重要だ。
生命保険にかかる相続税の計算方法
相続税の計算方法について、以下のパターンを例に具体的に解説していく。
- 死亡保険金額:3,000万円
- 死亡保険金以外の相続財産:7,000万円
- 法定相続人:配偶者と子ども2人の計3人
まず、死亡保険金額のうちいくらが課税対象となるのかを計算する。
前述の通り、死亡保険金は「500万円×法定相続人の人数」が非課税となるため、「500万円×3人=1,500万円」までは課税されない。
死亡保険金額から差し引いた「3,000万円−1,500万円=1,500万円」を、死亡保険金以外の相続財産と合わせて「7,000万円+1,500万円=8,500万円」となる。
そして相続財産からは基礎控除として「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」を差し引くことができる。
今回のケースでは「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となるため、課税対象となるのは「8,500万円−4,800万円=3,700万円」である。
上記の通り、相続財産が多い場合はまとまった金額が課税対象となるため、税金を抑える方法を検討しなければならない。
特に法定相続人の人数が少ない場合、死亡保険金の非課税枠や基礎控除などの額も小さくなるため、効果的な税金対策の実施が重要となる。
生命保険の相続税を抑える方法
前述の通り、相続財産が多いと課税額がまとまった金額となり、法定相続人の人数が少ない場合にはより大きな負担がかかる可能性がある。
そのため、相続税の負担を効果的に抑える方法を検討することが重要だ。
相続税の負担を抑える方法にはさまざまなものがあるが、もっともスタンダードな方法は「暦年贈与」だろう。
暦年贈与とは、年間110万円までの贈与が非課税になる仕組みを活用した贈与方法のことである。
本来、財産の贈与を行った場合は「贈与税」の対象となるが、年間110万円以下の贈与であれば非課税となる。
この仕組みを利用して生前から贈与を進めておくことで、相続時までに財産を減らして税金の負担を軽減することできるのだ。
また、暦年贈与の仕組みと生命保険の双方を活用した税負担軽減の方法もある。
親から子どもに保険料として資金の贈与を行い、子どもが親を被保険者、自分を保険金受取人に設定した保険を契約するという方法だ。
保険料負担者と保険金の受取人が同一、被保険者が別の人物となるため、上記の「パターン③」に該当する。
そして受け取る保険金にかかる税金は所得税となる。
死亡保険金が所得税の対象となる場合、税額を計算する際には払込保険料を差し引ける点が大きな特徴だ。
さらに特別控除の50万円を差し引けるほか、算出された金額の2分の1が課税対象となる。
仮に死亡保険金が3,000万円、払込保険料総額が1,000万円だった場合は「(3,000万円−1,000万円−50万円)×1/2=975万円」が課税対象となる。
相続税の場合に比べ、課税対象となる金額を抑えられる可能性があるのだ。
もちろん税額は法定相続人の人数や死亡保険金額、その他の相続財産などの状況によって異なるため、一概に暦年贈与の仕組みを生命保険に活用すべきとは言えない。
判断に迷ったら、専門家と相談しながら、生命保険をどう活用するのが効果的な税金対策となるのかを検討すると良いだろう。
生命保険と相続税の関わりを理解して自分に合った保険の見つけよう
ここまで生命保険を利用した相続の方法について解説してきたが、実際に加入する商品について悩んでいるという方も多いだろう。
自分に最適な保険商品を選んだり、相続方法を検討したりすることは容易ではない。
ここでは、自分に合った保険と相続方法を見つけるために、押さえておきたいポイントを3つご紹介する。
ぜひ参考にして最適な保険商品選びを実現させよう。
保険に加入する目的や相続を行う意図を明確にする
まず「なぜ保険に加入するのか」「生命保険を活用して相続を行う目的は何か」という点を明確にすることが大切だ。
目的がぼんやりしたままの状態で保険商品を選んでも、失敗するリスクが高いだろう。
生命保険を活用して相続を行う目的として、主に以下のようなものが挙げられる。
- 死亡保険金の非課税枠を使って税負担を軽減したい
- 特定の人物に確実に資産を残したい
- 死亡保険金を相続税の納税資金に充ててほしい
上記のパターンを3つ比べても、必要な保険金額や保障内容はそれぞれ異なる。
例えば、死亡保険金の非課税枠を活用したいと考えている場合、適当に死亡保険金額を設定するわけにはいかない。
非課税枠を計算し、最大限活用できる金額に設定する必要がある。
また、死亡保険金を納税資金に充当するパターンの場合、相続税がいくらになるのかを把握した上で必要な資金を準備しなければならない。
このように、保険加入の目的によって必要な保険金額や保障内容などは異なる。
具体的な保険選びを始める前に、まずは保険に加入する目的や相続に生命保険を活用する意図などを明確にしておこう。
自分や家族のライフスタイル・収入を確認する
自分や家族のライフスタイルや収入に合わせた保険を選ぶことは極めて重要だ。
今後のライフプランや収入の見通しなども含め、どういった保険プランを設計するべきかじっくり検討しよう。
例えば、老後に海外旅行に行ったり、趣味にお金をかけたりすることを希望している場合、保険料を高く設定し過ぎると資産が不足する可能性がある。
相続対策のために希望のライフプランを実現できなくなってしまっては、本末転倒だろう。
また、収入の見通しや資産状況に合わせて保険料の払込方法を考える必要もある。
相続には終身保険が活用されるケースが多い。
例えば一生涯かけて保険料を支払っていく「終身払い」は、月々の保険料が安い反面、老後を迎えて収入が減っても保険料を負担し続けなければならない。
一方、契約時にすべての保険料を支払う「一時払い」はすぐに払込が完了するメリットがあるが、まとまった資産の準備が必要になる。
このように、保険の内容や保険料の負担方法などは、自分と家族のライフスタイルや収入によって適性が大きく異なる。
あなたに合ったものを選ぶためにも、ライフスタイル・収入の見通しなどを明確にしておこう。
複数の商品や相続方法を比較・検討する
生命保険を活用した相続を検討する際には、複数の商品や相続方法を比較・検討することが重要だ。
さまざまなプランを徹底的に比較し、自分のニーズに合った相続プランを選択しよう。
同じ生命保険であっても、各保険会社で提供している商品の内容はそれぞれ異なる。
保険金額や保険料払込期間、保険料などを比較し、もっとも有利な保険商品を選ぶことが大切だ。
また、相続税対策は生命保険を活用する方法だけではない。
現金による生前贈与や不動産の活用、子どもや孫への住宅取得資金の贈与など、さまざまな方法が選択肢として挙げられる。
例えば、自分の子どもや孫が住宅の購入を検討している場合、生命保険による相続よりも住宅取得資金の贈与の方がメリットが大きい。
また、現金で贈与をしてもらった方が受け取る側にとって使い勝手が良いというケースもあるだろう。
生命保険による相続に固執せず、家族でしっかりと話し合った上で相続方法を検討していくことが大切だ。
場合によっては専門家の力を借りつつ、最適な相続プランを設計していこう。
相続税節税対策に生命保険を活用しよう
本記事では、生命保険を活用した相続方法や相続時に発生する相続税について解説した。
また、相続税を抑える方法、自分に適した保険や法族方法の選び方など保険選びに役立つ情報も紹介した。
しかし、税制上のメリットを最大限引き出すためには、生命保険の種類や加入時期、受取人の設定など多くの事項を考慮する必要がある。
また、これらの事項は個々のライフステージや金融状況により大きく異なるため、自分一人で適切な保険商品を選び出すのは難しいと感じる方もいるだろう。
そのため、判断に迷った際には積極的に専門家に相談することをおすすめする。
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