- 医療保険に加入するのがもったいないと言われる理由が知りたい
- 医療保険に加入しないことのリスクや加入すべき人の特徴がわからない
- 自分に最適な医療保険の選び方が知りたい
日本では、国民の7割以上が医療保険に加入している。
しかし、実は日本の公的医療保険はとても充実している。
そのため、医療保険の必要性について疑問に感じている方も多いのではないだろうか。
そこで本記事では、医療保険の必要性について解説を行う。医療保険に加入すべきか悩んでいるという方には、ぜひ参考にしてほしい。
なぜ医療保険がもったいないと言われるのか
医療保険は病気や怪我など万が一に備えて加入するものだ。
ただ、入るのがもったいないと聞いたことがある人もいるだろう。一体なぜこのような声が出てくるのだろうか。
そこで本章では、医療保険がもったいないと言われる理由について解説を行う。
高額療養費制度があるから
最初に考えられるのが、日本では公的医療保険制度が充実しているので民間の医療保険の必要性が薄い、という理由だ。
中でも、高額療養費制度が根拠とされることが多い。
高額療養費制度は、所得や年齢ごとに1ヶ月の自己負担限度額が決められ、超過した分の費用が支給される。
また、直近12ヶ月で3回以上療養費が支給されている場合は多数回該当となり、4回目以降の自己負担限度額が下げられる。
高額療養費の自己負担限度額について、以下の表にまとめた。
70歳未満
年収の額 | (1ヶ月ごと) | 医療費の自己負担限度額多数回該当時の自己負担限度額 |
1,160万円超 | 25万2,600円+(1ヶ月にかかった医療費−84万2,000円)×1% | 14万100円 |
770万円〜1,160万円 | 16万7,400円+(1ヶ月にかかった医療費−55万8,000円)×1% | 93,000円 |
370万円〜770万円 | 80,100円+(1ヶ月にかかった医療費−26万7,000円)×1% | 44,400円 |
156万円〜370万円 | 57,600円 | 44,400円 |
156万円未満 (住民税非課税世帯) | 35,400円 | 24,600円 |
70歳以上
年収の額 | 医療費の自己負担限度額(1ヶ月ごと) | 多数回該当時の自己負担限度額 |
370万円〜1,160万円超 | 〜69歳までと同額 | 〜69歳までと同額 |
156万円〜370万円 | 57,600円、通院のみの場合は18,000円 | 44,400円 |
156万円未満 (住民税非課税世帯) | 8,000円 | 適用なし |
高額療養費制度があるので、わざわざ医療保険に入る意味はないという人も多い。
ただ、高額療養費制度にも欠点は存在する。
まず、高額療養費の計算は病院ごとに行われる。
70歳未満の方は、21,000円を超えないと医療費の合算ができない。
例えば、30歳で年収300万円の人がA・B・C病院でそれぞれ20,000円の医療費を支払ったとする。
この場合の1ヶ月の医療費合計は60,000円で、上限額の57,600円を超えているが、超過した2,400円は支給されない。
複数の病院に通っている人は注意しよう。
また、超過分の費用は後日支給になるため、立て替えが必要だ。
ただ、限度額適用認定証もしくはマイナンバー保険証があれば、支払費用を上限額までに抑えられる。
高額な費用の立て替えが難しい場合は、事前に用意しておくと良いだろう。
さらに、高額療養費制度には対象外の費用が存在する。
入院時に個室を利用する時の差額ベッド代や、高度な技術を必要とする先進医療費などが代表例だ。
対象外費用は全額自己負担となるが、民間の医療保険で補うことができる。
特に先進医療は高額になるケースも多いが、特約を付加することでほぼ全ての医療保険で賄うことができる。
ただ、上限額が設定されている点には注意が必要だ。
傷病手当金があるから
公的医療保険には傷病手当金という制度もある。ケガや病気で働けなくなった期間の収入を補填する制度であり、民間の医療保険の代わりになるという人もいる。
傷病手当金を受け取るには、以下の4つの条件を満たす必要がある。
- 業務外の事由による病気やケガの療養で休業している(労災と同時利用は不可)
- 療養担当者に仕事ができない状態であると診断されている
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事を休業している
- 休業期間中に給与の支払いがないか、手当金よりも少ない額しかもらっていない
上記全てに該当すれば1年6ヶ月にわたって手当金が支払われる。
ただし、途中で数日間出勤した場合、その日数は支払期間に含まれない。
また、途中で退職した場合は退職日翌日に資格が消滅する。
このように、「仕事ができない状態」である限り支給は続くが、「仕事ができる状態」と診断された時点で支給は終了する。
その後、できない状態に戻っても再支給はされないので注意が必要だ。
1日あたりの傷病手当金の金額は以下の計算式で求められる。
標準報酬月額とは、企業から支払われる給与などの報酬月額を第1級(58,000円)から第50級(139万円)までに分けて区分したものだ。
また、入社後12ヶ月以内に傷病手当金を受給する場合、それまでの標準報酬月額の平均と30万円を比べて低い方で計算される。
傷病手当金は生活保障に役立つ制度だが、国民健康保険の加入者は利用できない。
国民健康保険は、自営業や非正規雇用者などが加入する公的医療保険だ。
そのため、特にこれらの人は民間の医療保険の必要性が高いと言える。
入院日数が短くなっているから
近年入院日数が短縮傾向にあることから、医療保険の必要性が薄いと言う人もいる。
確かに入院日数は年々減少傾向にある。厚生労働省の調査によると、平成11年から令和2年にかけて平均入院日数が41. 8日→32. 3日と約10日間も減少している。
ただ、疾病ごとに見れば長期入院が必要になるものもある。主な疾病の入院日数は以下の通りだ。
結核 | がん | 脳血管の疾患 | 慢性腎臓病 | 肺炎 | 骨折 |
59.5日 | 18.2日 | 77.4日 | 53.4日 | 38.0日 | 38.5日 |
2ヶ月以上入院が必要な疾病も多いが、大半は民間の医療保険で入院費用を賄うことができる。
特に、がんや脳血管の疾患については、心筋梗塞と合わせ「3大疾病」として手厚い保障の対象となる場合が多い。
また、入院を伴わない手術や日帰りの入院にも費用が支給される医療保険も増えている。
入院だけでなく、通院や手術などの医療保障を備える際にも医療保険の重要性は高いと言えるのだ。
医療保険に入らないリスクとは
ここまでの説明で、民間の医療保険に加入する必要性が理解できたと思う。
ただ、中にはまだ加入すべきか決めきれない人もいるだろう。
そこで本章では、医療保険に入らないことで起こるリスクや加入すべき人の特徴を解説する。
医療保険に加入しないリスク
医療保険に加入しないリスクとしては、「選択できる医療の幅が狭まる」「将来入りたい医療保険に加入できない場合がある」という点が考えられる。
前述したように、先進医療を受ける費用を公的医療保険で賄うことはできないため、全額自己負担となる。
しかし、先進医療は高額になりやすく、医療保険に入っていないと費用が払えないという可能性もあるだろう。
また、がんなどの一部の疾病は治療が長期化しやすい。
毎年高額な医療費がかかり、貯金が減ってきて治療に必要な費用が用意できなくなることも考えられる。
さらに医療保険に入りたいと後から思っても入れない場合がある、という点も意識しておくべきだ。
持病や既往歴がある場合、医療保険への加入を断られたり、加入できても保険料が割高になりやすい。
健康状態が悪い人は入院するリスクが高く、その分給付金を支払う可能性も上がるため、加入条件が厳しくなるのだ。
年齢を重ね、病気になってから医療保険に入ろうとしても上手くいかない場合が多い。そのため、医療保険は早いうちから加入を検討すると良いだろう。
医療保険に加入すべき人とは
上記リスクを踏まえ、医療保険へ加入すべき人の特徴としては「貯蓄が十分でない人」「備えたい疾病が明確な人」が挙げられる。
貯蓄が十分に蓄えられていない状態で長期入院することになると、途中で費用が足りなくなる場合がある。
生命保険文化センターの調査によれば、2022年の入院時自己負担費用の平均額は、1回の入院につき19万8,000円、1日の平均額は2万7,000円になる。
これには精神疾患による入院なども含まれている。
仮に入院が3ヶ月続いたと考えれば、2万7,000円×90日=243万円が必要になる計算だ。
上記のように、入院時にかかる費用は高額になりやすいため、医療保険で保障を備えておくべきと言えるだろう。
また、同じ医療保険でも、会社ごとに提供している保障内容は異なる。
例えば、がん保険と一口に言っても、保障内容は様々だ。
診断時の給付金の額が多いものや抗がん剤や放射線治療などのがん特有の治療保障が手厚いものまで、保障される範囲が幅広い。
備えたい疾病が明確であれば、複数の選択肢から自分に合う医療保険を選ぶことができると言える。
さらに、前述の通り、若くて健康状態が良い人ほど医療保険の加入条件も良くなる。
早い段階で加入すれば、保険料を抑えることができるため、お得になると言える。
保険料を抑えるには
医療保険へ加入する際、出来る限り費用を抑えたいというのは誰しも考えることだろう。
医療保険の費用を抑えるには、「保険料払込期間を検討する」「支払限度日数を短くする」といった方法がある。
保険料払込期間とは、終身医療保険の保険料をいつまで支払うかを表したものだ。
短期払いと終身払いの2種類が存在し、決められた期間(60歳・65歳など)までの支払いか、もしくは保険期間が終わるまでの支払いかに違いがある。
保険料の支払期間が長ければ、1回に払う保険料は短期払いよりも少なくなる。
ただし、加入期間によっては支払う保険料の合計額が短期払いより多くなる。
今支払う費用を抑えたい場合は終身払いを、長期的に加入し続けると考える場合は短期払いを選択することで、保険料を抑えることができる。
また、支払限度日数を短くすることも大切だ。支払限度日数とは、入院時に支払われる給付金が最大何日間支給されるのかを定めたものである。
医療保険の支払限度日数は、30日〜180日の間で設定されることが多い。
支払限度日数が長くなればなるほど、月々の保険料は上昇する。
そのため、短めに設定することで保険料を抑えることができる。
ただ、短くしすぎると入院が長期化した時の費用が賄えなくなる可能性もあるため、保険料とのバランスを考えるようにしよう。
自分に適した医療保険の選び方
前章の説明で、医療保険に加入することを決めた人もいるはずだ。
加入する際は、自分に合った医療保険を選び取ることが重要になる。
そこで最後の章では、自分に適した医療保険の選び方を解説する。
将来を見据えて保障内容を選ぶ
自分の将来に必要な保障内容が何かを考えることで医療保険を選びやすくなるだろう。
例えば、結婚を控えているのであれば守るべき家族が増えるため、保険料の安さよりも保障内容の充実度を優先すべきだ。
子どもができた場合はさらに必要な保障金額が増えるため、新たに医療保険に加入することも検討する必要がある。
また、女性であれば妊娠・出産に備えて女性特有の疾患への保障が手厚い女性保険を優先して選ぶべきと言える。
医療保険を選び始める前に、将来必要な保障内容が何かを把握しておくと、保険探しがスムーズに進むだろう。
保険料と保障内容のバランスを見極める
医療保険で様々な疾病に備えたい、と考えるのは良いが、保障内容の広げすぎには注意が必要だ。
保障内容を増やせば、その分必要な保険料も上昇する。
保険料が高すぎて家計に負担がかかる、という事態は防がなくてはならない。
例えば、ライフネット生命の終身医療保険「じぶんへの保険3 レディース」の保険料について考えてみよう。
30歳女性が「エコノミーコース」に加入する場合、月々の保険料は2,021円だ。
一方、がんや先進医療への保障も付いた「おすすめコース」に加入する場合は保険料が3,446円に上がる。
さらに、入院給付金を日額5,000円から10,000円にした場合、保険料は6,811円となり当初の3倍以上の金額になる。
対象となる疾病を広げたり、入院時の給付金の金額を上げると保険料が急激に上昇することがある。
保険料と保障内容のバランスに注意しながら、医療保険を選ぶべきだろう。
他の制度と組み合わせて必要な保障金額を設定する
医療保険を選ぶ際には、公的医療保険制度と併用することを前提にすべきと言える。
高額療養費や傷病手当金の金額を元に、保障金額を考えると良い。
70歳未満で年収480万円、月収40万円で東京在住の方が2ヶ月間(60日間)入院した場合を考えてみよう。医療費が1ヶ月50万円、先進医療費が300万円必要になったと仮定する。
まず、高額療養費制度により1ヶ月の医療費限度額は80,100円+(50万円−26万7,000円)×1%=82,430円となり、16万4,860円が2ヶ月分の限度額となる。
また、先進医療は高額療養費制度の対象外になるため、300万円は自己負担となる。
40万円で東京在住の場合、標準報酬月額は41万円となる。
ここから入院日数に応じた費用が支給されるが、先進医療費を支払い切れる額は受け取れない可能性が高い。
上記の不足分を補うのに医療保険が役に立つというわけだ。
先進医療特約が付いた医療保険に加入していれば、先進医療費は基本全額支給となる。
また、入院給付金の日額を5,000円・支払限度日数を60日にしておけば、5,000円×60日=30万円が支給される。
自己負担費となる16万4,860円も余裕を持って支払える金額と言えるだろう。
自分に適した医療保険を選ぶには、事前の計算が重要になる。自分に最適な医療保険に加入できれば、もったいないと思うことはないはずだ。
本記事を参考に、必要な保障内容や適切な保険料について考えてみてほしい。
医療保険がもったいないと言われる理由を押さえて自分に最適な保険選びを
本記事では、「医療保険に加入することはもったいないのか?」という疑問について解説を行った。
日本では公的医療保険が充実しており、民間の医療保険に入ることがもったいないと言われることもある。
しかし、公的医療保険で賄いきれない部分もあり、そこを医療保険で補う必要があるのだ。
また、医療保険に加入していないと貯蓄が不足した際に医療が受けられないリスクがある。
できるだけ若いうちから加入しておくことで、保険料が安くなったり選べる保険の種類が増えるため、早めに検討するべきだ。
また、複数の保険を比較することで自分に必要な医療保険がわかり、自身や家族の生活保障を適切に備えることができる。
将来必要な保障内容や保障金額をもとに、自分に適した医療保険を選ぶようにしよう。
しかし、将来のことは不確定な上に、保険には数多くの商品が存在する。自分一人で医療保険を選べるか不安な時は、保険のプロに相談してほしい。
また、全国の保険のプロから自分に合った担当者を探す際には「生命保険ナビ」の活用をおすすめする。
「生命保険ナビ」は、自身の条件に合った保険のプロを簡単に見つけることができるマッチングサービスである。
気になった担当者とは無料相談もできるので、ぜひ活用してほしい。