- 生命保険の契約者と支払者が違う場合のメリットデメリットを理解したい
- 契約者と支払者が違う場合に保険金にかかる税金の取り扱いがわからない
- 生命保険の契約者と支払者が違う場合に注意すべき点を把握したい
生命保険に加入する際、契約者と保険料の支払者が異なる場合もあるだろう。
では、契約者と支払者が異なることのメリット・デメリットは何なのだろうか。
また、この場合保険金に対する税金の取り扱いはどうなるのだろうか。
本記事では、生命保険の契約者と支払者が異なるケースについて、メリット・デメリットや注意点、課税関係を詳しく解説する。
現在生命保険への加入を検討しているという方にはぜひ参考にしてほしい。
生命保険の契約者と支払者が違う場合のメリット・デメリット
生命保険の契約を行う際、一般的に契約者と保険料の負担者は同一となる。
しかし、契約者に保険料の支払い能力がない場合は、別の人が保険料の支払いを負担することも認められている。
生命保険の契約者と支払者が異なる場合、いくつかのメリット・デメリットが考えられる。
具体的なケースおよびメリット・デメリットについて解説していく。
生命保険の契約者と支払者が違う場合とは
収入がある人が生命保険を契約する場合、契約者や被保険者、保険料の支払者はすべて自分であるのが一般的だ。
これに対して、収入のない専業主婦などを契約者として保険を契約する場合、実際保険料の支払いは夫とするケースがある。
このように、保険の契約している人と実際の保険料の負担者が異なる保険を「名義保険」と呼ぶこともある。
貯蓄性のある生命保険の場合、満期に到達すると「満期保険金」、被保険者の死亡時には「死亡保険金」、解約時には「解約返戻金」が受け取れる。
ここで重要になるのが、受け取ったお金に対して支払うべき税金だ。
一般的に、資産を他者から相続した場合は相続税、資産を他者から贈与された場合は贈与税、自分の資産を得た場合は所得税や住民税が課せられる場合がある。
生命保険においても同様で、契約者と保険料の支払者が異なる場合も、誰から誰に資産が移動しているかどうかが重要となる。
契約者と支払者が同一の場合は以下の通りだが、契約者と実際の保険料負担者が異なる場合、課税関係が変わることがあるので注意しよう。
パターン | 対象となる税金 | 考え方 |
契約者=被保険者 | 相続税 | 自分でお金を支払って家族のためにお金を相続させるため「相続税」がかかる |
契約者=受取人 | 所得税 | 自分でお金を支払って保険金(収益)を受け取るため「所得税」がかかる |
契約者≠被保険者≠受取人 | 贈与税 | 自分でお金を支払い、他者を対象として保険を契約し、さらに別の人が受け取るため「贈与税」がかかる |
違う場合のメリット
保険の契約者と支払者が違うと、収入がない人の名前で保険を契約できるというメリットがある。
例えば、収入のない専業主婦の妻や子供が契約者となって、働いている夫(父親)が支払いを負担するというイメージだ。
妻や子供の名前で保険に加入したいが支払能力がない、という場合に、代わりに保険料を支払うことができる。
契約者が妻や子供だと割引が適用されるが、夫の収入から支払いたいといったケースなども当てはまる。
また、毎月の支払い口座を統一して、家計の管理をしやすくすることも可能だ。
契約者それぞれが支払いを行うよりも、毎月・毎年どのくらい保険料を支払っているかがわかりやすくなる。
違う場合のデメリット
生命保険の契約者と支払者が異なる場合、課税関係が複雑になったり、保険の管理が面倒になったりするリスクがある。
相続や贈与においては、保険料を実際に負担している人が税務上の契約者としてみなされるため、想定していた税金と実際に収めるべき税金が変わってくるといった可能性もある。
例えば、妻の名義で保険契約を行っているが、夫の名義の銀行口座から保険料を引き落としている場合、名義保険として実質的には保険契約そのものが夫の資産であるとみなされる。
この場合、生命保険が満期を迎えて満期保険金を受け取る際に、「自分の契約から発生した満期保険金だから所得税の対象」だと考えていても、実際には「夫から妻への贈与があった」とみなされて贈与税の対象となる。
保険契約に関する人が増えるほど、課税関係が複雑になる点はデメリットだといえるだろう。
生命保険の契約者と支払い者が違う場合の注意点
生命保険の契約者と支払者が異なる場合、いくつか注意したいことがある。
特に、相続税が発生するケースや、所得税・住民税が発生するケースについては注意が必要だ。
代表的なケースと注意点についてそれぞれ確認していこう。
相続税に関する注意点
相続において、保険の契約者と支払者が異なる代表的な例は以下の2つのパターンだ。
以下のパターンは、いずれも引き落とし先が契約者以外の口座であるといったように、直接契約者以外の人物が保険料を負担していたケースとなる。
パターン1
保険料負担者 | 被相続人 |
契約者(受取人) | 相続人 |
被保険者 | 被相続人 |
これは、妻が名義人として夫を被保険者とする保険に加入したケースだ。
実際にお金を支払っていたのが夫である場合、死亡保険金は相続財産としてみなされるため、相続税の対象となる。
なお、生命保険の死亡保険金には非課税枠が設けられており、500万円×法定相続人の人数までは非課税で相続できる。
上記のケースにもこの非課税枠が適用されるため、死亡保険金が500万円以内であれば税金はかからない。
また、このパターンは相続税上のみなし相続財産に該当するため、相続人である妻の固有財産とみなされ、遺産分割の対象とはならない。
パターン2
保険料負担者 | 被相続人 |
契約者(受取人) | 相続人 |
被保険者 | 相続人 |
このパターンは、保険の名義人が妻で被保険者も妻である保険を契約しているパターンだ。
表面上は被相続人である夫が出てこないが、やはりお金を負担していた夫の実質的な財産だとみなされるため、夫の死亡時には財産の相続が発生する。
具体的には、相続開始時点の解約返戻金額相当額をみなし相続財産として相続財産に計上する。
さらに、このパターンの契約もみなし相続財産に当てはまるため、相続人である妻の固有財産とみなされ、遺産分割の対象とはならない。
所得税・住民税に関する注意点
生命保険の保険料を他者が負担していても、税務上の契約者を本人にしていれば、相続税や贈与税ではなく所得税・住民税が課せられるケースもある。
このときの生命保険の契約は下記の通りとなる。
保険料負担者 | 相続人(妻) (夫から妻に贈与した資金で保険料を支払う) |
契約者 (受取人) | 相続人(妻) |
被保険者 | 被相続人(夫) |
保険料の負担者および受取人が同一になるため、死亡保険金が支払われた場合も他者間での資金の移動はないものとみなされるため、一時所得として所得税や住民税の対象となる。
ここでポイントは、保険料の支払いは夫から妻へ贈与した資金で行うということだ。
通常、夫から妻へ贈与する場合は贈与税が課せられる。
しかし、贈与税には基礎控除110万円が設けられているため、年間110万円の範囲で贈与を行えば、贈与税は非課税となる。
夫から妻に保険料相当額の資金を振り込み、妻の口座から引き落としを行うという手間はかかるが、一度妻の資金にすることで贈与税ではなく所得税の対象となる。
契約者の違いを有利に働かせる方法
生命保険の税金について考える際は、「誰から誰に資金が移動したか」を考える必要がある。
実際の保険料を負担しているの誰か、誰が保険金を受け取ったかによって、かかってくる税金が変わる。
どのように契約すれば税務面で有利になるかは、資産状況などによって変わってくるため、一概に言えない。
例えば、生命保険の死亡保険金には法定相続人×500万円の非課税枠が設けられているが、500万円を超えた部分には相続税が発生する。
相続税の税率は、相続した資産の総額によって異なり、最大で55%となる。
預金や不動産などの他の資産が大きい場合は、相続税率も上がりやすいため注意しよう。
これに対して、一時所得によって発生する所得税や住民税は、所得を得た人の収入によって税率が変わる。
所得が少ない人が保険金を受け取ることを想定しているのなら、相続税よりも所得税・住民税が課された方が有利になりやすい。
ただし、保険金が一時所得としてみなされるためには、実際の保険料負担者が本人であると税務的に認められるのが重要だ。
夫が妻の保険料を負担する場合は、夫から妻の口座に資金を送り、その資金で妻が保険料を支払うという手順を取る必要がある。
この方法は生命保険を利用した節税対策として知られているが、親が子供の保険の保険料を負担する際は注意が必要だ。
子供が自分の通帳やキャッシュカードを管理して、自分の意思によって保険料を支払っているという実態が確認できないと、結局は親の名義保険だとみなされて相続税や贈与税がかかるため気をつけよう。
自分に適した契約方法をみつける方法
契約者と支払者が異なる場合、さまざまなメリット・デメリットや注意点がある。
特に、税金の問題は複雑で、適当に契約や支払いを進めると、思わぬ税金が発生するかもしれない。
そうならないためには、自分に適した保険の契約内容や契約方法を把握し、十分理解した上で保険に加入するのが重要だ。
以下では、自分に適した保険の契約方法を把握するポイントについて解説する。
保険に加入する目的を明確にする
まずは、保険に加入する目的を明らかにしよう。
「誰の死亡に備えたいのか」「万が一の際に誰に資金を残したいのか」「保険に貯蓄機能を求めるのか」といったことから考えていくと、保険において重視するポイントが決まりやすい。
生命保険と一口にいっても下記のようにその種類は様々なので、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解した上で、自分に求める保障を選ぶのが良いだろう。
種類 | 内容 | 保険商品の例 |
死亡保険 | 万が一の死亡に備える保険 | 定期保険、収入保障保険、終身保険 |
医療保険 | 病気や怪我による入院・手術に備える保険 | 医療保険、がん保険、特定疾病保険 |
介護保険 | 要介護状態に備える保険 | 介護保険、身体障害保障保険、就業不能保険 |
生存保険 | 将来への貯蓄に備える保険 | 個人年金保険、学資保険 |
例えば、世帯主である夫に万が一のことがあった場合に備えたいなら、定期保険や終身保険などの死亡保険に入るのが良いだろう。
一般的には、契約者および保険料の支払者、被保険者はすべて夫となるが、妻を契約者にすると保険料の割引が受けられる場合などは、妻を契約者としつつ夫が保険料を負担するという方法もある。
また、次の世代に向けてお金を賢く残したい場合にも、生命保険は活用できる。
例えば、孫の名義で貯蓄性のある保険に加入し、贈与税の基礎控除年間110万円の範囲内になるように保険料を設定し、毎年保険料分のお金を贈与するという方法だ。
贈与した時点でお金は孫のものとなるため、そこから保険料を支払うことで満期に得られる保険金も孫のものとして一時所得の対象となる。
相続税や贈与税が高額になる場合も、うまく贈与税の基礎控除と貯蓄型の保険を活用することで、税制上有利になるケースがある。
ライフスタイルや収入を確認する
ライフスタイルや収入に合わせて保険を契約するのも大事だ。
保険料を代わりに負担するとはいえ、保険料の支出が大きすぎると家計を圧迫してしまう可能性がある。
また、別の契約者の保険料を負担している場合も生命保険料控除が適用されるが、生命保険料控除は年間の限度額が下記のように決まっている。
控除の種類 | 所得税の限度額 | 住民税の限度額 |
一般生命保険料控除 | 40,000円 | 28,000円 |
介護医療保険料控除 | 40,000円 | 28,000円 |
個人年金保険料控除 | 40,000円 | 28,000円 |
一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除は併用可能だが、最大控除額は所得税で12万円、住民税で7万円となっている。
これを超えると、せっかく保険料を支払っているにもかかわらず控除できない部分がでてきてしまうため注意しよう。
生命保険文化センターの調査によると、世帯年収別の年間保険料は下記の通りとなっている。
世帯年収 | (全生保) | 平均年間払込保険料
200万円未満 | 20.5万円 |
200〜300万円未満 | 28.0万円 |
300〜400万円未満 | 31.5万円 |
400〜500万円未満 | 30.6万円 |
500〜600万円未満 | 31.9万円 |
600〜700万円未満 | 32.9万円 |
700〜1,000万円未満 | 43.4万円 |
1,000万円以上 | 57.9万円 |
全体 | 37.1万円 |
全体の平均は37.1万円となっており、月額にすると約3万円となる。
もちろん、これはあくまでも平均金額であり、適切な保険料の金額は家族の人数や年齢、資産額などによって異なるため、参考までにチェックしておこう。
多くの商品やプランを比較検討する
加入したい保険の種類や目安となる保険料・保険金額が決まったら、多くの保険会社の商品やプラン、特約などを比較しよう。
A社の方が割安な保険料だと感じても、特約やオプションなどを加味するとB社の方が充実している、というケースも多い。
保険料の支出をなるべく抑えつつ、自分の求める保障をカバーするためには、一社だけではなく様々な会社の商品・プランを比べることが重要だ。
ただし、保険会社や保険商品の数は非常に多いため、自分1人でいくつものパンフレットを取り寄せたり、営業員の話を聞いたりするのは大変だと感じるかもしれない。
そのような場合は、保険のプロに相談して自分に適した保険商品やプランを提案してもらうのもおすすめだ。
客観的な立場でアドバイスをもらえ、保険の専門家として税金などについての相談にも乗ってくれる。
「生命保険ナビ」を利用すれば、自分に適した保険のプロを検索・相談できるため、安心して保険について考えることができる。
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生命保険の契約者と支払者が違うと課税関係は複雑になる
この記事では、生命保険の契約者と支払者が異なる場合のメリットデメリットや税金に関する問題について解説した。
契約者と支払者が異なる場合にはメリットもデメリットもあるため、自分に適した契約方法や保険プランを把握する必要がある。
しかし、保険と税金の関係は複雑であり、理解が難しい。
誤った理解は、思わぬ税金の支払いにつながるため慎重に考える必要がある。
また、保険には数多くの商品が存在するため、自分に適した商品を見つけ出すこともまた難しいだろう。
そのため、保険を検討した際には専門家に相談することをおすすめする。
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