- なぜ高齢者に医療保険が必要がないと言われているのかわからない
- 民間の医療保険に加入するべき高齢者の特徴が知りたい
- 高齢者が民間の医療保険を選ぶ際に重視すべきポイントが知りたい
日本では少子高齢化が進み、またコロナ禍を経て家庭にかかる医療費は加速度的に上昇している。
このような背景から、医療保険への加入を検討する人が増えてきている。
ただ、高齢者に関しては医療保険がいらないという声を聞いたことがある人も多いだろう。
果たしてこれは本当のことなのだろうか。
そこで本記事では、高齢者に医療保険が不要と言われる理由や民間の医療保険が必要な高齢者の特徴、さらに保険を選ぶ際に重視すべきポイントについて解説する。
高齢者に医療保険が必要なのか知っておきたいという方は、ぜひ参考にしてほしい。
なぜ高齢者に民間の医療保険が不要と言われるのか
「高齢者に医療保険は不要」
こういう声を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。
ここでは、高齢者に医療保険が不要といわれる理由を次の3つに分けて解説する。
- 公的医療保険制度が充実しているため
- 年齢とともに保険料が上昇するため
- 健康状態に自信のある高齢者の方がが多いため
医療保険への加入を考えている高齢者の方は、ぜひ参考にして欲しい。
公的医療保険制度が充実しているため
高齢者に医療保険が不要といわれる大きな理由は、公的医療保険制度が充実しているためだ。
ご存知のとおり、日本では国民全員の公的健康保険加入が義務化されている。もちろん、高齢者も例外ではない。
公的健康保険によって、医療費の自己負担割合は3割まで減額されるが、高齢者は年齢と所得区分によって、さらに次のとおり自己負担割合が軽減されている。
年齢 | 所得区分 | 自己負担割合 |
70歳から74歳まで | 一般所得者等 | 2割 |
現役並み所得者 | 3割 | |
75歳以上 | 一般所得者等 | 1割 |
一定以上所得者 | 2割 | |
現役並み所得者 | 3割 |
また、入院などによって医療費が高額となった場合でも、高額療養費制度によって、70歳以上の一般的な所得者(年収156万円〜約370万円)は、医療費負担の上限が月額18,000円に抑えられる。
このように、日本は公的医療保険制度が充実しており、特に高齢者は医療費の負担が少ないため「医療保険が不要」といわれているのだ。
年齢とともに保険料が上昇するため
高齢者に医療保険が不要といわれる2つめの理由は、年齢とともに保険料が上昇するからだ。
次の表は、ある医療保険の保険料を年齢ごとにまとめたものだ。
男女ともに60歳から保険料が大幅に上がっているのが分かるだろう。
特に80歳の保険料は、男女ともに40歳の保険料に比べて4倍程度になっている。
年齢 | 男性 | 女性 |
30歳 | 1,295円 | 1,380円 |
40歳 | 1,880円 | 1,620円 |
50歳 | 2,820円 | 2,205円 |
60歳 | 4,275円 | 3,160円 |
70歳 | 6,380円 | 4,670円 |
80歳 | 8,425円 | 6,230円 |
参考:メットライフ生命「保険料シミュレーション・お見積り」
日本では、公的医療保険制度によって高齢者になるほど医療費負担が軽くなるため、高額な民間の医療保険は不要というわけだ。
健康状態に自信のある高齢者の方が多いため
健康状態に自信のある高齢者が多いことも、高齢者に医療保険が不要といわれる理由の一つだ。
内閣府が発表した「平成30年高齢者白書」高齢化の状況によると、現在の健康状態を「良い」と考えている高齢者(65歳以上)の割合は約51.6%、つまり半数以上の方が自分の健康状態に自信を持っている。
年齢ごとの健康状態を「良い」と答えている方の割合は次のとおりである。
年齢 | 健康状態を「良い」と答えた方の割合 |
55歳〜59歳 | 53.6% |
60歳〜64歳 | 53.3% |
65歳〜69歳 | 54.4% |
70歳〜74歳 | 51.3% |
75歳〜79歳 | 51.0% |
80歳以上 | 49.5% |
この中で特筆すべきなのは、80歳以上の方のうち、49.5%が健康状態を「良い」と答えていることだ。
一般的にいって、高齢になるほど医療費への備えがあった方が良いのは事実である。
しかし、公的健康保険制度の充実ぶりを考えると、健康状態が良いのであれば、医療保険の必要性は決して高くないといえるだろう。
民間の医療保険が必要な高齢者の特徴とは
ここまで、高齢者に医療保険は不要という話をしてきたが、それでも民間の医療保険が必要な方は多く存在する。
一体、どんな人に民間の医療保険が必要なのか、特徴をみてみよう。
年金の受給金額に不安がある方
高齢者のうち、年金受給額に不安がある方は、民間の医療保険が必要となる。
例えば、国民年金だけを受給する方の場合、令和5年の国民年金は満額で年間795,000円、月額に換算すると、66,250円だ(67歳以下の場合)。
また、厚生年金を含めた場合でも、65歳以上の年金受給者のうち、半数弱の方の年金額が月額10万円以下となっている。
家族構成にもよるが、年金受給額を考えると、入院など医療費の捻出に不安を感じる方も多いだろう。
このような場合は、民間の医療保険が必要となる可能性が高い。
ただし、高齢者の場合、保険料は高額になりやすいため、あくまでも無理のない範囲で加入することが必要だ。医療保険加入で生活に支障をきたすのでは本末転倒である。
貯蓄額が少ない
高齢者のうち、貯蓄額が少ない方も民間の医療保険に加入した方がよいだろう。
すでに紹介したとおり、日本は公的医療保険制度が充実しているため、特に高齢者の場合は医療費負担が高額になりにくい。
ただし、高額療養費制度は月ごとの計算となるため、長期入院の場合は一定の医療費負担が必要となる。
例えば、70歳以上の一般的な所得者(年収156万円〜約370万円)の場合、高額療養費制度を利用した場合の医療費負担上限は月額18,000円であるが、仮に治療に1年間を要した場合は、216,000円の負担になる。
また、治療内容によっては自由診療の扱いとなり、全額が自己負担となる点も注意が必要だ。
このため、現在の貯蓄額で長期間の医療費負担が難しいようであれば、医療保険への加入を検討するのもよいだろう。
長期入院時に備えたい方
長期入院に備えたい方も、民間の医療保険への加入が必要となるだろう。
病気やケガの入院日数は、高齢になるほど長くなり、医療費も高額になる傾向があるためだ。
厚生労働省が発表した「平成29年患者調査」によると、平均入院日数は年齢とともに増加し、75歳以上の方の平均入院日数は43.6日にも及ぶ。
年齢別平均入院日数
年齢 | 0〜14歳 | 15〜34歳 | 35〜64歳 | 65歳以上 | 75歳以上 | 全年齢 |
平均入院日数 | 7.4日 | 11.1日 | 21.9日 | 37.6日 | 43.6日 | 29.3日 |
入院時にかかる費用は、治療費の自己負担額だけではない。食事代や差額ベッド代(4床以下の病室の場合)がかかるほか、家族や付き添いの方の交通費も必要となる。
また、働いている方の場合は、長期入院によって減った収入への対策も必要となるので注意が必要だ。
自由診療の治療を受けたい方
自由診療の治療を受けたい方も、民間の医療保険へ加入した方が良いだろう。
自由診療とは、健康保険の適用を受けずに行う診療のことだ。
自由診療には、厚生労働省が認可していない薬や治療方法などが該当し、検査・診察・処置・投薬・入院など、すべての医療費が自己負担となる。
自由診療は、主に国内で認められていない最先端の治療法や薬が該当するため、高い治療効果を求めて希望する方が多い。
- 国内未承認の抗がん剤
- 国内未承認のがんの免疫療法
- 乳がん手術後の乳房再建術
- 胃内視鏡検査
- インプラント
- レーシック
また、自由診療は高額療養費制度の対象外となる点にも注意が必要だ。
このため、病気になった場合の選択肢として自由診療を考えている方は、医療保険への加入を検討した方がよいだろう。
高齢者が民間の医療保険を選ぶ際に重視すべきポイント
ここまで紹介してきたとおり、高齢者には民間の医療保険は基本的に不要と考えてよいだろう。
ただし、収入や貯蓄が少ないなどの理由で、医療費負担に不安がある人は、次のポイントを重視して医療保険への加入を検討するとよいだろう。
- 保障内容や特約が十分か
- 保険料が支払える額になっているか
- 加入条件を満たしている
なお、「どんな人が医療保険に加入するのか」によって最適な保険商品は変わる。
属性別におすすめの医療保険についてまとめた記事もあるので、比較していただくと、より高齢世帯が重視するべポイントへの理解を深めることができるはずだ。
保障内容や特約が十分か
医療保険の内容や特約は、保険会社や商品によって大きく異なる。
このため、保障内容や特約が十分であるというのは、医療保険を選ぶ際の大きなポイントだ。
特に確認しておきたいのは、入院給付金日額と手術給付金の額だ。また、通院治療に対応しているか、がんなど重大疾病に対応する特約が付けられるかなどもポイントになる。
ただし、高齢者の医療費は自己負担額が低く抑えられているため、高額な医療保険へ加入する必要性は低い。
また、保障内容や特約が十分であるか判断がつかない場合は、保険のプロに相談するのもよいだろう。
保険料が支払える額になっているか
高齢者が医療保険に加入する場合、保険料が高額になるケースが多い。
このため、毎月の保険料が無理なく支払える額になっているかという点は大きなポイントだ。
医療保険は、病気やケガの際に医療費負担を減らすためのものであり、保険料が家計を圧迫するのであれば加入する意味がない。
もし、保険料の負担が大きいのであれば、入院給付金日額を減らしたり、重要度の低い特約を外すなど、保険料を調整することが大切だ。
加入条件を満たしているか
医療保険は、加入時に健康状態や通院歴の告知が必要となる。また、加入年齢に制限を設けている医療保険も多い。
このため、まず自分が加入条件を満たしているか確認することが必要だ。
加入条件は各保険会社によって異なるため、自分が加入できるかパンフレットなどで確認するか、保険のプロに相談するのもよいだろう。
また、健康状態に不安がある方でも、引受基準緩和型の医療保険であれば、加入できる可能性がある。通常の医療保険へ加入できない場合は検討してみてはどうだろうか。
まとめ
本記事では、高齢者に医療保険が不要と言われる理由や民間の医療保険が必要な高齢者の特徴、さらに保険を選ぶ際に重視すべきポイントについて解説した。
保険料は年齢とともに上昇し、また公的医療保険制度の充実度から、高齢者には医療保険がいらないと言われている。
ただ、入院時や自由診療には民間の医療保険でないと保障できない費用も出てくるため、民間の医療保険が不要と一概には言えない。
一方、高齢者が医療保険に加入する際には保障内容と保険料のバランス等を慎重に見極める必要があるため、本記事を理解しただけではどの保険に加入できるのか判断できないと考える人もいるかもしれない。
そんな時は保険のプロに相談することも検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、保険の必要性とあなたに合った医療保険を的確に選択することができるはずだ。
ただ、保険のプロは数多く存在し、自分にとって最適な担当なのかをすぐに見定めることもまた難しい。
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