- 一時払個人年金保険の仕組みやメリット・デメリットが分からない
- 一時払個人年金保険を運用する際のポイントが知りたい
- 一時払個人年金保険を利用すべきなのかわからない
一時払個人年金保険という言葉に聞き馴染みはあるだろうか。
公的年金制度の補完として自身で老後の生活費などを準備するための個人年金保険は、長期で保険料を積み立てるケースが多い。
一方、加入時にまとめて全保険料を払い込むタイプが、一時払個人年金保険である。
一時払いの場合、保険料をまとめて払うことで総額を抑えることができる。
では、個人年金保険は全て一時払いで利用すべきなのだろうか。
本記事では、一時払個人年金保険の概要や運用時のポイント、および利用するべき人の特徴について解説する。
一時払いで個人年金保険を利用すべきか悩んでいるという方には、ぜひ参考にしてほしい。
一時払個人年金保険の概要
一時払個人年金保険は、老後の資金計画において重要な選択肢の一つだ。
ここでは、この保険の特徴やメリット、そしてその仕組みについて詳しく解説する。
老後の安定した生活を築くための手段として、一時払個人年金保険についての理解を進めよう。
個人年金保険の基本
老後資金は公的年金だけで十分だと考えている人は、少ないのではないだろうか。
実際、老後の生活資金として公的年金だけでは約2,000万円不足すると、2019年頃に金融庁が発表したことがある。
一人ひとりの預貯金や退職金の額は異なるため、全員が一様に2,000万円足りなくなるわけではないだろうが、公的年金だけでは不足する、という家庭がほとんどではないか。
また、老齢年金の支給が65歳からさらに引き上げられたり、将来の支給額も不透明であったりすることで、年金制度に不安を抱いている人も多いだろう。
個人年金保険は、こういった公的年金を補完することを目的に、将来の年金収入を自身のために確保するための保険である。
公的年金の不足分を補い、老後の生活費や予期せぬ医療費に備えることができる。
個人年金保険の特徴は、以下のとおりである。
保険料の支払い方
個人年金保険の契約者は、一定の期間や頻度で保険料を支払う。
これらの保険料は、将来の年金収入を積み立てるために使われる。
保険料の積み立て期間
個人年金保険では、支払った保険料が一定期間積み立てられる。
保険会社が保険料を運用することで、将来受け取る年金としての保険金は運用益が見込めるはずだ。
年金受給開始時期
積み立て期間が満了すると、年金受給の資格が得られる。
受給の開始時期や金額は、契約に基づいて決まっている。
通常は、退職時の年齢などに合わせて、65−70歳あたりで設定することが多い。
年金の受給形態
年金の受給形態に合わせて、いくつかの種類が用意されている。
たとえば、一生涯続く終身年金、10年間などの一定期間支給される有期年金、夫婦のどちらかが生存していれば受け取れる夫婦年金などがある。
死亡保障
個人年金保険には、加入者が亡くなった場合、残された遺族に対する死亡保障が含まれることがある。
死亡保障の内容も契約によって異なる。
このように個人年金保険は、支払った保険料を将来の年金受給額に変える仕組みで、将来にわたる経済的な安心感を提供してくれるものだ。
一時払個人年金保険の特徴と仕組み
個人年金保険の保険料の払込方法は、取り扱う保険会社や保険商品によって異なるが、「一時払い」「月払い」「半年払い」「年払い」「全期前納払い」などのいずれかで支払うこととなる。
このうち、一時払いとは、加入時にまとめて全保険料を払い込むタイプの個人年金保険のことをいう。
一括で支払うことで、他の方法に比べて支払う保険料の総額を抑えることができる。
これは、将来の支払いを一気に済ませることにより、支払い総額が低くなるという点で魅力的といえるだろう。
一時払個人年金保険の仕組みは、以下のとおりだ。
- 加入時に保険料をまとめて払い込む
- 一度の支払いで、将来の年金資金を確保する。
- 保険会社が保険料を運用する
- 支払った保険料は、保険会社によって運用されることになる。保険会社が運用益を生み出すと、将来の収益性が高まることになる。
- 保険期間終了後、運用益が上乗せされた年金を受け取る
- 運用益が生まれることで、将来の年金額が増加する可能性がある。
一時払個人年金保険のメリット・デメリット
一時払い個人年金保険には、メリットとデメリットがある。
適切な保険商品を選び、将来の資金計画を成功させるためにも、これらを理解することは重要といえるだろう。
一時払個人年金保険のメリット
- 保険料の総額を抑えられる
一時払個人年金保険は、月払や年払と比べて保険料の支払い総額を抑えることができる。
保険会社は、保険料を運用して利益を得ているからだ。
一時払個人年金保険では、加入者が保険料をまとめて払うことで、保険会社が運用する期間が長くなり、運用益を積み上げる機会が増えることになる。
さらに、保険会社は、一時払個人年金保険の保険料を運用して得た利益を、保険料の割引や年金の増額などに充てることができる。
- 保険料の負担が軽くなる
加入時に一括で保険料を支払うため、月払いや年払いのように、保険料支払いのことをその都度気にしなくてもいい。
長期に渡って保険料を支払う必要がないことで、心理的な負担は軽くなるといえるだろう。
- 運用益が発生する可能性が高い
保険会社にとっては、原資が増え運用に回す期間も長くなるため、運用で利益を上げる可能性も増えることになる。
結果的に、年金として受け取る保険金も増える可能性があるだろう。
一時払個人年金保険のデメリット
- まとまった資金が必要となる
一時払個人年金保険は、加入時にまとめて全保険料を払い込む必要がある。
そのため、最初にまとまった資金を準備しておかなければならない。
- 解約すると損をする可能性がある
一時払個人年金保険は当初決めた保険期間の運用益も見込んで、年金として受け取れるよう設定されている。
そのため、中途で解約すると、運用益はおろか、支払った保険料の総額分すら戻ってこない可能性もある。
さらに、5年以内で解約すると、投資に近い商品と判断され、利益が出たとしても、一律20.315%(所得税・復興特別所得税および住民税)が源泉徴収されることになり、税制面からも不利となることは覚えておこう。
一時払個人年金保険を利用する際のポイント
一時払個人年金保険を選択する際には、慎重な計画と戦略が必要となる。
ここでは、返戻率や余剰資金の活用、税金に関する知識など、一時払個人年金保険を最大限に活用するためのポイントを紹介する。
返戻率に注目して一時払個人年金保険を選ぶ
一時払個人年金保険の保険商品を選ぶ際には、返戻率に注目すべきだ。
返戻率とは、年金受取総額を払込保険料総額で割った割合のこと。
返戻率が高いほど、保険料を払い込んだ以上の金額を受け取ることができる。
返戻率は、保険会社の運用実績や金利変動などの影響を受けるため、複数の保険商品を比較検討することが大切となる。
また、保険料の払込方法や年金の受取方法によっても返戻率は異なるため、自分にとって最適な商品を選ぶようにしたい。
余剰資金から一時払個人年金の保険料を支払う
一時払個人年金保険は、まとまった資金が必要となるため、余剰資金から保険料を支払うようにしよう。
保険料を払い込むために、借入をしたり貯蓄を取り崩したりしてしまうと、生活に悪影響を及ぼす可能性がある。
余剰資金から保険料を支払うことで、生活に無理のない範囲で保険に加入することができる。
また、保険料を払い込むことで、将来の経済的な負担を軽減できるため、老後の生活資金についても安心感を得られるだろう。
賢明な資金計画を立て、一時払個人年金保険を有効活用しよう。
一時払個人年金保険にかかる税金について理解する
一時払個人年金保険は、払い込んだ保険料のうち一定額が所得控除の対象となる。
年金を受け取る際にも、所得の計算にあたり受取年金額から払込保険料を控除することができる。
税金に関する知識を身につけておくことで、保険料の負担を軽減し、より多くの年金を受け取ることができるようになるはずだ。
一時払個人年金保険に関する税金について、正しい理解をしておこう。
保険料を支払うときは、所得税・住民税を軽減できる「生命保険料控除」を活用したい。
毎年、生命保険のために支払った保険料を、毎年の所得から差し引くことで、節税できるというものだ。
生命保険料控除には、一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3種類があり、通常の個人年金保険であれば、個人年金保険料控除を使うことができる。
ただし、一時払いとした場合には、一部の条件を満たせないため、一般生命保険料控除しか使えないことには注意しよう。
個人年金保険では、契約時に定めた年齢に達すると一定期間、年金として受け取ることができる。
契約者本人が受け取る場合(自分で保険料を支払い、自分が年金保険金を受け取る場合)は、雑所得の扱いとなる。
雑所得は通常、公的年金(老齢給付金)や個人年金保険の満期金、副業で得た所得などが該当する。
雑所得の計算式は以下の通りであり、その1年間に受け取った保険金から、その金額に対応する支払った保険料を差し引いた額がそのまま雑所得の対象となる。
なお、保険料を支払った人と年金の受取人が異なる場合は、保険料負担者から受取人に対して、年金を受け取る権利が贈与されたものとみなされ、最初の年は贈与税が課税されることになる。
また、2年目以降の年金については、雑所得として所得税が課税される。
一時払個人年金保険を利用するべき人とは
一時払個人年金保険が、どんな人に最適なのかについて考えてみよう。
資金に余裕がある人、返戻率を高めたい人、または税金対策を必要とする人など、それぞれのケースで一時払個人年金保険が適しているかを詳しく解説する。
資金に余力があって合計の保険料を安くしたい人
一時払個人年金保険は、一括で支払う保険料が多くなるため、資金の余力が必要となる。
ある程度、資金に余裕があって保険料の総額を安くしたい人にはおすすめといえる。
個人年金保険は、保険料の払込方法によって、払込保険料総額が異なってくる。
月払いや年払いよりも、一時払いの方が払込保険料総額が安くなることが一般的だ。
そのため、まとまった資金がある場合は、一時払いで保険料を支払うことで、合計の保険料を安くすることができる。
資金に余裕のある人にとって、一時払個人年金保険を使うことは、将来の年金受給の安心感につながるだろう。
これにより、老後の経済的な負担を軽減し、安定した生活を過ごすための一歩を踏み出すことができる。
資金に余裕があるかどうかは、一時払個人年金保険を検討する際に重要な要因となる。
返戻率を高めて収益を出したい人
将来の収益を重視し、返戻率を高めたい人にも一時払個人年金保険は適しているといえる。
資産運用の観点から、収益性を最大化したい場合には検討すべきだろう。
一時払個人年金保険は、運用益が出る可能性が高い。
保険会社が運用する商品の場合、保険料を原資として運用益を確保し、年金受取額を増やすことができるからだ。
高い返戻率の保険商品を選択することで、支払った保険料に対してより多くの金額を受け取る可能性が高まる。
資産運用や老後計画において収益を重要視する人にとって、一時払個人年金保険は優れた選択肢といえるだろう。
相続税などの税金対策をしたい人
相続税対策を含めた節税効果を出したい場合にも、一時払個人年金保険を活用することができる。
死亡保険金を受け取る遺族が、税金面で苦労しないよう、相続税における非課税枠を活用して、税制面での優遇を得られるようにしよう。
亡くなった人が契約者だった場合、年金分は相続人が受け取ることになるが、これは相続税の対象となる。
ただ、一定額が非課税として取り扱われるため、事前に十分に計算しておくことで、節税につなげることができるだろう。
非課税枠は、500万円に相続人の人数をかけた金額となる。
なお、これらの税金対策を目的として、一時払個人年金保険を検討する場合は、保険や税金の専門家に相談しながら、対応することをおすすめする。
また、「一時払い以外の個人年金保険と比較して決めたい」と思われた方がいれば、個人年金保険の種類ごとの特徴についてまとめた以下の記事を参考にしてほしい。
一時払個人年金保険の特徴を理解して自分に最適な保険を選ぼう
本記事では、一時払個人年金保険の概要や運用時のポイントを解説した。
さらに利用するべき人の特徴についても説明した。
一時払で個人年金保険を利用することで支払う保険料の合計額を減らし、返戻率を高められる可能性がある。
ただ、支払いにはまとまったお金が必要で、万が一解約となると損してしまうおそれもある。
本記事を理解しただけでは、一時払いにするべきかわからないという人は保険のプロに相談することも検討してほしい。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、あなたに合った個人年金保険の運用方法について判断することができるはずだ。
ただ、保険のプロは数多く存在し、自分にとって最適な担当なのかを見定めるのは難しいだろう。
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