- 入院日数の平均がどれくらいか知りたい
- 医療保険の支払限度日数の決め方がわからない
- 医療保険選びで何を重視すべきかわからない
医療保険における支払限度日数とは、1回の入院で保険金が支払われる日数を示したものである。
近年、入院日数が年々減少傾向にあることをご存知だろうか。
入院期間が短くなれば、1回の入院あたりの支払限度日数も減らすべきなのかと悩む人も多いのではないか。
そこで本記事では、平均入院日数の推移について解説し、その上で適切な支払限度日数の決め方や医療保険を選ぶ際に重視するべきポイントを述べる。
医療保険の支払限度日数をどのように決めるべきか、悩んでいるという方にはぜひ参考にしてほしい。
入院日数の平均はどれくらいなのか
入院と聞いて、どれくらいの期間を想像するだろうか。
日帰りで入院することもあれば、手術のために数ヶ月にわたって入院が必要な場合もあるだろう。
そこで、まずは一回の平均入院日数がどれくらいか、そしてどんな種類の病気や怪我が長期入院に繋がるのか、について整理する。
医療保険の入院給付金の支払限度日数を決めるための基準としてほしい。
平均入院日数の推移と医療保険における入院の定義
近年の日本では、医療技術が発達し、入院日数は年々減少傾向にある。
厚生労働省が4年に1度実施している患者調査によれば、平成8年時点での平均入院日数は43. 4日となっている。
それに対して、令和2年時点での平均入院日数は32. 3日となっており、25年で10日ほど入院日数が短縮されていることが分かる。
中でも入院日数が14日以下の人の割合は、56.3%から66.8%となっており、2週間以内に退院できる人の比率も増加している。
また、民間の医療保険が入院給付金を支給する要件となる、「1入院」の定義についても知っておくべきだろう。
退院日の翌日から180日以内に同じ病気や怪我で入院した場合、医療保険では1回の入院として見なされる。
これが1入院の定義である。
例えば、病気で30日間入院し、退院後60日経ってから再度同じ病気で70日間入院すると、合計100日間が1入院として見なされる。
この100日間のうち、支払限度日数を超えた分の費用は支給されない。
つまり、支払限度日数が60日だった場合、100-60=40日分の入院給付金は受け取れないことになってしまうのだ。
そのため、医療保険の支払限度日数は自分がどれくらいの期間入院するかを考慮して選ぶ必要がある。
では、入院が長期化しやすい病気や怪我にはどんなものがあるのだろうか。
- 出典:厚生労働省「患者調査」
入院が長引きやすい病気や怪我とは
令和2年度の患者調査によれば、病気や怪我別に見た平均入院日数は、以下の通りだ。
主な疾病 | 総数 | 0~14歳 | 15~34歳 | 35~64歳 | 65歳以上 |
全体 | 32.3日 | 8.9日 | 12.2日 | 24.4日 | 40.3日 |
結核 | 59.5日 | 3.2日 | 36.6日 | 38.7日 | 66.8日 |
新生物 | 18.2日 | 14.0日 | 10.6日 | 13.3日 | 20.6日 |
糖尿病 | 30.6日 | 16.7日 | 11.5日 | 15.6日 | 40.7日 |
精神及び行動の障害 | 294.2日 | 32.5日 | 69.3日 | 214.9日 | 497.1日 |
アルツハイマー病 | 273.0日 | - | 159.7日 | 190.1日 | 274.6日 |
循環器系の疾患 | 41.5日 | 17.7日 | 26.3日 | 25.3日 | 45.8日 |
呼吸器系の疾患 | 34.5日 | 8.2日 | 8.9日 | 15.3日 | 42.9日 |
慢性腎臓病 | 53.4日 | 29.7日 | 25.7日 | 25.3日 | 61.1日 |
骨折 | 38.5日 | 5.5日 | 10.6日 | 21.3日 | 46.2日 |
精神及び行動の障害は、認知症・統合失調症・気分障害などの精神障害を示している。
また、循環器系の疾患は高血圧・心疾患・脳血管疾患を、呼吸器系の疾患は肺炎や喘息のことを主に指している。
上記の表から、基本的に65歳以上になるとそれ以前と比べて圧倒的に入院日数が伸びていることが分かる。
これは全疾患に共通していることで、早いうちから長期入院に対する備えをするべきだと言えるだろう。
疾患別に見ていくと、精神障害やアルツハイマー病は100日以上の長期入院となりやすい。
次に日数が長いのが結核や慢性腎臓病であり、ついで循環器系・呼吸器系の疾患や骨折が入ってくる。
注意したいのは、認知症やアルツハイマー病、うつ病など精神障害への保障を備えた医療保険は存在しないことだ。
医療保険は、これらの病気以外で30日以上の長期入院に対して備える役割を持っている。
ただ、認知症やアルツハイマー病に罹患した際にも給付金が受け取れる介護保険があることは知っておくといいだろう。
これは認知症保険と呼ばれている。
医療保険の支払限度日数はどれくらいが一般的なのか
ここまで入院日数に関する説明をしてきたが、医療保険の一般的な支払限度日数はどれくらいなのだろうか。
保険会社の公式サイトを元にすれば、支払限度日数は60日に設定すると足りる場合が多いと言える。
医療保険の支払限度日数は各保険会社によって決められている。具体的には、30日、40日、60日、120日、180日のいずれかで設定している会社が多い。
前述した通り、疾病による入院の平均入院日数は32.3日である。
その為、支払限度日数も同程度で足りるのではないか、と考える人もいるだろう。
ただ、40日以下に設定すると入院日数が足りない可能性がある。平均日数は1回の入院時の日数を表す。
一方、先ほど説明した通り医療保険には「1入院」の定義があるため、仮に1ヶ月ごとに入退院を繰り返した場合、平均日数を超えた入院期間とみなされる可能性があるのだ。
これらのことから、60日を選択する人が多くなっていると想定される。
支払限度日数を適切に決めるポイント
支払限度日数は60日とされることが多いと説明した。
ただ、自身の年齢や備えたいリスクによって、実際に必要な支払限度日数は異なる。
そこで、続くこの章では、自分に適切な支払限度日数を決めるためのポイントについて解説する。
対象となる病気や怪我の内容から判断する
先述した通り、疾病ごとに入院日数は大きく変化する。
そのため、支払限度日数を決める際には、加入を検討している医療保険がどの疾病を対象にした保険なのかを確認するようにしよう。
保険会社によっては、生活習慣病による入院時に、1入院の支払限度日数が拡大もしくは無制限になるタイプの保険が用意されている。
例えば、オリックス生命の「医療保険キュア・ネクスト」がそうだ。
がん・心疾患・脳血管疾患の三大疾病に加えて、糖尿病や肝硬変などを加えた七大疾患で入院した際、支払限度日数が60日もしくは120日から延長される。
特に、三大疾病の場合は支払限度日数が無制限になる。長期入院に備えるべきか、悩んでいる人にとってはありがたい制度だろう。
当然、同じ医療保険であっても対象とする傷病は保険会社毎に異なる。
自分が医療保険で備えたい疾病の平均入院日数がどれくらいか、先にチェックしておこう。
その後、支払期間の延長など有効活用できる制度があるかを確認することで、適切な支払限度日数を決めることに繋がる。
医療保険で賄うべき費用から判断する
入院時に必要な費用の中で、医療保険で賄うべき金額がいくらかを把握しておくことも重要だ。
必要な費用を考えるには、入院時にかかる費用の平均額が参考になる。
入院した際は、公的医療保険で治療費や入院時の基本料金が賄われ、実際に負担するのは全体の3割で済む。
ただ、食事代や個室に移った際の差額ベッド代、先進医療を受けるための費用等は全額自己負担となる。
また、入院中は本来であればその間に得られるはずだった収入がなくなることで、負担する費用が実質的に増えているのだ。
これを入院時の逸失収入と呼ぶ。
つまり、民間の医療保険では、入院時の自己負担費用と逸失収入を賄うことが必要になってくる。
公益財団法人生命保険文化センターが行った、「令和4年度生活保障による調査」によれば、過去5年間に入院した人の自己負担費用と逸失収入の平均額は、26.8万円となっている。
この26.8万円というのが、医療保険で賄うべき金額の一つの目安となるだろう。
また、医療保険で出る入院給付金の日額と支払限度日数を掛け合わせれば、入院した時に最大いくら給付金がもらえるかが分かる。
万が一入院した際に必要な金額として十分なのか、という観点から支払限度日数を決めるようにしよう。
保険料がどれくらい支払えるかで判断する
保険料は医療保険の支払限度日数によって変化する。長ければ保険料は上がり、反対に短くすれば保険料は下がる。
保険料を抑えるか、将来的に入院した時の給付金を増やしておきたいか、によって選択するのも一つの手段だろう。
例えば、ネオファースト生命の「ネオdeいりょう」に40歳男性が申し込む場合を想定しよう。
支払限度日数を60日にした場合、月々の保険料は2,449円となる。これが120日に増加すると、2,649円に保険料が増加する。
なお、ネオファースト生命には、被保険者の健康状況に応じて保険料が安くなる「健康保険料率」が適用されている。
健康状態が良ければ上記より保険料が安くなる可能性があるが、一つの参考材料としてもらいたい。
月々200円の増加が負担に感じるかどうかは個人の感覚次第だろう。
現在の収支状況と必要な保障内容のバランスを考慮し、どれくらいの保険料を支払えるのか考えるようにしてほしい。
医療保険を選ぶポイント
ここまで、医療保険の支払限度日数に関して説明してきた。
しかし、医療保険の保障内容は入院給付金以外にも多岐にわたり、そのため医療保険を選ぶ際に重視すべき点は他にも存在する。
具体的には、下記のような点がある。
- 備えたい疾病を明確にする
- 自分の年齢や健康状態から選ぶようにする
- 複数の保険会社の内容を比較する
各ポイントを抑え、自分に必要な医療保険を選べるようになってほしい。
利用目的を明確にする
まずは、医療保険で備えたい疾病を明確にしておく必要があるだろう。
医療保険の対象となる病気は様々だ。事前に考えておくことで加入すべき保険が絞りやすくなるだろう。
例えば、女性特有の疾病に備えたい場合は、女性保険を選ぶ必要がある。
女性保険は、通常の医療保険に女性疾病特約を付加したものを指す。特約による入院給付金を追加で受け取ることができるものだ。
また、がんに備えたいと考える人は、がん保険を検討すべきだろう。
がん保険は、その名の通りがんに対する保障に特化しているが、胃がんや乳がんなど対象となるがんの種類によって保障内容も大きく異なる。
このように、医療保険を選ぶ際には利用目的を明確にすることで、スムーズに必要な保険が選べるようになるだろう。
自分の健康状態で加入できる保険を選ぶようにする
目的をもとに医療保険を探した結果、入りたい保険を見つけても、加入できなければ意味がない。
そのため、自分が保険の加入条件を満たしているかどうか、事前に確認するようにしておこう。
医療保険に加入する際は審査が必要になる。年齢を含む健康状態や職業、道徳的な観点から保険加入者にリスクがないのかを判断し、保険に加入している人たちの公平性を担保しているのだ。
医療保険をはじめとする保険は、集められた保険料から、万が一の事態が起こった加入者に対して保険金を給付する仕組みとなっている。
この仕組みのことを相互扶助とよぶ。
保険の加入時に条件をつけないと、健康状態が良くない人が加入してしまうことがある。
持病を抱えた人が保険に加入した場合、すぐに保障が適用され保険金を受け取れる可能性が高いと言える。
つまり、保険料を払わずにすぐ保険を辞めてしまう可能性も高いと判断され、加入は認められない、と判断されるのだ。
上記のように、健康状態が優れない場合には審査が通らず、医療保険に加入できない可能性が高くなる。
また、加入条件が緩い保険に入れたとしても、保険料は高額になってしまいがちである。
また、医療保険の加入条件は保険会社ごとに異なる。
加入を検討している医療保険がどのような加入条件になっているか、事前に確認しておくようにしよう。
複数の保険会社の商品を比較する
一口に医療保険と言っても、販売している会社は数多く存在する。
医療保険を決める際は、1つの会社だけでなく、必ず複数の保険会社を比較するようにしよう。
例えば、三大疾病に備えるという目的の医療保険でも、支払われる保険金の種類が違ったり、保険料に大きな差があったりする。
また、保険に付加できる特約の種類も会社によって様々だ。
1つの医療保険に特約を付与する、または複数の保険に加入する、など自分に必要な保障内容をきちんと備えるためにも、比較することが重要だと言える。
このように、同じ種類の保険であっても商品ごとに保障内容は異なる。
理想の医療保険を見つけるためには、複数の保険会社の内容を比較検討することを忘れないようにしていただきたい。
まとめ
本記事では、適切な支払限度日数の決め方や医療保険を選ぶ際に重視するべきポイントについて解説した。
医療保険における入院は、180日を1回の入院と計算しているものが多いが、平均入院日数は年々減少傾向にある。
支払限度日数については、対象となる病気や怪我で入院した時、どれくらい日数がかかるか考慮して決めることが必要だ。
ただ、実際に医療保険を選ぶ際には、利用目的を明確にするなど、支払限度日数以外でも考えるべき点が多い。
一人で医療保険を選ぶのが不安な時は、保険のプロに相談することも検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、あなたに必要な医療保険を選ぶことができるはずだ。
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