- 医療保険を利用した節税の仕組みについて知りたい
- 医療保険を利用した節税にどれほどの効果があるのか知りたい
- 医療保険を利用した節税の申請方法がわからない
少子高齢化が進む日本では、老後の生活に備え医療保険への加入を検討する人が増えてきている。
医療保険は万一の際の保障を目的に加入するものだが、控除申請をすることで節税効果が得られる。
そのこと自体は知っていても、申請方法や具体的な節税効果が分からず、利用していないという人もいるだろう。
そこで本記事では、生命保険料控除と医療費控除の仕組みと実際の節税効果、および申請方法について解説する。
医療保険を活用した節税方法について知りたいという方は、ぜひ参考にしてほしい。
生命保険料控除と医療費控除の仕組み
民間の医療保険に加入している場合や、年間支払った治療費・医薬品代の金額が大きくなった場合、所定の手続きを行えば税金の負担を「控除」によって軽減できる可能性がある。
そもそも控除とは、一定金額を差し引くという意味で、保険における控除とは支払った保険料を自分の所得から差し引いて計算することを指す。
我々が支払うべき税金は、個人の収入から経費や控除金額を差し引いた「課税所得」に所定の税率をかけて計算される。
つまり、収入から差し引ける「所得控除」の金額が大きいほど課税所得は小さくなり、結果として支払うべき税金も小さくなる。
所得控除にはさまざまな種類があり、一定の条件を満たすと控除対象となる。
民間の保険に加入している人や、入院や手術、通院などで医療費を支払った人は、以下の2種類の所得控除を利用できる場合がある。
- 生命保険料控除
- 医療費控除
それぞれの仕組みと計算方法について知っておくことで、節税効果を得やすくなるだろう。
生命保険料控除とは
生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料のうち一定額を所得から差し引ける制度のことだ。
民間の生命保険料のうち、控除対象となるのは生命保険、介護医療保険、個人年金保険となっており、それぞれ「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の対象となる。
保険料控除の区分 | 内容 | 保険商品の例 |
一般生命保険料控除 | 生存または死亡に関して保険金や給付金が支払われる仕組みの保険 | 終身保険、収入保障保険、定期保険、3代疾病保険、5年超の養老保険、外貨建て保険、変額保険、学資保険等 |
介護医療保険料控除 | 怪我や病気による入院や通院などに関して支払われる仕組みの保険 | 医療保険、がん保険、介護保険等 |
個人年金保険料控除 | 将来に向けて年金を貯蓄する目的で加入する保険 | 個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金保険 |
このうち、医療保険は介護医療保険料控除の対象となっており、平成24年度以降に医療保険に加入した方は、支払い保険料の一部を所得から控除可能だ。
控除可能な金額は年間の支払い金額によって異なり、所得税・住民税それぞれの控除額は下記の通りとなる。
所得税
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
住民税
年間の支払保険料等 | 控除額 |
12,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
12,000円超32,000円以下 | 支払保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超56,000円以下 | 支払保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
年間支払い保険料の金額に応じて、所得税は最大40,000円、住民税は最大28,000円の控除が受けられる。
例えば、1年間の支払保険料総額が30,000円だった場合、所得税の控除額は30,000円×1/2+10,000円=25,000円、住民税の控除額は30,000円×1/2+6,000円=21,000円と計算できる。
ただし、この控除金額分がそのまま納税額から減るわけではなく、適用される税率をかけた金額が軽減される税額となる。
このケースでは、所得税・住民税ともに10%の人の場合、所得税は2,500円、住民税は2,100円の節税効果が得られる。
また、介護医療保険料控除だけでなく一般生命保険料控除や個人年金保険料控除と併せて利用するのも可能だ。
区分ごとにそれぞれの控除上限が適用され、全体の限度額は所得税が12万円、住民税が7万円となっている。
なお、平成23年12月31日以前に契約した保険契約の場合は、上記の表と計算が異なるため注意しよう。
医療費控除とは
医療費控除とは、1年間にかかった治療費や医薬品代の総額が一定額を超えた場合に、超過支払い分を所得から差し引けるという制度だ。
医療費控除を受けられるかどうかは、年間の医療費総額が「所得の5%」を超えているかが一つの目安となる。
控除される金額は、以下の計算式で求められる。
ここで注意したいのは、所得金額合計が200万円以上の人の場合は「所得金額合計×5%」で計算される部分は一律で10万円となる点だ。
所得金額の合計とは、給与所得や事業所得などのすべての収入を合計したものだ。
年間の所得が200万円を超えている人の場合は、医療費の控除上限は一律で10万円を超えた部分となる。
例えば、所得金額が300万円で、医療費の自己負担分の総額が20万円だった場合、20万円-10万円=10万円が所得から控除可能な金額となる。
また、所得金額が150万円で、医療費の自己負担分の総額が20万円だった場合、所得金額合計×5%=7.5万円を超過する12.5万円が所得から控除可能な金額と計算できる。
このように年間で負担した医療費が同じ金額だったとしても、年収によって所得から差し引ける金額が変わってくるため注意しよう。
医療費控除の対象となるのは、診療費や治療費、医薬品の購入費用、診療を受ける際の通院費、入院時の食事代などだ。要するに、病気や怪我を治すための費用は基本的に控除の対象となる。
反対に、美容整形のための費用やリラクゼーション目的のマッサージ、異常がなかった場合の人間ドック・健康診断費用など、美容や健康増進目的で支払う費用は対象とならない。
また、著しく高額なものや治療内容が特殊なものについても、対象外となるケースがあるため気をつけよう。
セルフメディケーション税制も選べる
医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」という制度がある。
この制度は、年間の医薬品の購入金額が12,000円を超えた場合に、超えた部分を所得から差し引けるという制度だ。
セルフメディケーション税制の対象となるのは、コンビニやドラッグストアで販売されているスイッチOTC医薬品だ。
医療機関の診療を受けなくても、自分で購入した医薬品の購入代金が控除の対象となるため、控除の恩恵を受けやすい。
基準となる金額が12,000円と小さいため、控除対象となりやすいというメリットもある。
ただし、セルフメディケーション税制を利用するためには、普段から健康のための一定の取り組みを行っている必要がある。
インフルエンザの予防接種や自治体によるがん検診、健康診断、会社の定期健康診断などを受けていると証明できる必要があるため、領収書や結果通知表などで受信を証明できるようにしておこう。
なお、医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらも使うことはできないため、どちらの制度を利用するか迷うときは、自分自身でシミュレーションして控除額の多い方を選択しよう。
生命保険料控除と医療費控除の節税効果を解説
民間の医療保険に入っている人が、各種控除制度を利用した場合にどのくらい節税効果を得られるかシミュレーションしてみよう。
ここでは、以下の条件のもとで年収300万円・600万円・1,000万円のそれぞれのケースについてシミュレーションを行った。
なお、ここではその他の所得控除などは考えないものとする。
- 年齢:35歳
- 家族構成:独身(本人のみ)
- 医療保険の年間支払保険料:50,000円
- 住民税の所得割:10%
- 1年間にかかった医療費(保険金などで支給された金額を除く):150,000円
医療保険料が年間50,000円の場合、「介護医療保険料控除」の区分において所得税から32,500円、住民税から26,500円の控除を受けられる。
年収300万円の人のケース
年収300万円の人の所得税・住民税の節税額は下記の通りだ。
生命保険料控除 | 医療費控除 | |
所得税の節税額 | 3,250円 | 5,000円 |
住民税の節税額 | 2,650円 | 5,000円 |
合計の節税額 | 5,900円 | 10,000円 |
所得税率10%と仮定すると、生命保険料控除による所得税の節税額は32,500円×10%=3,250円だ。
また、住民税の軽減額は26,500円×10%=2,650円と計算できる。
合計した節税効果は、3,250円+2,650円=5,900円となる。
医療費控除によって差し引ける金額は、実際に支出した15万円から10万円を差し引いた5万円となり、税率をそれぞれをかけて求められる節税額は合計で10,000円だ。
両方の制度を利用した場合の節税額は、15,900円と計算できる。
年収600万円の人のケース
生命保険料控除 | 医療費控除 | |
所得税の節税額 | 6,500円 | 5,000円 |
住民税の節税額 | 2,650円 | 5,000円 |
合計の節税額 | 9,150円 | 10,000円 |
年収600万円の人の所得税率は20%として計算する。
所得税の軽減額は32,500円×20%=6,500円となる。住民税の節税額は26,500円×10%=2,650円で変わらない。
また、医療費控除による節税額も、年収200万円を超えたら一定となり所得税・住民税から5,000円が節税される。
両方を合計した節税額は19,150円だ。
年収1,000万円の人のケース
生命保険料控除 | 医療費控除 | |
所得税の節税額 | 10,725円 | 5,000円 |
住民税の節税額 | 2,650円 | 5,000円 |
合計の節税額 | 13,375円 | 10,000円 |
年収1,000万円の人の所得税率は33%として計算する。
所得税の節税額は32,500円×33%=10,725円と計算でき、住民税の節税額は26,500円×10%=2,6500円となる。
医療費控除による節税額は所得税から5,000円、住民税から5,000円の合計10,000円となる。
両方を合計した節税額は23,375円だ。
保険料控除と医療費控除の申請方法
所得控除を適用するためには、年末調整や確定申告での申告が必要となる。
それぞれの手続き方法や注意点を解説していく。
生命保険料控除を適用する方法
勤務形態やその人の状況によって、控除を適用するための手続きが異なる。
会社員・サラリーマンの場合
年末調整を受けられる会社員やサラリーマンの場合、勤務先の年末調整のタイミングで申告することで控除手続きを完了できる。
医療保険を契約している場合、秋ごろになると生命保険会社から「保険料控除証明書」が郵送されてくる。
この控除証明書を勤務先の年末調整時に「給与所得者の保険料控除申告書」とともに提出する。
これらの二つの書類を提出することによって、年末調整の手続きが完了する。
控除証明書は、年末調整時に必ず必要になるため、送られてきたらしっかりと保管しておこう。
万が一無くしてしまった場合は、すぐに保険会社のコールセンターまたは営業担当者に連絡して再発行してもらおう。
なお、年末調整にて手続きをし忘れてしまった場合や、年末付近に保険を新しく契約した場合は、年末調整ではなく確定申告での手続きが必要となるため注意しよう。
個人事業主・フリーランスの場合
個人事業主やフリーランスの場合は、確定申告によって所得控除の手続きを行う必要がある。
確定申告書の「生命保険料控除」の欄に必要事項を記載し、保険料控除証明書等を添付して提出しよう。
控除証明書が電子交付された場合は、オンラインで添付して提出することも可能だ。
確定申告書への記載の際は、契約している保険の種類や旧制度・新制度のどちらに該当するか、証明書から計算される控除額などだ。
控除証明書があればそのまま記載できる内容なので、秋ごろに送られてくる書類をしっかりと保存しておこう。
医療費控除を適用する方法
医療費控除は年末調整で手続きできないため、会社員や個人事業主などにかかわらず確定申告で手続きを行う必要がある。
手続きするためには、まず負担した医療費の総額を計算する。
控除の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に負担した医療費だ。
税金を納める本人のために支払った費用の他、配偶者や生計を一にする親族のために支払った治療・入院等に関する費用も医療費控除の対象となる。
また、高額療養費制度や入院給付金、医療保険金など、入院や手術に際して受け取ったお金がある場合は、実際に支払った医療費から差し引く必要がある。
控除可能な金額を計算できたら、確定申告書及び医療費控除の明細書に必要事項を記載し、確定申告を行って控除手続きを行う。
セルフメディケーション税制を利用する場合も、同様に確定申告にて手続きを行う。
控除を受ける際の注意点
民間の医療保険を契約している場合、各種控除を適用して税金負担を軽減できる可能性がある。
医療保険は「介護医療保険料控除」の対象となるが、生命保険や個人年金保険など他の保険料控除区分が適用される保険も契約している場合は、それぞれの控除額を計算する必要がある。
また、それぞれの区分ごとの控除上限のほか、生命保険料控除全体としての控除上限も設けられているため、節税を重視して保険に加入しようと考えている方は注意が必要だ。
節税効果をしっかりと活かした上で保険を契約したいという方は、生命保険・医療保険・個人年金保険のバランスを見ながら、無駄なく保険料を設定するのが重要となる。
自分で適切な保険料を設定するのが難しいと感じている人や、複数の保険にバランスよく入る方法が知りたいという方は、ぜひ保険の専門家に相談してみよう。
まとめ
本記事では、生命保険料控除と医療費控除の仕組みと実際の節税効果、および申請方法について解説した。
自分や家族のために払った医療保険の保険料や治療にかかった費用は、申告することで、年間の税金額から控除できる。
生命保険料控除を適用すると支払った保険料の金額に応じて所得税や住民税が割り引かれ、医療費控除は年間医療費の合計が一定額を超えた場合に所得控除を受けることができる。
ただし、控除を受けるには年末調整や確定申告のタイミングでの申請が必要となる。
もし一人で控除申請の手続きを進められるか不安な方は、保険のプロに相談することも積極的に検討しよう。
専門家のアドバイスをもらうことで、医療保険の控除に関する手続きも安心して進めることができ、医療保険を上手に活用できるはずだ。
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