- 生命保険は経費として認められるのかどうか知りたい
- 法人で生命保険に加入することでどのようなメリットがあるのか知りたい
- 法人が生命保険に加入する際の税金に関する疑問を解決したい
企業が生命保険を利用することは一般的なことだ。
「保険料は経費計上が可能なのか?」「法人が保険に加入するメリットは?」など、保険加入に悩まれている声を多く聞く。
法人が保険加入するにはいくつかのメリットがあり、保険料の経費計上は可能だが、注意すべき点もある。
本記事では、税務上の保険料の扱いや、法人が生命保険に加入する際のメリットや注意点などを解説する。
これから生命保険の加入検討をされているご担当者様や、加入保険の内容を見直したいと考えるご担当者様は、参考にしてほしい。
生命保険は経費として認められる?
法人が生命保険を利用する目的には、以下のように大きく二つある。
- 目的1:役員や従業員の「退職金や死亡退職金の財源」確保
- 目的2:経営者死亡時の「事業継承資金」への備え
- 例:企業への信用不安の発生にともなう、取引先からの現金決済要求や、金融機関からの追加融資拒否が起こった際の対応費用など
このとき利用する生命保険の種類や契約形態によって、保険料の全部もしくは一部が経費として認められる。
ここでは生命保険の保険料が経費として認められる場合の詳細や、加入するメリットとデメリットを解説する。
さらに、生命保険の保険料が経費として“認められない場合”についても、説明する。
生命保険は経費として認められるのか
上記の目的のため、法人が貯蓄型保険(終身保険、養老保険)を用いる場合には、以下の範囲で経費として認められる。
パターン | 保険金受取人 | 保険加入目的 | 経費扱いの可否 | |
---|---|---|---|---|
満期保険金 | 死亡保険金 | |||
パターン1 | 役員・従業員 | 役員・ 従業員の遺族 | 目的1 | 可役員報酬や給与として、すべて経費に計上 |
パターン2 | 法人 | 法人 | 目的1、 目的2 | 否保険積立金として、すべて資産に計上 |
パターン3 | 法人 | 役員・ 従業員の遺族 | 1/2は保険積立金として資産に計上 1/2は福利厚生費として経費に計上 |
一方、掛け捨て型保険(定期保険など)は、満期を迎えても満期保険金が得られないため、保険料は経費となる。
ただし途中解約時に解約返戻金が受け取れる保険もあるため、解約返戻率によっては、保険期間中に資産計上が必要な場合もある。
※解約返戻率:払い込んだ保険料総額に対し受け取れる解約返戻金の割合
例えば解約返戻率50%以下の生命保険の場合には、保険料はすべて経費として扱われる。
しかし解約返戻率が50%を超えると、保険料の一部は資産に一旦計上され、一定期間が経過した後に経費へ算入される。
認められる場合と認められない場合
福利厚生費や役員報酬・給与を目的とする生命保険は、保険料が経費として認められる。
しかし事業継承資金を目的とする場合は、保険積立金として資産計上されるため、保険料は経費として認められない。
ただし退職金や死亡退職金を目的とする生命保険でも、個人事業主や専従者(事業主の下で働く家族従業員)の場合は対象外だ。
この場合の生命保険は「個人(個人事業主)や家族を対象とする保険であり、事業を対象とする保険ではない」という考え方による。
つまり個人事業主や家族経営の企業では、生命保険の保険料は経費計上できないことになる。
法人で生命保険に加入するメリット・デメリット
法人にとって生命保険は、「保険料が経費扱いできる」こと以外にも、さまざまなメリットがある。
一方で、デメリットも存在するので、メリットとデメリットを以下の表でまとめた。
メリット | デメリット |
---|---|
契約者貸付制度が利用できる: 払い込んだ保険料から算出される解約返戻金を担保に、保険会社から融資を受けられる。 納税資金の準備ができる: 企業の株式を後継者に譲る際に発生する相続税や贈与税の支払いに、保険金が充てられる。 | 社内規程を整備する必要がある: 社内規程で、受取保険料の扱いや利用目的を明記する必要がある。保険料を福利厚生費として扱う場合は、役員・従業員全員の保険加入が原則必要となる。キャッシュフローを悪化させる恐れがある: 保険料の支払い負担が永続的に発生するが、経営状況が悪化しても解約できない。経営規模が小さい場合や従業員数が多い場合は、資金繰り悪化の原因になる恐れもある。 保険金や解約返戻金を受け取る際には、税金が発生する。 |
法人で生命保険に加入する際の注意すべき点
ここからは法人が保険会社から受け取る保険金や、保険解約時の解約返戻金について、解説する。
これまで述べてきた生命保険の保険料と同様に、いくつかの注意すべき点がある。
法人が受け取る保険金や解約返戻金は、資産計上した上で既に納付した保険料金額を差し引き、算出された金額が会社の収益と見なされる。
これらは事業で得た利益と合算され、利益合計額が大きくなれば法人税額も増え、小さくなれば支払う法人税額も減る。
このため生命保険の加入時には、出口戦略、つまり解約返戻金や満期保険金をどのように扱うかを事前に検討しておく必要がある。
税金について
企業が受け取った保険金や解約返戻金は、以下の計算式で雑収入として利益計上され、課税対象となる。
保険料を払い込んだ際に、資産計上した額(課税された額)が多ければ、上記の課税対象額は少なくなる。
一方で保険料のうち経費分が多ければ、資産計上した額が少なくなるため、課税対象額は多くなる。
つまり保険料を経費として扱い非課税額を多くしても、保険金や解約返戻金を受け取る際には、多くした非課税額分だけ課税される。
経費分(非課税分)は、結果的に受け取り時に課税されることから、生命保険は「課税の繰延べ」とも呼ばれることがある。
節税効果の有無
過去に行われた税制改正によって、現在では生命保険がもつ節税効果は限定的になっている。
この節税効果の中には、先述した法人が生命保険を利用する「目的1」である、役員や従業員の退職金や死亡退職金の財源確保がある。
生命保険を使わず、内部留保により退職金や死亡退職金を準備をする場合には、内部留保金が課税対象になることがある。
生命保険の場合、保険料が経費と認められる上述の「パターン1」では法人は保険金を受け取らず、払い込む保険料は非課税のため節税効果がある。
ただし役員・従業員、その遺族が受け取る保険金は、給与所得になるため、受け取り時には税金を支払わなければならない。
自社に適した税金対策
前項の課題を解決する方法として、保険料の1/2を経費とし、退職時期を満期に設定した「パターン3」を用いる場合が多い。
この場合では、退職時に一旦法人が保険金を受け取り、すぐに役員や従業員に退職金として支払うことで保険金は利益計上されない。
死亡退職金として、遺族に給付される死亡保険金には相続税が発生するが、みなし相続財産として遺族に非課税枠が設定される。
生命保険の被保険者が亡くなったことをきっかけとして、遺族が受け取る財産。
通常の相続財産(故人が生前から所有していた預貯金や不動産など)とは別扱いにして、保険金受取人には以下の非課税枠が設定される。
このような保険料の半分だけを課税対象(資産計上)とし、残り半分を経費とする方法を「ハーフタックスプラン」と呼ぶ。
自社に適した税金対策を考える際は、このように出口戦略(保険金の使い道と社内運用)も検討しておくことが重要だ。
経費として認められることを踏まえて!自社に適した法人向け保険やプランの選び方
生命保険の本来の目的は、万一の事態に対し経済的に十分な備えを持つことで、安心感が得られることだ。
このため、保険が持つ節税効果は副次的なメリットと考えておいた方が良いだろう。
主目的である「安心感」と、副次的目的である「節税効果」とを取り間違えると、保険選びも誤ってしまう。
ここでは、自社に適した保険の選び方について解説する。
保険への加入目的を明確にする
生命保険への加入目的は、先に述べたとおり二つだ。
つまり「退職金の財源確保」か、もしくは「事業継承資金の備え」かのいずれかだ。
さらに誰の、そして何のための財源や資金なのかを明確にしたうえで、それを達成するために最適な保険を考えなければならない。
逆に、目的が明確に定まっていなければ、保険選びも誤ってしまう。
まず「誰のために、何のために生命保険に加入するのか?」をじっくり考えて、答えを出すことから始めよう。
多くの商品を比較検討する
次に、さまざまな保険商品の中から保険加入目的を達成するための手段として、最適な「保険の種類」を決める。
目的達成手段として検討すべき、保険の種類を以下に挙げる。
- 掛け捨て型保険:保険料は掛け捨てだが、貯蓄型保険と比べ保険料が割安。
- 長期平準的保険:解約返戻率は契約開始から上昇し、ピーク時には80〜95%になる。契約期間は一定だが、100歳満期などの設定もでき、解約返戻率のピーク時も長いため、経営上の緊急資金にも利用できる。
- 逓増定期保険:「ていぞうていきほけん」と呼ぶ。保険期間の経過にともなって死亡保険金額は増えていき、契約開始当初の金額から最大5倍程度にまで増加する。解約返戻金のピークは早く迎えるため、経営上の緊急資金にも利用できる。
- 貯蓄型保険:保険金の一部を貯蓄し、満期時には保険金を支払う保険。
- 養老保険:被保険者が保険期間中に亡くなった場合には死亡保険金、満期を迎えた場合は満期保険金が受け取れる。死亡保険金を死亡退職金、満期保険金を退職金として利用できる。
- 終身保険:被保険者が死亡時に死亡保険金を受け取れるため、死亡退職金や役員が死亡した際の事業継承資金としても利用できる。
「保険の種類」が定まったら、具体的な保険商品やプランを検討するために、保険会社から情報を収集しよう。
保険会社によって、保険商品の品揃えや同じ保障内容でも保険料が異なるため、複数の保険会社から多くの情報を収集した方が良い。
専門的な知識をもとに発生する金銭や加入の効果を事前に把握する
税務・労務などの専門知識をもとに、経済面も含めた加入効果を、事前に検討しておく必要もある。
保険会社から提案を受ける際は、営業担当者が提案する保険商品やプランが、自社が期待する目的や効果が得られるのかを確認する。
このため営業担当者は、保険の商品知識だけでなく、税務・労務の専門知識や他社事例などを豊富にもつ担当者が望ましい。
この結果、各保険会社からの提案商品を並べて、加入目的の達成や加入効果の発揮が最も期待できる保険商品やプランを選んでいく。
選んだ保険が出口戦略(保険金の使い道と社内運用)を実現するために、社内規程改定や担当者配置など、社内の環境整備も行う。
法人の生命保険は経費として認められるものがある!
本記事では、法人が生命保険に加入する際のメリットやデメリット、生命保険にともなう税金について解説した。
生命保険に加入する際には、事前に契約内容や、加入するメリット・デメリットを明確にしておく必要がある。
生命保険にともなう税金は仕組みが複雑であり、その効果を一人で全て把握することは難しいため、専門家への相談をおすすめする。
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