- 学資保険に税金がかかる仕組みについて知りたい
- 学資保険に相続税がかかる場合について知りたい
- 学資保険にかかる税金を抑える方法が知りたい
学資保険に相続税がかかる場合がある、と聞いたことはあるだろうか。
学資保険は、子どもの教育資金を貯蓄するものであり、満期を迎えると貯めていた資金が払い出される。
この満期前に契約者が死亡した場合、満期を迎えて学資保険の保険金をもらう権利に対して相続税がかかってくるのだ。
では、学資保険にかかる税金は相続税だけなのだろうか。
また、税金がかかることを前提に、学資保険を有効活用するにはどうしたらいいのか。
そこで本記事では、学資保険に関する税金の仕組みや税金を抑える方法について解説する。
学資保険にかかる税金について学びたいという人は、ぜひ参考にしてほしい。
学資保険に相続税がかかるのはどんな時?
学資保険も死亡保険と同様、保険金を受け取る際に税金がかかる。
学資保険では、契約の際に以下の3つを誰にするのかを決めなければいけない。
- 契約者・・・保険料を支払う人
- 受取人・・・保険金を受け取る人
- 被保険者・・・学資保険の対象となる子ども
契約の際に誰が契約者、受取人になっているかで保険金を受け取る際にかかる税金が変わってくる。
学資保険は子供のための保険で親が保険料を負担するのだから、契約者は「親」で受取人は「子」と考えてしまうかもしれない。
しかし、受取人に関しては「親」「子」どちらのケースもあり得る。
この受取人が誰になるかで学資保険でかかる税金が「所得税・住民税」になるか、「贈与税」になるかが変わってくる。
まずは、学資保険の仕組みと「所得税・住民税」がかかるケース、そして「贈与税」がかかるケースについて詳しく確認してみよう。
学資保険の特徴と仕組み
学資保険は生命保険の一種で、子どもの教育費を積み立てる貯蓄型の保険だ。
教育費は住宅費・老後の生活費に並ぶ人生の三大資金の一つと言われている。
教育資金は幼稚園から大学卒業までに、全て公立だと平均約822.5万円、私立だと平均で約2,307.5万円もかかるという試算がある。
学資保険は、まとまったお金を計画的に用意する際に選ばれる金融商品の一つだ。
学資保険のメリットは大きく分けて4つ挙げられる。
- 子どもの進学など節目に祝い金が受け取れる
- 教育資金を計画的に貯められる
- 生命保険の一種で所得控除の対象になる
- 契約者が亡くなったり高度障害になったりした場合、保険料払込みを免除も可能
教育試験が計画的に貯められるだけでなく、控除の対象にでき、契約者が亡くなっても保険料の払い込みが免除になる。
単に貯蓄するだけだと控除の対象にもできず、万一のことがあったら子どもの教育資金を残せなくなってしまう。
教育資金を積み立てるなら単に貯蓄するより控除の対象にでき、親が死亡しても子どもに教育資金を残せるのが、学資保険が選ばれる理由だ。
学資保険で所得税・住民税がかかるとき
契約者と受取人が同じ場合、学資保険で祝い金や満期保険金を受け取る場合は、所得税・住民税の課税対象となる。
注意したいのが保険金の受け取り方によって同じ所得税でも、分類と課税方法が変わってしまう点だ。
一括で受け取る場合は、総合課税の対象となる一時所得に分類される。
一時所得は以下の式で求められる。
そして、一時所得が黒字の場合、残った一時所得の1/2を総所得額に参入することになる。
赤字だった場合は、一時所得はないものとみなすことができる。
分かりやすく一時所得が学資保険の保険金のみだった場合で考えてみよう。
例えば、満期保険金が300万円、支払い保険料総額が200万円だった場合は以下のように計算できる。
一時所得が50万円の黒字の1/2で25万円。一時所得として25万円を総所得額に算入させる計算となる。
- 参考:国税庁「一時所得」
学資年金として分割で受け取る場合は、雑所得に分類される。
保険金を受け取る際の雑所得は以下の計算式で求められる。
学資保険の場合は、総収入額と必要経費は以下の通り。
- 総収入額=1年に受け取る学資保険料の祝金
- 必要経費=学資保険祝金×(払込保険料総額÷総支給見込額)
例えば、1年に受け取る学資保険料の祝金100万円、払込保険料総額360万円、総支給見込み額400万円の場合を計算してみよう。
ちなみに、公的年金等の雑所得や事業にかかる雑所得があれば、これらの雑所得も加えて計算する点に注意しよう。
どちらを選ぶと得なのかは、一概には言い切れない。
なぜなら一時所得も雑所得も他の損益通算できる所得の影響を受けるからだ。
また、会社員ならば20万円の雑所得は非課税になるが自営業者はならない等、置かれた状況によって損か得かは変わってきてしまうためだ。
一時所得と雑所得も学資保険の保険金のみで決まる訳ではないため総合的に計算する必要がある。
学資保険で贈与税がかかるとき
契約者と受取人が異なる場合は、贈与税がかかる。
例えば、契約者が親で受取人が子、契約者が祖父母で受取人が親または子などのケースだ。
保険会社によっては契約者を受取人に指定しなければならないところもあるが、そうでない場合は贈与税がかかるケースを想定して契約する必要がある。
贈与税の計算方法は以下の通りだ。
一般贈与財産用
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
200万円超 300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
特別贈与財産用(特例税率)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
200万円超 400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超 600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円超 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円超 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円超 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
税率には一般贈与財産用と特例贈与財産用の2つがあり、特例税率は、原則、直系尊属(祖父母・父母など)からその年の1月1日に、18歳以上の子・孫などへの贈与の計算で使う。
令和4年4月1日より、成人年齢が20歳から18歳へ変更されたため、特例税率も18歳以上からの適用と変更されたため注意しよう。
満期保険金が250万円だった場合で他に贈与がなかった場合で計算してみよう。
祖父(契約者)が18歳の孫(受取人)に贈与する場合を計算すると以下のようになる。
契約者と受取人が異なる場合は、保険金が贈与税の対象であることを念頭において学資保険を契約しよう。
学資保険に相続税がかかる場合を解説
学資保険は契約者が死亡しても、子どもに教育資金を残せるため、万一の備えとなる。
契約者が死亡すると保険料の支払いが免除され、将来的には保険金も満額受け取れるケースが一般的だからだ。
契約者が亡くなった場合に税金がどうなるかについても確認しておきたい。
契約者が亡くなった場合に備えて知っておきたい点は以下の3つだ。
- 相続税
- 保険料払込免除特約
- 育英年金特約
特に契約者が亡くなった場合は、相続税がかかる点についておさえておきたい。
学資保険にかかる相続税の基本
学資保険で契約者が死亡した場合、学資保険の契約者と受取人を変更することになる。
例えば学資保険の保険料を支払っていた「父」が受取人で亡くなり、「母」が契約者、受取人になった場合を考えてみよう。
この場合、母は保険金を受け取る権利を取得したと考えられ、この権利が相続税の課税対象となる。
権利の評価額は契約者が亡くなった時点での解約返戻金相当額となる。契約者が亡くなったら速やかに保険会社に連絡しよう。
ちなみに、死亡者数に対する相続税の課税件数は2021年時点で9.3% と実際は相続税が課税されない人の方が多数派ではある。
しかし、平成27年から相続税の控除額が引き下げられ相続税の課税対象となる人は増えており、相続税の影響を受ける人は増えている。
相続税の課税価格が基礎控除以下ならば、申告は不要となるが、申告が必要な場合は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署に申告書を提出・納税しなければならない。
相続税に関しては学資保険以外の相続財産も勘案した上で、どの程度かかるのか計算する必要がある。
相続については事前に関係者としっかり話し合うことで、揉め事が起きないようにしたい。
学資保険の保険料払込免除特約とは?
学資保険では保険料払込免除特約をつけることで、契約者が万一、亡くなったり高度障害になったりすると以後、保険料の払込みが不要になる。
教育費はまとまった資金が必要だが、万一、家計の柱である親が亡くなったら教育資金を用意するのが困難になってしまうだろう。
しかし、保険料払込免除特約があれば契約者に万一のことがあっても学資保険の権利と保障はそのままに、保険料の払込みが免除される。
当然、保障のはじまる日から3年以内に契約者が自殺をした場合など、保険料払込み免除は無効などの例外はあるが、不慮の事故・死亡には備えられる。
貯蓄による教育資金の積立てでは得られない学資保険のメリットの一つと言って良いだろう。
学資保険の育英年金特約とは?
育英年金特約は学資保険に付けられる特約の一つだ。
契約者が死亡した場合、または高度障害になった場合に育英費用として死亡育英年金が支給される。
契約者が亡くなっても定期的にお金が入ってくるため学資金だけでなく生活資金に関しても備えられる。
ちなみに、この年金受給権に関しても相続税の課税対象となる点に注意したい。
また育英年金特約に限らず特約をつけて備えを広げるほど保険料は割高になってしまう。
学資保険を含む生命保険は長い目で見ると住宅に次いで人生の中でも大きな買い物と言われている。
そのため、本当に特約をつけるべきかどうかは家計の状況も踏まえて慎重に決めた方が良い。
一家の大黒柱が死亡した際の生活費の備えは学資保険の育英年金特約以外にも、死亡保険や収入保障保険などでもできる。
そのため育英年金特約で備えるべきか、他の保険で備えるべきかを保険のプロや専門家に相談すると後悔のない選択ができるはずだ。
学資保険にかかる相続税を抑えるためには
これまで説明した通り、学資保険で受け取れる保険金には所得税・住民税、贈与税、相続税と受け取り方によって様々な税金がかかる。
子どもの教育資金の備えのために受け取る保険金に無駄に税金がかかってしまうのは避けたいところだ。
学資保険にかかる税金を抑えるために効果的な3つのポイントは以下の通りだ。
- 契約者と受取人を同じにするのが原則
- 祖父母から親に保険料を援助してもらう方法
- 都度贈与・一括贈与の活用
この3点について詳しく解説する。
学資保険の契約者と受取人を同じにする
原則、学資保険にかかる税金を抑えるなら契約者と受取人を同一にしておくのがおすすめだ。
理由は以下の2点だ。
- 保険料の支払いで生命保険料控除が使える
- 一括で受け取る場合は50万円の控除がある
契約者と受取人が同じ場合、学資保険にかかる税金は「所得税・住民税」がかかる。
生命保険に分類される学資保険は保険料支払いの際に生命保険料控除が利用できる。
生命保険料控除には一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3つがあるが、学資保険の保険料は一般の生命保険料控除の対象にできる。
2012年1月1日以降契約の学資保険ならば、所得税は最大40,000円、住民税は最大28,000円までが控除の対象となる。
契約者と受取人が同一ならば、この控除が適用できるため積極的に活用しよう。
所得税控除額
年間の支払い保険料 | 控除される金額 |
---|---|
20,000円以下 | 払込保険料全額 |
20,000円超〜40,000円以下 | (払込保険料×1/2)+10,000円 |
40,000円超〜80,000円以下 | (払込保険料×1/4)+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
住民税控除額
年間の支払い保険料 | 控除される金額 |
---|---|
12,000円以下 | 払込保険料全額 |
12,000円超〜32,000円以下 | (払込保険料×1/2)+6,000円 |
32,000円超〜56,000円以下 | (払込保険料×1/4)+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
また、保険金を一括で受け取る場合は一時所得の特別控除額(最高50万円)も適用できる。
一時所得の特別控除を活用することで多くの場合、学資保険の保険金を課税されずに受け取れるだろう。
支払うときも保険料を控除の対象にできるため、特に理由がなければ契約者と受取人を同一にするのが、おすすめだ。
祖父母から親に保険料を援助してもらう
祖父母から援助してもらえるなら以下の方法も考えられる。
- 親が学資保険の契約者となる
- 祖父母が親に学資保険用の資金を生前贈与で提供する
祖父母から学資保険の保険料を援助してもらい、契約者である親が学資保険を積立てる。
祖父母から学資保険の保険料を援助してもらう場合、贈与税の対象となる。
しかし、贈与税には年間110万円の控除枠がある。
ただし、この方法は税務署から生前贈与を否認されてしまう可能性がある。
そのため、贈与が行われた事実を証拠として残す必要がある。
例えば贈与契約書の作成、あえて110万円の控除枠を超える額を贈与し贈与税を少しだけ納める、預金口座への振り込みなどが証拠を残す方法として挙げられる。
都度贈与・一括贈与の活用
- 都度贈与・・・必要に応じてその都度、お金を贈与すること
- 一括贈与・・・30歳未満の人が教育に充てる資金を直系尊属から贈与され金融機関に預け入れした等の場合に一定額が非課税となる(2026年3月31日まで)
祖父母から援助を受ける際には、都度贈与と一括贈与の2つの制度を活用することでも、贈与税の節税が可能だ。
まずは「都度贈与」について説明する。
生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに関しては贈与税がかからない財産となる。
ただし、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金、株式や不動産などの買入資金に充てている場合は贈与税の対象となってしまう点に注意しよう。
都度贈与で直接、教育にかかる資金を援助してもらうことで、結果的に契約者が用意しなければいけない教育費の負担が軽くなる。
また一括贈与に関しても1人につき上限1,500万円までの控除額が利用できる。一括贈与の詳細は以下の表の通りだ。
対象者 | 父母または祖父母から贈与を受けた30歳未満の子、または孫で贈与を受けた年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円以下の人 |
---|---|
贈与の内容 | 学校などの入学金、授業料、入園料、学用品の購入費、修学旅行費、給食費、塾や習い事の月謝、通学定期代など |
控除額 | 1人につき上限1,500万円(学校など以外の支払いは500万円まで) |
参考:国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた 合の贈与税の非課税制度のあらまし
参考:文科省 教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置
祖父母のサポートを期待できるなら、教育資金に必要な資金そのものを贈与で直接、援助してもらうのも手だ。
学資保険の契約者が死亡した場合には相続税がかかる!対策をして税金の負担を抑えよう
本記事では、学資保険に関する税金の仕組みや税金を抑える方法について解説した。
学資保険が満期を迎えた際に支払われる保険金には所得税や住民税がかかる。
また、契約者の死亡時には保険金を受け取る権利を新契約者が引き継ぐため、相続税が発生する。
これらの税金負担を抑えるには、契約者以外から保険料を援助してもらう、契約者と受取人を同一にするなどの対策が必要になる。
もし、学資保険の税金対策について疑問や不安があれば、保険のプロに相談することも積極的に検討しよう。
一人一人に合ったアドバイスをもらうことで、学資保険にかかる税金の仕組みを理解し、適切に管理することができるはずだ。
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