- 高齢者は医療保険に加入する必要があるのか知りたい
- 高齢者に適したおすすめの保険を知りたい
- 自分に適した保険の選び方がわからない
年齢を重ねることで、徐々に健康状態に不安を覚え始めたという方は多いだろう。
想定外の医療費が発生する可能性がある高齢期において、医療保険の存在は極めて重要だ。
しかし、果たして自分も加入した方が良いのか、自分に適した保険は何なのか、そもそも高齢者でも加入できる保険はあるのか、など医療保険に関しては多くの疑問があることだろう。
そこで本記事では、高齢者が医療保険に加入する必要性や自分に適した保険の選び方、さらに高齢者でも加入可能な保険について解説していく。
医療保険への加入を検討している方や、既に加入している方で保険を見直したいと考えている方には、ぜひ参考にしてほしい。
高齢者を取り巻く医療環境を再確認
急速な少子高齢化に伴い人口動態はいびつさを増しており、国が負担する社会保険料は著しく増加している。
現役世代が今の高齢者世代を支える従来型の年金や医療保険の考え方は、2023年11月時点において限界を迎えているのは想像に難くないだろう。
日本における公的医療保険制度は充実しており、現役世代の場合、原則的には窓口負担は3割だ。
70歳を超えると負担割合は段階的に引き下げられ、後期高齢者を迎える75歳を超えると1割負担が原則となっている。
しかし、令和4年10月1日から後期高齢者の医療費負担の割合に変更を加えられたのは、記憶に新しい人も多いだろう。
ここでは、高齢者の方を取り巻く医療環境の実態・現状をまとめた。医療保険の必要性を判断するには、現状の正しい理解が欠かせないので、一つずつ確認してこう。
年齢別の入院・通院患者数
厚生労働省がまとめた「患者調査の概況」によると、調査日に全国の医療施設で病院に罹った推計患者数は、入院が約121万人、外来が714万人であった。
このうち、65歳以上の5年区切りの推計患者数は下表のとおりである。
65歳以上 | 70歳以上 | 75歳以上 | 累計 | 0〜64歳の累計 | |
---|---|---|---|---|---|
入院 | 904,900人 | 805,500人 | 663,600人 | 1,211,300人 | 306,400人 |
外来 | 3,618,600人 | 2,963,800人 | 2,077,100人 | 7,137,500人 | 3,518,900人 |
入院患者の場合は特に顕著であるが、全体の約75%(4人に3人)が65歳以上であることがわかる。
また、入院患者の総数に占める75歳以上の割合は約50%で、入院患者の2人に1人は75歳以上という結果であった。
外来患者については、全体の約半数が65歳以上を占める結果となっていることがわかる。
この点、入院するほどの症状ではなく、何か不調を来たして病院に罹るケースは世代を問わないことの裏返しといえるだろう。
言い換えると、年齢を重ねるほど体調不良や何かしらの疾病に罹った場合は入院することになる可能性が高く、健康上のリスクが年齢とともに上昇することを如実に表す結果である。
2023年11月時点の公的医療保険制度
2023年11月時点において、医療費の窓口負担の割合は以下のように定められている。
- 生まれてから6歳まで:2割
- 7歳から69歳まで:3割
- 70歳から74歳まで:原則2割
- 75歳以上:原則1割
そもそも、日本では国民皆保険制度により、何かしらの公的医療保険に加入することになっており、75歳を迎えると後期高齢者医療制度に加入することになる。
後期高齢者医療制度に関して、令和4(2022)年9月30日までは一般所得者等が1割、現役並み所得者が3割負担だった。
しかし、同年10月1日からは一般所得者等のうち、一定以上の所得がある人においては窓口負担が2割に引き上げられた。
なお、厚生労働省の推計によると、後期高齢者のなかで窓口負担が2割になる人は約20%(370万人)とされている。
公的医療保険制度のもう一つの大きな特徴として、高額療養費制度が挙げられる。
高額療養費制度とは、月の医療費が一定額を超えるような高額になった場合、所得水準に応じて負担額が定められ、超過した医療費は還付または現物給付される仕組みだ。
高額療養費の上限額と判定基準、判定基準別の窓口負担割合をまとめると下表のようになる。
区分 | 判定基準 | 負担割合 | 外来のみの上限額 (月単位・個人) | 外来及び入院を合わせた上限額(世帯ごと) |
---|---|---|---|---|
現役並み所得 | 課税所得145万円以上 | 3割 | 収入に応じて80,100〜252,600円+(医療費-267,000〜842,000円)×1% (多数回該当:44,400円〜140,100円) | |
一定以上所得 | 課税所得28万円以上 | 2割 | 18,000円(年144,000円) ※負担増加額3,000円以内(3年間) | 57,600円 (多数回該当:44,400円) |
一般所得者 | 課税所得28万円以下 | 1割 | 18,000円 (年144,000円) | |
低所得者Ⅱ | 世帯全員が住民税非課税(年収80万円超) | 8,000円 | 24,600円 | |
低所得者Ⅰ | 世帯全員が住民税非課税(年収80万円以下) | 15,000円 |
ケース別の医療費の窓口負担例は次の見出しで解説するが、入院や外来によって窓口負担額が大きくなった場合、上記いずれかの金額が上限になると覚えておこう。
ケース別|医療費の自己負担額を解説
ここでは、後期高齢者に該当する場合における高額な医療費がかかった場合の自己負担(窓口負担)額をケース別に解説する。
例えば、入院した際の医療費の総額が100万円かかった場合において、一般所得者の窓口負担額は本来的には10万円(100万円の1割)だ。
ところが、高額療養費制度により上限額は57,600円であるため、差額の42,400円は還付または窓口負担がそもそも57,600円となるのである。
次に、現役並み所得である年収約370〜約770万円に該当するケースでは、医療費総額が100万円であれば窓口負担は3割の30万円だ。
そこから、高額療養費による自己負担限度額は「80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円」と計算でき、差額である212,570円が高額療養費として還付または窓口で事前に清算されることになる。
具体的な計算方法まで理解する必要はないが、入院や外来で高額な窓口負担があったとしても、収入の区分に応じて負担額が軽減されることを覚えておこう。
ただし、負担が軽減されるのは公的医療保険が適用される治療だけであり、その他にかかる費用は全額自己負担になることは忘れてはならない。この点は、次の章で詳しく解説しよう。
高齢者に医療保険が必要な理由
国民皆保険制度(後期高齢者医療制度)と高額療養費制度があるため、高齢者の医療費負担は現役世代に比べて優遇されているのは今まで解説してきたとおりだ。
これまでの内容を踏まえると、高齢者の場合は民間の医療保険が不要に思うかもしれないが、必ずしもそうとは限らない。
ここでは、高齢者の方においても医療保険が必要とされる理由を3つ解説する。ご自身の状況に照らし合わせながら、医療保険の必要性を今一度検討してみてほしい。
高額な治療費がかかる場合がある
高齢者の方も医療保険を検討したほうがよい理由の1つ目に挙げられるのが、高額な医療費がかかるケースも往々にしてある点だ。
先ほど解説したように、基本的には高額療養費制度によって、一定所得以上の人までであれば外来のみなら月18,000円、外来と入院合わせて57,600円が毎月の自己負担の上限になる(多数回該当を除く)。
しかし、先進医療に該当する治療を受けた場合、治療費は全額自己負担だ。
特に、がん治療に関する先進医療は高額になるケースが多く、200〜300万円ほどの治療費がかかるのは珍しくない。
日本人の場合、生涯にわたってがんに罹患する確率は男性が約60%、女性が約50%である。
がんに対する治療を徹底したいのであれば、先進医療を選ぶ場合もあるだろう。
その際、潤沢な資金があれば医療保険に加入しなくてもよいかもしれないが、人によっては先進医療を諦めざるを得ないケースも想定される。
高額療養費制度で万事解決するわけではなく、想定外の治療費がかかる場合もあるため、医療保険が必要とされるのだ。
公的医療保険では賄えない費用がかかる
先進医療による高額な治療費がかかる以外にも、公的医療保険では賄えない費用はいくつかある。
- 差額ベッド代
- 入院中の日用品代
- 食事代 など
これらの費用は全額自己負担になるため、別途対策が必要だ。
4人ないし6人の大部屋で入院生活を送るのであれば公的医療保険の範囲内だが、「個室で治療に専念したい」などの場合は、医療保険に加入しておくと安心である。
入院すると一人の時間が欲しくなることも多いため、公的医療保険でカバーできない費用を医療保険で補っておいたほうがよいだろう。
治療が長期化する可能性が相対的に高い
高齢者の場合、体力のある若い現役世代に比べると治療が長期化しやすい。
「治療が長期化する=治療費が増加する」ことに直結するため、家計への負担も大きくなるだろう。
記事の冒頭でも解説したように、入院患者の4人に3人は65歳以上で、2人に1人は75歳以上の後期高齢者だ。
入院期間が長期化すると差額ベッド代も嵩むため、もしものときに安心できるよう、医療保険に加入しておいて損することはないだろう。
医療保険選びのポイントとは
高齢者の方においても医療保険は必要性が高いことを解説したが、具体的にどの医療保険を選べばよいか分からない人が多いだろう。
ここでは、高齢者の方において、自分に必要な医療保険を選ぶ際のポイントを3つ紹介する。
それぞれの内容を踏まえて、各社の医療保険を比較検討してみよう。
なお、「どんな人が医療保険に加入するのか」によって最適な保険商品は変わる。
属性別におすすめの医療保険についてまとめた記事もあるので、比較していただくと、より高齢世帯が重視するべポイントへの理解を深めることができるはずだ。
医療保険で何の費用をカバーしたいか明確にする
医療保険にはさまざまな種類があるため、何のために加入するのか、要するに何の費用をカバーしたいか明確にすることが大切だ。
医療保険加入時の年齢が上がるほど保険料は高くなるため、漠然とした不安があるから保険に加入するのではなく、「入院に対して毎日1万円の保障が欲しい」「通院に対しては5,000円保障してほしい」などの目的を定めよう。
そもそも、老後の生活費を含めてまとまった資産を確保している場合は、あえて医療保険に加入する必要はないだろう。
原則的に高額療養費制度で治療費はかなり抑えられるうえ、入院時の自己負担額も貯蓄で賄えるはずだ。
逆に、貯蓄が老後の生活費分しかない場合、医療保険でもしもの備えをしておいたほうがよいだろう。
入院に伴う治療費で今後の生活費を切り崩すのは、精神的にも堪える可能性がある。
このように、自身の状況を踏まえて、医療保険で何の費用をカバーしたいか明確にするのが重要だ。
公的保険の適用外の治療にどの程度対応しているか確認する
医療保険でカバーしたい項目を明らかにしたうえで、公的医療保険が適用されない治療にどの程度対応しているかチェックしよう。
先進医療の適用範囲はもちろん、特定の治療に対する一時金の給付の有無も確認してみてほしい。
医療保険によって、特定の治療に対して保険金が出るかどうか異なる場合もあるため、より幅広くカバーできる商品を探してみよう。
保険料と保障内容のバランスは適正か確認する
医療保険に求める条件と比較検討を済ませたら、最後は保険料と保障内容のバランスから判断しよう。
保障内容が充実するほど保険料が値上がりするのは当然であり、毎月の支出として許容できる範囲から、ベストな保障内容を探すのがポイントである。
保険会社によっては、持病がある人でも加入しやすい引受基準緩和型や告知の不要な医療保険を用意している場合もある。
そもそも、年齢があまりにも高い場合は、医療保険に加入できない可能性もあるため気をつけよう。
加入条件の確認を事前に済ませつつ、無理のない費用負担で安心を手に入れられる医療保険を探してみて欲しい。
まとめ
本記事では、高齢者を取り巻く医療環境をふまえ、医療保険に加入する必要性や、高齢者でも加入可能な保険や自分に適した保険の選び方について解説した。
年齢と共に、自分の健康状態については不安が増えるだろう。
もしもの時に自分の生活を守るためにも、ライフスタイルに最適な保険を選ぶことが重要である。
自分に適した保険を選ぶ際には多くの商品やプランを比較検討する必要がある。
しかし、保険商品の比較検討には専門的な知識が必要となるため、専門家に相談することをおすすめする。
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